殺し合いの火蓋が切って落とされた。
カズキは手に持っていたレイピアを素早くロミオに突き刺す。
しかし、あいても世界を渡り歩く犯罪者。そう簡単には攻撃は届かない。
「どうしたぁ〜?そんなんじゃ殺せないぜ〜?」
「うるさい…」
一見カズキが多くの攻撃を繰り出しているため優勢に見えるが、そんなことは無かった。
「じゃあこっちも行かせてもらうぜ」
「くっ…」
ロミオが攻撃に転じた。ナイフを使って繰り出される鋭い剣戟はカズキに防戦を余儀なくさせる。
カズキも捌ききれなくなり体に傷が増え始めた。
「烏間先生…カズキは大丈夫なんですか…?」
磯貝が心配そうに問いかける。
「厳しいな、敵も相当の手練だ。このままだと…」
「殺されますね」
「「「殺せんせー!?」」」
殺せんせーが放った殺されるという言葉に生徒たちは驚愕した。
「ぐっ…」
「オラオラどうしたぁ〜?」
生徒たちがカズキに視線を戻すと既にカズキは満身創痍の状態だった。
縛り付けられた速水は
「桜井…私の為にあんなにボロボロになって…」
カズキの姿を見て涙を流していた。
「なんだ?もうおわりか〜?」
「くそっ…」
「そういえば桜井っていったなぁ?もしかして桜井麻友の子供か?」
その言葉にカズキの動きがとまる。
そしてロミオのナイフがカズキの右腕に突き刺さる。
「そうかそうか、あいつの息子か」
「母さんの何を知ってる…」
「病死に偽装されて暗殺されたってことくらいかぁ〜?」ニタァ
「そんな…」
「酷すぎるよ…」
岡野と矢田はとても悲しそうな顔をしている。
「なぜそんなことがわかる…」
「俺もその計画に1枚噛んでたからなぁ?喰えはしなかったがなかなかいい女だったぜ〜?」
「カズキ君…」
殺せんせーが不安げな声を上げる。
「母さんは殺され…た?」
「あーそうだ、俺は主犯格じゃなかったがな。そういやなんでこんな所にいるんだ?諜報屋によれば息子は精神崩壊してたはずだが?」
「「「えっ?」」」
生徒たちは驚きの声を上げる。
「精神崩壊だって?そんなの大したことなかったよ。独りぼっちの寂しさに比べれば」
「そうだよなぁ?お前に家族はもういないもんなぁ?」ニタァ
「うん、もういないよ。俺は独りぼっちだ、もう慣れたつもりだったんだけど」
「そうかぁ寂しいならお前もあの世に送ってやるよ。あの世で母親とでも仲良くしていやがれ!!」
そういってロミオはトドメの一撃をカズキに振りかざした。
カズキの意識は朦朧としているもう防御は不可能だ。
だがその時
「やめてっ!!」
「なんだよ?」
速水が叫びロミオの行動を止めた。
「私のことは壊していいから…滅茶苦茶にしてもいいから…桜井を殺さないで…」
「あぁ?そんなに喰われてぇなら喰ってやるよ」
そういってロミオは速水を縛っていたロープを外し服に手をかけた。
「速水さん!!」
烏間が止めようと試みるもまだ力が戻っていない。
「なかなかイイ身体してんじゃねーか。ククク」
そう言って服の中に手を入れようとした次の瞬間。
グサッ
「なっ…!?」
「ホントは見せたくなかった…でも殺らなきゃ…殺られるのは免れない…」
「貴様っ…」
「えっ…?桜井…なの…?」
その時速水が目にしたのは今までに見たこともないような冷たい…金色の目をしたカズキの姿だった。