IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜   作:ドラーグEX

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お待たせしました!
いよいよ決着です!


archetype break 〜または世界を超えて〜

その男は、独りだった。

何時からそうだったかは忘れたが、何時しか男の周りに人はいなかった。

 

しかし、男はそれを苦には思わなかった。

 

自分は『持てる者』。

それ以外は『持たざる者』。

そう考えて全てを見下し、憐れんだ。

 

しかし、あの時は違った。

妙な因縁をつけてくる()どもが、いかにも獣らしく暴力に訴えようとしたとき、割って入った一人の男。

その男の持つ気高さと振るう剣の強さを、素直に羨んだ。

欲しいと思った。

 

初めて人の下に付き、師事を仰いだ。

それでも、肉体の限界はあった。

いくら鍛錬を積もうと、あの男はいつも私の先にいた。

どれだけ研鑽しようと、あの男はいつもそれ以上の技を持っていた。

だから、私は造ることにした。強靭な肉体を。何にも負けることのない、最強を。

 

——後悔はない。

自分は間違ってなどいないのだから。

作品(むすめ)の離反に遭い、虚無に堕ちることがあったとしても。

超常の存在と出会い、意思を交わし合い、より強い身体を手に入れたのがその証拠だ。

愛したはずの人を供物として捧げた心が痛まないのがその証拠だ。

 

ならば、今一度示そう。己の正しさを。

ならば、今一度貫こう。己が信念を。

それが、()()()()()()()()()()()()()

 

 

学園地下特別区画司令部。

宇宙と地上の戦いを観測していた教師たちは、担当するコンソールを操りながらやり方は違えども地上の仲間たちと共に戦っていた。

 

「東側の生徒たちが避難した区画にイマージュ・オリジスが近づいてる! 教師部隊に連絡を取って!」

 

「弾薬とエネルギーの補給はこの前配備した非常戦闘用コンテナを使って! ここで使わなくていつ使うの!」

 

「生徒たちの安全を最優先に! 防護シェルターのバリア出力は最大を維持よ!」

 

中央の椅子に座っていた十蔵は、真剣な表情を作ったまま沈黙を守っている。

と、司令部の扉が開いた。

 

「状況はどうなっている?」

 

やって来たのは、季檍との戦いを終えた柳韻だった。

天刀吏舟のシステム制御を行っていた束が、チラと一瞬だけ視線を移す。

 

「怪我はいいの?」

 

「こんなもの、怪我のうちに入らん」

 

「強がっちゃって。ちーちゃんにカッコいいところ見せようとなんてするから」

 

「ふん……。して、重ねて聞くが、状況は?」

 

視線を向けらてようやく話しかけられている相手が自分だと知った十蔵は、視線を正面に戻して短く答えた。

 

「みな、頑張ってくれていますよ」

 

その答えに、苦笑を添える。

 

「織斑先生にここを任されましたが、なかなか私が役に立ちそうな場面は来ませんな」

 

「いや、それは勘違いというもの。千冬のやつは、あれで色々考えている。貴方の役割が回ってくるのも、そう遠くはないはずだ」

 

「それは——」

 

それはどのような? 十蔵が尋ねようとした時、真耶の声が張り上げられた。

 

「イマージュ・オリジスの一部がエリアを離脱していきます!」

 

「この予測進路……! 市街地に向かうつもり!? 回せる戦力は!?」

 

「ダメ! どこも手一杯!」

 

喧噪が一際強くなった時、予想だにしない報告が上がった。

 

「理事長! 学園外部から通信です!」

 

「通信? こんな時にいったい誰が?」

 

「発信元……隠蔽されてます。どうしますか?」

 

「……繋いでください。どこかからのSOSかもしれません」

 

画面に映ったのは、精悍な男の顔。

 

『——こちらは、全界炸劃(フル・スフィリアム)だ。IS学園、応答されたし』

 

発せられた言葉に、司令部が水を打ったように静まる。

 

『繰り返す。こちらは全界炸劃。IS学園、応答されたし』

 

十蔵は自分の役割が回って来たことを感じつつ、中央の画面に声をかけた。

 

「こちら、IS学園です。どのようなご用件でしょうか?」

 

十蔵の声が届くと、画面の向こうから安堵したような息を吐く音が聞こえた。

 

『世界各地で起きている事態は把握している。これより我々は未確認生命体を撃滅する。そのためにそちらと協力関係を結びたい」

 

「協力?」

 

『これは亡き叢壁氏の命であり、我々の総意だ』

 

「叢壁……やつらの大将ではなかったか?」

 

「十中八九、織斑季檍にやられたね」

 

背後の親子の会話は聞こえていないようで、男はさらに続ける。

 

『叢壁氏はこのような事態を予見し、メッセージを残していた。『世界を救え』と。私たちは叢壁氏の、この世界における男の在り方を変えたいという思想に賛同したのであり、織斑季檍……侵略者の駒になったつもりはない。共に、戦わせてもらいたい』

