ファイアーエムブレムif 白光と黒闇の双竜   作:キングフロスト

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第56話 シェイドとの決着

 

 スサノオ隊の各々の活躍もあり、ノスフェラトゥの掃討は順調に進んでいる。

 手練れ揃いなだけあり、目立った外傷もないままに、その討伐数は全員で150を越えようとさえしていた。

 人数、実力、体調の全てがベストで揃った状態で、ノスフェラトゥのように単純な思考能力──いや、思考する事さえ叶わぬ化け物風情が、彼らを相手によく闘っていると逆に褒めたくなってくる程に、戦力差は明らかだったのだ。

 物量差は、圧倒的な実力差によって完全に埋められる形となっていたのである。

 

「『エルサンダー』!! ふう…そろそろ敵の数も減り始めてきたようですね」

 

 ライルは魔法で大きな雷を、ノスフェラトゥの集団へと向けて撃ち放つと同時、全体を見通してその戦況に軽く息をつく。

 闘い始めて早50分、そろそろこの戦闘にも終わりが見えてきた頃だと判断したのだ。その証拠に、ノスフェラトゥの数は目に見えて減少しており、皆も戦闘に余裕を持ち始めていた。

 

「総員、最後まで油断はせずに。敵の戦力は低下の一途を辿っていますが、気を抜かないでください!」

 

 人間というのは、物事に終わりが見え始めてくると気が抜けてきてしまう悪癖が備わっている。もちろん、個人差もあるだろうが、こと戦闘ともなると、命に関わる以上、その集中力も凄まじいもの。

 ここで、最後まで気を張り続ける者と、終わりかけに気の抜けてくる者とが出てくる。それも、裏打ちされた実力を持つ者は後者であるのが顕著だ。

 

 故に、ライルは仲間達に向けて忠告したのだが───それがあまり意味の無い事だとも、分かっていた。

 

「言われるまでもない。敵を前に最後まで気を抜くものか」

 

『フシャアアアァァァァァァ!!!!!』

 

 ライルの頭上を滑空しながら、ミシェイルが当然とばかりに口にする。それに答えるかのごとく、ミネルヴァが猛々しく吠えた。

 

 それは何も、彼らに限った事ではない。他のメンバーも全員、一片たりとも油断する様子を見せていなかった。

 だからこそ、彼らは一流の戦士と言える。全ての戦闘が終わるその時まで、決して油断なく闘い抜く。それが出来てようやく、一流の戦士と呼べるのだ。

 いくら実力が備わっていようとも、心構えのなっていない戦士は所詮は二流止まり。油断大敵という言葉があるが、当に言葉通りなのである。戦士にとって、最大にして常駐する敵こそが、『油断』に他ならないのだから。

 

「最後まで本気よ、絶対に手は抜かないわ。だって、私は仲間を守る盾であり、敵を倒す槍なんだから」

 

 並み居る敵を薙ぎ倒しながら、重騎士の少女は自負する。自身が皆の盾であり、矛であると。

 エルフィの根底にあるもの、それは仲間を命に代えても守るという強い意思。彼女がアーマーナイトとしての道を選んだのは、大切な人を死んでも守り抜く為だ。

 誰よりも優しく暖かな人格を有するが故に、自己犠牲も厭わない彼女ではあるが、そんな彼女の鉄壁が如き守備を破れる者はそう居らず、かつ彼女の怪力から放たれる一撃は全てが岩をも柔く砕く剛撃。まともに受けて無事で済む者はまず居ない。

 

 白兵戦で言えば、無類の強さを誇る。それがエルフィという女重騎士だ。

 ノスフェラトゥに魔導師のような魔法攻撃でも使えない限り、彼女相手に苦戦を強いられる事は必至であった。

 

 

 

 

 

 

『邪竜穿!!』

 

 

 ノスフェラトゥ掃討戦も終盤に差し掛かり、スサノオはもはや出し惜しみせずに、今持てる全力を以て、事に当たっていた。

 

 竜の口から撃ち出された大きな水塊弾は、獲物に当たる少し前で分裂し、3つに分かれたそれらが、それぞれ3体のノスフェラトゥの胸へと直撃する。

 被弾箇所からは、ノスフェラトゥの肉を喰らって巨大化した水晶が、その大きな背中へと貫通し、周囲のノスフェラトゥをも貫いていく。

 死体故か、貫かれた傷跡からはどす黒く濁った血が、粘着性を持ってドロドロとその体を伝って、地面へと滴り落ちていた。

 

 怪物と、それらを抉り喰らうようにして伸びる水晶の槍。それを黒く彩るのはノスフェラトゥから流れ出た真っ黒な血液。

 ここに、世にも奇妙で、(いびつ)かつ不気味なオブジェが誕生した瞬間である。果たして、これを美しいと思う者は居るのだろうか……?

