ファイアーエムブレムif 白光と黒闇の双竜   作:キングフロスト

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第42話 暗き夜の少女

 

 星界での軍議を終え、俺達は再び黒竜砦へと向けて歩を進めていた。黒竜砦は暗夜王都の南東に位置しており、その大きさ自体は暗夜王城であるクラーケンシュタイン城よりも大きいらしい。かといって、王城に比べてその生活環境は最悪らしく、あまりその防衛の任は好まれていないのだそうだ。

 

 

「えっと…大きな砦が見えてきたな」

 

 そして今、俺達の目前には大きな砦がその姿を見せていた。砦の外壁や内装に至るまで、その全てが少しだけ紺色気味の黒塗りで、まるで暗夜の暗き空と一体化しているかのような錯覚に陥りそうな程だ。

 

「あそこを通るのか? ライル」

 

「ええ。あの砦を抜ければ、シュヴァリエ公国を一貫した、港まで続く街道に出られるようです」

 

「そうか……それにしても、立派な砦だな。なんだか、大きな竜のようだ」

 

 改めて、俺はどんどん近づいてくるごとにその姿が露わになってくる黒竜砦に、感嘆の息を漏らす。ただ大きいだけではなく、その大きさに見合った威厳のようなものが伝わってくるのだ。

 そして、俺の率直な感想に、エリーゼが得意げに答える。

 

「さっすが、スサノオおにいちゃん! 竜みたいだっていうのは正解よ。実はあの砦、竜そのもので出来てて、だから黒()砦って呼ばれてるの!」

 

 ことさら、竜という部分を強調して言うエリーゼに、俺はまさか本物の竜が砦として使われている事に少し驚く。

 

「ちなみに黒竜っていうのは、大昔に死んじゃった竜の名前よ。生きていた頃は、そりゃーもうおっきくて立派な黒竜だったらしいけど、その竜が死んでからはこうやって、体を砦として使ってるんだって!」

 

「そうか。大昔の竜だったんだな…」

 

 あの黒竜砦の元となった竜も、神祖竜の一柱であったのだろうか。しかし、それとは別にしても、やはり竜とは大きなものだという事が分かった。俺が竜になった時よりも、遥かに大きさに差があるため、やはり純粋な竜には遠く及ばないという事か…。

 

「ふわぁ…大きな竜だったのですね…。生きている姿を見てみたかったです」

 

「きっと、もっと黒くて大きかったんだろうな。生きていれば、俺の熱いモノをぶち込んでヤりたかったが……。ああ、この話し方はお子様のネネには少し早かったか?」

 

「ちょ、止めなよー! ネネの教育に悪いってば!」

 

 ネネがポカンと口を開けて黒竜砦を見上げていたが、ゼロはいつもの調子でネネの感想に茶々を入れていた。そして、アイシスはネネの保護者のつもりか、ゼロの言葉がこれ以上ネネの耳に入らないように、ネネの後ろに立ってその両耳を塞ぐ。その際、アイシスの胸当てがネネの後頭部に当たっており、ネネはとても不服そうな顔をしていた。

 

「私だって、すぐに大きくなってやるです……!」

 

「…大きくなれるといいな」

 

「ミシェイル…ネネが不憫だから、それ以上は言わないであげて…」

 

「あなたが言うと、違った意味でネネが不憫ですよ、ノルン…」

 

「さて…何事もなく、あそこを通過出来れば良いのだがな」

 

 仲間達が和気藹々(あいあい)(?)と語らう中で、俺はアカツキの心配する声が、頭から離れなかったのだった…。

 

 

 

 そして、そのアカツキの心配は、見事的中する事となる。

 

「なんだ…? やけに騒がしいな…」

 

 黒竜砦の近くまでたどり着いた俺達の耳に、砦の中からと思わしき喧騒が聞こえてきたのだ。それも、どんちゃん騒ぎでは決してなく、怒号が飛び交っているようだった。時折、金属音のようなものも聞こえてきて、剣と剣を打ち付け合った時の音によく似ている。

 

「ゼロ、様子を探ってきてもらえるか?」

 

「ああ、御命令とあらば。それじゃ、少しばかりイってくる」

 