 

司令部の人々の視線が、一気に十蔵へと集まる。

 

「………………」

 

これを見越して、千冬は自分をここに置いたのか。

この戦いのあとで彼らに待ち受けることを考えて、ここに置いたのか。

十蔵は小さく笑った。

 

「わかりました。その申し出、受け入れます。共に、世界を救いましょう」

 

『……感謝する』

 

通信が一方的に切断される。

直後、市街地へ向かうイマージュ・オリジスを押し阻むように、無数の反応が出現した。

 

「新たに別の反応! これは……EOSです! 大量のEOSがイマージュ・オリジスと交戦を開始しました!」

 

「待ち伏せ……いや、違うか。自らの戦う意味を模索していたのだろうな」

 

「彼らも決して世界を滅ぼしたいわけではない、というわけですね。さて、みなさん。ここからが正念場です。彼らの頑張りに我々も答えましょう」

 

教師たちは頷き、自分たちの戦いを再開する。

それを見守る十蔵は、拳にわずかに力を込めた。

 

 

鋼のぶつかり合う音が響くエクスカリバー内部。

異形とかした季檍と刃を交える一夏は、季檍の猛攻に防戦を強いられていた。

 

「はハははハっ! ハァははハッ!!」

 

高笑いとともに剣を叩きつけてくる季檍。

 

「く、ぐぅっ!」

 

その一撃一撃が重く、受け止めるだけで身体の芯が震える。

 

「はああっ!」

 

季檍の不意を突こうと箒が背後から攻撃を仕掛けるが、季檍はまるで背後にも目があるかのように完璧なタイミングで防御を合わせ、一夏と箒を同時に弾き飛ばした。

 

「無駄だ無駄だぁ! 今の私に敵うものなどいない!」

 

「こいつ、急に強くなったぞ!」

 

「なんだというのだ……。姿が変わったと思ったら、動きまで桁違いになっている!」

 

「ククク……! いい表情だ。その恐怖と絶望が私に力を与える!」

 

「まだだ! 俺たちは絶望なんてしちゃいねえっ!」

 

白式を第二形態《雪羅》へ移行した一夏は季檍へ再び挑む。

 

「箒! 合わせてくれ!」

 

「応っ!」

 

箒が空裂を振るい、三日月型のビームが一夏に追従する。

 

「何度やっても同じことっ!」

 

ブレードを振り上げて迎え撃つ季檍。

 

「ふっ!」

 

しかし、その激突の直前、一夏はPICを利用して急停止しで縦に回転。遅れてきた空裂のビームを吸収した雪片弐型が威力の上乗せされたエネルギー刃となって季檍を襲った。

 

「こざかしいっ!」

 

身を捩って躱した季檍。

だが待っていたのは真横から箒が振るった斬撃だった。

 

「だああっ!!」

 

直撃。

吹き飛んだ季檍の脇腹が裂け、紫色の体液が漏れる。

 

「どうだ!」

 

「いや、浅い! すぐに立ち上がるぞ!」

 

一夏と箒は隣り合って剣を構え、季檍を睨む。

箒の言う通り、季檍はダメージを物ともせずに立ち上がった。

 

「……理解できんな。なぜ、抗う。お前たちごときが、私に勝てるはずないというのに」

 

季檍の身体から、炎のような光が湧く。

 

「な、なんだっ?」

 

「気をつけろ、箒。あいつ、また雰囲気が変わった」

 

一夏は雪片弐型を構える手に力を込め、頬を伝った汗を拭った。

 

「ほう? 感じ取ったか。私の力の強まりを」

 

「力の強まり……?」

 

「私の肉体は複数存在する。そしてそれらの肉体の得た経験は別の肉体にも共有される。無論、戦闘経験であってもだ。そして、イマージュ・オリジスと同質となった肉体は戦闘経験をもとに進化する。今しがた別の私が倒された。相手は、千冬と柳韻だ」

 

「千冬姉……!?」

 

「父上まで……」

 

「柳韻の最後の一太刀。あれは効いた。だが、それも()()()()

 

剣を構える季檍。一夏と箒は攻撃が来ることを即座に予感する。

 

「理解したか? そうだ。今の私は、私を倒した柳韻を超えているっ!」

 

瞬間移動と錯覚するほどの俊敏な動きで距離を詰めた季檍が、一夏へ襲いかかる。

 

「はあっ!」

 

「ぐっ……!?」

 

想像を絶する強烈な一撃に、防御が間に合ったはずの身体が悲鳴をあげる。

 

「一夏!」

 

箒の攻撃が季檍に当たるが、ダメージはほとんど与えられない。

 

「効かんわぁ!!」

 

一夏を蹴り飛ばして反転した季檍は、標的を箒に切り替えてブレードを振り下ろす。

 

「ぐ、ぐああっ!!」

 