 

『……なんて、素敵……!!』

 

 訂正しよう。この歪んで醜悪なオブジェに美意識を感じている者がただ一人。それは、この戦闘を離れて観察している元凶とも言うべき女邪術士、シェイドだった。

 森に響くように、恍惚とした雰囲気漂う嬌声が、スサノオ達にだだ漏れである。ちなみに、本人は心底陶酔しきっていたので、その事にはまるで気付いていなかった。

 

『……うわぁ』

 

 戦闘中ではありながらも、スサノオは引かざるを得ない。自分でやっておいてなんだが、ノスフェラトゥを水晶で貫いたオブジェは、あまり気持ちの良いものではなかった。むしろ、嫌悪感さえ抱く程だ。

 でも、邪竜穿は戦闘時には有用なのだから、見た目にさえ拘らなければ何とか使える技なのである。

 

 そんな、本人でさえあまり気に入っていないそれを、シェイドは絶賛しているのだから、スサノオの心中察するところであった。

 

「スサノオ様、今は戦闘に集中を。お気持ちは痛い程にお察ししますが、気にしては負けです」

 

 スサノオより一歩二歩と下がった所で、フローラが忠告する。彼女の声音には、若干の棘こそあったが、スサノオへの気遣いも十二分に含まれている。

 要は、先程のシェイドとのやりとり(寝る時にでも云々の話)にやきもちを焼いているフローラだが、スサノオが完全に被害者であるという事も理解しているが故の、複雑な心持ちだったのである。

 乙女心は複雑、とはよく言ったものだ。

 

 しかし、悲しいかな。フローラの複雑な心境も、スサノオにはまるで伝わらない。

 いや、フローラにしてみれば、スサノオ本人に対しては秘めたる恋心のつもりなので、それで良いのだが、なんとも報われない。

 この男、いくらなんでも鈍すぎる……と、軍内で一部を除きほぼ全員から思われている事を、スサノオは知る由も無いのであった。

 

『す、すまん。ついドン引きしてしまったんだ……』

 

 何故、フローラが少し不機嫌そうなのか、理由の分からないスサノオは若干しどろもどろに返答した。やはり、鈍い。

 

「スサノオ様、じきにこの戦闘も終了します。その折までに、あのシェイドという邪術士の処遇を、どうかお考えおきくださいませ……」

 

 フローラの言い分はもっともだ。自分の欲望のために、同じ軍に所属する仲間、それもスサノオやエリーゼといった王族までをも巻き込んでの騒ぎ。

 彼らの実力からして、無い話ではあるが、一歩間違えば命を落とす危険だってあった。彼女の自己満足は同時に、暗夜王国への背信行為にも成りかねない行いだ。いや、普通に考えて間違いなくクロである。

 

『そうだな。シェイドをどうするのか、考えておかなきゃな……』

 

 一難去る前に、また一難。スサノオは厄介事の神に愛されているのではないかと思いたくなるくらいには、次から次へとトラブルが舞い込んできていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして───。

 

「ふぅ……これで全員、イかせてヤれたか?」

 

 一息つきながら、倒れたノスフェラトゥに足を掛けて休息するゼロ。彼の眼下には、無数のノスフェラトゥが地面を覆い尽くすように、折り重なって倒れ伏していた。

 

「その言い方に賛同するのは非常に癪ですが、そのようですね」

 

 同じく、三角帽子をポンポンと叩き、埃を落として休憩していたライルが、嫌そうにではあるが、ゼロに同意の言葉を送る。

 

 彼ら同様、他の仲間達もそれぞれが戦闘終了に従って、各自気ままに休んでいた。中でも、特に立ち回りの激しかったアイシスとミシェイルは、それぞれ二人の相棒を座らせて、その背を預けている。

 ハロルドなどは、戦闘中も不運に見舞われた事もあり、余分に疲労とダメージが蓄積されていたので、大の字になって寝転んでいた。

 

「スサノオ様、肩を」

 

「ああ、すまない。助かるよ、フローラ」

 

 長時間でもなかったが、竜化の影響で体に重さを感じてフラついたスサノオを、フローラが腰に手を回し、肩を支えて地面にゆっくりと腰掛ける。

 流石はメイド。主人の機微によく気が付くものだ。いや、彼女だからこそ、とも言えるか?

