IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜   作:ドラーグEX

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第十章 唸るは拳、吠えるは獣
新たな仲間、迎える日 〜または巻き起こるリトルタイフーン〜


帰省していた生徒たちも無事帰省先から戻ってきて、冬休み明け最初の授業の日。

我ら一年一組の教室でもクラスメイト達がホームルーム前の談笑を楽しんでいる。

「はっはっは。久しぶりだな我が机!」

「久しぶりって……。二週間くらい使っていないだけでしょ?」

 

隣の座席の宮岸あずささんが苦笑する。

「っていうか桐野くん、キャラ変わった?」

「いんや。ただなんとなくやってみただけだよ」

「ふーん。まあそれはそれとして、アレどうしたの?」

「アレ?」

宮岸さんが指差した方向を見ると……

「………………」

なんか、ソワソワしてる一夏の姿があった。

「織斑くんがあからさまにソワソワしてるんだけど……」

「ああ、アレか」

少なくともこのクラスにいる専用機持ちたちは事情を知っている。

何を隠そう今日はマドカが初登校してくる日なのだ。兄ちゃんのソワソワが止まらないのも無理はない。

ちなみに言うと織斑先生もソワソワしてた。朝飯食う時に見かけたら、ソワソワしすぎて味噌汁にゴマ塩振ってたもん。

「まあ今日はちょっと特別な日でな」

「特別な日?」

「ああ。なんと━━━━」

「みなさん、おはようございます」

このクラスの副担任の山田先生が入ってきた。

「あ、山田先生おはよー! あけおめー!」

「ことよろでーす!」

「お、おはようございます。今年もよろしくお願いしますね?」

さっそく軽い感じのあいさつが山田先生に向けられる。

「諸君。おはよう」

「おはようございます。織斑先生」

そして担任の織斑先生の登場。生徒全員の背筋がピーンってなる。

「うむ、長期の休みだからと言って身体も心も緩みきった愚か者はいないようだな。鍛え直して欲しいやつは申し出ろ。休むという言葉を頭の中の辞書から掻き消してやる」

 

こ、怖い。さすがは泣く子も黙る鬼教師。オンとオフの切り替えが凄まじい。

 

「……さて、新年のあいさつはほどほどにして、ホームルームを始める」

いつものように出席をとってからホームルームに入る。

「今日は休み明け最初の授業ということもある。実戦練習は明日からだ。だがアリーナの開放は通常通りだ。自主的な鍛練を怠るなよ」

先生はいつもと何も変わらない様子で連絡事項を伝え、持っていた出席簿を閉じた。

「次だ。全員よく聞け。今日このクラスに転入生がくる」

そして、何事もなかったように、重要なことを口にするのだ。

 