 ゼロはススッと砦までまるで気配を感じさせない動きで進んでいき、ゆっくりと中を窺って、そのまま砦内へと入っていった。

 それから少しして、ゼロが砦内から出てくるが、その表情は優れたものではなかった。

 

「おいおい、もっと面倒な事になってやがるぜ」

 

「中で何が起きてるんだ?」

 

「ここの衛兵と白夜らしき兵士が交戦中だ。しかも、こっちが押されてやがる。これは制圧されるのも時間の問題だな」

 

「何!?」

 

 まさか白夜軍がここまで押し寄せて来ているとは思わず、俺は耳を疑った。父上からそんな報告は受けていないし、マークス兄さん達もそんな事は何も言っていなかった。となると、王城はまだ白夜軍がここまで迫っている事を知らない可能性が高い。

 何事もなければ良いとは思っていたが、流石にこれは見過ごす訳にはいかないだろう。助太刀しなければ、後で揚げ足を取られるのが容易に想像出来るというものだ。

 

「スサノオおにいちゃん、どうするの?」

 

「そうだな。みんな、俺達は黒竜砦の衛兵に加勢する! 戦闘の準備を早急に整えて突撃するぞ!」

 

「「はっ!」」

 

 俺の号令の下で、それぞれが軽鎧のみといった少々ラフな格好から、鎧や武器をしっかりと装備していく中、ライルが俺の方へと来る。魔道書さえ持っていれば十分である魔道士ゆえに、戦闘準備も他の面々より格段に早いのだろう。

 

「スサノオ様、一つよろしいでしょうか」

 

「どうした、ライル」

 

「黒竜砦内での様子を僕らは把握しきれてはいません。ですので、様子見を兼ねて、守りの固い者達を第一陣として送り、中の様子を確認してから、残りの者も進撃しませんか?」

 

 慎重に慎重を期したライルらしい策と言える。マクベス派の暗夜兵が闘っているのなら、全滅さえさせなければいい。俺達はたまたま通りがかりで助けに入ったのだ。助けに入りこそしたものの、多少の犠牲は免れなかった、そうしておけば後々俺達の障害となりうるマクベスの兵力を削っておけるし、そればかりか貸しさえ作れる。

 

「そうだな。至急突撃する必要もないか。マクベスには天蓋の森での件もあるし、ここの兵には悪いが、マクベス派の者なら俺達が危険を冒してまで助ける義理も無い。全滅さえさせなければ良いだけだしな」

 

 冷たいかもしれない。人として、助けるべきかもしれない。だが、俺が進むは茨の道。俺が守るべきは、俺が守りたいのは俺にとって大切な人達や、暗夜の地下街へと追いやられたような罪無き人達だ。敵となりうるかもしれない者を全て救っている余裕など、俺には無い。

 

「よし、じゃあ耐久力の高いエルフィ、ミシェイルを相手に合わせて動けるハロルド、アカツキがサポートする形で先行し、その後に俺達も続くか」

 

「はい。では、そのように」

 

 それだけ言って、ライルは他の面々に伝達しに行った。そして、全員が支度を整え、第一陣のメンバーが武器を手に、砦入り口を目指して進撃を開始する。

 

「では、行ってまいる」

 

「エリーゼ様、行ってきます」

 

「行くぞミシェイル君! 我々のチームワークを見せてやろうじゃないか!」

 

「暑苦しいぞ、ハロルド…」

 

「4人共、気をつけてな」

 

 アカツキ達が出撃するのを見送って、俺達は内部に入ってからの細かな作戦の最終確認をする。

 

「いいですか。僕達後続隊は、先発隊を援護しつつ、負傷者の治療に当たります。無理をして白夜軍を殲滅するよりも、撤退させる事を視野に闘いましょう。こんな所で命を投げ打つ必要はありませんので」

 

「では、私は戦闘員の皆さんを主にサポート致しますね」

 

 フローラが暗器と杖の両方を取り出して言う。戦闘はあまり得意ではないらしいが、フローラはそこらの兵士よりはよっぽど腕が立つので信頼出来る。

 

「治療ならロッドナイトのあたしだね! よーし、頑張っちゃうよー!!」

 