 

 ともあれ、スサノオは竜化の後遺症はあれど、それもすぐに治まる軽いもの。少し休んだら、今度はノスフェラトゥ掃討戦よりも面倒そうな厄介事が待っている。

 むしろ、こっちの方がスサノオの頭を痛ませるものであったのだが……。彼にとって、シェイドの処分をどうするかを考えるよりも、敵と闘っている方がまだ気楽ではあったのである。

 

「さて、どうしたものかな……」

 

「私は──スサノオ様のご意志に従うまでです。どのような選択をされようとも、私はそれを支持致しますので……」

 

 主に一歩控えて意見を述べる辺り、フローラは一人前の従者だろう。もちろん、スサノオの為なら間違いを正す事も厭わない覚悟すら持つが、今回に限っては、スサノオの意思を尊重する構えを取っていた。

 フローラは、なんとなくではあるが、スサノオがどのような処遇を選ぶのか、察しはついていたから。

 

「……本当に、俺は良い臣下を持ったな」

 

「───ッ! いえ、その……あり、がとう、ございます……」

 

 感謝と共に、間近でスサノオから柔和な笑顔を向けられたフローラは、顔を真っ赤にして、隠すように俯いてしまう。今出来る限りの照れ隠しなのだが、スサノオはそれがただ恥ずかしいだけなのだと勘違いする。

 恋する乙女心を彼に理解しろというのは、そう容易ではないのだ。ここだけの話、生まれ変わる前も彼女なんて居た事がなかったし。身近な異性は母親、妹、家政婦さんだけという、年齢=彼女居なかった歴だった彼に、恋心を理解するのは至難の業である。

 

 

(にぶちんだなぁ~、スサノオ様って)

 

(それは言わぬが花だろう…)

 

(グルルルル……)

 

(あ、あの人を、思い出すわね、スサノオ様を見ていると……)

 

 

 二人からは遠目に、アイシス達がコソコソと内緒話でもするように、身を寄せ合って話していた。ノルンの言葉に、ちらりと視線を移す3人と1匹。そこに居たのは、刀の手入れをしているアカツキだ。

 

「………む?」

 

 アカツキも視線に気付きはしたが、生暖かい視線であったため、声を掛けるのは止めておいた。実際のところアイシス達が考えている人物は彼女ではなく、彼女の父親の事ではあったのだが……それこそ、言わぬが花、であろう。

 父親が鈍感とか、知りたくもない事実だろうから。

 

 蛇足だが、アカツキは父親の鈍感具合にまるで気付いておらず、自分が生まれた事実がどれだけ幸運であったのかを知らない。

 つまりは、彼女の母親は若くして命を落としはしたが、見目麗しい女性達から一身に人気を集めていた男性を落とした上に、娘にまで恵まれたのだから、幸運であったのだろう。

 ちなみに、アカツキの妹であるカタリナは父の鈍感具合は承知済みである。そしてその事に頭を悩ませた事もあったのは、やはりアカツキは知らないのであった。

 

(なんというか、先が思いやられるよね~)

 

(そうね……。でも、見守るしか出来ないし、陰ながら応援しましょう……)

 

(フン。そもそも、他人の恋路に茶々を入れるものではないからな。それに、よく言うだろう。馬に蹴られろ、と。まあ、そういう事だ)

 

(フシュルルル…)

 

 ヒソヒソと、溜め息混じりにフローラの恋を見守ると決めた3人と1匹であった。

 

 

 

 

 

 

 

 一時の休息を経て、さあシェイドとエリーゼ達を探そうかという時の事だった。

 その必要はなく、向こうから、スサノオ達が居る所へとやってきたのである。

 

「おにいちゃん! みんなー!」

 

 よっぽど心配だったのか、エリーゼは仲間達の姿が見えるなり、勢いよく駆け出した。そして、迷う事なくスサノオの胸へと飛び込んだ。

 スサノオも咄嗟の事ではあったが、妹を優しく抱き止め、その頭を慣れた手付きで撫でる。

 

「はあ~……エリーゼ様はお子様ですか? だから言ったです。心配しなくても大丈夫だって」

 

 遅れて、ネネが呆れたように溜め息を吐きながらやってくる。

 

「ほう……お前は、俺達の事は心配ではなかったと?」

 

