ファイアーエムブレムif 白光と黒闇の双竜 作:キングフロスト
あとがきにも注目かも。
今思えば、私はこうなる事を予期していたのかもしれない。
私達はリョウマ兄さん達を追い、暗夜王国と戦闘状態であるという国境まで急ぎやってきていた。
そこで私の目に飛び込んできたのは、どこかで見たような光景。
白夜の兵と暗夜の兵が、武器を手に互いを殺し合っていた。家族を守る為、国を守る為、誇りを守る為…。それぞれが同じ立場でありながら、違う想いを抱いて敵を殺す…そこは戦場、まさしく戦争が行われていたのだ。
そして、私はこれを見た事がある。
───夢、という形で…。
平野を横切る川の、ちょうど反対側では、暗夜兵達を率いる将の姿があった。私は、その姿をよく知っている。
何故なら彼は───
「無事か、スサノオ、アマテラス…! よく生きていてくれた…!」
「マークス兄さん! 何故だ? 何故こんな戦争を!?」
川の向こうで、マークス兄さんが遠く離れた私達に向かって、手を差し伸べてくる。
スサノオ兄さんの問いには、マークス兄さんは答えてはくれなかった。
「さあ…行くぞ。お前達も戦列に加われ、スサノオ、アマテラス。お前達がいてくれれば、戦争はすぐに決着する。無駄な犠牲を出さずに、白夜王国を征服出来るだろう」
「マークス兄さん…私は…」
私とスサノオ兄さんが戸惑っていると、リョウマ兄さんが私達の前に立つ。
「気を付けろ、スサノオ、アマテラス。あの男は暗夜王国の王子だ。母上を殺した者達の、上に立っている男だ」
「リョウマ兄さん…」
その背中は、私達を守ろうとしているように見えた。
暗夜の兄と白夜の兄…、2人の兄を前に、私はようやく分かった。
選ばなくてはならない。自分達の…いや、『私』の進むべき道を。
共に歩む───『家族』を……。
「ああ…スサノオ、アマテラス…! 生きていたのね、良かった…」
俺とアマテラスの姿を白夜の中に見つけたカミラ姉さんは、心底ホッとした顔で胸をなで下ろしていた。そして、続々と暗夜のきょうだい達も勢揃いしていく。
「…悪運強いね、スサノオ兄さん…それとアマテラス姉さんもさ」
「良かったよ~! スサノオおにいちゃん、アマテラスおねえちゃん!」
レオンもエリーゼも、俺達の無事な姿を見て、笑顔を浮かべていた。
「何を言う、弟と妹をさらった暗夜の者め…。スサノオとアマテラスは私の弟妹だ!」
カミラ姉さんの言葉が気に入らないヒノカ姉さんが、険しい顔で怒鳴りつける。しかし、カミラ姉さんはこれといって怯む様子もなく、涼しそうな顔で言う。
「いいえ、スサノオとアマテラスは私の弟妹。誰にも渡しはしないわ…」
「違う! スサノオとアマテラスには、私以外に姉などいない!」
互いに睨み合いを繰り広げる姉2人に、リョウマ兄さんも俺達に注意した。
「騙されるな、スサノオ、アマテラス。お前達は俺達の大切な家族だ!」
しかし、マークス兄さんも負けじと叫ぶ。俺達を取り戻す為に。
「戻ってこい、スサノオ、アマテラス! またきょうだい一緒に暮らそう!」
「スサノオ! アマテラス!」
2人の兄が、俺達の名を大きく呼びながら、俺達をつなぎ止めようとしている。
それが分かってしまうからこそ、俺の心は張り裂けそうな程に痛かった。
出来る事ならどちらも選びたい。だが、それは決して出来ない。
どちらか捨てなければ、俺達は───いや、『俺』は進めない。進んではいけないのだ。
今になって、思い出さなければ良かったと、つくづく思う。
忘れていれば、もっと自分に素直になれたかもしれないというのに。
俺は誓った。『妹を守る』と。たとえ、それが今の俺ではなくとも、あの『俺』は俺なんだ。だから、俺は『俺』の想いを継がなくてはならない。
たとえ、それが茨の道であったとしても───。
───さあ、お前はどちらを選ぶんだ…? アマテラス、いや、『光』……?
そしてスサノオとアマテラスは、川の中間の島へと歩き出す。
「! 何をしている、スサノオ、アマテラス!」
止める兄の制止も聞かず、橋を渡り、ちょうどどちらの陣営からも見ても中心となる場所に、2人は立ち止まる。
選ぶ刻が来たのだ。
辛い事も楽しい事もあったが、今までずっと育ってきた暗夜王国か。
自分達の生まれ故郷にして、暖かな光に満ちていた、優しい白夜王国か。
長い時を共に過ごして、絆を育んできた暗夜の家族か。
共に過ごした時は短けれど、血のつながった白夜の実の家族か。
絆か、血のつながりか。
彼、彼女の選び取った未来とは────。
そして、2人はゆっくりと口にする。
自分の選んだ、道を。
「私は───」 「俺は───」
さて、2人が選んだ道とは?
次回、ついに運命が決まる!
活動報告でのサプライズは次回です!
詳細を知りたいという方は、目を通してみると良いかも…?