ファイアーエムブレムif 白光と黒闇の双竜   作:キングフロスト

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第34話 白日に猛る叛徒

 

 月光を背に受け宙を舞う透明な天馬武者、お互いに様子見を続けていたが、ついに場は動きを見せた。

 天馬武者はいっそう高く空へと上がったと思った瞬間、槍を突き出して一気に急降下してきたのだ。

 

『!!』

 

 狙いは明白。天馬武者の構える槍の切っ先は、ヒノカ姉さんへと一直線に向けられていた。

 敵は、まだ姿を捉えられていない方から始末しようとしたのである。

 姿が見えていない、それはつまり攻撃を察知出来ていないということ。

 闘いにおいて、相手の攻撃に対応出来ないというのは、あまりにも致命的すぎる。

 

『させません!』

 

 当然、私は水流弾を口から撃ち出して、槍から殺傷力を奪おうとするが、敵は私の動きを予知していたかのごとく、槍の先端ではなく天馬の前脚でそれを受け止められてしまう。

 

「!! 見えた!」

 

 しかし、それによって敵の位置が捕捉出来たヒノカ姉さんは、敵が接近していることに気が付いた。

 そして、敵の駆る天馬の脚だけが見えているという状況で、見えていないはずの槍の一撃を、ヒノカ姉さんは己が薙刀で弾いたのである。

 

「私は白夜王国第一の王女ヒノカ!! 我が誇りに懸けて、雑兵ごときに遅れはとらない!!」

 

 見えていないにも関わらず、ヒノカ姉さんは追撃をしかけようと薙刀を縦に振り上げる。

 奇しくも、敵の急所へと向かったその斬撃だったが、天馬武者は身をよじってそれを寸でのところでかわした。

 

 ブン、と空振りの音が空しく響き、そして敵は頭上の薙刀を槍で弾いてしまう。

 

「くっ…!」

 

 薙刀が手から弾かれ、隙だらけになったヒノカ姉さんの胴へと槍の横凪が迫るが、

 

『ふっ!』

 

 すかさず私は間へと滑り込むように尾を振り上げた。

 

 ガキィ! と竜鱗と槍が金属音を上げ、反動で互いに大きくのけぞった。

 ヒノカ姉さんはその隙に、落ちていく薙刀を先回りして空中でキャッチする。

 私は敵がのけぞった瞬間、大きく弾かれる直前に天馬武者目掛けて水の塊を吐き出した。あまりに咄嗟だったため、攻撃は出来なかったが、相手もそれは同じだったようで対応しきれず、全身に水を浴びる形になる。

 

 一度体勢を整える為に、互いに距離を取る。そこに薙刀を回収してきたヒノカ姉さんが戻ってきた。

 

「飛んでいるから竜騎士と思っていたが…あれはファルコンか?」

 

 ようやくヒノカ姉さんの目にも映った敵のシルエット。しかし、完全にその姿が見えている訳ではないため、敵が天馬武者であるとはまだ気付いていないようだった。

 

『…いいえ。おそらく違います。あれは……敵は、天馬武者です』

 

「な…!?」

 

 私の言葉に、ヒノカ姉さんの目が大きく見開かれる。その瞳は驚愕を隠しきれていなかった。

 

「馬鹿な…! まさか、白夜の者が裏切ったというのか!?」

 

『分かりません。ですが…私はあの人が、同じ人間とは思えない…』

 

 私の目がずっと映し続けていた天馬武者の顔。攻撃を仕掛けた時も、反撃された時も、攻撃された時も、変わらない。その顔には、何の感情も浮かびはしなかった。

 ただひたすらに、無表情を貫いていたのだ。

 

『…………』

 

 顔など飾りでしかないと、そう物語っているようで、私はその天馬武者の在り方に寒気がした。

 あれは…『彼女』は人間の形をした何か別の存在ではないのか、そんなことを思わせるその在り方に、どうしようもない薄気味悪さを感じずにはいられなかったのだ。

 

「くそ…。ともかく、話は奴を倒してからにしよう。もしかすると、こうやって私達を動揺させるつもりかもしれないからな」

 

 ヒノカ姉さんは薙刀を後ろ手に持つと、もう片方の手で手綱を引く。天馬が嘶きを上げ、大地を走るかのごとく、空を駆け始めた。目指すは、謎の天馬武者だ。

 

「私の前に立ちはだかるというなら、容赦はしない!」

 

 ヒノカ姉さんの勇ましい背に、私も迷いは捨て去る。敵が天馬武者であるのは間違いなく事実。だからといって、ここで悩んでいる場合ではない。今はただ、敵を倒すことだけを考えなければならない。

 謎を解き明かすのは、その後でいい!

