桜井和生と暗殺教室   作:トランサミン>ω</

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今回初コラボを頼まれまして後編を担当させて頂きました。
この作品を読む前に前編は心の暗殺教室の方に投稿されておりますので確認ください。
では私が執筆した後編をお楽しみください。


コラボの時間
桜井和生と心の暗殺教室 コラボの時間 後編


「とりあえず上がってくれ」

 

 

翌日、和生は心に連れられて彼の家に行っていた。

 

 

「いいところに住んでるんだね」

 

 

心の家は学生が1人で生活するには有り余るほどに良い環境が整っていた。

和生はケーキ作りに取り掛かる前に彼の素性に興味を持ち、問いかけてみた。

 

 

「心は学生以外に何かやってるの?こんないい所なかなか住めないとは思うんだけど」

 

 

「ああ、本業は殺し屋なんだ。訳あって今は学生をやっているんだがな」

 

 

「ええ!?じゃあ色んな世界を見てきたんだね」

 

 

「そうだな、足もと一面が血で覆われている戦場や硝煙と血の匂いが充満した様な場所も渡り歩いたことがある」

 

 

心が歩んできた人生は和生の想像を絶する程に激しく悲哀に満ちたものであった。

 

 

「そうなのか。じゃあ心は相当な手練れってわけだね?」

 

 

「どうだろうな、俺より強いやつなんて世界にまだいると思うぞ?そんなことは置いといてケーキ作りに取り掛かろう」

 

 

「わかった。とりあえずケーキのコンセプトはどうする?」

 

 

「そうだな、ベリー系のケーキにしようと思ってる。和生は何か考えているのか?」

 

 

心は、倉橋の好物であるベリーを使ったケーキを作ろうとしているようだ。

 

 

「そうだなぁ、ミルフィーユを作ろうと思ってたんだけど。材料は俺の家だし、心の作りたいものでいいよ?」

 

 

「大丈夫だ、材料は基本的に揃えてある。ベリーを使ったミルフィーユか…悪くないな」

 

 

「じゃあ決まりだね。とりあえず俺はパイ生地を焼く準備をするから、心は生地の間に挟むクリームの準備をしてよ。ブルーベリーを使ったクリームでお願い、アクセントにラズベリーも使いたいから少し甘めのクリームを頼むよ」

 

 

「(こいつ…今俺が言った条件でもうレシピを考えたっていうのか?甘いものに対しての力の入れ方が並じゃないな。それに指示も的確だ、こいつとなら陽菜乃を喜ばせられるケーキが焼けるかもな)ああ、わかったよ」

 

 

2人はケーキ作りに取り掛かり始めた。

普段から菓子作りをしている和生の手際はもちろんのこと、心の手際は和生に勝るとも劣らない素晴らしいものだった。

 

 

「心凄いね、やっぱり優れた殺し屋ほど万に通じるとは言ったものだね」

 

 

「その台詞、誰に聞いたんだ?」

 

 

「ああ、担任の先生だよ。ちょっと変わってるんだけどね」

 

 

2人は互いの仕事をテキパキとこなしながらも私生活についての話を始めた。

 

 

「お前の担任も殺し屋なのか?」

 

 

「いや、狙われるほうかな。色々ぶっ飛んだ先生だしさ」

 

 

「(…まさかな)」

 

 

心は殺し屋に狙われている、ぶっ飛んだ教師を1人知っているが、そんなことは有り得ないと脳裏をよぎった考えを消すべく、話題を切り替えた。

 

 

「和生もプレゼントするんだったな、誰にプレゼントするんだ?」

 

 

「俺は恋人にプレゼントするつもりだよ。何時も1番近くで自分を支えてくれてる彼女に感謝の気持ちを込めて作るつもりだよ。」

 

 

和生は凛香のためにケーキを作るようだ。

自分の恋人のことを語る和生の表情は輝いていて、心は不思議な気持ちになった。

 

「そういう心は誰にプレゼントするんだい?」

 

「俺はクラスメイトにだ。あいつには何時も助けられていてな。涙を流した時は側に居てくれたし、何よりあいつといると心が安らぐ」

 

 

「そっか」

 

 

和生は心の話を聞いて彼がそのクラスメイトへ抱く感情がどういったものなのかを察し、微笑を浮かべた。

その後も2人は作業を続け、クリームを作り終えパイも焼き上がり、現在は冷ましているところだ。。

 