《雨月》と《空裂》を交差させて防いだ箒だったが、季檍の一撃は二振りの刀を易々と砕き折り、箒を吹き飛ばした。

 

「まだ……だぁっ!」

 

空中で踏みとどまった箒は扇刃《風牙》を投げ、その刃で季檍を狙う。

 

「ふんっ!」

 

風牙を薙ぎ払った季檍。その眉が驚きをもってわずかに上がる。

風牙のすぐ後ろ。斬撃ビット《斬鶴》が隠れるように飛んでいた。

 

「チッ!!」

 

斬鶴が季檍の身体に突き刺さり、連続して爆発。ぐらりと季檍が傾く。

 

「一夏っ!」

 

「うおおおおおっ!!」

 

零落白夜を発動した雪片弐型による怒涛の連続攻撃。

四、五撃をその身に受けた季檍は、六撃目をブレードで受け止めた。

 

「……!」

 

「その程度——かあっ!」

 

「うああっ!!」

 

一夏の剣を弾き、袈裟斬り。白式の装甲に抉られたように大きな傷が走る。

 

「う、く……かはっ……!」

 

一夏自身も絶対防御によって致命傷を免れたが、その衝撃は凄まじく、膝を折って倒れる。

 

「もはや貴様らと遊んでいる暇はない。そろそろ、終わりにさせてもらう」

 

ブレードを床に突き刺した季檍。すると《真・白式》の胸部装甲に十字に裂け、その内側から半分ほど肉体に埋まった青い水晶が露わになった。

砲口。

一夏はそれが何なのかを、直感的に理解した。

 

「塵芥と成り果てろ!」

 

水晶の中に光が満ち、一気に解放される。

エクスカリバーに匹敵するエネルギーが、一夏へ迫る。

 

「一夏ああああっ!!」

 

直撃の間際、叫びとともに箒が一夏とビームの間に割り込んだ。

紅椿の装甲は、金色の粒子を纏い、輝いている。

 

「ぐ……! おおおおおおおっ!!」

 

両手を突き出し、自ら壁となって光軸を一身に受ける箒。

ワンオフ・アビリティー《絢爛舞踏》によるエネルギーの増幅。その全てを絶対防御に回して、紅椿を盾に変えたのだ。

季檍は飛び散る光の切れ目からその様をせせら嗤う。

 

「自らを盾にするか。だが、いつまで耐えられるかな?」

 

季檍の言う通り、紅椿の装甲が負荷に耐えられずにひび割れ、徐々に消えていく。

箒自身も不断に続く絶対防御発動による衝撃に苦痛の表情を浮かべ、じりじりと後退していた。

 

「箒、やめろ! それ以上は紅椿が……お前が……!」

 

立ち上がろうと四肢に力を込める一夏。

光の激流と向き合っていた箒は、一夏に振り向いた。

 

「勝て。一夏……!」

 

それは、託すような、祈るような、言葉。

ビームの発射が終わると同時に、最後まで残っていた紅椿の手足の装甲も消滅し、

 

「………………」

 

箒は力尽き、音もなく崩れ落ちた。

 

「箒! 箒ぃぃぃっ!!」

 

倒れ臥す箒を呼ぶが、返ってくる声は無い。

 

「安心しろ。すぐにお前も後を追う」

 

砲口を収納して、一夏へ近づく季檍。

 

「む……?」

 

だが、その足がピタリと止まった。

 

「これは……」

 

季檍が目にしたのは、一夏の周囲に漂う金色の粒子。紅椿の絢爛舞踏の名残が、白式の装甲に浸透していく。

 

(勝て。一夏……!)

 

数十秒前に聞いた言葉が、頭の中にもう一度響く。それは水面に広がる波紋のように一夏の身体に、力となって広がっていった。

 

「……ああ、任せろ」

 

一夏はわずかに口の端を上げ、その目に強い輝きを取り戻す。

 

「必ず、——勝つ!」

 

立ち上がった一夏に、季檍は嘆息するように鼻を鳴らした。

 

「まだ足掻くのか。身体はとうに限界のはずだろう」

 

「背中、押されちまったからな」

 

金色の光を放つ白式のエネルギーが計測不能領域に突入する。

 

「織斑季檍。俺は、あんたを倒す!」

 

「出来るものなら……やってみろ!!」

 

初動から最大速度で突っ込んだ季檍を一夏は真正面から受け止め、押し返す。

反撃に転じた一夏が雪片弐型を振り下ろすのを見て季檍はその刃を掴もうとしたが、その左手に深く刃が入った。

 

「ばかなっ!?」

 

「だああああっ!!」

 

一夏はそのまま踏み込み、季檍の左手を斬り飛ばす。

 

「くっ……! なんのぉっ!」

 

横一線に振るったブレードが一夏を打ち据える。

 

「肉体も精神も脆く! 弱者を踏みにじることしか出来ぬ生命が! この私を倒すなどと!」

 