『……え?』

唐突な通達に、クラスのほぼ全員が驚く。

「イェーイ! 待ってました!」

俺は静寂を打ち破るようにパチパチと手を叩いた。

「え、桐野くん知ってたの?」

宮岸さんがこっちを見る。

「まあな」

「もうそこに来ている。入ってこい」

「し、失礼します……」

控えめな声と共に新しいクラスメートが入ってくる。

「お、織斑マドカです。よろしくお願いします」

ペコ、と頭を下げたのは、IS学園の制服に身を包んだマドカだ。

「名前の通りコイツは私とそこの織斑の妹だ。まあ、だからと言って贔屓などはせんから━━━━」

「……き」

「?」

俺は次の展開を予想できた。

「耳栓用意!」

クラスの専用機持ちたちが持っていた耳栓をはめた。

『キャアアアアアアアアアアアアアッ!!』

耳栓をしていても聞こえてくるほどの女子の声。

その声が止んだところで俺は耳栓を外した。

「千冬様! 小っちゃくなった千冬様よぉぉ!」

「かわいいいっ!」

「撫でたいっ! 頬ずりしたいっ! 舐めまわしたいぃっ!」

「反則! あれは反則よぉっ!」

「あ……あぅぅ」

女子たちの若干の欲望が混じった視線を受けてマドカは一歩退がる。

「あー……いいか、お前ら。言っておくがコイツに妙なことをしたら出席簿どころじゃすまないぞ」

おお……! 織斑先生の後ろに風神と雷神が。おっかない。

女子たちがしおらしくなったところでホームルームの終了を告げるチャイムが。

「ほら、チャイムが鳴ったぞ。全員授業の準備をしておくように」

そう言って教室を出ようとする織斑先生。

「え、ええっと、みなさん私は教材を取ってきますからちゃんと準備しておいてくださいね~?」

山田先生もその後ろについて教室を出て行った。

……と、いうわけで質問責めスタート! 実況はわたくし、桐野瑛斗でお送りします!

『マドカちゃんっ!』

「ひゃ、ひゃいっ!?」

一斉に向けられる視線に若干涙目のマドカ。さあ、どうやってこの大人数を切り抜ける!

「どう!? やっぱり千冬様って妹にしか見せないところとかあったりする!?」

「ホントに見れば見るほど織斑先生そっくり!」

「お兄ちゃんは織斑君でお姉ちゃんは織斑先生って、もう、もう羨ましすぎ!」

「うぅ……」

あーっと、ぱたぱたと小走りで一夏の背中に隠れてしまったー。お兄ちゃんガードだー。

「瑛斗、やり始めて数秒で飽きないでよ……」

いつの間にか近くにいたシャルが苦笑いを浮かべている。

「え? 聞こえてた?」

「うん。声に出してたから。にしても凄い殺到っぷりだね」

「ああ。お前とラウラが転校してきたときに匹敵するな。いや、あの食いつきはそれ以上かもしれん」

「は、傍目から見るとあんな感じだったんだね……」

「さて、お兄ちゃん一夏。どう妹をフォローするのかー」

「あ、まだ続いてたんだ」

シャルとともに向こうの質問責めを見やる。

「お、おいおいみんな。あんまりマドカを困らせないでくれよ」

一夏が迫りくる女子たちをまあまあと手を動かして止める。

「いろいろ質問されると面倒だから一気に言うぞ。マドカは俺と同じ年に生まれたんだけど、父さんと母さんとどこかへ行ってたんだ。それで冬休みに入ってすぐくらいに日本に帰ってきたはいいけど事故に遭って頭を怪我して記憶喪失。だからあんまり深く詮索しないでほしいんだ」

ほお……一夏お兄ちゃんの見事なまでの全面カバー。質問しようとしてた女子たちは言葉を詰まらせる。

「じゃあ、なんで専用IS持ってるの?」

女子の一人がマドカの耳のイヤリング━━━━待機状態の《バルサミウス・ブレーディア》を指差した。

「え……えっとぉ……」

今度は一夏が言葉を詰まらせた。ちらっと俺を見てくる。出番だな!

「それは俺がお答えしよう!」

仰々しく立ち上がった俺に女子たちの視線が向いた。

「マドカはその複雑な家庭の事情上、政府やら何やらからの目もつきやすい。そこでIS学園はマドカのIS適正の高さに目をつけ、専用機持ちとして学園に転入させることになった。こうすればマドカの身の保証は完璧だ」

歩きながら話、マドカと一夏の横に立つ。

「そして! このマドカの専用機を造ったのは! 何を隠そう━━━━!」

「瑛斗なんです」

「ま、マドカ! それ俺が一番言いたかったところ!」

美味しいところ全部掻っ攫れるとは……!