「そりゃあそうですよ。だって、あの程度の事は、昔から慣れっこでしょう、ミシェイル?」

 

 ミシェイルのからかうような態度に、見た目にそぐわぬ大人びた返事をよこすネネ。しかし、不思議と違和感がそれほどもなく、むしろ自然な感じさえした。

 

「ん~! あたし達の事、そんなに信頼してくれてるんだね! 嬉しいよ~!!」

 

 が、それには意も介さず、アイシスがネネに飛び付き、自らの胸に抱き締める。言わずもがな、ネネは顔を圧迫されて若干の呼吸困難になりかけていたのだが……。

 

 

 

「感動の再会はここまで、でしてよ」

 

 

 

 女の声。全員が自然と身構える。

 先程までとは違い、魔法を介さずに、直に耳へと届けられるその声は、今回の一件の元凶とも言える人物のものだ。

 

 木々の闇から、幽鬼のようにゆらりとその姿が現れる。豊満な肢体を隠そうともしない、妖艶な腰つきに、淫靡な服装で、艶やかに足を運ぶ女邪術士───シェイド。

 

 暗闇で分かり難いが、それでもまだその顔が紅潮している事が分かるまでには、彼女の興奮はまだ冷めやらぬようだった。

 

「スサノオ様、それに皆さん…お疲れ様でございましたわ。おかげさまで、随分と知的好奇心および欲求が満たされました。まあ、満足はしておりませんが……」

 

「まだ満足していないと? こちらはもう勘弁してほしいがな」

 

 警戒感を緩めないスサノオに、シェイドはにこりと、美しく笑って返す。彼の態度を、まるで気にしていないと言わんばかりの、善い笑顔であった。

 

「ええ。ノスフェラトゥは打ち止めですもの。これ以上は私自身がこの身を差し出すくらいでなければ、とてもとても……。ですが、ええ……それも良いですわね」

 

「……!」

 

 彼女の言葉に、場の空気が極度の緊張感に支配される。この上、まだ闘おうというのか。しかも、暗夜王国でも有数の実力ある魔導師と───そんな、言い知れぬ不安に駆られたのだ。その場の全員が。

 数の差はあれど、被害は確実に出る。それだけ、シェイドは魔導師としての腕があると、彼女を知る者達は警戒心を最大限までに、いつでも動けるように身構えていた。

 

「ではスサノオ様───」

 

 彼女が口を開いただけで、限界まで張り詰めた空気が、更に許容範囲を越えて張り詰めんとする。

 第二ラウンドが始まってしまうのか、手に汗握って、彼女の次の動きを注視するスサノオ達。

 そして───

 

 

「私と───

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───子を為して下さいまし」

 

 

 

 

 

 

 場の空気が瞬間、錯覚ではなく本当に凍り付く。

 しかし、我関せずというか、気付いた素振りすらないようで、シェイドは顔に手を当てて、恥ずかしいとばかりに頬を染めていた。

 

「は……?」

 

「な…な、なな、なっ!?」

 

 あまりの衝撃に、唖然と、開いた口も閉じられないスサノオと、衝撃のあまり動揺を隠しきれないフローラ。

 

「私、初めてでしたのよ? 殿方にここまで興味を持てたのは。マークス様やレオン様も王族で竜脈という力を扱えますが、それでも私が興味を引かれるまでには及びませんでした。ですが、あなたはそれだけでなく、竜そのものに姿を変えられる。そればかりか、持ち主を選ぶと言われるその剣──『夜刀神』をも持っていらっしゃりますわ。そんなお方に惹かれずして、何が研究者と呼べましょうか」

 

「!! 夜刀神の事を……!?」

 

 彼女が夜刀神を知っていた事に、更なる驚きを隠せないスサノオ。だが、よく考えてみればそれも当然かもしれない。知識欲の塊ならば、あらゆる書物にも手を伸ばしているだろう。その中に、夜刀神に関する事が記されたものがあっても、何ら不思議ではない。

 

 しかし、それにしてもだ。

 

「いや、いくらなんでも、いきなり子どもをつくってくれとは、突飛すぎやしないか?」

 

 まだ混乱は続いているが、どうにか収まりつつある意識の乱れの中で、至極真っ当な意見を返すスサノオ。それに便乗する形で、フローラも慌て気味にだが反論する。

 

「そ、そうです! 会って間もない男女が、その、いきなりこ、ここ子作りなどと……!! 破廉恥です! 破廉恥過ぎます!!」

 

