桜井和生と暗殺教室   作:トランサミン>ω</

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区切ってしまって申し訳ない!
続きです!(〃・д・) -д-))ペコリン


体育祭の時間 5時間目

『2倍の敵を討ち取った好例としては、先生はカルタゴのハンニバルが好きですねぇ』

 

 

『…ああ、古代ローマを苦しめたっていう』

 

 

『道無き道を進軍して、敵が警戒していない場所に戦場を創り出す。防御を工夫して、秘密兵器も投入する。作戦のすべてに常識はずれを混ぜなさい。E組の暗殺者たちは君の描く奇策を実行できるだけのチカラがちゃんとあります』

 

 

この殺せんせーとの会話がE組たちの勝利の方程式だ。

逃げ場を失いつつあった磯貝たちは観客席へと闘争を始める。

 

 

「場外なんてルールは無かった。来なよ、この学校全てが戦場だ」

 

 

カルマの挑発にのったジョゼ、カミーユを含むA組が彼らを追いかけて観客席に進軍する。

会場はパニックに包まれていた。

しかし浅野はちゃんと見切っていた。

A組の目的はE組を潰すこと。

一方E組の目的はA組の棒を倒すこと。

目的がしっかりしているため対策が取りやすいのだ。

そんな中会場の雰囲気も変わり始めていた。

今度はどんな手を使ってE組が勝つのか…という、興味の視線が飛び交っている。

 

 

「磯貝、木村、赤羽の3人には気をつけろ!位置取りをして監視するんだ!」

 

 

敵と味方の能力と顔を把握した浅野の戦術を殺せんせーは褒めている。

 

 

「彼にとってはここまで想定内のことなのでしょう。親譲りのいい能力ですねぇ。しかし我らのリーダーもさる事ながら素晴らしいですよ。ヌルフフフ」

 

 

そんな殺せんせーを知ってか知らずかカルマが磯貝に合図を促す。

 

 

「ねー磯貝。そろそろじゃね?」

 

 

「…ああ」

 

 

磯貝はチラリとA組の棒の付近に視線を飛ばす。

そこにはなんと、最初に吹き飛ばされた二人の姿が。

磯貝が手を上げると2人はA組の棒に飛びついた!

 

 

「オマエたちいつの間に…!」

 

 

「へっ、受身は嫌ってほど習ってっからな」

 

 

「客席まで飛ぶ演技の方が苦労したぜ」

 

 

吉田と村松の奇襲に焦る浅野。

2人は吹き飛ばされた振りをして、観客席を回ってA組の死角に紛れていたのだ。

 

 

「逃げるのは終わりだ!!全員『音速』!!」

 

 

「「「よっしャア!!」」」

 

 

これを機に客席を逃げていた6人が一斉にA組の棒に飛びかかる。

棒に対する守りの人数差ならE組が勝る展開となった。

 

 

「フンガー!降りろチビ!!」

 

 

長身のサンヒョクが強引にE組を剥がそうとするとA組の棒がバランスを崩した。

 

 

「や、やめろサンヒョク…棒が倒れる」

 

 

「じゃ…打つ手がないのか…!?」

 

 

「…そうじゃない。支えるのに集中しろ、こいつらは僕1人で片付ける」

 

 

そう言った次の瞬間、彼は吉田の手首をつかんで捻りあげ地面に突き落とし、岡島に蹴りを入れて戦力を削り出した。

訓練を受けたE組の暗殺者をいとも容易く倒した浅野は磯貝の頭を踏み台にして棒の頂点に立った。

 

 

「君たちごときが僕と同じステージに立つ。蹴り落とされる準備は出来てるんだろうね?」

 

 

そんな浅野の姿をみて渚は言った。

 

 

「あ、あのラスボス感、まさに魔王だよ…」

 

 

そんな時、棒の支えに徹していたあの少年が足早にA組へと駆けていく。

 

 

「(ああ、そうだ。魔王を倒すのは勇者って決まってるんだ)」

 

 