「みなさんに追いつくためにも、一生懸命頑張ります! よろしくお願いします!」

ニコッと笑顔もセットで言ったマドカ。

「は……」

女子の一人が震える声で呟いた。

「?」

「反則……よ……!」

あ、血ぃ吐いて倒れた。

「きゃあ!? ど、どうしたんですか!?」

倒れてぴくぴくと痙攣している女子にマドカが近づく。

「そ……そんな……エンジェルなスマイルされたら……かくっ」

どうやらマドカの笑顔を見て気絶してしまったらしい。

そしてそれを皮切りにほかの女子たちがマドカを取り囲んだ。

「え……えぇ?」

状況が把握できていないマドカ。安心しろ。俺も把握できてない。

「大丈夫!」

「あなたの家の事情なんて関係ないわ!」

「一組はマドカちゃんを歓迎するわよ!」

「総員、かかれぇ~!」

『おー!』

「えぇ~?!」

そのままマドカは持ち上げられて胴上げされることになった。

「な、なんかよく分からないけど、一応、丸く収まったん……だよな?」

わーっしょい、わーっしょい! と胴上げされるマドカを困惑気味に見ている一夏が俺に聞いてきた。

「ああ。これ以上ないくらい丸く収まってる」

横に立っているシャルもうんうんと頷いた。

「マドカ、良かったね。二人もそう思うでしょ? 箒、セシリア」

「なっ!?」

「なぜ急にわたくしたちに!?」

急に話を振られてたじろぐ二人。それにシャルはクスクスと笑いながら話す。

「え~? だってさっきから羨ましそうに一夏のせな━━━━」

「シャルロットぉぉぉぉぉっ!?」

「なんのことでしょおおお!?」

シャルが何かを言おうとして、箒とセシリアに口と体を押さえられてる。

なんかこんな光景を何度も見た気がする。

「はははっ。なんかよく分からないけど、シャルも懲りねえな」

「そうだな。あはははっ」

「もっ、もがっ、ふ、ふふぁりふぉも、ぷはっ、笑ってないで助けてよぉ~!」

「はいはい。今たす━━━━」

「あの~? みなさん」

『?』

声が聞こえて振り返る。

「授業……始めたいんですけどぉ……?」

『え?』

時計を見れば、あら不思議。とっくに授業時間過ぎてるよ。

「お前たちは……」

おまけに山田先生の隣には織斑先生が。

「何をやっている! この馬鹿者どもが!!」

そんなわけで、休み明け最初の授業はラウラとマドカ以外廊下に立たされちゃったよ。あははは。

……はーあ。 

 

 

「さてと、準備はいいか?」

「はい!」

放課後、俺と一夏は第四アリーナでマドカの訓練をすることになった。

と言ってもマジな訓練をするわけではなく明日の実習の予習も含めた軽めの訓練だ。

メンツは俺と一夏とマドカの三人だけ。他の連中は部活で忙しいらしい。

「じゃあまずは展開からだな。一夏、やって見せてやれ」

「なんか千冬姉みたいな言い方だな」

「いいじゃねえか。一回やってみたかったんだよ」

「わかったよ」

そう言って一夏は《白式》を展開して浮遊する。

「展開の一般的な仕方は意識をISに集中させることだ。最初は時間がかかるかもしれないけど、やってみな」

「は、はい」

マドカは目を閉じてすぅっと息を吸った。

「来て……ブレーディア!」

イヤリングが光り、その光が止むとマドカは赤い装甲に包まれ浮遊していた。

「へぇ……もうそのスピードで展開できるのか」

「すごいな。やっぱりセンスが良いみたいだ」

「そ、そうなの? えへへ……」

俺と一夏の褒め言葉に照れるマドカ。

「よっしゃ。じゃあ軽く飛んでみるか。《G-soul》!」

俺もG-soulを展開して地面から足を離した。

「このままこのアリーナを一周してみよう。行くぞ」

マドカを中央にして俺と一夏がマドカの手を引くようにしてアリーナを一周した。

「どうだった? 初飛行の感想は」

「うん! とっても気持ち良かった!」

一夏の問いかけにマドカは満面の笑みを浮かべて頷いた。

「そっか。それは良かった。あ、そうだ!マドカ、瑛斗にアレ見てもらえよ」

「ああ! アレだね! わかった!」

「何を見せてくれるんだ?」

俺が首をかしげると、マドカは右腕を俺の前に出した。

すると腕に装備されたブレードビットが腕から離れて俺の周りをクルクルと回り始めた。

「こいつは……」

「マドカが早くこのISに慣れたいって言って、家でも片腕だけ展開して少し練習したんだ。あ、大きい方のビットはまだ使ったことないから、まだ動かせるかどうか分からないけど」