 

「じゃあアクセントに使うラズベリーのムースを作ろうか」

 

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 

「先ずはラズベリーを細かく切るよ。切ったラズベリーは一旦ボウルに入れておいて、新しいラズベリーと飲むヨーグルトをスムーザーに入れて馴染ませる。あとは溶かして置いたゼラチンとさっき切ったラズベリーをスムージーの中に入れて軽く混ぜた後、バットに移して冷蔵庫で暫く冷やす。これで準備は完了だね」

 

 

和生は工程を心に説明しながらムースの下準備を行った。

ムースが固まるまでの間、手持ち無沙汰になった心は和生にある提案をする。

 

 

「なぁ和生、俺と1戦交えてくれないか?」

 

 

「急にどうしたの?」

 

 

「昨日お前と握手した時にお前が相当な実力者だってことがわかった。お前の手にあるタコは日々の鍛練で付いたものだろ?」

 

 

心は自分が感じた和生への感想を率直に述べ、和生へと模擬戦闘の申し込みをした。

 

 

「実は俺も感じてたんだ、心が強いってことは。君の体から感じられる強者のオーラは隠しきれてないよ。こうなるかもしれないと思って一応刺剣は持ってきてる。いいよ、その勝負受けて立つ」

 

 

「ありがとう、じゃあ付いてきてくれ」

 

 

和生は心からの誘いにのり、彼について階段を降りていく。

暫く階段を降りた後、和生の目に飛び込んできたのは数々のトレーニングマシンや医療機器。

日頃から心がここで修練に励んでいることが伺える場所であった。

 

 

「流石だね、ここなら強くなれそうだよ」

 

 

「そう言ってくれるとありがたい、奥の部屋に行こう」

 

 

そう言って2人は奥の部屋へと歩みを進めていく。

 

 

「ここは?」

 

 

入った部屋は先程とは打って変わって白塗りの壁に囲まれた殺風景な部屋だった。

 

 

「ここなら本気で戦っても何も壊れないからな、壁は強化素材で出来てる遠慮せずに戦ってくれ」

 

 

心はそう言うと、愛用している『フェンリル』を構えた。

 

 

「心の武器はトンファーなんだね、見たところかなりいい代物だね。じゃあ俺も愛剣を抜くとするよ」

 

 

和生は自分の愛剣である『レヴィアタン』を抜いた。

鞘に押し留められていた冷気が溢れ出し、室内の温度が下がる。

 

 

「氷の刃か、戦いがいがありそうだ。ルールは1つ、相手の体に致命的な一撃を与える攻撃をすれば勝ちだ当てる必要は無い。それじゃあ行かせてもらうぞ!」

 

 

先に飛び出したのは心だ、突っ込んでくる心の構えは全く隙が無く、和生の判断が一瞬遅れる。

その隙を心が見逃すわけがなく心は右手のトンファーを和生の脇腹へと叩き込む。

しかし…

 

 

「凄いスピードだね、だけど速さなら負けるつもりは無いよ」

 

 

和生は振りかかる心の右腕を支点にジャンプし、ヒラリと躱した。

 

 

「一撃で仕留められるとは思っていない!」

 

 

心は躱されることを計算していたため、右腕を振る勢いに乗って回転し、左手のトンファーを振った。

その一撃は和生の頬を掠め、そこから血が顔を伝った。

 

 

「やるね、でも今度はコッチの番だ!」

 

今度は和生が攻撃に出る。鋭いし刺突を心へ向けて放つ、その速度は尋常では無く、捌ききれなくなった心の体に幾つかの傷を作り出していた。

 

 

「お前もやるな、だが次で決めさせてもらうぞ!」

 

 

「奇遇だね、俺もそのつもりだ!」

 

 

2人は同じタイミングで動き出した。

心はトンファーを八双の構えに持ち、燕の軌道のように低い体制で和生へと襲いかかる。

一方和生は心へでは無く、壁に向かって走り出した。

 

 

「戦闘中に敵に背を向けるとはいい度胸だ」

 

 

心は壁際で和生に追いつき、鋭い1振りを放った。

 

 

「大丈夫だよ、目では見えてなくても音で判断できるからね」

 

 

「くっ…」

 

 

和生は壁を蹴って心の背後に回り込み彼の首へ向けてレヴィアタンを突き出す。

しかし

 