渚にそう感じさせた少年、桜井和生が進軍を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組は棒に飛びついたものの防戦一方、そんな様子に速水が不安そうな声を上げる。

 

 

「…やばい、詰みかけてる。客席に散ってたA組も戻り始めてるしこのままじゃリンチされるのが目に見えてる」

 

 

彼女の言葉に女子たちの顔に陰が指す。

しかし、殺せんせーはそんな少女たちにこういった。

 

 

「1人で戦況を変えられるだけのチカラをもったリーダー。浅野くんが指揮をとる限りA組は負けないかもしれない。磯貝君はそういうリーダーには慣れないでしょう」

 

 

「そ、それじゃあ…」

 

 

殺せんせーが話している時、浅野が磯貝を蹴り落とした。

そんな様子を見た片岡が顔を伏せる。

そんな時、倒れる磯貝の元へ並び立つものが1人。

 

 

「悠馬、大丈夫か?」

 

 

「随分と遅い登場だな和生」

 

 

そんな様子をニヤニヤしながら見ている殺せんせーは言葉を続ける。

 

 

「磯貝君には『相棒』が居ますから。1人で戦う必要なんて全くないんですよ」

 

 

並び立つ2人の勇者がいざ魔王討伐へと反撃の狼煙を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なりを潜めていたと思っていたが。このタイミングで来るか、桜井」

 

 

「悪いけど行かせてもらよ。悠馬は戦況に応じて指示を出してくれ、信じてるよ相棒」

 

 

「ああ!任せとけ!」

 

 

そういって拳を合わせた後、和生は全速力で浅野の待つA組の棒へと駆け出した。

観客席から戻ってきていたジョゼとカミーユが彼に立ちはだかる。

 

 

「ここは通さん」

 

 

「さっきまでの恨み晴らさせてもらう」

 

 

2人は体制を低くして和生にタックルしてくる、そんな彼らに対し和生は1度スピードを完全に殺してバックステップ。

そして次の瞬間、中を舞った。

 

 

「随分と鈍い刃じゃないか。そんなんじゃ俺のことは捉えられないよ」

 

 

彼の姿をみていた女子たちは殺せんせーに何が起こったのか説明を求めた。

 

 

「桜井くんはなにしたの?」

 

 

「彼は、A組の2人が体勢を低くしていたのをちゃんと見抜いていたようですね。バックステップで敵との距離をしっかりと測り、彼らを支点に前方宙返りで躱したのでしょう。いつの間にあんな事を教えたのですか?烏間先生」

 

 

殺せんせーの言葉に女子たちの視線が烏間へと集まる。

 

 

「放課後の護身訓練でのことだ。桜井くんに頼まれてな、格闘術やフリーランニングの応用も教えている。飲み込みの速さに俺も驚いていたところだ」

 

 

そんな彼らの会話を知ってか知らずか、和生は再び進軍を開始した。

 

 

「お前たち!弾丸の装填は出来てるか!?」

 

 

和生の進軍を確認した磯貝は棒を守っていた仲間に声をかける。

 

 

「「「おう!」」」

 

 

次の瞬間大勢を低くした磯貝の上を5発の弾丸が飛んでいった。

その弾はA組の棒を捉え、浅野を苦しめる。

そしてそこにあの少年がやってくる。

 

 

「渚!背中かりるよ!」

 

 

弾丸の1発であった渚の背中を踏み台にして和生が棒の先端へと飛びかかる。

しかしそのまま黙ってやられる浅野ではない。

 

 

「(コイツを凌げば僕らの勝ちに等しい)」

 

 

しかし、そんな彼の心情を読み取ったのか和生は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「こい!糸成!」

 

 

棒の下では磯貝がジャンプ台のように構え、そこに糸成が走り込んでていた。

そんな様子を見た殺せんせーは嬉しそうにこういった。

 

 

「暗殺者はその数瞬を逃しません。2本目の刃を如何に抜くが速いか」

 

 