「ど、どうかな? みんなに追いつけるかな……?」

《サイレント・ゼフィルス》を操っていたとは言え、まさかここまでビットの操作に慣れていたとは。

「ああ。凄いよ。普通はこんなに簡単に動かせないぞ」

「うん。なんでか分からないけど、何となく動かし方が分かったんだ」

照れ笑いを浮かべながらマドカは言う。

(なるほど……。記憶は無くなっても、使い方は身体が覚えてるってわけか……)

「よし。ここまで来てるならさっそくデカいほうも動かしてみよう」

「はい!」

マドカの返事をして小型ブレードビットを戻した直後、腰のブレードビット六枚が装甲を離れ、ヒュンヒュンと周囲を飛び始めた。

「どうだ? 何か変わったところはないか?」

「大丈夫。動かし方も一緒だから制御できるよ。だけど小さいのも含めて全部動かすのはできないみたい」

「そうか。それはまあ、これから頑張っていけばいいさ。さて、それじゃあ……」

俺は一夏を連れてピットの横のターゲット射出機に近づく。

「もうこれ使うのか?」

一夏が少し心配そうに聞いてくる。

「ああ。あれだけ使えりゃこれ位できるさ」

俺は答えながら画面を操作してターゲットを射出させる。

「マドカ、今からこのターゲットたちと戦ってもらう」

「え……」

マドカが不安そうな顔をする。

「大丈夫だ。低出力のレーザーが飛んでくるけど負傷するほどのもんじゃない。それにヤバくなったら俺たちが助けるから。安心して叩き落とせ」

「わ、わかった!」

マドカが頷いたのを確認し、ターゲットに行動開始の信号を送る。

「っ!」

レーザーを回避してマドカは腰の大型ブレードビットを射出する。高速で移動するビットは、緋色の軌跡を残しながら次々とターゲットを破壊していく。

「瑛斗、あのビットって切断攻撃だけなのか?」

横の一夏が話しかけてきた。

「ああ。レーザービットにするって手もあったが、それじゃあ面白みがない。それにサイレント・ゼフィルスのシールドビットの技術も応用してるからアレで防御もできる」

話しているとまさに今、ブレードビットでレーザーを防いでいた。

「あんな感じでな」

「なるほど……ん? それじゃあ射撃系の武器はないのか?」

「一夏……俺を誰だと思ってるんだ?」

「と言うことはあるのか」

「もちろん。コレだよ。冬休みの残りで組み上げたんだ」

俺はG-soulを操作して赤いレーザーライフルを一つ呼び出した。

「セシリアのスターライトに似てるな。青の部分が赤くなったみたいだ」

「似てるどころかほとんど同じだよ。アイツの《スターライトmkⅢ》をそっくりそのまま造った後、俺が独自の改良を加えた。その名も《スターダストmkⅡ》! ドヤァ……」

「ドヤ顔してるのも良いけど、マドカの方はもう終わったみたいだぞ」

「あ、本当だ」

「二人とも、何の話してるの?」

ターゲットを全機撃墜し、ビットを装甲に戻したマドカが近づいてきた。

「コレだよ。お前のブレーディアの射撃武装。《スターダストmkⅡ》。今渡そうと思ってたところなんだ」

マドカにスターダストmkⅡを渡す。

「おー! カッコいい~!」

目をキラキラさせながら受け取ったレーザーライフルを見るマドカ。

「実弾とレーザーの両方を撃てるようになってる。俺みたいにビーム攻撃を無効化するような敵には実弾で攻撃するのがベストだな」

「へぇ~! ねえねえ、『mkⅡ』ってことは『mkⅠ』もあるの?」

「…………………」

「…………………」

「…………………よしじゃあさっそく使ってみよう!」

「あ、ないんだね」

「ないんだな」

だってノリでつけた名前だし。

時間は経って夜。

学園側の判断で俺、織斑一夏と妹マドカは相部屋になった。

 

