皆さんコーヒーとカメラの用意はいいですか?笑
「ふぅ…。やっとおわった…」
律の荷物を整理していたカズキだが、丁度作業を終えたようだった。
「流石に女の子用の下着とかが入ってた時はどうしようかと思ったよ…」
いろんな意味で疲弊した表情を見せるカズキは、アイスココアを冷蔵庫から取り出してコップに注ごうとする。
しかしそのとき
『ピンポーン』
「あ!律に合鍵渡すの忘れてた…。うっかりしてたなぁ。でも帰ってくるには早くないかな?」
そんな疑問を抱きつつも玄関の扉を開くカズキ。
するとそこには…
「こ、こんばんわ」
「…っ!?」
速水がたっていた。
その姿は、ピンクを基調に白ユリが描かれた浴衣姿。
あまりの美しさにカズキは目を奪われてしまった。
「さ、桜井…?」
「………ああ、ごめん。あまりに綺麗だったから見とれちゃって」
「そ、そうなんだ…///」
お互いの気持ちには気付いていないが、両想いのふたりは目に見えて意識しあっている。
「とりあえず中にはいって?」
「うん、おじゃまします」
カズキは速水の姿にドキドキしつつも、饗す準備に取り掛かった。
さっきまではアイスココアを飲もうとしていたはずなのに、心を落ち着かせようと紅茶を用意している。
「はいこれ、それで速水さんはどうしてここに…?」
カズキは恐る恐る問いかける。
「律にお土産を届けて欲しいって頼まれたの」
そういって速水はお土産と花火をカズキに手渡す。
「あ!わたあめだ!」
「(かわいい…)」
わたあめを見て嬉しそうに目を輝かせるカズキを、速水は赤い顔で見つめていた。
「せっかくだから花火やらない?」
「えっ?」
「ひとりでやっても楽しくないでしょ?」
「そうね、やろっか」
2人は靴を履き、庭へと歩いていく。
バケツと蝋燭を準備して、花火の袋を開いた。
2人は長めの花火を手に取り、火をつけた。
すると速水の持っている花火からは青い光が溢れ出し、
カズキの花火からは、赤い色の光が溢れ出す。
「綺麗…」
速水は溢れ出した光を見て、思わず呟いた。
カズキはと言うと
「っ…///」
うっとりと花火を見つめる速水を見て高鳴る心臓を落ち着かせようと必死になっていた。
2人はその後もいろんな種類の花火を取り出して遊んでいく。
言葉は少ないものの、2人の表情は花火から溢れる光の様に輝いている。
「あっ…」
花火が残り少なくなってきたところで速水が声を上げた。
「どうしたの?」
カズキはできる限り平静を装って話しかけた。
「この花火の光が…桜井みたいだなって…」
「えっ…?///」
「あ、いや、あのね?桜井は金髪だし、そのクラスの光みたいだから」
「そ、そうかな?」
「うん…///」
ふたりはお互いの顔を見て恥ずかしくなり、また無言になってしまう。
「次で最後だね」
「そうみたい」
楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。
ふたりは最後に線香花火を手に取った。
ふたりはしゃがみこんで線香花火に火をつける。
小さくも力強い光が放たれる。
「夏休みも終わりだね」
「沖縄ではたくさんのことだあったしね」
「速水さんの狙撃、凄かったよ。相手の拳銃を撃ち抜いてて」
「ありがと。桜井も助けてくれてた時はカッコよかったよ…///」
「あ、ありがとう……///」
「でも…」
「でも?」
「もうあんな無茶はしないで…?」
「うん…俺はもう1人じゃないから」
「ならいいの」
2人は夏休みの出来事を振り返った。
結局殺せんせーを暗殺できなかったこと。
渚の女装に、カズキのスーツ姿。
先程までの沈黙が嘘のように会話が弾んだ。
「あっ」
話しているとカズキの花火の火が落ちてしまった。
「わたしの勝ち?」
「そうみたいだね」
2人は顔を見合わせて笑いあった。
その後すぐに速水の火も落ちたので、2人は片付けをして庭のベンチに座った。
「楽しかったよ、ありがとう速水さん」
「桜井が喜んでくれて良かった」
「花火なんてしたの何年ぶりだろ、小学生の頃に母さんと2人でしたのが最後…」
母さんという言葉と共にカズキの表情が曇る。
それを見逃さなかった速水はカズキの手をそっと握った。
「じゃあ殺せんせーを暗殺して来年もやらないとね」
「あはは…そうだね」
2人の間に沈黙が起きる。
そのあいだカズキは考えていた。
隣で自分の手を握っている少女への自分の気持ちを。
告げるべきか、それともまだ告げないべきか。
カズキは暫く考えた後。
「ねぇ…速水さん」
「なに?」
意を決して、速水に話しかけた。
いかがだったでしょうか?
次回は桜井くんの告白です。
彼の想いは届くのか。
次回もブラックコーヒーとカメラのご用意を笑
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