ファイアーエムブレムif 白光と黒闇の双竜   作:キングフロスト

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第40話 再びの試練

 

 氷の部族の村、『フリージア』を出て2日。道中何度か星界での休息を挟み、俺達は暗夜王都ウィンダムへと帰ってきた。相変わらず、人っ子一人いない地上の街並みは、まるでゴーストタウンのような静けさで包まれている。いや、まるで、ではないだろう。実際、地上には誰一人として住んでいない。街の人々は、ノスフェラトゥを恐れてほぼ全員が地下街へと逃れてしまったのだから。この地上の街は当にゴーストタウンと呼ぶべきなのだろう。

 

 静寂の街を抜け、王城へと続く道を歩く事十数分。暗い街の中心に、大きな穴が開いたような形で鎮座するクラーケンシュタイン城がようやく見えてくる。

 

「ようやく帰還しましたね」

 

「わーい! 帰ってきたんだねー!」

 

「……」

 

 疲れたように言うライルに、少しぶりの帰宅にはしゃぐエリーゼ、重苦しい面持ちで城を見つめるフローラ。まさしく三者三様の反応を見せる彼ら彼女らに、スサノオは何とも言えない顔になる。無事に帰ってこれた事は喜ぶべきだが、スサノオはそもそも“1人で反乱を平定しろ”という指示を果たしていないし、その反乱の渦中に居たフローラは、良い扱いは受けないであろう。

 

 もう一つ、少しの気掛かりもある。それは天蓋の森での一件だ。ライルによれば、あれはマクベスからの差し金だった。下手をすれば、スサノオはあの場で、あの時死んでいた。仲間が助けに来てくれたからこそ、全員が無事だった訳だが、これによってマクベスに『スサノオは1人ではない』という事がバレてしまったはず。しかし、それは別にいい。今考えるべきは、“何故そのような事をしたのか”だ。

 ガロンがそう指示を出したのか、それともマクベスが勝手にやったのか、あるいは『シェイド』という女邪術士が暴走したのか……。真偽の程は確かではないが、何かしらの思惑は確実に潜んでいる。

 

 今後の事を考えながら、スサノオ達は城内へと入っていく。城を出る前と変わらず、城内はひっそりとしたもので、たまに王城兵やメイドとすれ違うくらいだ。この静けさは、暗夜の地下街では無かったもので、城で生きている人間より、地下街で生きている民達の方がどれだけ生きる活力に満ちているのかが、ありありと分かる。

 

 しばらく城内を進んで行くと、王の間の前にある長い階段前で、マークス達きょうだいの姿があった。3人は、スサノオ達の姿を見て、ホッとしたのか笑みをこぼしている。カミラなどは、満面の笑みを浮かべてスサノオに歩み寄るや、その豊満な胸に抱き締めに掛かる程だ。

 

「ああ…私の可愛いスサノオ…。無事に帰ってきてくれて、とても嬉しいわ…」

 

「く、苦しい……」

 

「カミラ様、スサノオ様が息苦しそうにしておられます」

 

 ジタバタと両腕をせわしなく動かせてもがくスサノオ。そんな主の姿を、少しばかりの冷ややかな視線で、フローラは助け舟を出す。どことなく、ツンとした意思が言葉に滲み出ていた。

 

「あら? ごめんなさい。私ったら、嬉しさのあまり、我を忘れてしまっていたみたい」

 

「ぶはっ! ……いや、いつも我を忘れてないか、カミラ姉さん?」

 

 姉の愛ある拘束から抜け出したスサノオに、呆れるようにその光景を見ていたレオンから声が掛かる。

 

「お疲れ様、スサノオ兄さん。どうやら無事に任務を終えたみたいだね」

 

「ああ。ありがとうレオン。お前も自分の臣下を応援に送ってくれてさ。助かったよ」

 

「いいよ、別に。スサノオ兄さんやエリーゼ達だけじゃ頼りなかったからね。それに、少し不穏な動きも城内であったからね。僕が勝手にやっただけだよ」

 

「もーう! レオンおにいちゃんったら照れちゃってー!」

 

 すかしたように言ったレオンに、エリーゼがトタタタタ、と駆け寄り、その背後からいつものようにバチンと一発。

 

「いたっ!? エリーゼ、だから別に照れてなんかないって!」

 

「またまたー!」

 