足を踏ん張り、攻撃に耐えた一夏は雪片の切っ先を季檍に伸ばした。

 

「脆くても、弱くても、俺たちは助け合える! 人を見下すことしかできないあんたに! 俺たちは負けない!」

 

「ほざくなあっ!」

 

躱して距離を取った季檍の背中が蠢き、外皮を突き破るように何かが生え出る。翼、というよりもブースターに近いそれの後方から炎が噴き上がった。

 

「所詮お前も千冬も失敗作! 地球の生命体の頂点に立つ私に勝てるはずもない!」

 

獣のように低い姿勢で飛び出した季檍が白式の装甲を砕く。

一夏はハイパーセンサーの感度を自身の限界にして季檍を追うも、捉えきることが出来ない。その間にも白式のエネルギーは削られていった。

 

「しゃあっ!」

 

季檍の動きが止まった直後、一夏の背中が裂けて鮮血が飛散する。

 

「……っ!」

 

前のめりに倒れかけた一夏は手放しそうになった意識を懸命に繋ぎ留め、季檍を睨みつけた。

 

「よくも耐える。だが……もう死ね!」

 

再度加速した季檍。

 

(来る……!)

 

一夏は乱れた呼吸を落ち着け、季檍の気配を探る。

 

(俺から当てに行くよりも、向こうの動きの方が圧倒的に速い……だったら!)

 

覚悟を決め、身構える。これが最初にして最後の賭け。

研ぎ澄ました感覚が、正面から襲い来る季檍の存在を掴む。

 

「トドメだあっ!!」

 

季檍の剣が、一夏の胴を貫いた。

 

「……ぐぶっ……!」

 

一夏の吐いた血を浴びながら、勝利を確信する季檍。

しかし、一夏は崩れ落ちそうな足で耐え、季檍の腕を掴んだ。

 

「なにっ……!?」

 

「捕まえ、たぞ……!」

 

白式の左腕。第二形態と同じ名の荷電粒子砲《雪羅》の砲口が輝く。

 

「お前、まさか相打ちを——!」

 

「これで……終わりだああぁぁぁぁっ!!」

 

解き放たれる白式のありったけのエネルギー。

光の波濤に飲み込まれ、季檍の身体が溶けていく。

 

「ぐおおおあああああ!!?」

 

響き渡る絶叫すら光の中に霧散し、白式のエネルギー放射が終わるとバングルが床に転がった。

 

「はあ……はあ……!」

 

肩を上下させる一夏は足元を血に濡らし、目からは生気が消えかけている。

痛いほどの静寂がエクスカリバーを支配し、そこに立つのは、一夏ただひとり。

……では、なかった。

 

(ま、まだだ……。まだ、私は負けていない……!)

 

季檍。彼はまだ諦めていなかった。

肉体を失い、《真・白式》のバングルに意識を逃し、反撃を狙っている。

 

(私のスペアは、まだいくらか残っているはず! やつは虫の息だ。万全の状態の私ならば一撃で——)

 

直後、季檍は思考を中断した。せざるを得なかった。

 

「やら……せ……るか……!!」

 

一夏が、迫っている。

満身創痍になり、雪片弐型の切っ先を引きずりながらも。

《真・白式》へ。季檍へと。

たしかに近づいてきている。

 

「ば、バカなっ!? あれだけのダメージで、まだ動ける……!?」

 

「させ、ない……! お前は……ここで……!」

 

(く、くそっ! 早く次の私を……!)

 

しかし、地上で煉獄(インフェルノ)に燃やされた中で、無事な肉体は簡単には見つからない。

季檍は時間を稼ぐために白式のプライベート・チャンネルに強制介入し、一夏へ訴えかける。

 

『ま、待て! 待つんだ一夏! 落ち着け。私が消えるのは、この世界の損失だ! 私の力は、この世界になくてはならない!』

 

「………………」

 

一夏は耳を貸さず、雪片弐型を振り上げる。刀身がスライドし、エネルギー刃が顕現した。

 

『あああっ!? やめろ! やめてくれ! そ、そうだ、お前も私と同じにしてやる! 完全な生命体だ! 私の理想郷に、お前も加えてやろう!』

 

季檍の言葉に反応したように、ピタリと一夏の動きが止まる。

 

「理想郷……そう言ったか?」

 

一夏のきわめて低い声音での問いかけに、季檍は付け入る隙を見つけたと安堵する。

だが次の瞬間、答えを聞くこともなく、一夏の瞳に激情が宿った。

 

「あんたの理想郷は、誰も幸せにできない! あんた以外の、誰も!!」

 

叫びと共に振り下ろされたエネルギー刃が、バングルを粉砕した。

 

『うわああぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

接続されたままだったプライベート・チャンネルに、季檍の断末魔が尾を引く。

斬痕の残る床を見つめる一夏の手から、雪片がこぼれ落ち、粒子となって消える。

 