 

『姉さん! 姉妹の絆を見せてあげましょう!!』

 

「ああ! 私について来い、アマテラス!!」

 

 ヒノカ姉さんが天馬武者へと走る。そして、天馬武者も姉さんに呼応するように突進を始めた。

 

 姉さんと敵は接触と同時に、互いが得物を打ち合う。

 

 ガキン!

 

 大きな音を響かせて、薙刀と槍がぶつかり合う。そしてそれは一度では終わらない。

 

 ギギギ、ガッ、ブン!

 

 薙刀と槍とがせめぎ合い、弾き合い、鍔迫り合い、時には空を切り……。

 

 そこに私が割って入る隙などまるで無い。

 

「たぁっ!」

 

『………!』

 

 幾度となく刃先、柄のぶつかり合いが繰り広げられるが、ヒノカ姉さんの腰の据わった凪払いによって戦況に変化が生まれた。

 敵はガードこそ出来たが、その一撃があまりにも重かったのか、天馬武者はガードした槍ごと天馬から宙に放り出された。

 

『今です!』

 

 空中で身動きの取れない敵に、待ち構えていた私は水流弾を発射する。

 石つぶてのようなそれは、槍を持つ敵の手に当たり、その手から槍を放させることに成功した。

 

「アマテラス!」

 

 姉さんの声を背に受け、私は最後の一撃とばかりに、宙で縦に回転しながら尻尾を敵目掛けて振り下ろした。

 

 ズガッ!!!

 

 と、私は会心の一撃が入った感触を感じて、そのまま思い切り地面へと叩きつける。

 

 木々の合間を、枝葉を折りながら叩き落とされた天馬武者は、地面に大の字で倒れ伏す。

 その際、頭に被られていた兜が砕け、今まで顔しか見えていなかった頭部の全容が露わとなった。

 

 兜の中で纏めていたのだろうか、腰にまで届く朱髪に、どことなく気品を感じてしまう。その端正な美しい顔と、その恐ろしい程までに感情のない表情も相まって、お人形のようにも見える。それもかなり高級なお人形さんだ。

 

「決したか…」

 

 私とヒノカ姉さんは様子を窺いながら地面に着地した。もしものことを考えて、天馬武者からは少し距離を取っている。

 

『…………』

 

 倒れた彼女は、一向に起き上がる気配はない。

 

『私達の勝ち…ですね』

 

 そう思い、天馬武者へと近づこうとした時だった。

 

『フ』

 

「な」

 

『え』

 

 

 

 

『フフフふフフフフふフフフフフフフフフフフフフふふフフフフフフフフフフフフフフフふフフフフフフふフフフフフフフフフフフフフふフフフフふフふフフフフフフフフフふフ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 突如鳴り響く、女の高い笑い声。そのノイズまみれの笑い声は、今まで表情一つ変えなかった天馬武者から発せられていた。

 

『……フふフ』

 

 あまりに急な変化に、私達は思わず面食らってしまう。

 その変化について行けずに唖然としていると、透明な天馬が主人の元へと舞い降りた。その口に、私が落とさせた槍を咥えて。

 

『ユダんしテイマしタ。もともト、あんヤノきシだけヲネラうつモリで、アナたタチをたおスつもリハナカッたノデスが…まサか、スガタがミエていルトハ…』

 

 先日の白夜を襲った剣士に似た、その無機質な声音。やはり、彼女はあの時襲ってきた姿の見えない兵士達の仲間であることは間違いないようだった。

 

 彼女は、天馬が口から落とした槍を掴み取ると、槍を杖にゆっくりと立ち上がる。

 

『まだ立ち上がるというのですか…!』

 

「しつこいな…」

 

 私とヒノカ姉さんは再び戦闘の構えをとるが、

 

『こコハひかセテいタダキましョう。あナタたチトタタかウにハマダはやイ。ニンムはしっパイノようでスシ…フフフ。まさカ、コレホどのチカらヲもつとハ、そうテイガイデしタ』

 

 天馬武者はにっこりと笑みを浮かべ、槍を高跳びの要領で天馬へと跳び上がり、

 

『また…アいマショう』

 

 天馬に跨がりながら、天高く空へと舞い上がる。

 

「ま、待て!」

 

 当然のごとく、追おうとしたヒノカ姉さんだったが、天馬武者が手にした槍を投擲してきたことにより、ヒノカ姉さんが怯んだ一瞬の隙に、闇夜に紛れて消えてしまった。

 

「くそ…結局何者だったんだ」

 

『………、』

 