 ふてくされたように、少し機嫌が悪くなるレオンと、にこにこと柔らかい笑みを浮かべてその様子を眺めるエリーゼ。その光景に、スサノオは帰ってきたのだという実感をようやく得られた。

 

「まったく…」

 

「おい、レオン」

 

「ん? 何だい、スサノオ兄さん?」

 

「法衣がまた、裏返ってるぞ」

 

「な!? またか! どうして誰も教えてくれなかったんだよ!」

 

 慌てて柱の影に走り出すレオン。その姿に、きょうだい全員が笑い声を漏らす。抜け目ないようでいて、少し抜けたところがある、あれでこそレオンだと。

 

「だって、それが最近の流行なのかと思ったのだもの」

 

「それは前にも聞いたよ!!」

 

 カミラとレオンのやりとりに、スサノオは以前はあの場にアマテラスも居た事を思い出す。あの時と違うのは、もうスサノオは北の城塞から自由になっている事。そして、アマテラスはもう隣には居ないという事だった。

 

「どこかで見たような光景だな」

 

 それは何も、スサノオだけに限った事ではない。今まで、きょうだい達のやりとりを一歩下がった場所から見ていたマークスが、それを口に出したのだ。

 

「あの時は、アマテラスも私達の傍に居たな…」

 

「マークス兄さん…」

 

「いや、今は感傷に浸っている訳にもいかないな。すまない、スサノオ。お前が一番あの子と長く共に過ごしたんだ。私より、お前の方が辛かっただろう」

 

 そう言って、マークスは顔を引き締めると、いつもの威厳ある顔付きに戻り、本題へと入る。

 

「それにしても、よく反乱を平定して戻ってきた。これで父上も、お前の事をお認め下さるだろう」

 

 マークスの言う通り、スサノオは無事に反乱を鎮めて帰ってきた訳だが、スサノオには懸念すべき事があるため、素直には喜べなかった。

 

「いや、まだ分からないよ。俺は父上の“1人で平定しろ”という命令には背いたからな」

 

「何? しかし、父上はそれを知らないはずだぞ。ならば、心配は要らんはずだが」

 

 そうだ。マークスは、天蓋の森でのノスフェラトゥ襲撃に関しては知らない。だから、それを仕組んだであろうマクベスに、仲間が居たと知られている事も知らないのだ。

 

「失礼ながら、マークス様。僕達はスサノオ様を追って、追い付いた時には既に、スサノオ様がノスフェラトゥの軍隊と闘っているところでした」

 

「何だと…それは本当か、ライル?」

 

「はい。しかも、あれは差し向けられたものでした。僕達は召還陣を見つけたので、間違いありません」

 

 ライルの証言に、マークスは渋い顔をして考え込んでしまう。普段でさえ、少し威圧感のある顔なのに、なおさら威圧感が増していた。

 

「他に何か気になる点はあったか?」

 

 そのマークスの問いかけに、ライルはいつものように眼鏡をくいっとして答える。しかし、少しだけ表情は暗いものだった。

 

「確認した召還陣には、シェイドのものと思わしき魔術式が見られました。おそらく、マクベスの策略でしょう。ですので、僕達がスサノオ様の援軍に行った事はバレているはずです」

 

「そうか…。これは厄介だな。まさかバレる事になろうとは…不覚だった」

 

「いや、マークス兄さんのせいじゃない。あれは俺を狙っての罠だったはずなのに、俺より先にエリーゼが襲われていたんだ。多分、マクベスは最初から、俺にノスフェラトゥをけしかけるつもりだったんだと思う」

 

 そうでなければ、エリーゼがあんな危険な目に遭うはずがない。スサノオを狙った罠であると仮定して、エリーゼ達がスサノオを追っていると知ってからでは、あの罠を仕掛けるのは難しい。召還陣1つを用意するにも、相当な時間と魔力を込める必要があるからだ。それに、スサノオを狙ったはずなのに、エリーゼで罠が発動したのもおかしい。だから、あれは最初から、スサノオが城を発つより前から仕掛けられていた事になる。

 

「何にせよ、マクベスから父上に報告が行っている、か…。見通しが甘かったな。マクベスの動きにも目を配っておくべきだった。すまない、スサノオ」

 

 謝罪と共に頭を下げようとするマークス。それをスサノオは慌てて止める。マークスが悪い訳ではないし、次期国王であるマークスに、そんな事で頭を下げさせる訳にはいかないからだ。何より、スサノオが尊敬する兄に、頭を下げさせたくはなかったのである。

