怪物と戦い続けるのは間違っているだろうか   作:風剣

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 暑い日々が続いていますが、今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!




報告

 

 そもそも。

 

 地下迷宮(ダンジョン)(つな)がる出入り口(あな)は高さ、直径ともに10(ミドル)だ。そこから広がる1階層の通路はさらに狭い。

 

 過去に発見された大紅竜(ヴァルガング・ドラゴン)や国を一つ滅ぼした海の覇者(リヴァイアサン)が通るには、『狭すぎる』。

 

 あのモンスター達なら階層を破壊しながら進む事など容易だろうが、問題はそれではない。

 

 あんな巨体が通れば、1階層など丸ごと更地になってていても決しておかしくなかったのだ。

 

「……だが、私達が探索に訪れた時は全くと言って良いほど地形に異常は見られなかった」

 

「……その結論が、『迷宮は修復される』、ねぇ……頭が痛くなるな」

 

 うんざりした様にジャックが吐き捨てる中、グリファスは息を吐いた。

 

「……一週間後、が目処だな。次の探索で、本当の事が分かるはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや、待て待て待て、階段、だと?」

 

 顔を強張らせる極東出身のヒューマン、白夜(びゃくや)の確認に、迷宮に潜った面々が重々しく頷いた。

 

 ジャックの指示で呼び出された『連合(ユニオン)』主力陣が集まり、『穴』の中での出来事の報告が行われてていた(ジャックの作製した地図を見たクレスが馬鹿にした様に笑い、それに腹を立てたジャックが突っかかる、といった出来事(ハプニング)が発生したが)。

 

 方位磁石が使えなくなる、モンスターは壁から『産まれる』、といった未確認の情報に一同を驚愕が支配するが、『階段』の存在は圧倒的だった。

 

 ある者は困惑し、ある者は頭を抱え、ある者は静かに熟考する。そんな中グリファスは報告を続けた。

 

「階段の発見後我々は砲竜―――ヴァルガング・ドラゴンに遭遇(エンカウント)。真下から砲撃を受けて分断されたがそれを無事に撃破、探索を切り上げて帰還したが……その途中、下に広がる階層は最低でも16ある事を確認した」

 

「31だ」

 

「何?」

 

 グリファスの発言を訂正したディルムッドは視線が集中するのを感じて続ける。

 

「千里眼で先程()てみたが……私の視れる限りでは最低でも、31階層まで広がっている事が分かった。しかも下の階層に向かう程に層全体の規模が大きくなっている」

 

 地面の下を確認した小人族(パルゥム)の騎士の発言に、誰もが絶句した。

 

「おいおい、冗談だろ?」

 

「いくらなんでも広過ぎんだろ……」

 

 何名かがうんざりした様に吐き捨てる中、黙考していたグリファスは顔を上げて告げた。

 

「……以上で迷宮についての報告は終わりだ。『穴』の付近で防衛を行っていた面々の話を聞きたい」

 

「……」

 

「……おい、白夜」

 

「……え?あ、あぁ、済まない。考え事をしていた」

 

 隣の火精霊(サラマンダー)に声をかけられて肩を揺らした白夜は立ち上がる。

 

「あー、防衛を行っていた時の話、だったか?そうだな……ジャック達が行ってから少しした頃からモンスターが地上(うえ)に上がって来ようとした事は何回もあったな。日が暮れ始めた頃から特に飛行モンスターが多かった。厄介だったのが私の始末した()()だったな。たった一日で3体も―――ジャック?」

 

『……』

 

 主力陣が分散される中1人で飛竜を討ち取っていたと言う白夜の話を聞いていたたまれない雰囲気を醸し出すのはグリファス以外の探索に行っていた面々だ。ジャックなど『絶対に行かせない』等と息巻いていた手前惨めに頭を抱えてしまっている。

 

「(馬鹿な、砲撃でできた穴から地上(うえ)に向かおうとしたモンスターは全滅させたと思っていたのに……!?)」

 

「(……ほ、ほら、アレじゃない?階段ごとぶち抜いてきた穴は放置していたから、そこからモンスターが別の通路を通って……)」

 

「(うっわぁぁああああああ恥ずかしぃいい。『地上(うえ)には行かせない』とか言って凶暴なモンスター相手に無双してたんじゃなかったっけぇ?あんだけ自慢してたくせにぃ)」

 

「(おい、やめろ、やめてくれローゼ!?心を抉るな!?)」

 

 その様子を見た白夜はなんとなく察したのか、疲れ切った様に息を吐いて座り込む。

 

「……結局、ジャックのせいだった訳か。納得した」

 

「待て、納得するな!?なんで俺だけなんだっ、というかそもそもアレは砲竜がっ……!?」

 

「落ち着け、ジャック」

 

 その後もグリファスがまとめる中、『蓋』として機能する事になる塔や巨壁(きょへき)に関しての進捗や、その付近で建設が進められる砦の建築状況などが次々と報告されていく。

 

「それでは、最後だが―――今後の迷宮探索においての、防衛部隊の編成を変更する」

 

 グリファスの言葉を受け、その場にいる者は多くが胡乱気(うろんげ)な表情を見せた。

 

 彼の説明は続く。

 

「迷宮探索において、もはや防衛部隊は最重要案件だ。何しろ戦力が分散する中、多種多様の凶暴なモンスターが何体も地上に進出しようとする訳だからな。飛竜や砲竜などの強大なモンスターが地上で野放しになってしまえば確実に犠牲者が出る。とてもじゃぁ無いがそれらに対応できるのが白夜だけでは不味い」

 

「あぁ、それについては心底同意する。そういうのは確実に始末するべきだ」

 

「……それじゃあ、面子はどうする」

 

「もう考えてある」

 

 白夜が同意を示し、クレスの問いに応じたグリファスは円卓に座る面々を見回した。

 

「アルマンド、ゴルド、ローゼ、それから―――ディルムッド」

 

 名を呼ばれた火精霊(サラマンダー)、ドワーフ、ヒューマンが頷く中、小人族(パルゥム)の騎士は驚いた様な顔をした。

 

「私が?」

 

「あぁ。侵攻部隊(こちら)としては正直痛いが重要度は圧倒的だ。頼んだぞ」

 

「了解した」

 

 騎士が了承する一方、自分の名が呼ばれなかった白夜は少しほっとした様に息を吐き―――

 

「白夜にはディルムッドの代わりに侵攻部隊(こちら)に入ってもらう。頼んだぞ」

 

「え?」

 

 顔を確かに強張らせた。

 

 

 





 どこも真夏日が続く中、ジリジリと肌を焼く日差しは本当に憎たらしいですよね!


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