それでは今回も拙い文ですが最後まで読んで頂けると嬉しいです!
つんと冷えた空気が山の木ノ実の甘い香りを運んでくるこの季節は…毎年何故か切なくなる。
それぞれが自分の進む道を…それぞれの答えを出し始めるそんな時期。
成熟の11月、殺せんせーの暗殺期限まであと4ヶ月。
「僕の中で何となくのイメージだけど…他人の顔が明るく見えたり暗く見える時があります。明るい時は安全で…暗い時は危険。鷹岡先生とやった時も暗い時は避けて攻撃していた気がします。それは無意識で、何でそうするのか深くは考えてなかったけど…あの時、『死神』に受けた1発の拍手で…全身に電流が走って視界が一気に変わりました。死神が言っていた『意識の波長』僕が明暗で感じていたのはそれだったんだって。呼吸、視線、表情、それらの中から見えてくる…決定的な意識のスキマ。多分僕には…『死神』と同じことが出来ると思う。大した長所も無い僕には…この先これ以上は望めないような才能だと思う」
渚の言葉を殺せんせーは黙って聞き続ける。
「…殺せんせー。僕は殺し屋になるべきでしょうか?」
「…君ほどの聡明な生徒だ。今の質問、殺し屋になるリスクや非常識さも考慮した上での事だと思います。それらを踏まえて先生からアドバイスをあげましょう」
殺せんせーの言葉に渚は息を呑む。
「渚君、君に暗殺の才能がある事を疑う余地は全くありません。今言った波長を見抜く観察力に加え君の勇敢さも才能です。たとえ相手が怪物でも、暴力教師でも、天才殺し屋でも。君は臆することなく攻撃に入る事が出来る。優れた殺し屋には欠かせない能力です。でもね渚君?君の『勇気』には『自棄』が含まれている」
殺せんせーが話す中、渚はそれを不安そうに聞き続ける。
「『僕ごときどうなってもいい』君自身の安全や尊厳をどこか軽く考えている。だからこそ命を惜しまず笑顔で強敵に突撃出来る。殺し屋というリスキーな職業を進路の選択肢に入れてしまえる。観察と自棄は殺し屋にとって重要な才能ですが…先ずは君がどうやってその才能を身につけたのか見つめ直してみましょう。そうする事で君のその才能を何のために使うべきか、誰のために使いたいかが見えてくるはずです。その後でもう一度話し合いましょう。その時なお君が殺し屋になりたいと言うのなら、先生は全力でサポートします」
殺せんせーはそう言うと触手で掴んでいたダーツを投げて渚の顔の周りに撃ち込んだ後、渚の頭を触手で撫でた。
放課後、渚が1人で下校していると公園から少年達の声が聞こえてくる。
「えー、お前クリアしたの?裏ボスは倒した?」
「えー無理だろあいつは。強すぎ」
「だろーな。あれ2週目じゃないと先ず倒せねーよ」
「だよなー、早速最初からまたやろーっと」
初年たちは最近発売されたゲームの話をしている、渚はその会話を自分に置き換えてしまった。
頭の中で悪いイメージがどんどん膨らむ中、渚は家に帰り着いた。
「…ただいま」
「おかえり渚、ちょっとそこに座んなさい」
渚が帰るやいなや母親が渚をリビングに呼び出した。
「…なに、母さん」
「アンタの中間テストの成績学年54位…本校舎復帰条件の50位以内に届いていなかったわよね?それで母さん絶望してたんだけど、聞いたのよ。3年前に田中くんのお兄さん60位でも寄付金を持って必死に頼んだら特例で許可をいただけたそうなの。だから私もそうするわ」
渚の母親、広海はそう言って1通の封筒を取り出した。
「一刻も早くアンタを…E組から脱出させなきゃ」
その言葉を聞いた渚の顔が焦りの色に染まる。
「近いうちにD組の先生にお願いに行くからアンタも一緒に頭下げるのよ?」
E組という教室に残りたい渚は広海に反論する。
「ちょ、ちょっと待ってよ母さん!僕はE組のままがいいよ!楽しいし成績だって上がってるじゃん!大学も就職も母さんが行けってとこでいいからさ!お願い!中学だけはこのままいか…せ…」
渚はここで気付いた。
母の意識の波長が『暗く』なっていることを。
そしてこの後に起こることを想定して目を瞑った。
「何よその言い草は!何でそんなに向上心が無い子になっちゃったの!!挫折の傷は人を一生苦しめるの!母さんがソウダッタの!同じ苦しみを味あわせたくないから新たにお金も出費しなきゃいけないのよ!?親がそこまでしてあげてるのにアンタいったい何様のつもりよ!!」
「…ごめんなさい。僕の理解が足りなかった…母さん…」
渚は髪を掴まれる痛みに耐えながらそう言った。
『明るい』時に話さなかった自分を恨みながら渚は千切れたヘアゴムを拾った。