「さよなら。……父さん」

 

今度こそ膝をつき、うつ伏せに倒れる一夏。身体に力が入らない。

白式の残存エネルギーは零に近しい。

だが、指一本も動かすことができない。

 

「限界か……。箒は……」

 

うつ伏せのまま目だけを動かして、同じように倒れている箒を見つけた。

多少の怪我はあるが、呼吸はしている。

 

(ああ、よかっ……た……)

 

安堵した瞬間、一夏の意識は混濁の渦に飲まれた。

 

 

 

六枚の光の翼をはためかせ、全身の装甲から星のような煌めきを放つ《G-soul》。

シャルロットたちはその光景に歓声を上げた。

 

「瑛斗、G-soulを取り戻したんだ!」

 

「やってくれるじゃない!」

 

「全く……気を揉ませるんだから」

 

「っしゃあ! ガキ! そのままやっちまえ!」

 

ただ一人、季檍だけはG-soulに敵意を剥き出している。その目に、暗い光を滾らせて。

 

「よもや、あの状態から蘇るとはな……!」

 

「俺と同じように、G-soulも諦めていなかったんだ」

 

「だが、その姿を取り戻したとて、力は大幅に削られているはず! この私に勝てるか!」

 

輝きを塗り潰さんと牙を剥く、黒く歪んだ《真・白式》。

激突した二振りの剣を間に挟み、顔を付き合わせる。

 

「やはり、軽いなっ!」

 

「くっ!」

 

振り抜かれた季檍の剣を受け、瑛斗は後方に推し飛ばされる。

 

「そしてぇっ!」

 

次の瞬間、瑛斗は横から強い衝撃を受けた。

 

「!」

 

「お前の相手が私だけだと思うな!」

 

イマージュ・オリジス。この宙域にいた蟲たちが、瑛斗に押し寄せたのだ。

 

「もらったぁっ!」

 

季檍の一撃が迫る。しかし——。

 

「瑛斗はやらせないよっ!」

 

シャルロットが割って入り、コスモスの盾で季檍の剣を止めた。

 

「シャル! 助かった!」

 

盾を飛び越えた瑛斗がビームブレードで季檍を斬る。

 

「ぐあっ!?」

 

「あなたの相手も!」

 

「ガキだけじゃねえ!」

 

左から火球。右から振動波を叩き込まれ、季檍の身体が爆裂に晒される。

 

「やあああっ!!」

 

その爆裂を鈴の操る天刀吏舟の拳が砕き、季檍はイマージュ・オリジスに身体がめり込む。

 

「お前に……お前らごときに……()()()……!」

 

真・白式の胸部装甲が開放され、青く光る水晶が露わになる。

 

「負けるかああああっ!!」

 

そして発射される極大の光線。エクスカリバーの砲撃に引けを取らない威力を持って、瑛斗たちへ突き進む。

身構えたシャルロットたちを守るように、瑛斗が前に出た。

 

「みんな、力を貸してくれ!」

 

瑛斗の声と共にG-soulの装甲がより強く輝き、無数に伸びた光の帯がシャルロットたちと瑛斗を繋ぐ。

G-soulのワンオフ・アビリティー《G- entrasted》。

他のISを吸収、己の力へと変換するその光は焔となり、瑛斗の右腕を包みこんだ。

 

「おおおおおおっ!!」

 

季檍の放った攻撃を真正面から切り裂きながら、瑛斗は季檍本体へと突き進む。

 

「無駄な足掻きだ!」

 

季檍の背に生える黒翼が形を変え、無数の棘を四方八方へ伸ばす。

その棘はイマージュ・オリジスたちを貫き、貫かれたイマージュ・オリジスたちは草木が枯れるようにその色を失い消えていく。

 

「諸共、消えろおっ!!」

 

イマージュ・オリジスたちのエネルギーを吸収し、攻撃の威力が膨れ上がる。

それでもG-soulは、瑛斗は止まらない。

虹色の軌跡を描き、ただひたすら、前へと進む!

 

「またしても……!」

 

消えない焔に歯噛みする季檍は、さらに威力を上げる。数多の同胞のエネルギーを吸収し、何度も。何度も。

しかし、燃え盛る焔が消え去ることはない。

 

「またしても——!」

 

瑛斗と季檍の間合いが、零になる。

 

「またしてもっ!! 我々を阻むのか! インフィニット・ストラトスゥゥゥゥッ!!」

 

「はああああああっ!」

 

瑛斗の右腕が纏う焔が、季檍に向けて放たれた。

 

「グわあアァあアあああっ!?」

 

灼熱に晒され、崩壊する真・白式と季檍の身体。

爆炎が消え、身体の半分以上を失った季檍が瑛斗の前に現れる。

 

「俺たちの勝ちだ。織斑季檍!」

 

「ふ……ははは……!」

 

しかし、季檍は引き裂くような笑みを浮かべていた。

 

