IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜   作:ドラーグEX

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クラス代表は誰に? 〜または英国少女の憤慨〜

「それでは、この時間は実戦で使う各種装備の特性について説明する」

 

  山田先生のような危なっかしさは、織斑先生からは全く感じられなかった。

 

「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出るクラス代表者を決めないといけないな」

 

  ふと思い出したように織斑先生が言った。クラス対抗戦? なんのこっちゃ?

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

 

  うわ、めんどくさ。パスだな。こういうのこそさっきのセシリアみたいなのがやればいい。

 

「では、誰か推薦があるものは手を挙げろ」

 

  ザワザワと色めき立つ教室をまとめるように織斑先生はパンパンと手を叩く。

 

「はいっ、織斑くんを推薦します」

 

「はい、桐野くんが適任かと」

 

  ほほう、このクラスには桐野ってやつがもう一人いるのか。そいつは奇遇だ。

 

「「「「織斑くんよ!」」」」

 

「「「「桐野くんだって!」」」」

 

  おお、なにやら熱い推薦合戦が始まってるぞ? しかし、もしかしたらもしかして……。

 

「「お、俺か!?」」

 

  あ、一夏とハモった。やっぱりそうだったか。これはあれか? 面倒事は男子に押し付けちゃいましょっていう群集心理が働いてんのか?

 

「織斑、桐野。席に着け。邪魔だ。さて、他にはいないか?自薦他薦どちらでも構わん」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!」

 

  一夏が抗議するが織斑先生はそれを一蹴する。

 

「自薦他薦は問わないと言ったぞ。それに他薦されたものに拒否権はない」

 

「い、いやでも━━━━」

 

「待ってください! 納得がいきませんわ!」

 

  一際甲高い声で反論したのはセシリアだった。もしや俺たちを擁護してくれるのか? それは頼もしいな。代表候補生さん、ガツンと言ってやってください!

 

「そのような選出は認められませんわ! 大体、男がクラス代表になるなんて恥さらしもいいところですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか?」

 

 そうだそうだ! ……ん?

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿を選ばれては困ります! わたくしはこのような島国にまでIS技術を修練に来ているのであって、サーカスをしに来たわけではありません!」

 

 おい、今 猿って言ってたな? 猿って言ったよな? あと島国ってイギリスも島国だろうが。俺は見てたぞ?

 

「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき。そしてそれはわたくしですわ!」

 

 くっ……! ここまで言われると、代表になんざなりたくないが癪に障る。

 

「その代表をこんなバカな野蛮人と地球に落ちてきた宇宙人にやらせようなんて!」

 

「……!!」

 

  カチン。あーあ、言ったよ。言っちゃったよこの人。もう我慢の限界だ!

 

「イギリスだって大したお国自慢無いだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

「なっ!?」

 

  一夏の反論に俺も乗っからせてもらう。

 

「確かに、いろんな宇宙食食べてきたけど、イギリスの料理は無かったな。なんでだろ? ああ、そっか。不味いからか」

 

「なな……?!」

 

  ふぅ、スカッとしたぜ。これで少しは大人しくなるだろう。

 

「……わね」

 

 ん?いまなにかセシリアが言ったような?

 

「ぶ、侮辱しましたわね!? 今、わたくしの母国を! あなたたちは侮辱しましたわね!!」

 

「おーおー、気に障ったかな? エリートさんよ?」

 

「〜〜〜っ!! 決闘ですわ!」

 

 バンッ! と机を叩いて俺と一夏を睨みつけたセシリアは強く言った。

 

「このセシリア・オルコット、あなたがたに決闘を申し込みます!」

 

「おう良いぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

 

「相手になってやるよ」

 

「言っておきますけど、わざと負けたりなんかしたらわたくしのドレ……もとい小間使いになっていただきますわ!」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

  一夏は腕を組んで答えた。

 

「そう? なんにせよ、このセシリア・オルコットの実力を示すにはまたとない好機ですわ。あなたたちの網膜にわたくしの力を焼き付けてさしあげますわ」

 

「へん! そっちこそ、負けた後でピーピー泣いても知らないからな!」

 

 俺がそう言うと何も言わずに聞いていた織斑先生がまとめに入った。

 

「よし、話はまとまったな。決闘は来週の月曜日、放課後に第三アリーナで行う。オルコット、織斑、桐野の三人は準備しておくように」

 

  そうして話は終わった。

 

 ◆

 

「だぁ~、疲れたぁ~……」

 

  この日の放課後、部屋に戻った俺はベッドに飛び込んだ。学食に飯を食いに行く時も、廊下を歩く時も大勢の女子の視線が集中して、全く落着けなかった。唯一落ち着けるのはこの自室だけである。

 

「しっかし……代表候補生か……」

 

  言うまでもなく強敵である。対策をならなくてはならない。俺は自室のシャワーを浴びて気を引き締めた後、パソコンで《G-soul》のデータをチェックする。武装はビームガン、ビームソード、バルカン、と言うスタンダードな装備であるが、俺にはまだとっておきの『隠し玉』が残っている。

 

「頼むぜ、《G-soul》」

 

  俺は左腕の待機状態のG-soulに言った。球がぶつかり合うことでかすかに聞こえた音が、返事のように思えた。

 

  ……そのあと、聞き覚えのある男子クラスメイト悲鳴が聞こえたがスルーした。




次回はセシリアとの決闘。イギリス料理の宇宙食となると、ウナギゼリーとかですかね?(すっとぼけ)

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