「…いい渚?アンタは子供なんだから人生の上手い渡り方なんてわかるはずないの。私がそういうのは全部知ってるから全部プランを立ててあるから。蛍大に入れって言ってるのはね?蛍大出身者がトップを占める菱丸に就職して…そして世界中を飛び回る仕事をするの!」
「(その大学も企業も…母さんが入れなかった名門だ…)」
「あーあ。理想を言えば女の子が欲しかったわ」
「(…これも口癖だ)」
「私の親は勉強ばかりでオシャレなんて全然させてくれなかった。だからルックス重視の総合商社にも落ちたのよ。だから自分の子には…思う存分オシャレを教えるつもりだったのに」
広海はそう言ってクローゼットから1着のワンピースを取り出し、渚を鏡の前に立たせてそれを渚の前にかけた。
「ほら!長髪にさせてるからやっぱり似合う」
「(…知りたくもない、女じゃないし)」
殺気にも似たこの執念、渚は一生逆らえないだろうと覚悟していた。
「(僕の人生の主人公は僕じゃない…僕は…母さんの2週目だ…)」
渚が悲しみに包まれていると広海がまた話し始める。
「そうだわ!先ずは早速明日E組の担任の先生に転級手続きを頼みに行くわ」
「…え?」
渚の表情が凍った。
「ちゃんと話せば協力してくれるはずよ。だって短期間でアンタをこれだけ育てた先生だもの。きっと品行方正で器が大きくて、生徒の未来を何より第一に考える先生なんでしょう?」
その言葉を聞いて渚は殺せんせーを思い浮かべた。
女性の理想の身体について熱く語る殺せんせーは品行方正とは言い難い。
女子生徒と人生ゲームをやっている時にちゃぶ台返しをして全部メチャクチャにしてしまう殺せんせーは器が大きいとはお世辞にも言えない。
そして…この地球を滅ぼす怪物だ。
「(母さんにバレたらやばいよ!?)そ、そんな急に!先生だって忙しいよ!」
「アンタのためよ…渚。ちゃんと明日E組にサヨナラするの」
「(また『暗く』なった…もう話しても無駄だよ…)」
渚は諦めて頷いた。
一方その頃空港では。
「お兄様、宜しいのですか?」
「うん、俺も1回ちゃんと自分の父親に会いたいと思ってたから」
「ではお2人とも、離陸いたします」
カノープスが操縦するプライペートジェットに和生とルウシェが乗っていた。
「あ、お兄様!向こうに着いたらヴラドとの契約を完全なものにしましょう!」
「えっ?もう契約ならしてるじゃん」
「お兄様?『血属器』に宿る王の霊との契約は、本来王の祭壇にて行うものなのです。ですから私との戦いでも本気で戦えなかったのですよ!」フフッ
「じゃあルウシェはもう契約してるの?」
「はい!紅桜には百鬼夜行を従える『妖の王』の霊が宿っていますから」
「そっか。じゃあ俺もヴラドとちゃんと契約しなくちゃね」
「お2人とも冷蔵庫に飲み物や食事が用意してありますのでご自由にどうぞ」
「ありがとうカノープス。お兄様、頂きましょう?」
「うん、ありがとうございます。カノープスさん」
「はい」
和生とルウシェは英国へ向けて海を渡っていた。
そして防衛省では…
「見ぃつけた。知ってるよ?君の正体」
シロが拘束され運ばれている『死神』の元へやって来ていた。
そして…
「ハダル?ちゃんと仕事しなさいよ」
「も、申し訳ありません…」
「ガキひとり殺れない眷族なんて要らないわ。死になさい」
「や、やめ…ぐぼぁ…」
杖と扇子を持ったオレンジ色の髪をした婦人がハダルの命を摘み取った。
今回も拙い文ですが最後まで読んで頂いてありがとうございます!
そして遅くなりましたが、ここでお気に入りに追加して下さいっている皆様!ありがとうございます!遂にお気に入りが200件を越えましたね!とても嬉しいです!
そしてそして!高評価をしてくださった
ユウキ・ペンドラゴンさん!
ビルトインスタビライザーさん!
ケチャップさん!
パフェ配れさん!
invisibleさん!
Sairiさん!
そして磁中@ししゃもさん!
本当にありがとうございます!この場を借りて御礼申し上げます。
高評価を頂けると自分が書いている文章を好んで頂けると実感出来、とても嬉しいです!
これからも皆さんのご期待に添えるように頑張りたいと思います!
そしてここからは余談なのですが、私は現在ラブライブの二次創作も執筆しています。
もし宜しかったら読んでみて頂けると嬉しいです。
今後ともダメな作者ではありますが、頑張っていきたいと思っていますので応援よろしくお願いします(〃・д・) -д-))ペコリン