そうだ、一本目の刃である和生はダミー、磯貝の手を踏み台にして大ジャンプした糸成がA組の棒にしがみつき、全体重を乗せて地面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、勝った勝った」

 

 

A組に勝利したことが嬉しいのか岡島の顔がニヤけている。

そんな時磯貝が後輩女子生徒に捕まっているのを目撃した。

 

 

「磯貝先輩〜!!カッコよかったです!」

 

 

「おー、ありがとな。でも危ないからマネすんなよ?」

 

 

そう言って椅子の片付けを手伝う磯貝はやはりイケメンだ。

それと同時にE組の男子達は感じていた。周りの評価が変わり始めていることを。

それは自分たちのチカラに酔っているのかもしれない、しかし勝利の余韻というものはやはり甘美なものなのだ。

 

 

「磯貝」

 

 

そんな彼らの元に浅野がやってくる。

 

 

「浅野、約束だ。今回のことは黙っててくれよな」

 

 

「僕は嘘はつかない。安心してくれ。姑息な手を使ったりはしないさ」

 

 

外人助っ人をよぶなどここまでやっておいてよく言うなと思いながらもE組の男子達は磯貝の無事を喜んだ。

浅野と分かれた後、彼らは殺せんせーや女子たちが待つ所へと移動した。

無事に勝利の凱旋を果たした男子に女子たちが労いの言葉をかける。

 

 

「「「おかえり〜!」」」

 

 

女子が笑顔で迎えてくれたため男子たちの調子がさらに上がるという悪循環が起こるのだが、今回ばかりは烏間や殺せんせーも見逃しているようだ。

 

 

「片岡、約束通り怪我しないで戻ってきぞ」ニカッ

 

 

「うん、ありがとうね」

 

 

まるで長年連れ添った夫婦のようなやり取りをする2人に和生が茶々をいれる。

 

 

「2人って付き合ってるの?」

 

 

「ん、なんでだ?」

 

 

「だって、なんかすごい信頼しあってるというか。お互いのこと分かってるというかな」

 

 

「付き合ってないからな?お前みたいに」

 

 

「ふーん」

 

 

よく見ると和生だけでなく周りの生徒たちもニヤニヤしている。

そんなとき我らがE組きってのムードメーカー中村が声を発した。

 

 

「とりあえず打ち上げやろーよ!」

 

 

「いいねいいね!」

 

 

「あっ、わたしもやりた〜い!」

 

 

彼女の意見に矢田と倉橋も賛同する。

明日は休みと言うこともあり、この熱が冷めないうちにみんなで遊ぶのも悪くないだろうと打ち上げが決定した。

 

 

「場所はどうする?」

 

 

「やっぱカラオケとか?」

 

 

様々な意見が飛び交う中、速水が恐る恐る声をあげる。

 

 

「あのさ…律とも一緒にやりたいからあんまり和生の家から遠くない方がいいと思う」

 

 

お祭りの時は会場と和生の家が近かったこともあり、外出できたが比較的律のコピーロイドは外に出られないのだ。

その意見に和生が賛成の声を上げる。

 

 

「じゃあいっそうちでやる?1人500円出してくれれば料理とか出すよ」

 

 

「お、い〜ねそれ」

 

 

「和生くんの家、いってみたいかも」

 

 

カルマと渚は和生の家でやることに賛成のようだ。

 

 

「いいのか?和生」

 

 

「うん、なんなら泊まってって暮れてもいいよ。大きめの部屋が幾つかあるし」

 

 

磯貝の問いかけに和生はにこやかに答える。

 

 

「じゃあ男子は18:00に駅集合ね。泊まりたい人は準備しといてね。女子は凛香に付いてくれば分かるはずだよ」

 

 

「「「は〜い」」」

 

 

こうして打ち上げ会場が決まったのだが、このとき和生は知らなかった。

自分の発言がこんなにもカオスな状況を生むことになるということを。




体育祭編次回でやっと完結ですね!
次回は打ち上げ回です!
お楽しみにしていてください!
感想などもお待ちしています!

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