 

「そんな、頭なんて下げないでくれ、マークス兄さん! 兄さんは次期国王で、俺の兄なんだ。そんな姿を俺は見たくないよ。謝罪の言葉だけで俺は嬉しいから…だから、頭を下げなくてもいいから」

 

「……そうか。お前の言葉に甘えよう。さて、ではそろそろ謁見の間に向かうぞ。父上をあまりお待たせする訳にはいかないからな」

 

 マークスの言葉に従い、きょうだい達は臣下を待機させて父のいる王の間、更にその奥の、玉座のある謁見の間へと向かう。

 

 未だ着替えていた、レオンを置いて。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ皆!? 僕もう着替え終わるんだけど!?」

 

 

 

 

 

 

 

 玉座には既に、ガロン王が腰を掛けていた。いつものように、厳めしい空気を纏い、訪れたスサノオ達を見下ろしている。すぐ傍には、マクベスが控えていた。

 スサノオ達が下まで来ても、ガロン王は何ら表情を変えもしない。重々しい空気が漂う中、スサノオはきょうだい達から一歩前に出て、帰還の報告を始めた。

 

「ただいま戻りました、父上」

 

「よく帰った、スサノオ。その分では、反乱の平定には成功したようだな」

 

「はい。1人の犠牲者もなく、氷の部族と和平を為しました」

 

 その結果の報告に、ガロンは珍しく感心したように息を漏らす。その茂った髭を撫でながら、ガロンはスサノオへと言葉を続けた。

 

「ほう……。並みの実力の者が出来る事ではない。よくやったぞ。約束通り、お前を再び我が子として受け入れよう…」

 

「ありがとうございます。 勿体ないお言葉です…!」

 

 スサノオ達の予想外にも、ここまですんなりと話は進み、ついに念願であったガロンからのお認めも貰え、スサノオは思わず笑みを浮かべていた。

 

「良かったな、スサノオ」

 

「ああ、マークス兄さん!」

 

 しかし、やはり簡単には物事は進まない。喜び、浮かれているのも束の間、すぐにガロンの傍で控えていたマクベスが、予想通りの提言をしたのだ。

 

「…ですが、ガロン王様、スサノオ様はどうやらお1人で向かわれたのではないようですよ」

 

「…!」

 

「マクベスめ、余計な事を…」

 

 ライルの危惧していた通り、やはりマクベスにはバレていた。しかも、今このタイミングでガロンに告げ口をする形でだ。嫌らしい、姑息なマクベスがしそうな事ではある。

 

「なんだと…? 1人で部族の村に向かったのではない? それは本当か、スサノオ?」

 

 ここで嘘をつくのは逆効果。かといって、何も言わないのは非を認めるようなもの。ならば、とスサノオはあえて本当の事を、ありのままに口にした。

 

「…はい。父上から仰せつかった任務は、俺1人で反乱を平定する事でした。ですがその過程で、ライルやアイシス達臣下、エリーゼやその臣下の者達…。彼らの助けを借りたのは事実です」

 

「そうか…お前はこの父の命を破り、妹や臣下達の力を借りた、と」

 

「はぁ…これは許せませんなあ、ガロン王様? スサノオ様はハイドラ神の神託に背かれた。神の怒りを買ってもおかしくない所業ですぞ。やはりスサノオ様はここで始末しておくべきかと…」

 

 その心無いマクベスによる進言に、きょうだい達は知らずの内に身構えてしまう。

 

「やめて! そんなのだめよ、絶対ダメ! あたしたちが勝手について行っただけなの! スサノオおにいちゃんは悪くないわ! だから…だから、もし処刑するなら、あたしを…!」

 

「エリーゼ、それは…!」

 

 自分を庇うように声を荒げてガロンに申し出るエリーゼに、スサノオが制止の声を掛けようとするが、その前にマークスが声を発した。

 

「いいえ、父上。罰を与えるなら私に。皆にスサノオを助けに向かうよう手引きしたのは私です。ですから、全ての罪は私にあります。処刑をするのなら、私1人を」

 

「マークスか…」

 

 長兄であるマークスの申し出に、ガロンは少しの間、黙り込んでしまう。その間、マークスとガロンは、親子というには空寒い見つめ合いをしていた。いや、見つめ合いというより、ほぼ睨み合いに近いものだったが。

