IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜 作:ドラーグEX
キャノンボール・ファスト当日。
会場である市のスタジアム超満員で空にはポンポンと花火が上がっている。
「うーん、よく晴れたわ。絶好のレース日和ね!」
ピットでISスーツ姿で準備運動している鈴が、同じくISスーツ姿の俺に言う。
「ああ」
「何よ? 珍しくテンションが低いわね」
「そうか?」
「そうよ。普段のアンタなら『今日が楽しみ過ぎて夜眠れなかった』くらいなこと言ってるわよ」
「……俺って、そんなにガキっぽいか?」
「ISに関係することになるとね」
微妙にショックだ。しかし、鈴の言う通り俺はレースに集中できずにいる。
昨日の夜のエリナさんからの電話で亡国機業が乱入してくるかもしれないという話を聞いていたから、俺はそっちの方に意識が行ってしまう。
(セフィロトが二機も奪取されて、おまけにあっちはサイレント・ゼフィルスも持ってる。攻めて来られたら、ひとたまりもねえ……)
いくら専用機持ちが居ると言っても、亡国機業はその戦力差を簡単に埋めることができるだろう。
「ほらぁ! またそんなシケた顔する! もっとシャンとしなさいよ!」
ぐいっ
「いでででで!?」
鈴が俺の左の頬を思いっきりつねってきた。
「わざわざこの日のためだけのGメモリーを作ったんでしょ? そんなアンタがやる気なくてどーすんのよ!」
「わ、わかった。出す! やる気出すから放せ!」
「それならよろしい」
鈴はぱっと手を放してどこかに行ってしまった。ったく、相変わらず誰にも容赦ねえ……。
(でも……鈴の言う通りか)
ありもしない脅威にビクビクするほど俺も臆病じゃない。俺はパンパンと両手で自分の顔を叩き、気合を入れた。
「よし! いっちょやってやるか!」
「瑛斗、一夏を知らないか?」
箒が声をかけてきた。
「ん? 一夏? ああ、アイツならほら、あそこに」
俺が指差す方向には観客席の方を見ている一夏の姿があった。
「まったく! あんなところにいるのか! もうすぐレースが始まるというのに!」
ズンズンと一夏のところに歩いていく箒。歩くたびにポニーテールが揺れる。
『まもなく、二年生の訓練機部門のレースが始まります』
一夏が箒に耳を引っ張られながらこっちに来るのと、そのアナウンスがなるのがほぼ同時だった。
◆
『わあぁぁぁぁ……!』
ピットの向こうでは大歓声が鳴り響いている。どうやらレースはデッドヒートのようで観客も興奮しているのだろう。
「あれ? この二年生のサラ・ウェルキンって人、代表候補生なのか?」
「そうですわ。専用機はありませんけど、優秀な方でしてよ」
わたくしも操縦技術を習いましたわ、と付け加えるセシリアはもうすでに《ブルー・ティアーズ》を展開している。
「代表候補生だからって専用機をもらえるわけじゃないからな」
俺もフラスティアを発動した《G-soul》を纏い、セシリアの言葉に続く。
ピットには俺達以外にもシャルとラウラと箒、そして鈴もいる。
「鈴のそのパッケージ、えらくゴツイな?」
「ふふん、そうでしょ? こいつの最高速度はセシリアにも引けを取らないわよ」
増設スラスターを四基積んだ甲龍の高機動戦闘用パッケージ『
(まさか……あれでどつこうってんじゃないだろうな……。クラッシュ狙いか?)
