ファイアーエムブレムif 白光と黒闇の双竜 作:キングフロスト
そして、あのお方の誕生日です。
粛々と祝いましょう。
サプライズも有り。
「はぁ…この階段…、いったいいつまで続くんでしょう?」
階段を上り始めてしばらく、およそ2、3時間くらい経った頃であろうか。私はこの変わり映えのしない風景と、延々と続く決して優しくない急な階段、坂に思わず弱音を吐いてしまう。
「なんだかずっと同じ所を上っているような気分です…」
救いがあるとすれば、私1人で上っているのではなく、かつ一定間隔で灯された灯籠の存在だろうか。陰気なこの遺跡も、共に上る仲間や、灯籠の明かりがあるおかげで少しは気が晴れるというものだ。
「頑張りましょう、アマテラス。もう半分ぐらいは上りきったはずだわ」
「ええっ! ま、まだ半分もあるんですか!?」
アクアは励ましの言葉として掛けてくれたのだろうが、私はまだ半分も残っているのかと、むしろ悲嘆してしまう。
「ええ。もう一踏ん張りよ、みんなも頑張りましょう」
「ふうっ…ふうっ……は、はいっ……!」
息を切らして、私の腕にしがみつくようにして歩くサクラ。華奢な体つきに違わぬスタミナの少なさではあるが、こう見えてこの子は案外粘り強いタイプだ。今も、弱音を吐かずに健気に頑張る意思を見せている。
「折り返しは過ぎている。アクアの言う通り、あと一息だ! 気合いを入れろ!」
「元気すぎるよヒノカ姉さん……」
体力に自信の無い面子は、その姿にたまらずうなだれる。ヒノカ姉さんやスタミナ十分なメンバーにとっては、『もう半分』だろうが、私やスタミナ不足の者にとっては、『まだ半分』なのだ。やはり、持ちうる体力が違えば、こういった面で価値観も変わってくるという事なのだろうか。
「あはは…こうなったら、気分転換に歌でも歌いましょうか!」
「…いけません。お静かに、アマテラス様」
良かれと思っての発言だったのだが、スズカゼにソッと窘められしまう。よくよく考えてみれば、ここは死者の魂が集まる場所なのだ。無闇に騒ぐのは止めておいた方が良いのは当然か。
「あ…すみません。軽率な発言でしたね」
「いえ、そういう意味ではなく…いや、確かにそうではあるのですが…」
スズカゼは静かに口元に指を持って行くと、人差し指を立てて、皆に静かにするように促した。それを見て何かを察したのか、カゲロウとサイゾウも目つきが鋭いものへと変わる。
私は訳が分からなくて、キョトンとしていると、
「…伏兵の気配がするんです。さっきから私達の事を付け狙っているようですよ」
「…!?」
伏兵、という単語に、私は思わず身構える。そんな気配、私はまるで気が付かなかった。流石は忍びといったところか。
「チッ…やはり何者かが潜んでいたか」
「ああ。この陰鬱な場所のせいかとも思ったが、どうやら私だけの思い過ごしではなかったらしい」
と、サイゾウは手裏剣を取り出し、カゲロウはクナイに手を掛けて、2人揃って崩れた岩場へと目を向ける。少し大きめの岩の塊があり、その裏側に隠れるには十分すぎる大きさだ。
「…掛かってきなさい。そこに居る事は分かっています。隠れていないで、正々堂々と闘ってはどうですか!?」
スズカゼにしては珍しく、怒鳴りつけるように岩場へと向けて叫ぶ。すると、少ししてその岩場の影から、隠れていた者達がその正体を見せた。
「ノスフェラトゥ!?」
「人間ではなかったのですね。化け物風情が、小癪な真似を…」
