IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜   作:ドラーグEX

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第五章 夏休み編
始まるサマー・バケーション 〜または突然の呼び出し〜


「………………」

やあ、俺は桐野瑛斗。少し前までは宇宙ステーション《ツクヨミ》でIS研究をしていたんだけど、今はIS学園一年一組に所属してる。

 

ん?なんで今更自己紹介を?それはな……。

「暇だー……」

そう、暇だからだ。とにかくすることがない。まったくない。微塵もないんだ。夏休みの宿題って名目のISに関するレポートはすでに終わってるから俺の夏休みの宿題はコンプリートされてるわけで、特にすることがないんだ。

「なあ、《Gsoul》、暇なんだが」

ベッドに仰向けに寝転び、左手首にブレスレットとなっている待機状態の俺専用IS《G-soul》に話しかけてみるが返事なんてくるはずもない。

「飲み物でも買うか……」

気をまぎらわすために部屋を出て自販機のある場所まで向かう。

 

すると、前から鈴がやって来た。妙に上機嫌だな?

「よう、鈴」

「うふふ、そうよねー」

「へ?」

ろくに挨拶もせずに、鈴はスキップしながら行ってしまった。どうしたんだ?

「鈴のやつ、暑さで壊れたか?」

俺は首を捻りながら自販機のある階段の前に到着した。さて、何買おうかな?

Prrrrrrr!

おっと電話だ。相手は……。

 

「エリナさん? はい。もしもし?」

『瑛斗? 今大丈夫かしら?』

「はい。スゲー暇してたところです」

『あら! 丁度良かった! あなたに頼みたいことがあるの!』

「はあ」

なんか、イヤ~な予感。

『じゃ、そういうわけだからエレクリットの本社に来て! 飛行機で!』

「わかりまし━━━━今からですか!?」

『そう。今からよ』

俺は腕時計で時間を確認する。現在午前十一時十分。向こうは夜の十時か。

「構いませんけど……手段は?」

まさかG-soulで来いってんじゃあ……

『あるある! っていうかロウディ手配してあるから! そうね、そっちにはあと十分くらいで着くんじゃないかしら』

変なところで用意周到だな。まあ、良いか。暇だし。

「わかりました。どこで待ってればいいですか?」

『そうねえ……学園の正面ゲートで待ってて頂戴! 迎えの人が来るから」

迎えの人? エリナさんではないのか。まあ、あの人も忙しいだろうし、仕方ないか。

「了解です。じゃあ、待ってますから」

『オーケー! こっちも待ってるわ!』

俺は電話を切って自販機で飲み物を買うのをやめ、そのまま学園正面ゲートへ向かった。

 

「よう、瑛斗」

「おう、一夏。セシリアも一緒か」

正面ゲートにつくと一夏とセシリアが立っていた。セシリアの隣にはこれまた美人なメイドさんらしき人が立っている。

「瑛斗さん、どうしたんですの?」

「ああ、何か知らんけどエレクリットの本社に呼ばれてな。ここに迎えの人が来るらしいんだ」

「そうなんですの」

ん? セシリア、鈴とは違って妙に不機嫌そうだな?

「そっちの人は?」

俺が顔を向けるとメイドさんらしき女性は丁寧なお辞儀をしてきた。

「お初にお目にかかります。セシリア様にお仕えするメイドのチェルシー・ブランケットと申します。以後、お見知りおきを」

おお、映画でしか見ないような挨拶をされた。どうやら本物のメイドさんのようだ。

「ご、ご丁寧にどうも。桐野瑛斗です」

俺が挨拶を返すと、チェルシーさんは俺と一夏を見てクスと笑った。

「お二人とも、お嬢様からお話は聞いております。桐野さんは大変優しい方と聞いてますわ」

「いやあ、そんな……」

優しい、か。そんな評価をセシリアから。照れくさいというかなんと言うか………。

「織斑さんは━━━━」

「あっ! 見つけたっす! おーい! 桐野さーん!」

「?」

後ろから名前を呼ばれて振り返ると、エレクリットの作業着を着た女の人が走ってきた。

「えーっと……あ! エリスさん!」

名前を思い出した。そうだそうだ。俺にBRFシールドをくれた人だ。

「お迎えに来たっすー!」

エリスさんは俺達のところまで来て、笑顔を浮かべながら被っていた帽子をとった。

「わざわざありがとうございます」

「いえいえ! スワン先輩に頼まれたことっすから! 断る理由がないっすよ!」

「そうですか」

エリナさん、慕われてるんだなあ。

「瑛斗、この人は?」

一夏が聞いてきた。

「ああ、エレクリットの技術開発局の人で、エリスさん」

「どもっす」

「へえ、初めまして。織斑一夏です」

「ニュースで見ましたっす。もう一人の男性IS操縦者、織斑一夏さん!お会いできて光栄っす!」

そう言ってエリスさんは一夏と握手する。そうだよな、俺達はISを操縦できる男だから全世界から注目されてんだよな。

「じゃあエリスさん、行きますか?」

「あっ、そうっすね。行きましょう」

「じゃな! 二人とも。チェルシーさんも」

「ああ、じゃあな」

「ごきげんよう」

「いってらっしゃいませ」

俺は三人と別れてエリスさんとロウディが待っている学園裏手に向かった。

「じゃあ、発進するっす」

「お願いします」

ロウディに乗った俺とエリスさんは無事、学園から離陸した。

「そう言えば、俺、なんでエリナさんに呼ばれたんですか?」

IS学園を出発してから十分ほど、ふと気になったのでエリスさんに聞いてみた。

「あー、自分にも良く分からないっすけど、なんでも大事な用件だとか」

「大事な用件?」

「はいっす。桐野さんにしか頼めないことだそうっす」

うーむ、俺にしか頼めない大事な用件か。なんだろう?

「まあでも、向こうにつけば分かることっすよ」

「それもそうですね」

俺はエリスさんと談笑しながらエレクリットの本社に向かった。

この時、俺はまだ知らなかった。

暇つぶしになると思っていた今回の出来事が暇つぶし以上の大事だったことを。


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