「むむむ…私は一応シスターですが、()()なので、あまり期待しないで下さいです…」

 

 一方で、なんとも気負いの違う2人であろうか。エリーゼは元気いっぱいに、馬上にも関わらず飛び跳ねる勢いで杖を振り回している。それに比べてネネは、全く自信が無さそうに縮こまるように杖で地面をつついていた。

 

「ネネは、どちらかと言えば…杖で癒やすんじゃなくて、殴る方が得意だものね……」

 

 ノルンはフォローのつもりで言ったのだろうが、それはむしろ逆効果のようで、ネネは更に「うぐっ!?」と精神的ダメージを負っていた。ノルンの指摘はネネにとって、どうやら図星らしかった。

 

「エリーゼ様は馬が居るから…あたしがネネを運ぶね。その方が効率も良さそうだし」

 

「そうですね。幸い、黒竜砦は外見に違わぬ大きさを持っています。なので、砦内を天馬や飛竜に騎乗出来るので、飛行隊を含む僕らの部隊には助かりますね」

 

「そうか? 俺はむしろ、広いとはいえ屋内での飛行隊はイカせやすいと思うがな。結局は外と比べれば自由が制限されるんだ。下手をすれば、敵の弓兵隊のイイ的になるんじゃないか?」

 

「ひえっ!? ちょっと怖いこと言わないでよね、ゼロ!」

 

「俺は事実を口にシたまでだ。別に、ナニもおかしなコトは言っちゃいない」

 

「もう! またネネの前でそんな口調を使って!」

 

「あはは…程々にな、ゼロ……、うん?」

 

 先程も見たやりとりが俺の前で展開される中、俺はふと視線を感じ、周囲を確認する。なんだろうか、値踏みされているような、見定められているかのような、そんな視線だったような気がする。

 

「……あ」

 

 キョロキョロと見渡した事で、俺は黒竜砦の入り口付近から、外に逸れて行くように走っていく影に気付く。しかも、それはどうやら人のようで、こんな戦場には似つかわしくない者のようだった。

 

「ライル、少し場を離れる! すぐに戻るから、先に突入してくれて構わない!」

 

「スサノオ様!?」

 

「え…何をおっしゃるのですか、スサノオ様!? ちょっと待ってくだ……!」

 

 俺はフローラやライルの呼び止める声も聞かず、走り去った影を追い始める。あれは放っておくわけにはいかないだろう。だって、先程の誰かは、

 

 

 

 明らかに子どもの大きさだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒竜砦の脇に群生する小さな雑木林を、小さな影が一つ走り抜けていた。早いとは言えない速度で、枝葉をかわしながらの進行は、決して良好と言えるものではないだろう。

 けれど、小さな体を懸命に動かせて、子どもの姿をした『彼女』は闇を突き進む。一刻も早くこの場から、速やかに脱する為に。

 

「煩わしいわね…」

 

 ある程度黒竜砦の入り口から離れたので、彼女は立ち止まり、砦の外壁へともたれかかって一息つく。

 

「まさかここに白夜の者達が攻めてきているだなんて、迂闊だったわ。これじゃ、あの大きな黒竜砦をこっそり通り抜けようにも、どこかで見つかってしまう…」

 

 本来、彼女は決して多くない暗夜兵の目をごまかして通り抜けようと考えていたのだ。しかし、戦闘中ではせわしなく行き来があり、下手をすれば捕まり、最悪の場合、斥候と疑われて殺されるだろう。子どもに斥候をさせるのは、案外広く使われる手であるがゆえに、彼女は恰好の『斥候』と映る可能性もあるのだ。

 しかも、()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さっきから子どもが居るだの、捕まえろだの、どっちも戦闘中のくせに、五月蠅いのよ…。年端のいかない若造が私を子ども扱いするだなんて百年早い…」

 

 その姿からは想像も出来ない貫禄を醸し出す少女は、鬱陶しそうにもたれた壁を軽く小突く。言い切れぬ怒りを発散させたかったから。

 

「これだから…この姿を、他人には見せたくなかったのに…」

 

 誰にも向けられぬ呟きは、彼女の感情の全てが表れており、その悲観的な声音は雑木林の闇へと消えていく…、

 