隠れていた敵の正体がノスフェラトゥであった事に、私は驚きを隠せない。ただ、スズカゼやカゲロウ、エマといった面々は、話に聞いた限り、普通では有り得ないノスフェラトゥの行動を目にしているので、他の者達よりはあまり驚いてはいなかった。
「ほう…連携を取ると聞いた時は驚いたものじゃが、まさか伏兵の真似事まで出来るとはのう…」
「チッ…! 何だろうが関係ない。アマテラス様の行く手を阻むというのなら、誰であろうと排除する!」
「悪いですが、私達は先を急いでいるんです。早速お引き取り願いますよ!!」
率先してスズカゼジョーカーがノスフェラトゥへと向けて武器を手に向かって行く。幸い、敵の数は多くない。戦闘員総出で掛かれば、すぐに決着はつくだろう。
「アクアさん、サクラさんをお願いします!」
「…分かったわ」
「アマテラス姉様、皆さん…どうかお気をつけて…!」
アクアがサクラを庇うように後ろへやるのを見届けて、私も前へと向き直る。
「いきますよ、皆さん! 一気に片付けます!」
「ふん…やってやる。僕だって強いんだ…! こんな奴ら、すぐに倒してやるさ!」
「任せてくださいー。俺が完璧に蹴散らせますよー」
それぞれが、目の前のノスフェラトゥへと突撃を開始する。既に戦闘を始めていたスズカゼ、ジョーカーも、戦列に加わった仲間と連携し、ノスフェラトゥと闘っていた。
それこそ、破竹の勢いで敵を倒していく仲間達。その姿は、同じ仲間としてとても心強いものだ。
ただ、少し気になる事があった。敵の様子がどこか変なのだ。スズカゼ達から聞いたように、このノスフェラトゥ達も連携を見せていた。それどころか、動きが滑らかで、フェイントさえ使ってくる。明らかに、普通のノスフェラトゥの動きではない。
「どうした! こんなものか!?」
天馬と共に宙を駆けるヒノカ姉さんが、ノスフェラトゥをすれ違いざまに切り捨てていく。ノスフェラトゥの動きは奇妙ではあるが、やはりヒノカ姉さん達には遠く及ばず、次々と倒されていく。
「よし、かなり数が減ってきました! これならすぐに…」
「…むう、妙じゃな」
そんな中で、オロチは険しい表情を浮かべ、倒れていくノスフェラトゥを見つめていた。
「おや、オロチさんも気付かれましたか。あなたの目も、奇天烈なもの以外でもしっかり捉えられるようで安心です」
「何をう! っと、今は愚僧に付き合っとる場合ではない! 先程の戯れ言はほっといて、アサマも気付いたか」
アサマのあんまりな物言いに、オロチは一瞬怒りはしたが、すぐに冷静さを取り戻す。私は一旦前線を引き、後列のオロチの元へと下がる。
「何かありましたか?」
「いやな、どうにも妙でな。こやつら、まるで意思を持って動いておるようじゃ。それに、他にも何かきな臭いものを感じて仕方ない」
「きな臭い…?」
オロチの言葉は気になるが、もうノスフェラトゥも僅かというところまで倒している。特に問題があるようには思えなかった。
だが、そんな考えは甘すぎたと、終わってからようやく気が付かされたのだった。
ノスフェラトゥが全て倒れるのを確認すると、私は他に伏兵は居ないかと警戒して周囲を見渡すが、倒れているのは、先程倒した敵兵士の姿だけ………、
「…え!?」
そう。倒れていたのは、ノスフェラトゥではなく、“人間”。何人もの人間が、ノスフェラトゥと入れ替わるかのように、そこに倒れ伏していた。
その異常な光景に、私だけではない、全員が揃って驚愕していた。
「ま、待ってください!! どういう事ですか、これは…!?」
私はこの有り得ない光景を前に、我も忘れて叫んでしまう。私は、私達は、いったい何と闘っていた?
この倒れた人達は、どこから現れた?
