怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

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迷宮探索

 

「―――邪魔だ」

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!??』

 

 通路を進む戦士達の目の前に現れたモンスター、フォモールの眼球を暗殺針が貫き、喉元を短刀が切り裂いた。

 

 並の軍隊なら軽く壊滅させられるモンスターを、疾走する白夜(びゃくや)が瞬殺する。

 

「ここが、迷宮……」

 

「おい、でかいのが来るぞ!」

 

 初見の迷宮内を見回す白夜の耳に、長剣で巨大蜂(デットリー・ホーネット)(ほふ)ったシルバの警告が飛んだ。

 

 ガサガサガサガサガサガサガサっっ!!と耳障りな音と共に現れたのは10(ミドル)にも届く体長を誇る大蜈蚣(タイラント・ワーム)だ。

 

「……」

 

 醜悪な外見のモンスターが暗殺針を躱しながら驀進(ばくしん)して来る光景に白夜が物凄く嫌そうな顔をする。

 

 切り分けても頭部を破砕しても、魔石を破壊するまで獲物を狙う悪質なモンスターに彼が短刀を構える、その直後。

 

「下がれ、白夜!」

 

「【我が名は土精霊(ノーム)、大地の代行者、大地の王】―――【ガイア・クレイグ】!」

 

 背後で紡がれていたクレスの詠唱が完成する。

 

 白夜が後方に跳ぶと同時、彼の攻撃魔法が発動した。

 

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!??』

 

 壁、床、天井―――全方位から無数に生み出されたのは、極太の石柱。

 

 それは瞬く間に大蜈蚣を襲い、瞬く間に魔石を砕いて灰にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……迷宮全体が磁気を放っているな。方位磁石が使えなくなったのもその影響だろう」

 

「で、どうよ」

 

「予想以上に入り組んでるな。この階層全体をマッピングするだけでも手間がかかりそうだ」

 

 より正確な地図を作成する為に迷宮を訪れたクレスがジャックに答える中、他の面々は周囲を警戒しつつあたりを見回す。

 

「これは……」

 

「綺麗に、修復されているわね」

 

 現在位置は、二階層に繋がる階段の存在するルームだ。

 

 ヴァルガング・ドラゴンの砲撃に破壊された筈のルームを見回すレイラとミランダが呟いた。

 

 モンスターでも産まれたのか、壁のあちこちにひび割れがあったが、それだけだ。あの砲撃の傷跡はどこにも存在しない。

 

「どうする、グリファス。もう少し奥に向かうか?」

 

「……」

 

 ガランの問いに考え込んだグリファスは首を振った。

 

「……いや。まずはこの階層を回ろう。マッピングを進める必要もある」

 

「最低でも31階層まであるんだろう?堅実に行くのが正論だ」

 

 ジャックの補足も加えられ、特に異論が出る事も無かった。

 

 ひとまず階段の存在するルームを抜け、彼等は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉら、行ってこーい」

 

『ピィっ!』

 

『グェ!?』

 

 ミランダの指示と同時に駆け出した白兎(ニードル・ラビット)が、コボルトの腹に一撃を入れる。

 

 その角を血まみれにして戻って来た白兎を抱きしめるミランダは頬をだらしなく緩めさせた。

 

「あぁ~~良い仔良い仔。本当に偉いわぁ」

 

「ミノタウロスやライガーファングなんかは無理なんだろうが……一定以下のモンスターであれば十分()れるみたいだな」

 

 1階層の奥に進み、ルームでの戦闘を消化した彼等は地図作成を続けるクレスのペースに合わせて移動をする。

 

 その時だった。

 

「三、六、八……十四、十五、二十……結構いるぞ、この奥に」

 

「へぇ、やけに多いな」

 

 通路を通る中、怪物(モンスター)の気配を感じ取った白夜の言葉に表情が引き締まる。

 

「レイラ、詠唱の用意を」

 

「はいっ」

 

 グリファスに応じて杖を力強く握るレイラ。

 

 進んでいく途中、異変に気付いたのはジャックだった。

 

「おい、若干明るくなってないか?」

 

「あ、そういえば……?」

 

 元々迷宮自体が光を放ってはいたが、通路を進むにつれてより明るくなっていた。

 

 光源は通路の出口、この先のルームからだ。

 

「……行くか」

 

 ジャックの言葉に従い、ルームに出る。

 

 その先にあったのは、予想外の光景だった。

 

 




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