「居た! やっぱり子どもだったか…」

 

 はずだった。現れた男は、少女の声を聞き、居場所を特定出来たのだから。誰にも聞かれるはずもなかった声は、しかし、彼へとしかと伝わっていた。

 

「どうして子どもがこんな所に居るのかは分からないが、ここに居たら危ないだろう。俺達が保護するから、こっちに…」

 

「要らないわ、保護なんて。私は子どもではないもの」

 

 突然現れたその男。その申し出を、彼女は素っ気なく断った。

 先程、暗夜、白夜の両軍から隠れていた時に、砦の外に到着したであろうその姿を、彼女は見ていた。その時は驚いたものだ。なんせ、その中には暗夜に住む者なら知らぬ者は居ないであろう、暗夜の第三王女の姿があったのだから。

 そして、それを率いていると見られる1人の男。見たところ、それなりに上質な装備を纏っている事から、上位に位置する立場の人物だと推測出来る。

 更に、あの『エリーゼ王女』を従えているという、普通はありえない事から、彼が王家の関係者であろう事は容易に想像出来た。

 それを踏まえた上で、彼女は彼らを避けたのだ。だから、保護なんて全くもって必要ではなかった。

 

「え? だが…」

 

「坊や、耳が遠いの…? 必要ないと言っているでしょう」

 

「ぼ、ぼうや!?」

 

 彼女の物言いに、男はかなり驚いた様子だった。それもそうか、どう見たって彼の方が年上に見えるのに、少女からは坊や呼ばわりされたのだから。

 

「どう見ても俺の方が年上だろう!?」

 

 しかし、そんな男の反応は、彼女はとうの昔に見飽きている。呆れたように息を吐くと、少女は邪魔だと言わんばかりに、手で払う素振りを見せて言う。

 

「面倒事はごめんだわ…。私にもう関わらないで。私はただ、誰の目にも触れず1人で生きていきたいだけなの…」

 

「1人? お前、1人なのか? 家族はどうした?」

 

 ただ、男も簡単には引かない。少女の言葉に引っかかりを覚えた彼は、彼女へと問いかける。

 

「ええ。そんなもの…とっくの昔に居なくなったわ。みんな、私の事を気味悪がって離れていった…」

 

 問われたから答えた少女だったが、それは独白めいており、自分を呪う言葉であるかのように、自分自身を締め付けているかのようだ。事実、それは真実なのだ。彼女は、自身を戒めていた。

 

「だから、私は1人よ。今までも、これからも、ずっと…」

 

 彼女の過去を知り尽くしているのは彼女だけ。彼女の罪を本当の意味で理解しているのも彼女だけ。だからこそ、彼女は孤独を選択し続けてきて、これからもし続ける。

 でも、

 

「そうか。では、俺達と一緒に来ないか?」

 

 彼女の都合などお構いなしであるように、男はそれでも手を差し伸べる。そんな男に、流石の彼女も呆れを隠せずに、

 

「はあ? 何を言っているの? 人の事情も知らないくせに…」

 

「ああ。確かにお前の事情は分からないが…1人ではここを切り抜けられないだろう。俺も1人で使命を全う出来ると思っていた事があるが、仲間や家族が助けにきてくれなかったら、きっと死んでしまっていた。お前にも、そういう人間が必要だ」

 

「………」

 

 呆れを通り越して、呆然となって男を見つめる少女。どれだけ否定しても、拒んでも手を差し伸べてくるなんて、どれだけお人好しなんだろうか。

 

「それに…やはり子どもを放ってはおけないだろう」

 

 そう言って、穏やかに笑みを向けてくる男に、彼女は再びため息を吐く。ただし、少しの笑みを浮かべて。

 

「もう…だから私は、子どもではないと………でも、そうね…。考えてみてもいいのかもしれないわ。他人に興味が湧いたのなんて、随分久しぶりの事だもの。私に手を差し伸べる物好きの事を、知ってみるのも悪くない…。…いいわ。貴方に付いて行く。この力、好きに使うといいわ」

 