他にも横を向いた衝撃砲もあって妨害用であることがうかがえる。おそらくキャノンボール・ファスト仕様になっているのだ。
セシリアの『ストライク・ガンナー』は本来、一撃離脱の強襲用パッケージであるから、キャノンボール・ファスト仕様の鈴の方が一歩リードしているだろう。
だけど、それを言ったら俺のフラスティアもこの大会のためだけに作ったものだ。鈴とも性能的にはいい勝負だ。
「ふん。戦いは武器だけで決まるものではない」
なんてカッコイイ台詞を言ったのは箒だ。
「戦いとは流れだ。全体を支配する者が勝つ」
三基の増設スラスターを装備したラウラが会話に入ってくる。
専用装備ではないが、新型のスラスターは性能は十分らしく、今回のレースにも自信があるようだ。
「みんな、全力で戦おうね」
そう言って締めたのはシャルだった。ラウラと同じく三基のスラスターを左右に一基ずつ、背中に一基装備している。
「みなさーん、準備はいいですかー? スタートポイントまで移動しますよー」
のんびりとした山田先生の声が響く。
俺達は頷いて誘導マーカーに従ってスタート地点に向かう。
(みんなには悪いが、優勝はいただきだ!)
『それではみなさん、一年生の専用機持ち組のレースを開催します!』
大きなアナウンスが響く。
俺達は各自スタートラインに立ち、スラスターに点火する。
ヒュィィィィ……………!
大勢の観客が見守る中、シグナルランプが点滅する。
3………2………1………ゴーッ!
「…………ッ!」
急速な加速で景色が一瞬吹き飛ぶ。だがすぐに補助ハイパーセンサーがサポートして景色が追いつく。
(トップはセシリアか……!)
あっという間に第一コーナーを過ぎ、セシリアを先頭に列ができる。
(そろそろ仕掛けるとしようか!)
「一夏、お先!」
「あばよ一夏!」
「あ、おい!」
俺は
「直撃コースだ!」
「もらったわよ、セシリア!」
四発分のエネルギーを使ったビームと衝撃砲の連射を躱そうと横にロールしたセシリア。
それを爆発的な加速で俺と鈴が抜き去る。
「くっ! お二人ともやりますわね!」
「へへん! おっそーい!」
「じゃあな!」
「━━━━甘いな」
「「!?」」
鈴の加速に合わせて、後ろにぴったりと付いていたラウラが前にでる。
「しまった!」
「遅い!」
慌てて鈴が衝撃砲を向けるが、ラウラの大口径リボルバー・カノンの方がわずかに早く火を噴く。
直撃まではいかないものの、高速機動状態での被弾で鈴はコースラインから大きく逸れる。
「瑛斗、次はお前だ」
リボルバー・カノンを俺に向けたラウラがニヤリと笑う。
「へっ! そう簡単に食らうかよ!」
俺は肩の姿勢制御用の駆動式スラスターをラウラに向けて噴射する。
「なっ!?」
予想外の攻撃にバランスを崩すラウラ。その隙を見逃さず俺はカーブで再び瞬時全噴射を行い、ラウラと距離を離す。
(よしっ! これでトップだ!)
「瑛斗、僕もいるよ?」
「!」
後ろからのマシンガンの弾丸をサイドロールで躱す。
「ちっ! シャルか!」
後ろを確認すると、マシンガンをマグナムに切り替えるシャルの姿が見えた。
実弾だからBRFシールドの実体部分で攻撃を防ぐ。
しかしジリジリとシャルが俺に肉薄し、他の奴らも加速がついて再び俺達は団子状態になる。
ドンッ!
鈴の衝撃砲の流れ弾がコースの緩衝壁に当たって爆ぜる。
「レースはまだまだ!」
「ここからよ!」
白熱するバトルレース。それが二周目に入ったところで異変は起きた。
━━━━上空からロックされています! 速やかに防御を!━━━━
「!?」
突然、上空からビームが降ってきた。
咄嗟にBRFシールドで防ぐが、俺の横を走っていたシャルとラウラにまでビームが当たる。
「まさか……本当に来やがったか!
「…………………」
青空に浮かぶ黒点━━━━襲撃者はコースアウトするラウラとシャルを見もせず、ニヤリと口元を歪めた。
「ラウラ! シャル! 大丈夫か!?」
俺はフラスティアを解除して壁に激突した二人のもとに駆け寄り、BRFシールドを最大展開する。
次の瞬間、BTライフルの攻撃が降り注いだ。なんて威力だ……!