「あら? それも同意の上でなら何も問題ないのではなくて?」

 

「いや、同意してないぞ」

 

 2人の言葉など、どこ吹く風と聞き流すシェイド。だが、彼女の言い分は明らかな暴論である。

 当然、臣下としても無視して良い内容ではなかったのだ。

 

「結婚ならまだしも、何故いきなり子どもの話へと飛躍したのですか? 不躾過ぎるのではと思いますが」

 

「あらライル、そんな事決まっているじゃない。自分の子どもなら、色々研究がしやすいし捗るでしょう? 当然の帰結じゃないかしら」

 

 平然と、我が子を研究対象と言ってのけた彼女に、全員がゾッと背筋に冷たいものが走った。彼女には、人として大切な何かが欠けているのではないか。もしくは、人が持つべき道徳心を持ち合わせていないのか。

 

「もちろん、人体実験などはしませんわ。私とて、人並みに愛情が備わっているでしょうし、殺してしまったり、精神が壊れてしまっては、つまらないですもの。しっかりと愛情を注いで、成長していく過程を観察しますとも」

 

 当たり前のように語る彼女だが、それが普通の思考回路ではないと、本人は分かっていない。子どもを、そんな風に考えてしまう時点で、おかしいという事を理解出来ないのだ。

 それが、ノスフェラトゥ研究の第一人者であり、死霊術のエキスパートであり、知識欲の権化とでも揶揄出来る女性───シェイドなのである。

 

 ここに、彼女への認識を改める必要があるだろう。目的のためならば、手段を問わないと述べたが、それは一般道徳や倫理すら気にしない、人道から外れた思考すらも良しとする。

 人の形をした何かとも捉えるべきが、彼女という存在なのだ。

 

「子ども云々はこの際無視する。それよりもシェイド、お前の処遇についてだが……」

 

 いつまでも話が進まないのだけは勘弁願いたいスサノオが、無理やりに話を進める。というより、子どもの話とか、気恥ずかしいだけでしかないのだ。

 

「………」

 

 ようやく話が進展しようとする事で、自然と皆も表情が強張ったものへとなる。フローラとて例外ではなく、先程は誰よりも取り乱していた彼女だが、逆に今では誰よりも落ち着き払っていた。

 スサノオがどのような決断を下すのか、それを支える立場として、冷静であらねばならないから。

 

 

「どうするか、戦闘中ずっと考えてた。そして、答えを出した。シェイド、俺はお前を───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───罰する事とする」

 

 




 
「ベロアの『くんくん、ガルーアワーズ』…」

※ここからは台本形式でお送りします。

ベロア「果たして、この作品を楽しみにしてくれている方は居るのでしょうか……などと、ネガティブに入ってみました。どうも、お久しぶりです」

カンナ「更新久しぶりだね~。実は、作者さんスランプ気味で、気分転換に他の作品書いてみたんだけど……」

ベロア「それが、思いのほか読者が多く、手放しにするには申し訳ない事になってしまったようで」

カンナ「エタりはしないけど、前よりもっと気ままな投稿ペースになるかもしれないんだって。ごめんなさい」

ベロア「オリジナル展開になるほど、その先の展開を考えるのが難しくなりますから、仕方ないといえば仕方ない事ですが。作者情けないですね」

カンナ「もうすぐ今年も終わるけど、読者さん達も最後まで気を抜かずに年を明かそうね!」

ベロア「そうですね。それによく言いますし。『年が明けるまでが年末』と」

カンナ「うん、それは当たり前だよね…」

ベロア「ともかく、息災にお過ごし下さい。それと、今日はイブですね。わたしもスサノオ達の主催するパーティーにキヌから誘われているので、そろそろ──」

キヌ「ベロアーー!! おっそーい! 遅いから迎えにきちゃったよ!!」

ベロア「噂をすれば、ですね。それではわたしはこれで失礼します。どうか、皆さんもよい聖夜を……。さて、ごちそうを漁りに行きますか、キヌ」

キヌ「おおー!! 焼き鳥食べまくっちゃうぞー!!」

ベロア「いいえ、多分それ焼き鳥じゃないですよ…」



カンナ「行っちゃった……。うーん、あたしもお母さんの所に行こっと。お父さん達が主催だから、お母さんもお手伝いに駆り出されてるだろうし。給仕のお手伝いしなくちゃ! それじゃ読者さん、メリークリスマス!! また次回もよろしくね!」

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