 彼女は差し伸べられた手を掴む。もしかしたら、知らず知らずの内に、許しを求めていたのかもしれないと、自分の馬鹿さ加減にすら呆れて。新しい未来に向けて、手を伸ばしたのだ。

 

「そういえば、まだ名乗っていなかったわね。私の名は『ニュクス』…」

 

「そうか。俺はスサノオという。これからよろしくな、ニュクス」

 

 その名を聞いて、ニュクスは少し驚いた。先程の彼女の推測は当たっていた訳だが、まさか本当に王家の関係者、それも暗夜の第二王子本人だとは想定外だったのだ。

 

「貴方…スサノオ王子だったのね。噂の第二王子がこんなにお人好しだったなんて、意外だわ」

 

「…そんなにか?」

 

「ええ。そんなによ」

 

 別に悪い事でもなかろうに、スサノオはガクッと力なくうなだれる。

 

 

 

「ええ。本当に、スサノオ様はお人好しです」

 

 

 

 と、そんなスサノオの腕にガシッと組み付く2本の腕。その声は少し不機嫌そうで、スサノオのすぐ後ろから聞こえていた。

 

「フローラ!? なんでここに!?」

 

「スサノオ様がお呼び止めしたにも関わらず、さっさと行ってしまわれたからです」

 

「俺も居るぞ」

 

 更に雑木林の影から男が姿を現す。眼帯で片方の目は隠れているが、舐めるようなその視線に、ニュクスは少しの悪寒を感じた。

 

「まったく…いきなりイっちまうから、ナニかあったのかと思って来てみれば……こんなトコロでガキとよろしくヤってるとはねぇ…」

 

「ガキ、とは大した言い草ね。少し躾が成っていないのかしら?」

 

 ゼロのいつもの話し方が気に障ったのか、ニュクスは睨みを利かせてゼロへと言い返す。あまり相性が良さそうではないようだ。

 

「そんなコトより、ライル達はもう砦内に進軍シたぞ。スサノオ様の言いつけ通りにな」

 

「そうか。なら、俺達も早く後を追わないと…」

 

 ゼロの報告を聞き、ライル達に合流するために急ぎ入り口へと戻ろうとするスサノオだったが、ニュクスがその腕を引っ張って止める。

 

「待って。ここから少し行った先に、脆くなっている壁があるわ。そこを崩して入った方が早いし、中の敵への奇襲にもなると思うのだけど」

 

「…よし、ならその壁は俺が壊す。そこなら、まだ先行したエルフィ達も行けてないだろうしな。巻き込む事もないだろう」

 

 スサノオは魔竜石を懐から取り出す。竜の力なら、脆くなった壁など即座に破壊出来るだろう。

 

「よし、なら挟み撃ちだな。天国にイかせてやろうじゃないか」

 

「あくまで撤退をさせるのだという事を忘れないで下さいね」

 

 ニヤリと愉しそうに笑みを浮かべて弓に手を掛けるゼロ。そんな彼をたしなめるように、フローラは釘を刺すのだった。

 

「あまり甘く見ない事ね。あの白夜兵達、一部の様子が妙だったわ。何か、催眠や洗脳に近い手法で、精神を狂気に支配されているようだったもの」

 

「……何者かの思惑が働いている事も念頭に入れておいた方が良さそうだな」

 

 ニュクスの言葉は気掛かりではあるが、スサノオはひとまず目前の闘いに集中しようと心を研ぎ澄ませる。まずは壁の破壊からだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、黒竜砦内のとある一角で、暗夜兵と白夜兵が争う姿を嬉々として眺める者の姿があった。

 

「さあ、殺せコロセ! 暗夜モ白夜も、血二マみレて殺シあえ!! キヒヒ、命ヲ潰せ! 壊セ! 滅ボせ! 貴様ラに価値ナド存在しなイのだ! ヒヒ、ふヒャハ!」

 

 否、その姿は()()()()。正しくは、不可視であった。歪で醜悪な嗤い声だけが、かつての竜の腹の中で虚無へと向けて響く。

 誰に聞かれるでもなく、誰に聞かせるでもないそれは、不吉を孕んでいた…。

 

 

 