 敵の正体は分からずじまいの内に、敵の逃亡によって闘いの幕は閉じることになった。

 闘いの後に残ったのは、新たな謎と、言い知れぬ不安感。私達は、あまりにも知らなすぎる。敵の狙いも、暗夜の動向も、そしてその思惑も……。

 

 月を見上げながら佇むヒノカ姉さんの背を、私は無言で見つめていた。

 分からない、ということがこれほどまでに怖くて、恐ろしくて、おぞましいという事実は、私から言葉すら奪ってしまっていた……。

 

 

 

 そういえば、あの天馬武者の笑った顔は、誰かに似ているような気がしたのだが……。

 果たして、誰に似ていたのだろうか。じっくりと考えれば分かるかもしれないが、今はみんなと合流しなければ。

 まだ、暗夜の騎士の件も残っているのだから。

 




「キヌの『こんこん! お狐通信』~!!」

※ここからは台本形式でお送りします。

キヌ「やっほー! キヌだよ!」

キヌ「今日が何の日か分かるかな~? そう、今日はなんと! キサラギの誕生日だよ!」

タクミ「違うよ! 僕の誕生日だ!」

キヌ「ありゃ? そうだった?」

タクミ「まったく…人の誕生日をその息子の誕生日と間違えるなんて、ニシキは君にどういう教育をしてるんだよ」

キヌ「アタシ父さんには教育されてないよー? アタシのお勉強はマトイが見てくれるからーって、教育はマトイから受けてるんだ!」

タクミ「……もう何も言わないよ」

キヌ「あれ? よく考えたら、父さん達世代でげすとさんが来るの初めてだよ~」

タクミ「らしいね。まあ、今回の投稿日にゲームを起動したら、『本日はタクミの誕生日です!』って表示されたから、急ピッチで仕上げたっていうのが真相なんだけどね」

キヌ「へ~。タクミってキングフロストと仲良しなの?」

タクミ「どうしてさ?」

キヌ「だって、誕生日だからって、特別扱いされてるし、キングフロストの事に詳しいし」

タクミ「…あのさ、別にそんなんじゃないよ。本当にたまたまなんだよ。だいたい、僕のゲームでのアイツの扱いを知ってるかい?」

キヌ「え? 知らないよそんなの」

タクミ「そ、そんなの呼ばわり……ゴホン。えーっと、僕は別にそこまで不遇じゃないんだけど、支援関係でミスが発覚したんだ。ほら、マリッジプルフとバディプルフって支援の組み合わせが重要だろ?」

キヌ「???」

タクミ「その顔は分かってないって顔だよね…。くそ、どうして違う日に投稿しなかったんだよキングフロスト…! そうすれば僕がゲストなんてしなくても済んだのに…」

キヌ「よく分かんないけど続きは~?」

タクミ「はいはい…結婚相手は最初に決まってたんだ。相手は『ピー』で即決らしかったんだけど、あ、透魔編の話ね」

キヌ「それでそれで?」

タクミ「とりあえず支援Sを埋めていく作業から始まって、順調に進んで、そして支援A+を埋めていくって所で問題が発覚したんだ」

キヌ「…うんうん」

タクミ「結論から言って、僕のマリッジプルフとバディプルフが、重複しちゃったんだよ…」

キヌ「……へえ~」

タクミ「僕は軍の中でも比較的に結婚が早くて…と言うのも、僕の結婚はストーリーを進めていく上で同時進行だったから、他の人よりも結婚が早かった訳なんだけど…」

キヌ「………うん、うん」

タクミ「そのせいか、気付いた時には後の祭り。結婚に目が行きすぎて、支援A+までは気が回らなかったんだろうね。気が付けば、僕は他の人と比べてなれる兵種が少ないんだよ」

キヌ「…………へぇ」

タクミ「分かる!? スキルが重要視される中で、僕だけみんなよりスキル修得の数が減らされたんだ! 僕は親世代だっていうのに、これじゃ支援がスサノオ兄さんやアマテラス姉さんとしか組めない人達より辛いよ! 何のためのマリッジとバディだよ!」

キヌ「……………」

タクミ「救いなのは風神弓が僕専用って事だけど、正直、弓使いは扱い辛いんだよ! なんだよ、暗器って!? 攻撃範囲1-2ってずるいじゃないか! しかも弓は魔法に弱いし! シャイニングボウ? あんなもの、僕の魔力で扱えるか!!」

キヌ「………………」

タクミ「はあ、はあ…ん? ねえ、君聞いてる?」

キヌ「………………ぐーすかぴー」

タクミ「な、なんで寝てるんだよーーー!!!!!」

タクミが機嫌を損ねたため、収録は中断します。


タクミ、誕生日おめでとう!!←本当に投稿日はたまたまでした。

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