だけどマドカは今部屋にはいなくて、シャルロットたちに連れられて大浴場に行っている。アイツも今日の訓練で疲れただろう。

「ふぅ……」

シャワーを浴び終わり、椅子に座って今日一日のことを思い出す。

夕食の時もマドカは注目の的で、少し困っていた。きっと今も浴場で女子たちの注目の的になってるに違いない。

でも、総合的な判断をするなら、いい滑り出しだったと思う。

 

授業の時も、千冬姉との勉強が功を奏したのか、当てられた時も問題なく答えられていたし、あの感じなら大丈夫だろう。間違えないかと俺が緊張したけど。

いつも千冬姉の背中を追いかけてたけど、俺も追いかけられる側になったんだよな。

そう思うと気が引き締まる感じがした。

「もうすぐ二年になるし……もっと頑張んないといけないな」

気持ちを新たにそう決心すると、部屋のドアが開いた。

「はあ~……やっと戻ってこれたぁ」

入ってきたのはマドカだった。ふらふらとベッドに進み、ぽふっとうつ伏せに倒れこむ。

「なんか、すごい疲れてんな」

そうなんだよぉ、とマドカは体を起こした。

「お風呂でいろんな人に声かけられちゃって。何人かの目は怖かったよ」

「俺と瑛斗が学園に来たときもお前みたいなことになったよ」

入学したばかりのころを思い出して、ぷっと吹き出す。

「笑いごとじゃないよぉ。楯無さんがくすぐってきたりして」

「くすぐられたのに笑いごとじゃないとは………これはいかに」

「お兄ちゃんったら……」

マドカに苦笑された。俺は軽く咳払いしてこの話を終わらせる。

「ま、まあ、あれだ。大変だけど楽しいだろ?」

「うん! 明日も楽しみだよ!」

マドカは頷いて笑った。

「はは。明日は実戦練習もあるから今日より大変だぞ?」

「それでも頑張るよ」

「そっか。偉いぞ」

俺はマドカの髪をそっと撫でた。

「あはっ、やめてよぉ。くすぐったい」

マドカは嬉しそうに目を細めた。なんだか、猫みたいだ。

こんなこと言うのもアレかも知れないけど、その、すごく可愛い。髪も少し湿っていて艶っぽいし、顔もちょっと紅い。

なんというかドキドキする。

「…………………」

「……お兄ちゃん?」

「えっ?」

「どうしたの? 私の顔、何かついてる?」

「あ、い、いや! 別に!」

俺は慌てて顔を離す。

「あれれ? もしかしてドキドキした?」

マドカがクスリと小さく笑った。

「なぁっ!?」

「お姉ちゃんが言ってたけど、お兄ちゃんって━━━━」

「わあああっ! なんでもない! 千冬姉の冗談だろ!」

「もう……ちょっとだけだよ?」

そう言ってマドカは服を上げてへそあたりまで出した。

「な、なにしてんだよ! やめ━━━━」

ガチャ

「一夏ー、マドカー。遊びに来たぞー。鈴も連れ……て………」

ドアを開けて瑛斗が入ってきた。

「どうよ一夏、ちゃんとやって……る…………」

その後ろから鈴も顔を出す。え? なにこの展開?

「…………………」

「…………………」

瑛斗と鈴の瞳孔が開いている。というか、死んでる。

「あ、いや……これは………!」

「ち、違うんだよ二人とも? こうするとお兄ちゃんは面白い反応するって楯無さんが……」

そういうことだったか。

けどマドカ、もう遅い。もう遅いよ。

「……姐さん。お願いします」

「ええ……」

 

ゴゴゴゴゴ……! そんな音と共に鈴が近づいてくる。

「や、あの、鈴? 話を━━━━」

「このバカァッ!」

「デスヨネッ!」

鈴の鉄拳で、俺は見事に宙を舞った。


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