 

「「…引き分けか」」

 

 

和生の一閃は心の首の寸での所で止まっていた。

しかし和生の耳元にはトンファーがあり、このまま振り抜かれていれば致命傷は間違いなかった。

和生に一撃目を躱されていた心はノールックで和生の顔スレスレに逆手のトンファーを振っていたのだ。

並の人間ではできない超人技に和生は息を呑んだ。

 

 

「心は強いね。久しぶりにいい勝負ができたよ」

 

 

「だが、お互いに全力では無かったな?」

 

 

「あー、バレてたんだ。本気になると性格変わるからさ」

 

 

「和生の力がこんな物じゃないのはすぐわかるさ。そろそろ冷えてるんじゃないか?」

 

 

「そうだね、ケーキ作りを再開しよう」

 

 

2人の死闘は引き分けという結果に終わったが、彼等の表情は晴れ晴れとしていていい好敵手に出会ったアスリートの様であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我ながらなかなかいい出来だよ」

 

 

「ああ、俺もここまでの物が出来るとは思っていなかった」

 

 

2人はパイ生地にブルーベリーのクリームとラズベリーのムースを挟み、最上部に苺を乗せ、ケーキを完成させた。

 

 

「ありがとう和生、今日は有意義に時間を使うことが出来た。俺は今からケーキを渡すことにするよ」

 

 

「こっちこそありがとう。おかげで最高のプレゼントが出来たよ。なぁ心?」

 

 

「なんだ?」

 

 

「もしかして心は…いや、何でもない」

 

 

「そうか、だが恐らく俺もお前と同じことを考えていた。早く恋人のところに行ってやれよ、待ってるんだろ?」

 

 

「わかったよ!じゃあまたね、次会う時は本気の勝負をしよう!」

 

 

「ああ、頼むよ」

 

 

和生は別れの言葉を告げると心の家を出て、凛香の家へと向かった。

 

 

「さて、俺も陽菜乃を呼ぶとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

「突然悪いな、陽菜乃」

 

 

「ううん、心からの誘いならすぐ来るよ!」

 

 

「ありがとう、今日は何時も俺を支えてくれる陽菜乃にプレゼントかあるんだ」

 

 

「え、ほんと?」

 

 

「ほんとうだ」

 

 

心はそう言うと陽菜乃の前にミルフィーユを持ってきた。

 

「わー!すごい!私ベリーが大好きなの!ねぇ、食べていい?」

 

 

「お前に食べてもらうために作ったんだ。いいに決まってるだろ」

 

 

「(そういうこと真顔で言うのずるいなぁ…)じゃあいただきまーす!…っ!!凄い美味しいよこれ!」

 

 

「そうか?じゃあ俺も」

 

 

心も自分の分を1口、口へと運んだ。

 

 

「あいつ…やっぱり凄いやつだな」

 

 

「あいつ?誰のこと?」

 

 

「ああ、それはな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね凛香、急に家に来ちゃって」

 

 

「ううん、いいのよ。私も和生の顔が見たいって思ってたから」

 

 

「っ…///」

 

 

和生はニッコリと微笑みながらそう言う凛香に照れてしまう。

 

 

「それで用って?」

 

 

「…ああ!今日は何時も1番近くで支えてくれる大好きな凛香のためにケーキを焼いたんだよ!」

 

 

「嬉しい…///」

 

 

和生の言葉に凛香の表情が綻ぶ。

和生は凛香の照れた表情に少し見惚れていたが、ハッと気付きミルフィーユを凛香に差し出した。

 

 

「相変わらず和生のケーキは凄いね…」

 

 

「今日は俺1人の力じゃ上手く行かなかったと思うよ」

 

 

「??よくわからないけど、ケーキ食べていい?」

 

 

「もちろん、凛香の喜ぶ顔が見たくて作ったんだからね」

 

 

「もう…///じゃあいただきます…あっ…凄い美味しい」

 

 

「そう?良かったよ。じゃあ俺も1口」

 

 

和生もミルフィーユを口へと運ぶ。

 

 

「心…。君のケーキ、最高だよ」

 

 

「心?誰のこと?」

 

 

「うん、それはね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「有り得たかもしれない別の世界に居る、俺の最高の好敵手のことだ!」」




いかがだったでしょうか?作中に登場するケーキは以前私が作ったものですw
確認、評価待っております。

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