 
「ベロアの『くんくん、ガルーアワーズ』…」

※ここからは台本形式でお送りします。

ベロア「さて、このガルーアワーズも今回で子世代をようやく1周出来ますね」

カンナ「長かったね~」

ベロア「間に特別ゲストを挟んだりもしましたから、放送回が子世代ゲストの数を普通にオーバーしています」

カンナ「まあ、誕生日ゲストは仕方ないとして、このコーナーが始まってから随分経つね」

ベロア「最初はわたしだけでしたから、アシスタントが居るとどれだけ楽か、最近はよく実感していますよ」

カンナ「うふふ。ベロアの力になれてるなら、よかったー!」

ベロア「それでは、そろそろ今日のゲストを呼びましょうか」

カンナ「そうだね。それじゃ、ゲストさんどうぞー!」

ルッツ「ルッツ参上! 今日のゲストはこの僕、正義の味方を志すルッツだよ!」

ベロア「ちなみに、ミシェルはこのスタジオに入りきらないので、お留守番をしています」

ルッツ「本当は一緒に出たかったんだけどね」

カンナ「あたし、ミシェルにはよく遊んでもらってるよ! 竜に変身してお相撲さんごっこするの」

ベロア「そういえば、たまにカンナとミシェルがじゃれ合ってるのを見かけますね」

ルッツ「ミシェルは人見知りするけど、カンナは特に最近お気に入りみたいだよ」

カンナ「ほんと? なんだか嬉しいな…」

ベロア「さて、ほんわかとしてきたところで、今日のテーマに入りましょう」

ルッツ「そうだね。えっと…お母さんが持ってるあれを読めばいいんだよね。『最後に登場した謎の人物は?』だね」

ベロア「あの狂った人ですね」

カンナ「あの人がどこの陣営かは、書いてある事を読めば分かるよね」

ルッツ「ちなみにだけど、今回は原作のキャラじゃないよ。しかも、兵種もifには無かったものだね」

ベロア「次回、その人物ともう1人、黒竜砦と言えばあの人も登場するかと思います」

カンナ「あ! 捕獲出来るモブボスにしては優秀なあの人だよね!」

ルッツ「というより、他があまり使い易くないんだけどね。彼も、優秀ではあるけど、使い勝手は支援が無い分、正式な味方ユニットよりは扱いが難しいから」

ベロア「変態マッチョ2人組も、見た目の割にHPの成長率が全ユニット中でもトップクラスと、優遇されている割に支援や兵種の関係で、使い辛いですからね。モブボスの宿命なのでしょう」

カンナ「きちんと使いこなしている人は、すごく愛情深いんだろうね」

ベロア「それでは、今日はこの辺で終わりましょう」

ルッツ「子世代1周目のラストが僕なんて、ついてるよ。今日は良いことありそうな気がする!」

カンナ「次からは、適当にゲストさんを呼ぶ感じだよ」

ルッツ「だから、何回かは同じゲストの顔を見る事になるかもね」

ベロア「ソレイユなんて、第一回ゲストとして登場したせいか、早く二回目に出させろと鬱陶しいくらいです」

ルッツ「あはは…カンナがアシスタントになったからね。『可愛い女の子が2人もあたしに付きっきりなんて、天国だよ!』って言ってたね」

カンナ「あたし、ソレイユに会う度に頬ずりされるんだ。それで昨日も、『カンナは可愛いなぁ。あたしの部屋で2人っきりで楽しまない?』って誘われちゃった」

ベロア「……………処すべし」←静かに退出

カンナ「本当に楽しかったな~! ソレイユと2人でいっぱいお話したよ! それに、いっぱい遊んでくれたんだ~!」

ルッツ「ソレイユってけっこう面倒見が良いからね。…早くベロアに今言った事教えた方が良いんじゃないかな?」

カンナ「え? そういえばベロアが居ない…」

『ちょっと待ってよ!? あたし、まだ変な事なんて何もしてないよ!?』←遠くから、ソレイユの叫び声

ベロア『問答無用です。あなたにはオシオキが必要のようですからね』

ソレイユ『いやーーーー!!??』

ルッツ「…間に合わなかったか」

カンナ「あ、あはは…あたし、止めてくるね…」

ルッツ「僕も手伝うよ。それでは皆さん、また次回!」


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