IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜 作:ドラーグEX
「らああっ!」
赤い
「シャルロット!」
「うんっ!」
ラウラの指示を受け、戦闘義構の頭上からアサルトライフルを放つシャルロット。しかしその攻撃は円盤状のビットから発せられるバリアで防がれる。
「くっ……!」
そしてスパイク付きのシールドでラウラに殴りかかるがラウラはそれをすんでのところで避ける。
「………やっぱりあのバリアを発生させてるビットが面倒だね」
「ああ。AICで止めようにもビットを止めれば本体が動き、本体を止めればビットが動いて攻撃が届かない。どうする……」
「ここはバリアを発生させるビットそのものを攻撃するしか」
「いや、それではビットを攻撃しているうちに本体に攻撃を受けて━━━━」
「ラウラ、僕たちの任務は?」
シャルロットはラウラに顔を向けた。
「……瑛斗達の援護、だが?」
「でしょ? だからこんなところで止まってられないよ。僕がビットを壊す! ラウラは本体を!」
シャルロットは片手にショットガン、片手にマシンガンを手にラファールのスラスターを噴かせる。
「━━━━っ!? おい! シャルロット!?」
ラウラがシャルロットを止めようとしたが、それより速くシャルロットは戦闘義構の周りに展開するビットに攻撃を仕掛ける。
(早く行かなくちゃ……!こんなところで止まってたら……!)
シャルロットは言い知れぬ不安、焦りに心をざわつかせていた。
「シャルロット……?」
しかし、ラウラも明らかに目に見えるシャルロットの焦りに疑問を感じていた。
(何だ? あいつは何をそんなに焦っているんだ?)
だがラウラはその疑問を頭を振って捨て、戦闘に集中することにした。
「やあああっ!」
マシンガンとショットガンを斉射し、ビットを攻撃する。
しかしそれに反応して、戦闘義構もシャルロットに攻撃しようとビームソードを構えて突進する。
「くっ……!」
ビームソードを振り下ろすその動きは、突如として止まった。
「お前の相手は私だ」
ラウラがAICで動きを止めたのだ。そして肩のカノン砲から砲弾を発射する。直撃を受けた戦闘義構は姿勢を崩し、海面スレスレまで落下する。
「逃がすかぁっ!」
それに追い打ちをかけんとラウラはワイヤーブレードを射出する。
だがその攻撃は阻まれた。
「なっ!?」
三つの海中から飛び出たビットが形成したバリアによって。
(海中に潜ませていたのか……!)
ラウラの一瞬の動きの停止をロボは見逃さなかった。スラスターを動かし、最大出力のビームソードでラウラを攻撃しようとする。
「なんのぉっ!」
ラウラはプラズマ手刀で斬撃を受け止める。だが、出力の違いから徐々に押され始める。そして戦闘義構はビームガンを構えた。
(しまっ━━━━)
直撃を覚悟し、目をきつく閉じたラウラ。
「……?」
だが、被弾の感覚はない。恐る恐る目を開けると、
「………………大丈夫?」
シャルロットが《灰色の鱗殻》で戦闘義構の胴体を横から砕いていた。強力な一撃を受けた戦闘義構は火花を散らしながらも、なお動こうとする。
「━━━━ああ。助かった」
ラウラがトドメのカノン砲を放つ。戦闘義構の上半身は吹き飛び、海中に沈んだ。
「何とか倒せたな」
「うん。早く瑛斗達のところへ!」
「了解だ!」
二人は急いで目標地点への急行を再開した。
◆
「やあっ!」
「はああっ!」
セシリアの《ブルー・ティアーズ》との《スターライトmkⅢ》と鈴の《甲龍》の衝撃砲が青い戦闘義構に直撃する。
「くっ……このロボット、装甲が固い!」
「あのバリアが無くても十分ってことですわね!」
言葉を交わす二人を大出力のビームが襲う。戦闘に入って数分経つが、セシリアと鈴はまだ決定的な一撃を与えられていない。青い戦闘義構の装甲が固く、衝撃砲にも耐えうる強度を有していたのだ。
「早いとこコイツ倒して、さっさと作戦に戻るわよっ!」
「ええっ!」
射撃攻撃がダメならと、鈴は《双天牙月》を構え、大上段に振り上げる。
戦闘義構の肩に当たった攻撃だが、そのまま受け止められて鈴はビーム砲の攻撃を浴びてしまう。
「ああああっ!」
「鈴さん!?」
直撃を受け、岩に激突する鈴のもとへ向かうセシリア。
「無事ですか!?」
心配するセシリアにサッと手を見せる鈴。
「大丈夫。あと少し右よりだったらヤバかったけど」
「……あの機械の人形、装甲も相当の強度ですが、なによりもビームが厄介ですわね」
「ええ……チャージに時間がかかるみたいだけど、チャージを中断して発射もできるみたいね」
「あのビームを何とかしないと……!」
ふとセシリアの目に、鈴が握っている岩が映った。
「鈴さん、それは……?」
「ん? ああ、今この岩にぶち当たった時に砕けたヤツの欠片だけど?」
「……それですわ!」
セシリアは鈴が捨てようとした岩片をひったくるように手に取った。
「?」
「これを使えば……!」
ギュンッ!
「ちょっ、セシリア!?」
セシリアの突然の行動に目を丸くする鈴。
そのセシリアの動きに反応するように青い戦闘義構はビーム砲の砲口をセシリアに向ける。
「危ないっ!」
「はあああっ!」
セシリアは青い戦闘義構の横を通りすぎた。
「!?」
すると突然、戦闘義構のビーム砲が爆発した。正確にいうなら、『暴発』した。
「今ですわっ!鈴さん!」
「えっ、わ、わかった!」
名前を呼ばれ、鈴は動きの止まった戦闘義構に双天牙月を突きたてる。暴発の衝撃で装甲が損傷し、防御力を無くした青の装甲に、双天牙月は深々と突き刺さる。
爆発を起こした戦闘義構は海中に沈み、再び浮上することはなかった。
「はあ、はあ……セシリア……アンタ、結構無茶するわね」
「ええ、まあ、ほぼ賭けでしたけど……」
セシリアはビームが発射される寸前、岩を戦闘義構ビーム砲にねじ込み、内部暴発を誘ったのだ。上手くいったから良かったものの、失敗すれば直撃は免れなかっただろう。
「さあ、厄介なのは倒したわ! 早く目標地点に行かないと!」
「そ、そうでしたわ!」
鈴とセシリアも、目標地点に向かったスラスターを噴かした。
◆
「……ボーデヴィッヒさんたちが、敵の戦闘義構群を撃破。目標地点への移動を再開し始めました」
風花の間でそう千冬に報告するの真耶。突然のディスプレイに敵機反応が大量に出現した時は多少慌てていたが、なんとか落ち着きを取り戻している。
「………………」
千冬はそれを無言で聞いている。真耶は不思議に思い千冬に声をかけた。
「あ、あの~、織斑先生?」
「……やられたな」
「え?」
「わからないのか? あの木偶人形どもの行動パターン。あれは部隊を分断するための動きだった」
「……あ! ボーデヴィッヒさん達の足止め!」
「そうだ。これで後発援護部隊は見事に足止めを食らった。悔しいが、敵の思惑通りだろう」
「敵?」
「ああ。目的は分からないが、我々の邪魔をしてきたのは明らかだ。……これは私個人の意見だから、聞き流してくれていい。この暴走事件は仕組まれていた」
「え? ええ!? そ、それって……!」
真耶の声はもう千冬には届いていない。千冬は今はもうこの大広間にはいない鬱陶しく、面倒な知り合いの天才のことを考えていた。