 

「………」

 

「………」

 

 沈黙が痛いとは、こういう事を言うのだろう。重苦しい雰囲気が場を支配し、今この空間を支配しているガロンの言葉一つで、全てが変わり、動き出す。そのガロンが言葉を発さないのだから、重圧は凄まじいものだ。

 

「…もう良い」

 

 そして、ようやくガロンは口を開いた。

 

「わしとて、可愛い我が子に罰を与える事は本意ではない。御告げ通りではないが、任を果たしたのは事実。ハイドラ神も許して下さるであろう」

 

「ガ、ガロン王様…?」

 

 まさかの許しに、マクベスは戸惑いを隠せない。何しろ、許すはずがないと高をくくっていたのだから、驚いて当然か。そしてそれは、マクベスのみならず、スサノオ達きょうだいにとっても同じ事。

 

「! ありがとうございます、父上! それに、マークス兄さん達も……、…ありがとう」

 

「…ああ」

 

 さっきまで険しい表情をしていたマークスも、口元に小さく笑みを浮かべて、スサノオを祝福していた。

 

「だが、お前達がこんなに良い働きをしてくれるとは思わなかったぞ。その実力を買って…早速、次の任を下そう」

 

「次の任、ですか?」

 

 唐突なガロンの指令に、スサノオは尋ね返す。これで認められて、一段落と思っていただけに、想定外だったのだ。

 

「ああ。次はお前達を、ノートルディア公国に向かわせる。その地を制圧し、暗夜王国の支配下に置いてきてもらいたい」

 

「ノートルディア公国を…?」

 

「良いか…戦端が開いた後、あの地に向けて白夜の将兵が赴いたと聞く。そこで白夜の者達が暗夜王国に仇為す策を講じようとしているらしいが、悪い芽を摘むのは早い方が良い。一刻も早く公国に向かい、白夜王国軍よりも早く制圧するのだ」

 

 白夜王国軍…、それは、スサノオがつながりを断ち切った、故郷の兵達と闘う事を意味していた。

 

「白夜王国軍と…闘うのですか…」

 

「ほう…やはり、不本意か? 生まれた国に刃を向けるのは」

 

 しかし、暗夜に付くと決めた時から、スサノオとて覚悟の上だ。それが、スサノオの選んだ道だ。避けては通れない、茨の道なのだ…。

 

「…まさか。俺はもう、暗夜王国の人間です。その任、必ずや果たしてみせましょう」

 

「そうか。期待しているぞ、我が子よ…。その言葉通り、良い成果を挙げてくるが良い」

 

「はい…父上」

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たに任を受け、王の間から出てきたスサノオは早速、その任に赴くためにきょうだい達に挨拶を告げる。

 

「それじゃあ、行ってくる。兄さん達」

 

「ああ。気をつけてな、スサノオ」

 

「可哀想に…こんな少数の兵で出発だなんて」

 

 カミラの言う通り、スサノオ、そしてその臣下達と、エリーゼやその臣下達…つまり反乱を平定したメンバーで再び任務に向かう事になっていたのだ。

 

「…本当は私達も力になってあげたいのだけれど、お父様ったら、私達にも別の任務を下されるものだから…」

 

「大丈夫だ、カミラ姉さん。俺達だけでもやり遂げてみせるさ。俺には、頼もしい仲間が何人も付いてくれているからな」

 

「うん! 絶対だいじょーぶっ! スサノオおにいちゃんにはあたしがついてるから、平気だよ!」

 

 元気に跳ねるエリーゼに、レオンは頭を押さえてため息を吐いた。

 

「それが一番心配なんだけどな…」

 

「もー! レオンおにいちゃん、ひっどーい!」

 

「まあまあ」

 

 ぷんすか怒るエリーゼをたしなめ、スサノオは、

 

「俺はお前を頼りにしているぞ、エリーゼ」

 

「ありがとう、スサノオおにいちゃんっ! あたしやっぱり、スサノオおにいちゃんが一番好きーっ」

 

「全く…戦場に出ても、やっぱりガキのままだな。お前は」

 

「えー。レオンおにいちゃんだって子どもの頃からずーっと、法衣を裏返しに着てるくせにーっ!」

 

「な!? そ、それとこれとは関係ないだろ!?」

 

「あはは…。そういえば、フローラの事は何もなかったようで安心したよ」

 