「私を倒したことは、褒めてやろう。だが……地上は、どうなっているかな……!」

 

「なんだと?」

 

「彼らの数が、この一帯にいただけだと思ったか? 地上には、この何百、何千倍と……!」

 

季檍の言葉の意味を理解した瑛斗が焦りの顔つきで眼下の地球を見やる。

 

《——残念だけど、お前の思い通りにはならないよ》

 

耳朶を打った声は、天刀吏舟のナビゲーションをしていた束だ。

 

「博士?」

 

「思い通りにならない? どういうことだ?」

 

《割と貧困な想像力だね。並行世界から来たのが、お前たちイマージュ・オリジスだけだと思うのかい?》

 

「なに……?」

 

訝しんだ季檍。だが、その表情がみるみる驚愕に塗り変わっていく。

 

「まさか!?」

 

《そう。来たんだよ。お前たちを追って。お前たちの天敵が!》

 

 

ロシア。モスクワ郊外。

突然現れて破壊活動を続けるイマージュ・オリジスにより、街はパニックに陥っていた。

 

「ナスティーア! イゴル! 僕のそばを離れるなよ!」

 

地下室で眠っていたEOSを操縦し、蟲たちから懸命に家族や逃げ惑う人々守るアレクセスだが、一人では限界があった。

 

「兄さん! 危ない!」

 

「うわあっ!?」

 

蟲の体当たりに姿勢を崩し、膝をつく。

その隙をついて、イマージュ・オリジスがアレクセスに襲いかかった。

 

(……!)

 

やられる。

そう認識した直後、一瞬が何秒、何十秒に引き延ばされる感覚に呑まれるアレクセス。

だが、上から降り注いだ無数のレーザーが寄せ来るイマージュ・オリジスを一掃した。

 

「な、なんだ……?」

 

目を瞬くアレクセスの耳に、音が聞こえた。

 

「何か聞こえる……?」

 

音は連なり、旋律へ。

 

「これって……音楽?」

 

ナスティーアやイゴルにも、それは聞こえていた。

遠くから聞こえる音楽は、少しずつ近づいてくる。

それにしたがって、更に聞こえてきたのは——。

 

()だ! 歌が聞こえる!」

 

イゴルの声に人々は空を見上げる。

人々の視線を集めたのは、星を背負ったIS。

そのISには、二人の操縦者がいた。

 

「間に合ったね!」

 

水色の髪の少女の声に、オレンジの髪の少女が頷く。

 

「ええ。掴みはバッチリ。それじゃあ——始めましょうか!」

 

「うん! 始めよう!」

 

「「私たちの()()()を!」」

 

背負う星型のユニットが展開し、共振装置となって歌声を伝播させ、歌声に乗った攻撃がイマージュ・オリジスたちを蹴散らす。

 

「なんだ……この歌……」

 

「とっても暖かくて……」

 

「元気が湧いてくる!」

 

全身に響く歌声に、怯えと恐れに塗り潰されていた人々の目に光が戻る。

 

「すごい……あんなISもあるんだ……!」

 

空を見上げて感激するナスティーア。

だが、歌声の中で一度は動きを止めた蟲たちも再び破壊のために動き出す。

 

「おっと、行儀が悪いね」

 

ナスティーア目がけて飛びかかった蟲に瓦礫の隙間から伸びた触手が突き刺さる。

 

「え? きゃあっ!?」

 

振り向いたナスティーアは目前まで迫っていた蟲に驚いて尻餅をつく。

 

「怪我はないかい?」

 

そう声をかけて手を差し伸べたのは、顔をバイザーで隠した、黄色いISを操縦する少女。

 

「は、はい……」

 

ナスティーアがその手を掴んで立ち上がると、少女はナスティーアの手に自分の手を重ねた。

 

「ああ、なんと可憐な花だ! やはりこちらの世界も愛されるべき花たちが咲き乱れている!」

 

「は、花? えっと……」

 

困惑するナスティーアは、少女の背後から新手の蟲が迫るのを見た。

 

「あ——!」

 

危ない。

そう叫ぼうとした時には、少女の駆るISから伸びた触手に蟲たちは貫かれていた。

 

「まったく。無粋にもほどがあるよ」

 

振り返った黄色のISを操る少女の目に鋭い光が差す。

 

「名残惜しいけれど、レディ、どうか他の人たちと一緒に安全なところへ」

 

手を離した少女は、空いた手にロングライフルを召喚し、照準をイマージュ・オリジスたちに合わせる。

同時にISから伸びていた触手の先端が開き、銃口が覗いた。

 

「どの世界に逃げようとも、私たちは君たちを討つ! この世界の花たちも、私が守ってみせよう!」

 

決意の砲火が、戦場に大輪の花を咲かせる。

 

 

「くっ……はあっ!」

 

振り払った蟲にレーザーライフルの銃口をねじ込み、一撃で仕留める。

 