「え…? どうしたの、アマテラス?」
最後尾でサクラを守っていたため、アクアはその光景を見ていなかったのだろう。この異常事態に、訳も分からずに混乱しているようだった。いや、むしろアクアとサクラこそ、これを目の当たりにした他の皆より混乱していなかったと言えるだろうか。
「そんな…倒れている敵の姿が…ノスフェラトゥじゃ、ない…?」
私は呆然として、訊ねられたとも気付かずに、ありのままの事を口にしていた。しなければ、現実を受け入れられなかった。
アクアは目の色を変えて、倒れていた兵士の元に駆けつける。その場でしゃがみ込み、何かを確認して彼女は、私達に現実を突き付けた。
「まさか…これは…風の部族の者達だわ!!」
「なんですって!? いったい、どうなっているんです…!?」
それは、あまりに唐突な現実だった。さっきノスフェラトゥと思って闘っていた相手は、いきなり人間へと姿を変えて、その場に倒れ伏している。訳が分からない。意味が分からない。何か、分からない。
何が起きたのかも、何をしてしまったのかも、どうしてこうなってしまったのかも、全てが分からない。
ただ分かるのは、私達が『闘った』という行為。私達は、誰かと闘って、倒したのだ。それが、“風の部族”だった。過程は分からない。分かるのはその結果だけ。結果だけが、私達の目の前にいきなり現れたのである。
「ク、クククク…ハハハハハハハハ!」
「!!?」
呆然と立ち尽くす私達の耳に突如、まるで私達を嘲笑うかのような笑い声が、遺跡に響き渡りながら入ってくる。
「誰ですっ!?」
どこからしたのか、私達は一斉に周囲を見回す。すると、
「ごきげんよう、アマテラス王女」
先程、ノスフェラトゥだと思われていた兵士達が隠れていた岩。その上に、転移してきた男の姿が現れる。その顔に、厭らしいゲスな笑みを浮かべて。
「私めの幻術はお楽しみ頂けましたかな?」
「あなたは…マクベス!」
突然現れた暗夜王国の軍師は、ゆっくりと、倒れている風の部族兵達を見ていき、わざとらしく言い放つ。
「おお、可哀想に……。この者達は、まさか白夜からの襲撃に遭うとは夢にも思わなかったでしょう。もっとも、突然牙を剥くやり方は…あなたにとっては造作もない事でしたな?」
心にもないくせに、風の部族を哀れむようなその言葉。しかし、やはり言葉とは裏腹に、マクベスの顔には未だ憎たらしい笑みが張り付いていた。
「マークス様もエリーゼ様も、御きょうだいは皆、あなたの裏切りに、ひどく落胆しておられた」
「くっ…」
私はその言葉に言い返せなかった。私がマークス兄さん達を裏切ったのは変えようのない事実。いくら足掻こうが、決して取り返しはつかない。
「いいですか? 今回はほんの挨拶程度です…。白夜側についたからには容赦は致しませぬので、そのおつもりで。まあ、私がどうこうしなくても、スサノオ様があなたを連れ戻すでしょうがね」
「!! スサノオ兄さんが…? いったいどういう意味です!? 何を言ってるんですか!?」
「あなたが知る必要などありませんよ。いずれ、その身を以て知る事になるのですからな。まあ、楽しみにしていますよ、兄妹で再び闘うその時を! クククク…ハハハハハハ!」
「マクベス!!」
私はマクベスの立つ岩まで走るが、たどり着く前にマクベスは現れた時と同様に、突然消え去ってしまった。
「結局何だったんだ? あの男は何が言いたかった?」
「…罠だったんだわ。恐らくあいつの見せた幻覚で…向こうも私達の事を、ノスフェラトゥだと思い込んで攻撃を仕掛けてきたのよ」
タクミの呟きに、アクアは答える。この状況を作り出したのは、間違いなくマクベスだ。全ては彼に仕組まれた罠だった。私達はまんまと、彼の思惑に嵌まってしまったのだ。
「アマテラス姉様…さっきの方は、何者なんですか?」
サクラはマクベスの事を知らなかったので、私に尋ねてくる。サクラ以外にも、マクベスについて知らない者が居るので、その説明も兼ねて私は答える。
「彼は…暗夜王国の、マクベスという男です。ガロン王の参謀をしていたはずですが、彼にあんな力があったなんて…」