「ああ、確か…フローラも部族の村に居たんだってね? それについては、僕とマークス兄さんで上手く誤魔化しといたよ」

 

「そして代わりの者を私が用意したわ。フローラが居なくなっていたのは、あなたとアマテラスのベッd……こほん、北の城塞に用があった時に気付いていたから、お父様には隠しておいたの。ちょうど、私の可愛がっている子達にフローラに似た子も居た事だし…。フローラに何かあれば、スサノオが悲しむでしょうから。そう思うと、少し妬けちゃうわね…」

 

「そうか。ありがとう、カミラ姉さん。そして何を言い直したのか教えてくれないか。何か不穏な単語が出かけていなかったか?」

 

「何もないわ。私は何もしていないもの。別に、昔からスサノオとアマテラスの目を盗んでベッドの匂いなんて嗅いでいないわ」

 

「思い切りしてるじゃないか!」

 

 

 

 その微笑ましいやりとりを、遠目で眺めていたマークスは、スサノオの臣下達に弟の事を頼んでいた。

 

「では、スサノオの事、任せたぞ皆」

 

「はい。お任せ下さい」

 

「ふふーん。あたしに任せて下さいよ、マークス様!」

 

「…お前は逆に心配だがな、俺は」

 

「な、なによー! ミシェイルだって、ストレスでハゲても知らないからね~」

 

 ギャーギャーと騒がしいアイシス達に、マークスは少しため息を吐く。本当に大丈夫なのか、と。

 

「心配めさるな、マークス様。我らが監督している故、こやつらの制御は任されよ」

 

「お前は…アカツキか。確か、城を出たはずでは…?」

 

「うむ。しかし、縁有って、私とネネもスサノオ様の臣下となった。だから、我が刀に懸けて、スサノオ様は御守りしてせよう」

 

「です!」

 

 エリーゼと同じようにぴょんぴょんしているネネに、一抹の不安は残るが、マークスはひとまず安心した。強い彼女らもスサノオと共に居てくれるのだ。滅多な事が無い限り、大丈夫だろう。

 

「ところで、カタリナとピーターはどうした? 2人の姿は無いようだが」

 

「それが…はぐれてしまったのだ。しかし、行き先の手掛かりは掴んだ。あやつらはおそらく、ノートルディア公国に居るか、向かっているところだろう」

 

「そうか…。なら、ちょうど良い。今回の任務、ノートルディア公国の制圧だ。向かう先が同じなら、カタリナとピーターにも会えるだろう」

 

「ほう…それは良い報せ。上手く合流、もとい捕まえられれば良いのだが…」

 

 そう言って、アカツキはネネと連れ立って、他のきょうだい達の元へと向かった。これからスサノオの臣下としてやっていく事と、これからよろしく頼むと挨拶をするためらしい。

 

 と、そこにアカツキ達とすれ違う形で、スサノオがやってくる。

 

「それじゃ、そろそろ行くよ」

 

「ああ。いいか、スサノオ。ノートルディア公国には、戦士に聖なる力を与えると言われる『虹の賢者』が居る。上手く行けば、お前も彼から力を授かる事が出来るかもしれん」

 

「ほお、ノートルディアにはそんな者が居るのか。だが…お前も、という事は、他にも力を授かった人間が居るのか?」

 

 そんなスサノオの何気ない問いかけに、マークスはさも当然とばかりに、何気ない風に答えた。

 

「そうだな。私と…それから父上も、賢者殿から力を授かった者だ」

 

「ええっ!? そうだったのか? ……父上が聖なる力を持ってるようには見えないんだが」

 

「…くれぐれも、父上の前では言うなよ。…だが…賢者殿から力を得るためには、厳しい試練に挑まねばならん。もし挑戦するのなら、相応の覚悟をするんだな」

 

「分かった。俺は、この戦争を終わらせる為に少しでも強くならなくてはいけない。賢者様の事もぜひ探してみる事にしよう」

 

「そうか。お前が成長して帰るのを楽しみにしているぞ」

 

「ありがとう、マークス兄さん。…では、そろそろ行くか。行くぞ、みんな!」

 

 スサノオのかけ声に、皆も会話を止めて、スサノオの元に集まってくる。

 

「…武運を。スサノオ兄さん。オーディンは僕の任務に付き合ってもらうけど、ゼロには引き続きスサノオ兄さんの手助けをさせるよ。ゼロは優秀な斥候だから、きっと役に立つと思うよ」