しかし迫るイマージュ・オリジスの数は減らない。倒すそばから増えていくのだ。

 

「——あっ!」

 

とうとう最後のビットも寄せ来るイマージュ・オリジスを躱しきれず、押しつぶされて破壊されてしまった。

ブルー・ティアーズに残された武器はレーザーライフルのみ。

幾千の蟲を倒すことは不可能に近い。

 

(ここまで……かしら……)

 

襲いかかるイマージュ・オリジスの群れが、スローモーションに見える。

セシリアが己の死を予感した、その時だった。

空から何かが雨のように降り注ぎ、セシリアを取り囲む蟲達を一掃した。

 

「な、なにが……!?」

 

セシリアは手元に転がったそれ拾い上げる。

その輝きに、見覚えがあった。

 

「宝石? ……だ、ダイヤモンドっ?」

 

顔を上げたセシリアの前に降り立った、一機のIS。

橙色の装甲をしたその機体の操縦者が、バイザーの奥からこちらを見ている。

 

「一人でよく頑張ったね。セシリア!」

 

自分のことを知っているような口ぶり。だが、セシリアにはその声も、姿も、何一つ知らなかった。

 

「あなたは……?」

 

「ん? あ、そっか。えっと……通りすがりのおねーさんだよっ!」

 

「え、ええ?」

 

目を白黒させるセシリア。その頭上からまた別のISが降り立った。

 

「ちょっと! 不用意な会話は混乱を招くから気をつけてってば!」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

翡翠の機体色が眩しいそのISは、東洋の龍のような武装が目を引いた。

操縦者は橙色の操縦者よりもいささか、いや、かなり幼く見える。

同様にバイザーで顔を隠しているが、左から伸びるサイドテールが特徴的だった。

 

「うわぁ……めちゃくちゃいるじゃない。性懲りも無く数に頼った戦い方とはね」

 

イマージュ・オリジスを睨め付けながら、少女は巨大な青龍刀をバトンのように軽やかに操り、構える。龍型のユニットの口部も帯電を始める。

 

「鈴がいないのは残念だけど、言ってる場合じゃなさそうね」

 

「お、やる気満々だ! いいよ。おねーさんも負けないから!」

 

巨大な拳のようなユニットをぶつけ合い、煌めく塊が生成される。

 

「セシリアは休んでて。大丈夫。すぐに終わらせるから!」

 

「あ、ちょ、ちょっと!」

 

セシリアの止める声も聞かず、二機のISが無数の蟲たちに立ち向かう。

 

「よその世界にまで迷惑かけて、お仕置きしてあげるわ!」

 

「ここからは私たちの仕事! こっちのセシリアにも、おねーさんらしいところを見せないとね!」

 

突然現れた未知の増援。

セシリアはただただ首をひねるしかなかったが、彼女たちが味方であることは確か。

 

「……負けてはいられませんわね」

 

トリガーを握る手に力を込めて、折れかけていた膝に喝を入れる。

 

「わたくしの底力、見せて差し上げます!」

 

その目に、再び闘志が灯った。

 

 

イマージュ・オリジスの不意打ち。

その衝撃に備えて目を閉じた蘭がまず最初に見たのは、眼前で止まる巨大なイマージュ・オリジスの拳。

同時に見えたのは、その拳の甲にあたる部分に突き刺さったエネルギーの矢。

 

「な、なに、これ……」

 

「上だっ!」

 

ラウラの声を受け、弾かれるように顔を上げる。

そこにいたのは、黄色を基調とした、見たことのないIS。

 

「——間に合いましたね」

 

バイザーで顔を隠した白いISスーツに身を包んだ操縦者の少女の声が、オープン・チャンネルから聞こえる。

 

「そこの方、怪我はありませんね?」

 

呆然としていた蘭は、話しかけられているのが自分だと気づくのに二秒ほどかかった。

 

「え、あ、は、はい! 大丈夫、です……。あの、あなたは?」

 

答えた勢いで問いかける。しかし、少女は首を横に振った。

 

「申し訳ありませんが、故あってそれはお答えできません」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「蘭ちゃんを助けてくれたのは感謝するけど、それは困るわね」

 

割り込んだのは楯無。槍を構えて、少女を見つめている。

 

「その機体、見たことがないわ。量産機とも思えない。知ってると思うけど、私はロシア代表の更識楯無。大人しく素性を明かした方が賢明よ?」

 

少女は答えないまま高度を下げ、楯無たちと同じ水面に立つ。

 

「なんと言われようと、お答えはできません。ですが——」

 

瞬間、水面を蹴った少女は楯無の真横を通り過ぎ、背後に迫っていたイマージュ・オリジスにその脚部装甲を叩きつけた。

水面に広がる波紋が蹴りの威力を物語り、蟲はなす術もなく爆裂する。

 

「どうかご安心を。私は、()()()はあなた方の味方です」

 