「そう…じゃあガロン王を倒すためには、マクベスとの対決は避けられないわね。それに、今回の一件で私達は風の部族を敵に回してしまったわ。イズモ公国に行くには、彼らの村を通らないといけないのに…厄介な事になったわね」
「………」
アクアの淡々とした語り口調が、遺跡に響く。皆も、渋い顔をして、倒れる風の部族兵達を見つめていた。意図せずではあったが、私達はとんでもない過ちを犯してしまったのだ。
「サクラさん」
「は、はいっ…!」
「彼らを、少しでも治療してあげてくれませんか? 傷は深いですが、まだ助かるかもしれません」
ノスフェラトゥと思って闘っていたため、手加減が出来ていなかったが、まだ微かに息が確認出来るので、希望を捨てる訳にはいかない。
「分かりましたっ」
「アサマさんも、お願いします」
「やれやれ。死ぬ時は死ぬ。人にはそういう流れがあるというものです……が、仕方ありませんね。まだ助かる、生きられる者を見捨てる程、私も腐ってはいません。貴重な祓串ですが使うとしましょうか」
「…ありがとうございます」
いつものように、少々辛辣混じりの言葉ではあったが、逆に私はそのいつもの調子がとてもありがたかった。
「治療が終わったら、彼らを私の星界に移します。風の部族の村に到着次第、星界の扉をリリスさんに開いてもらいますが、それまで容態をどなたか、彼らに付き添って見てあげてくれませんか?」
「私がやりますよ。体力に自信も無いですし、看ているだけなら、私でも出来ますから」
私の頼みに、オボロが手を挙げて引き受けてくれる。なんだかんだで、魔王顔をする彼女も、根は心優しい女の子なのだ。最近、私はそれが分かってきた。
「お願いしますね。リリスさんに頼めば、何かあった時は扉を開いてもらえますから」
「はい。お任せくださいな」
ニコッと笑顔を見せて、オボロは翻りサクラやアサマ達の方へと歩いて行った。
「さて…どうするつもりだ。いくら奴らを治療したとて、俺達は風の部族を襲った賊に見られる。まさか正面切って村に入る訳にもいくまい」
腕を組み、サイゾウは諦めたように話す。それはサイゾウだけでなく、他の者も同じだった。
「こちらの故意でなかったとはいえ、起きてしまったのだ。説得しようにも、難しいであろうな」
「だからって、コソコソしてたらそれこそ俺達が悪いって言ってるようなもんじゃねーか?」
「うーん…ヒナタの言う事も分かるんだけどー…俺もサイゾウやカゲロウと同じ意見かなー」
「ちょっとツバキ! まさか、サクラ様の臣下でありながら、こそ泥みたいに村を通り抜けようとか思ってないでしょうね? あたしは嫌だよ! あたし達は別に悪い事をしてないじゃない!」
「あたしも、そう思いますね。見習いごときが意見をって思いますけど、悪いのはさっきの人じゃないですか!」
「かといって、現実は変えられんしのう…」
「…ひび割れに挟まった。…誰か助けて……」
仲間達がそれぞれ主張や意見を言い合う。私は、それらを聞き、私がどうするべきか。私はどうしたいか。どうすれば良いのかを考える。
「どうする、アマテラス? お前がどんな道を選ぼうとも、お前の友として、俺達の将として、俺は従うつもりだ」
サイラスが、笑顔で私の肩に手を置いてくる。友達とは良いものだと、私は改めて思う。
「はわわ…みなさん、色んな意見があるんですね~…」
「そうやな…。でも、あたいはアマテラス様に付いて行くって決めたんや。どうなっても、文句は言わへんよ?」
「あら? 良い心構えですわね、モズメさん。上官にはどんな命令であれ、なるべく従うのが下の者の務めです。まあ、良き上官ならば、ではありますが…私達には心配要りませんわね」
穏やかに、私に笑いかけるユウギリ達。彼女らの言葉は、私に勇気を与えてくれる。
「おい、何をボケッとしてるフェリシア。俺達も杖持ってんだから、治療に行くぞ。アマテラス様、私はアマテラス様の決定に従うのみです。どうか、良き道をお選びになられるよう、熟考くださいませ…」
「ま、待ってくださいぃ~!!」
と、ジョーカーは言いたい事を言って、フェリシアを引っ張って行ってしまった。ジョーカーとフェリシアの相変わらずさに、私も笑顔になってくる。
「さあ、アマテラス姉さんがどうするのか、見せてもらおうか?」