「ぐぅ……!」
「瑛斗さん! ここはわたくしが!」
「セシリア!? おい!」
「サイレント・ゼフィルス……! 今度こそ!」
俺の制止を聞かずセシリアはサイレント・ゼフィルスに単機で向かっていく。
「ああもう、あのバカッ! 一夏! 瑛斗! 防御頼んだわよ!」
セシリアをあわてて鈴が補佐する。
二人の連携攻撃をひらりひらりと嘲笑うかのように躱すサイレント・ゼフィルス。その動きからは余裕さえ感じられる。
「くっ……! うぅ……」
「ラウラ! 動いていいのか?」
「いや……直接支援に加われないが、砲座程度には………!」
言うなり、身を起こしてサイレント・ゼフィルスに向かってカノンを発射する。だが、その動きに追いつけずに弾は当たることはない。
「くっ!」
「瑛斗! 一夏! ここは僕が! 二人はあっちに!」
「シャルロット! スラスターは!?」
「三つとも死んじゃったよ! PICで飛ぶことはできるけど、それだけじゃアレには追いつけない!」
会場はパニックになっていて、シャルの声も少しかすれる。
「二人とも無理はするな! 行くぞ一夏! 」
「あ、ああ!」
ラウラの防御をシャルに任せて俺は《G-spirit》で一夏と共にサイレント・ゼフィルスに向かって飛びだす。
「加勢する!」
箒が合流して、三人でサイレント・ゼフィルスへ格闘戦で挑んだ。
「うおおおおっ!」
「でやああああっ!」
「………………」
雪片弐型とビームブレードの攻撃をサイレント・ゼフィルスはシールドビットを操ってすべて防ぐ。
「狙いは何だ! ここに何をしに来たんだ!」
「答えろ! 亡国機業!」
「…………茶番だな」
「なにっ!?」
背後からの射撃ビットの攻撃が俺と一夏に直撃する。
「うわっ!」
「ぐ……っ! このぉっ!」
ビームウイングを展開し、背後の射撃ビットからの追撃を吸収する。
「ほう?」
攻撃を防がれたのを見て、サイレント・ゼフィルスの攻撃は一夏に集中した。
シールドビットを俺にぶつけ、俺を射程外に押し出してから一夏にライフルの先端に取り付けられたブレードで切りかかる。
「ぐっ!」
一夏は雪片弐型でそれをいなすが、ビットの攻撃を躱せずにそのままバランスを崩す。
そして続けざまに一夏に蹴りを叩き込み、一夏は壁に激突する。
「一夏!」
ビームウイングをはばたかせてシールドビットを俺から遠ざける。そしてそのまま一夏の救援に向かった。
「━━━━死ね」
「!」
俺が一夏の前に来るのと、サイレント・ゼフィルスの最大出力のビームが飛んでくるのは全く同時だった。
(BRFが……間に合わない━━━━!?)
