8話にて、グリファスの持つ飛行魔法の名前を変更しました。資料を読み漁っている内、ようやっと目当ての物が見つかったので。
変更後、名前は【フィングニル】になります。
『―――こうして会うのは、久しぶりだな。また会えて嬉しく思う』
夢を、見ていた。
森の中に築かれた里、そこで紡がれた優しい思い出。
『しかし……前々から進んでいた話とは言え、随分と強引なものだ。正直申し訳無いと思っている』
どこか気まずそうにそう言う彼に、私は慌てふためいて否定した。
『……君は、構わないのか?』
首を傾げる彼に、顔を真っ赤にしながら少女は宣言する。
もし、貴方が王族などでは無くても、しきたりなど無かったとしても。
私の答えは、決して変わらない、と。
『そうか……』
何かを考え込みむ様な素振りを見せた青年は。
決心がついたかの様に、晴れ晴れとした笑顔を見せた。
『―――ありがとう』
「うっ……」
目が覚める。
その紅い瞳に映るぼやけた光景が、徐々にはっきりとしていった。
「―――目が覚めたか」
「……グリファス様?」
「痛みは無いのか?まる一日寝込んでいたが……」
「ぁ……」
その言葉を聞いて、先日の出来事を思い出した。
あの日、グリファスの飛行魔法で1階層のジャック達と合流した二人は彼等と共に帰還。
一団の中で最も重傷だったレイラはグリファスに抱きかかえられて陣営に戻り―――
「レイラ!?」
爆音が響いた。
突然顔を真っ赤に染めた少女を心配するグリファスを大丈夫、大丈夫ですと必死に抑える。
そう、本陣に帰還したレイラは回復魔法を操る
「本当に大丈夫だろうな……?」
「は、はい。傷も治っていますし……」
汗を流しながらレイラがそう言うと、グリファスも安心した様に座り込んだ。
「……それにしても、
「あぁ、確かにそうだな。お前の綺麗な身体に傷が残ったら堪らんだろう」
「き、きれっ……!?」
「おい、レイラッ!?」
うぅっ、と毛布に包まって真っ赤になった顔を隠す少女。戸惑うグリファスは、僅かに悩んで思考を重ね―――己の失言に気付いて頭を抱えた。
「……あー、その、何だ。妙な事を言ってしまって、すまない」
「い、いえそんなっ……!?」
「あのっ、グリファス様が変な意味で言ったんじゃないのは分かってるんですっ、だから私が勝手に恥じらってっ!?だから、そのっ……!?」
「……」
頬を紅く染めながら、一生懸命になって否定する少女に、若干呆然としていた青年はどこか面白くなって―――
「……くっ」
「ぐ、グリファス様?」
「く、くく、ははははっ、いや、なんでもな―――」
「絶対何かありましたよね、どうしたんですかっ!」
「いや、その、なんだ―――」
「?」
問い詰める少女に、とても楽しそうに笑う青年は告げた。
「―――ありがとう」
「え、えぇえ……?」
「もうすぐジャック達と軍議を行う。また来るよ」
「あ、あの、グリファス様……?」
困惑する少女を置いて、笑う青年は天幕を出た。
「ありがとう、か……なんでだろうなぁ」
各地で砦を築き続けている影響か、どこか慌ただしい『
どうしてあの時その言葉が出たのか、そもそもなんであの時笑ってしまったのか、正直グリファスにも分からなかった。
「……」
考えて、悩んで、黙考して。
彼女が目を覚ました瞬間に覚えた感情に、思考が行き着いた。
安堵、喜び、そして狂おしい程の―――、
「(……まあ、そうだな。多少は浮かれる訳だ)」
そこで思考を打ち切り、ジャックの待っているであろう天幕に向かった。
誰もいない円卓の一席に座って大きく
「あれ?案外早かったな、眠り姫は大丈夫なのか?」
「あぁ、先程目を覚ました」
「そりゃあ良かった」
「それより、良かったのか?レイラが回復するまで報告を
「お前が話に集中できる環境を整えてやったんだ。感謝しろよ?」
「あぁ、ありがとう」
ごく自然にグリファスが言うと、ジャックは驚いた様な顔をした。
「……えらい素直じゃねぇか」
「なんだ、その言い方は」
うんざりした様な顔で彼の向かいに座るグリファスは手に持つ銀杖を弄んだ。
「まあ、二人きりなら話が早い」
「あ?」
「いや……迷宮に潜って、実際に中を見て……気になる事があってな」
空気が、変わった。
「まだ、確証は無いが―――」
表情を消して先を促すジャックに応じ、グリファスは続ける。
「―――――――――――――――――――――」
その、続きの言葉を聞いて。
確かに、ジャックの顔色が変わった。
「……まさ、かな」
「あぁ、私自身本当に確証は無い。ただ、敢えて言うのなら―――」
「
ら、ラブコメって難しいっ……!?(確信)
とりあえずは、無事に帰還したレイラとグリファス、そして一気にシリアスな雰囲気を出してみました。迷宮の謎、挙げればキリが無いです。