「決めるのはお前だ、アマテラス。お前の姉として、私はお前がどうするとしても、全力を尽くすのみ」
「さあ、アマテラス様、どうなさいますか?」
「大丈夫。あなたには、私達が居る。仲間が居る。それに…どうなろうと、私はあなたの味方よ、アマテラス。さあ、選んで…あなたはどうするの? どうしたいの…?」
皆の声を、気持ちを聞いて…私は考えて、そして決めた。
「みなさん、決めました。私達は、風の部族の村に
正面から堂々と入りましょう」
「…シャ、シャラの…『ときめき☆トゥナイト★』……///」
※ここからは台本形式でお送りします。
シャラ「…何よコレ。何なのよコレ。どうして私がこんな辱めを受けなければならないの?」
オフェリア「そんなもの決まっているわ! 今日という日が、この『宵闇のオフェリア』の友である、『常闇のシャラ』の聖誕祭だからに決まってるじゃない!」
シャラ「意味が分からないわ…。しかも、『常闇』なのに、『聖』誕祭とか。闇なのか聖なるものなのか分からないわよ…」
オフェリア「うぐっ…! そ、そこはアレだよ! ピカーッと来てキュッて感じとか、きらーんときて、ばーんみたいな!?」
シャラ「はあ? 意味が分からないどころか、説明にすらなってないわ…。というか、余裕が無いのが見て取れるのだけど……」
オフェリア「むぅ~…シャラってしつこい性格してるわよね。そんなだったら、アマテラスさんに嫌われちゃうよ?」
シャラ「! そ、そんなの困るわ…! どうすれば、アマテラスにもっと好いてもらえるのかしら…?」
オフェリア「それなら、このコーナーをちゃんとこなせば、きっと星々が願いを聞き届けてくれるよ! 選ばれし者として、約束された勝利をもたらしてみせる…!」
シャラ「…約束された勝利とか、負けフラグじゃない…」
オフェリア「こほん! え、えっと、コーナーを進めるから!」
シャラ「そもそも、あのフザケた題名は何なのよ…? 『トゥナイト』とか言ってるけど、今は夜じゃ…」
オフェリア「ゲッホンゴッホン! あー、今日は喉の調子が悪いかも! え? 何か言った?」
シャラ「……何でもないわ。それで、私はどうすればいいの?」
オフェリア「よくぞ聞いてくれたわ…! シャラには今日、とある相談を受けてほしいの」
シャラ「はあ? じゃあなに? あなたの相談に乗れって…?」
オフェリア「あ、私じゃないよ。特別ゲストさんを呼んであるから、その人の相談に乗ってね」
シャラ「…面倒だけど、これを終えればアマテラスに喜んでもらえるのね……! やり遂げてみせるわ、アマテラスのために…!!」
オフェリア「それでは! 出でよ、遥かなる悠久の時を越え、神々の造り給う地へと召還されし者よ!」
シャラ「また大掛かりな…」
???「召還に応じ参上しました。私の名は、正義のヒロインX。どうぞよろしくお願いします」
シャラ「…ちょっと」コソコソ
オフェリア「え、何?」コソコソ
シャラ「仮面を付けた変質者なんて聞いてないわよ…」コソコソ
オフェリア「えー!? そんな事言われても、私だって『これを読んでくださいね?』ってアマテラスさんに渡された台本通りにゲストを呼ぶセリフを言っただけで、こんな……、カッコいい人が来るなんて聞いてないよ!」コソコソ
シャラ「カッコいい…? アレが…? オフェリア…あなた、目、大丈夫…?」
オフェリア「え、なんかひどくない?」
X「あの…そろそろよろしいでしょうか?」
オフェリア「あ、ごめんね……えと、私の顔に何かついてる?」
X「あ、いえ。私の叔母様に似たお顔をしていらっしゃるので、つい…」
オフェリア「へ~、そうなんだ。なら、その叔母様も私みたいに、きっと選ばれし者なんだね!」
X「いや、どちらかというと、それは私の従兄弟ですが…」
シャラ「…御託はいいから、早く本題に入って」
X「は、はい。えっと、私の相談なのですが…結構複雑な内容ですが、良いでしょうか?」
オフェリア「まあ、相談だからね。無理かどうかは、聞いてから判断するよ」
X「では……、私には従弟妹が3人居ます。みんな、私にはもったいないくらい、良い人達なのですが、最近私の扱いが酷いんです」
シャラ「具体的には…?」