電気をほとばしらせたエネルギーの塊が俺の視界を覆った。
◆
「ふふ。流石はエムね。あれだけの専用機持ちを手玉にとるなんて」
サングラス越しに襲撃者、エムを見ているスーツの女性は亡国機業のスコールであった。
「でも、専用機持ち達にもう少し頑張ってくれないと張り合いがないわ」
ふぅとため息をついた背中に声がかけられる。
「あら、イベントに強制参加しといてその言いぐさはあんまりじゃないかしら?」
スコールは振り向かない。
相手が誰であるか分かっているからだ。
━━━━更識楯無。IS学園生徒会長にしてロシア代表の彼女を、スコールが知らないはずがなかった。
「確か……………《モスクワの深い霧》だったかしら? あなたのISは」
「今は名前が変わって《ミステリアス・レイディ》というの」
「あら、そう」
「あなたこそ、大層なISをお持ちじゃない。《セフィロト》なんて、簡単に手に入るものじゃないわよ?」
「ふふふ、お目が高いのね」
振り返ったスコールが構えていたナイフを、楯無は自分のISの武装の蛇腹剣《ラスティー・ネイル》で叩き落とす。
「マナーがなっていない女性は嫌われるわよ?」
そのまま鞭のようにしなるそれをスコールに向けて振り下ろす。
「あなたこそ、初対面の相手に不躾じゃなくって?」
しかし、その攻撃は届かない。楯無の攻撃を払ったスコールの両腕は金色の装甲に包まれている。
「狙いは何? 亡国機業」
「言うわけないじゃない。せっかくいいシチュエーションができたのに」
「そう……。じゃあ力づくにでも聞かせてもらうわ!」
蛇腹剣を手放し、同時にランス《蒼流旋》を呼び出す。
ランスには四連装ガトリングが内臓されている。楯無はそれをスコールに斉射した。
「止めなさい。あなたの攻撃は私には届かない」
スコールが左腕を前に出すと、ガトリングの弾丸は急停止し、そのままカランカランと地面に落ちた。
「あなたのISでは私のISに傷一つつけることもできないわ。あなたじゃ私には勝てない」
「勝てないから、倒せないから……戦わない。それも一つの賢い選択よ。でもね!」
水のヴェールを刃に変えて、楯無は一気に攻勢に移る。
「私は更識楯無。IS学園生徒会長……ならば、そのように振る舞うだけ!」
水のドリルを纏ったランスによる高速突進。スコールはそれに右腕の装甲からナイフを撃ちだした。
「そんなもので!」
水の刃がナイフを切り裂く。すると、ナイフは大爆発を起こした。
「!!」
もうもうと立ち込める煙。それが晴れると、そこにはもうスコールはいなかった。
(はぁ……。いいとこなしじゃないの、まったく。一夏くんと瑛斗くんのこと、からかえないわ)
ランスを地面に突き刺し、悔しそうな表情をする楯無が、そこにはいた。
◆
「きゃああああ!」
「鈴!?」
サイレント・ゼフィルスのBTライフルの最大出力の攻撃を受けた鈴は強く弾き飛ばされる。俺たちを庇ったのか……!!
「くそっ! 一夏は鈴のところに行けっ! こいつは俺がやる!」
「わかった! ……鈴!」
「このやろおおおおおおおおっ!」
ビームブレードでサイレント・ゼフィルスに肉薄する。
「…………………」
しかし、射撃ビットとBTライフルの同時攻撃でサイレント・ゼフィルスは俺を近づけさせない。
「この前の借り、返させてもらうぜ!」
俺はビームブレードを最大出力で精製し、ビームウイングの加速能力を上乗せした渾身の一撃をサイレント・ゼフィルスに向けて放つ。
「……………………」
シールドビットを四枚繋ぎ合わせて防御しようとするサイレント・ゼフィルス。
「甘いんだよ!」
俺は補助ハイパーセンサー内蔵のフェイスマスクを被り、ビームウイングをはばたかせて身を捻り、そのまま高速で回転。さながらビームのドリルのようになる。
シールドビットを弾き飛ばしサイレント・ゼフィルスがいるであろう場所に突き進む。
だが、手応えが無かった。
「…………甘いのは貴様の方だ」
上から声がした。見上げれば、サイレント・ゼフィルスが俺にBTライフルを向けている。
(しまっ━━━━)
「うああああっ!」