 

「気をつけてね、スサノオ。任務が終わり次第、私もすぐに駆け付けるからね」

 

「ああ。ありがとう、みんな」

 

 お礼を告げて、スサノオはエリーゼ、そして臣下達と共に出口へと向かい始めた。次に帰ってくるのは、一体いつになるのか、それは誰にも分からない。

 

 

 

 

「ノルン」

 

 階段を降りていく一行で、最後尾に居たノルンに声が掛けられる。

 

「…マークス様?」

 

「お前は私達王族の臣下の中で群を抜いて強い。だから、しっかりと自信を持て。お前の強さは、誰もが認めているのだからな」

 

「…あ、ありがとうございます。でも、私…やっぱり自信を持てなくて…」

 

 俯いて、相変わらずマイナス思考のノルンに、マークスは不敵に笑みを浮かべて告げた。

 

「ならば、主君として命じよう。ノルン、私の弟と妹を、頼んだぞ」

 

「! …分かり、ました。自信は無いけれど、頑張ってみようと思います…」

 

 そう言って、彼女にしては珍しく、不器用ではあるが笑みを浮かべて頭を下げると、進む一行を慌てて追って行った。

 

「何も心配する事はない。お前は私の臣下の中でも、最も強かった。私が保証する。お前は、強い…。信じているぞ、ノルン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふ…。うふふ…。うふふふふ…。行ったのね、スサノオ様…。私もマクベスをどうにかしたら、すぐに追いかけるから…待っていて下さいね…。うふふ、うふふふふふ…『竜』の王子様……」

 

 

 




 
「ベロアの『くんくん、ガルーアワーズ』…」

※ここからは台本形式でお送りします。

ベロア「………わたし、感動しています」

カンナ「い、いきなりどうしたの?」

ベロア「わたしの娘と弟が、『泡沫の記憶編』で大活躍していたんですよ…? これで、感動しない訳がありますか?」

カンナ「感動には同意するけど、あたしとカムイを勝手に娘と弟にしないでね」

ベロア「ああ…これが反抗期ですか。わたしに似て、宝物を見る目がある可愛いカンナが…ママは悲しいです」

カンナ「うわ、絆の白夜祭の事まで持ち出してきた!」

ベロア「まあ、冗談ですよ。でも、感動したというのは本当です」

カンナ「うん! 泡沫の記憶編のシナリオは感動する内容で、5つ目と最後のマップは壮観だったよね」

ベロア「しかも、キングフロストの嫌な予感が的中したそうで、闘っていてうるっときたそうですよ」

カンナ「正直、終章よりも難易度がすごく高かったよね。あたし、最初にバッドエンドを見ちゃって、だからグッドエンドで流れたエンディングが余計に感動しちゃったよ!」

ベロア「あれは苦難を乗り越えた価値の有るものでした。わたしの宝物に入れてあげても良いと言えますね」

カンナ「はあ~、第四弾も出ないかなぁ…」

ベロア「確かに、超高難易度のマップも来てほしいところではありますね」

カンナ「うんうん。前作の覚醒の最難関マップの表と裏側両方をルナティッククラシックでクリアしたのが相当嬉しかったからまたあの達成感を味わいたいってキングフロストさんも言ってたよ!」

ベロア「よく噛まずに今のを言い切りましたね…」

カンナ「え? ああ、うん。練習したからね」

ベロア「そうですか…まあ、何はともあれ、今回の追加ダウンロードコンテンツは、わたしとしては最高の出来でした」

カンナ「そろそろ設定資料集も出るかな?」

ベロア「頃合いとしては、1年くらいでしょうから、まあ、もうそろそろ出そうな気はしますね。絶対とは言いませんが」

カンナ「…うーん、何か忘れてるような…」

ベロア「忘れてしまったのですか? なら、『はじめまして』と言いましょうか」

カンナ「それ、分かる人にしか分からないよ…」

ベロア「忘れるくらいの事なんですから、別に気にする事もないでしょう。では、本日はこれでお別れです。ありがとうございました」

カンナ「うーん…何かすっきりしないなぁ~…」







ブノワ「今日は、俺の誕生日でゲストとして呼ばれて来たんだが…忘れられてしまったようだ…。まあ、いいか…」


ブノワ誕生日おめでとう!!

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