X「私が服を選んであげると買い物に誘っても、大概は断られ、訓練を一緒にしようと言っても、先に周りを片付けてからにしろと遠回しに断られ…私が料理を作っても、美味しいと言う割に、一口食べただけで止めてしまい……私は、あの子達に必要とされていない事が、寂しくて…」
シャラ「……」
オフェリア「うう…あなたは良いお姉さんでいようとしてるのに、それが伝わっていないんだね。可哀想だよ、シャラ!」
シャラ「原因は他にあると思うわ…」
X「え?」
シャラ「たとえば…買い物と言ったわね? どんな服を買ってあげた事があるの?」
X「えっと…私の叔母様の1人がとても有名な方でして、その叔母様の顔が大きく描かれた服を…」
オフェリア「oh…」
シャラ「じゃあ、訓練は? あなたは訓練中、何か癖のようなものはあるのかしら?」
X「はい…。たまに、近くのものを壊したり、壁に穴を開けてしまいます…」
オフェリア「ジーザス……」
シャラ「じゃあ料理は?」
X「その…たまに鋼の味がするのですが、幼なじみの1人は、『美味しいのです! 美味しいのです!』といつも喜んで食べてくれますよ?」
オフェリア「……シャラ」
シャラ「……何よ」
オフェリア「約束された勝利のオフェリア(笑)」
シャラ「……呪うわよ」
オフェリア「ご、ごめんごめん! いや、流石に私達の手に負えないレベルだったから、現実逃避しないとやってられなかったの!」
X「うぅ…そんなに酷いですか、私…?」
シャラ「酷いわね」
X「ぐふ!?」
オフェリア「ああ!? シャラ、もうちょっとオブラートに…!」
シャラ「でも、改善出来る範囲内でもあるわ…」
X「ほ、本当ですか!? 教えてください! 私は、あの子達よりも年長の者として、何かをしてあげたいんです!」
シャラ「じゃあ、まずは服のセンスね。これに関しては、徐々に慣らしていくしかないわ。後でフォレオに言って、センス磨きの特訓を課すわ」
オフェリア「そういえば、フォレオに可愛い服を買って貰ってたね、シャラ」
シャラ「次は訓練。これは一番簡単。外でやりなさい。それも、周りに何もない場所で。屋内だから、物を壊したりするのよ」
X「な、なるほど…!」
シャラ「あとは料理だけど…これは数を重ねるしか無いわ。マトイが料理上手だったから、後で特訓を頼んでおいてあげる」
オフェリア「おー…! シャラがまともに答えてる!」
シャラ「当たり前よ…。アマテラスに喜んでもらうためだもの。そのためなら、私は喜んで泥だって啜るわ…」
X「す、すごいですね…。私の知っている方にも、あなたみたいな人が居ますよ」
オフェリア「うげ!? シャラみたいな人が他にも!? 私だけじゃ浄化が間に合わないよー!」
シャラ「ふん…好きに言うが良いわ。今の私は、アマテラスに褒めてもらえると思うだけで無敵よ。そう、『大盾+』と『邪竜の鱗』を組み合わせた敵ユニットのように…」
X「それは…嫌な思い出ですね…」
キヌ「ヤッホー! そろそろ終わったー?」
シャラ「キヌ…?」
キヌ「シャラお疲れー! 終わったんなら、アタシと遊んで~?」
シャラ「え…どういう状況なの…?」
オフェリア「それじゃ、私は今から瞑想タイムだからこれで…」
X「私は本編に正式登場する時まで正義の味方を続けるのでこれで…」
シャラ「何なの…? 2人とも、どこかへ行ってしまったわ……」
キヌ「あれ? 聞いてないの? 今日はえいぷりるふーる?とかで、オフェリアがアマテラスに頼まれてシャラの誕生日祝いを兼ねた嘘企画をやったんだよ」
シャラ「…………は?」
キヌ「アタシも今日は休んでって頼まれたんだ! 代わりに、終わったらシャラと遊んでいいって!」
シャラ「ご、ご褒美的なものは……?」
キヌ「んー? じゃ、アタシと遊ぶ事!」
シャラ「……な、ん、ですって……!? くっ…まあいいわ。アマテラスが喜んでくれたのなら、私は満足だもの…」
シャラ「オフェリアは、私を謀った罪として、1週間あの変てこな台詞が言えなくなる呪いを掛けてやるわ…」
オフェリア「な、なにこれ!? 私のスペシャルで選ばれし者な口調が話せないよーーー!!??」(涙)
シャラ、誕生日おめでとう!!