連射されたビームをビームウイングで吸収するが、吸収しきれなかったビームが直撃する。
「終わりだ」
サイレント・ゼフィルスのBTライフルが再び最大出力での射撃体勢に入る。
「やらせませんわ!」
「貴様…………!」
「セシリア!」
横から飛んできたセシリアがサイレント・ゼフィルスの両腕を掴み飛翔して、そのままアリーナのシールドバリアに叩き付ける。
「BT一号機の力、存分にお見せいたしますわ!」
四回目でバリアは割れて、二機の青い機体が市街地の方へ飛んでいく。
「俺も━━━━」
すぐに後を追いかけようとしたが、ビームウイングが消えてしまった。
「シールドエネルギーが限界か……!」
フラフラと地表に降りて膝をつく。
「瑛斗! こっちに来て!」
「?」
呼ばれて顔を向けると、シャルが俺に手を伸ばしている。
「コア・バイパスシステムで僕のありったけのエネルギーを送るから、一夏と一緒にセシリアを助けに行ってあげて!」
「……そうか! その手があった!」
以前、ラウラの《シュヴァルツェア・レーゲン》に内蔵されていた禁断のVTシステムと対峙し、トドメを打とうとした時、シャルがラファールのエネルギーを俺にくれた。
それをもう一度やろうと言うのだ。
「早速頼む!」
「うん!」
シャルの手を握ると、シャルの体を包んでいたラファールの装甲が光になり、俺に降り注いだ。
「シールドエネルギー五二パーセント回復……よし! 行けるぞ!」
俺の背中に再びビームウイングが現れる。
「瑛斗っ!」
《雪羅》を発動した白式を駆る一夏が飛んで来た。
「セシリアが危ない! 早く行こう!」
「わかってる! こうなったらアレを使う!」
「アレ?」
「本当はレースの最後に取っておきたかったんだが、場合が場合だ! Gメモリーセカンド! セレクトモード!」
Gメモリーセカンドを起動。ディスプレイに選択画面が表示される。
「セレクト! フラスティア!」
━━━━コード確認しました。フラスティア発動許可します━━━━
G-spiritの肩にブースターが増設、脚部にもブースターが装着された。
「G-spiritにもフラスティアがあったのか?」
「ああ。いざって時の最終手段でな。だけどこうなるとは予想してなかった。一夏、手を」
「ん? ああ」
俺は一夏の手を掴む。
「ハイパーセンサーも装着しとけ」
「? わかった」
「よし、行くぞ!」
俺は一夏と共に飛翔。肩と脚部のブースターに火が点き、爆発的なスピードになる。
「一夏! セシリアの場所はわかるか!?」
「ああ! この先のビルを曲がったところだ!」
「よっしゃ!」
ほぼ減速なしでカーブする。
するとボロボロのセシリアがハイパーセンサーで捉えることができた。
「一夏! お前はセシリアのところに行け!」
「わ、わかった!」
一夏の手を放して、俺はサイレント・ゼフィルスに音速越えのスピードで接近する。
(食らえ━━━━!)
ドッ!!!
「がはっ……!!」
そしてそのままタックルの要領でサイレント・ゼフィルスに激突する。
「どうだ……!? 少しは効いたか!?」
「……………」
つぅ……とサイレント・ゼフィルスの操縦者の口から血が垂れる。
それをグッと拭い、手の装甲に着いた自分の血を見てから俺を見たサイレント・ゼフィルスの操縦者は口を開いた。
「また会おう」
そう言って俺に背を向けて、サイレント・ゼフィルスは飛び立った。
「待て!」
追おうとしたが、G-spiritがG-soulに戻ってしまった。 今度こそ限界か……!
俺は、悔しさを噛み締めながらサイレント・ゼフィルスを見送るしかなかった。
ゼフィルスが見えなくなってから、一夏と気を失っているセシリアのいるビルの屋上に降りた。
「瑛斗、ヤツは?」
「逃げられた。でも一矢報いるくらいのことはできたぜ」
「そうか……。セシリア……こんなにボロボロになって……くそっ」
「俺達が悔しがってもしょうがない。まずはセシリアを連れ帰って治療しなきゃ」
「……わかってる」
俺はセシリアを抱きかかえた一夏とともにアリーナへと戻った。