「私たち?」

 

まだ誰かいるのか。そう考えて周囲を見渡すが、自分たち以外にはイマージュ・オリジスしかいない。

 

「先ほど彼女たちが破壊した樹は、世界中に点在しています。ですので、私の仲間たちも、世界中に散らばっているのです」

 

「どこかの組織、ということか?」

 

問いかけたラウラの方を見た少女は、バイザーの下で小さく笑った。

 

「ラウラさん……。見知った顔を見ると、落ち着きますね」

 

「……? いったいどういうことだ。お前は——」

 

ラウラの言葉を遮って、イマージュ・オリジスが咆哮とともに殺到する。

戦いは終わったわけではないのだ。

 

「今はこのイマージュ・オリジスを片付けるのが先決です」

 

「……どうやら、そのようね。マドカちゃん、ラウラちゃん。蘭ちゃんと梢ちゃんのフォローを頼めるかしら。簪ちゃんは私の後衛をお願い」

 

「了解した!」

 

「任せてください!」

 

「うん!」

 

武器を構えなおし、360度取り囲むイマージュ・オリジスたちと対峙する少女たち。

 

「あなたには、後でゆっくり話を聞かせてもらうわよ?」

 

「約束は致しかねます」

 

「もう、可愛くないんだから」

 

嘆息した楯無。少女はさらに言葉を重ねた。

 

「その代わり、戦力としては期待してくださって構いません。彼らの相手は、慣れています」

 

二度まばたきをした楯無は、脳内でピースのはまる音を聞いた。

 

「……ああ、そういうこと」

 

ひとりごちた楯無は、すぐに真剣な表情に戻る。

 

「さあ、いくわよ!」

 

押し寄せる蟲たちと、迎え撃つ少女たち。

地上での戦いは、終結へ向かっている。

 

 

アメリカ。

ビル街で戦闘を継続していたフォルテとダリルは、増援に来た米軍IS部隊とともにイマージュ・オリジスたちの迎撃にあたっていた。

 

「チッ! こいつらマジで無限に湧いてくるぞ!」

 

寄せ来るイマージュ・オリジスを火炎で焼き払いながら歯噛みする。

 

「おい! 樹の方はどうなってる!?」

 

近くにいたファング・クエイクを展開する隊員に吠えると、似たようの口調で怒鳴り返された。

 

「この蟲どもの壁が厚くて届かねえよ! 民間人の救助もまだ終わってない! 手一杯だ!」

 

「くそっ! せめてあの壁を超えれたら……!」

 

歯噛みしたダリル。その横のビルの壁が内側から吹き飛び、瓦礫とともにフォルテが飛び出した。

 

「こいつで、トドメっす!」

 

叩きつけられた掌を起点にイマージュ・オリジスは氷の中に密閉され、直後に粉々に砕け散る。

 

「よお、フォルテ。それで何体目だ?」

 

「十から先は数えてないっすよ。先輩は?」

 

「五から数えてねえ」

 

「先輩らしいっちゃらしいっすね……」

 

「で、どうする」

 

「火力の一点集中でブチ抜く! それしかないっすよ!」

 

「……へへ。それしかねぇよなぁっ!」

 

炎と氷が巻き起こる。二人がイマージュ・オリジスの壁に突き進もうとした瞬間、隊員の叫びが耳をつんざいた。

 

「待て! ビルに人が!」

 

ダリルとフォルテは、イマージュ・オリジスが群がり半壊した前方のビルを同時に見上げた。

 

「まだガキが残ってやがったか!」

 

外壁が崩れて露わになった部屋に女の子が一人。視力の強化された目が、パニックになって泣き叫ぶその顔を鮮明に捉えた。

 

「ヤバい! ありゃもう崩れるぞ!」

 

「させないっす!」

 

「フォルテ!?」

 

弾丸のように飛んだフォルテは周囲の空気中の水分を氷に変えて、子供に迫るイマージュ・オリジスを攻撃する。

眼前に迫っていた蟲が氷の槍に貫かれ、壁に磔にされて凍りついていく様を呆然と見つめる女の子は遅れて部屋に飛び込んで来たフォルテに本能的に視線を移した。

 

「もう大丈夫っすよ。さあ、こっちに!」

 

「う、うんっ!」

 

フォルテは掴んだ手をぐいと引き寄せ、しっかりと女の子を抱きかかえた。

 

「フォルテ急げ! ビルがもうもたない!」

 

ダリルの言う通り、部屋にも大きな亀裂が走っている。

 

「飛ばすっすよ! 捕まってるっす!」

 

部屋を出て空へ飛んだフォルテ。同時に、ビルが崩壊した。

フォルテの視界に、フッと影が差す。顔を上げたフォルテが見たのは、巨大な牙の生えた口を開いたイマージュ・オリジス。

 

(迎撃——! でも、この子が……っ!)

 

一瞬の躊躇い。それがイマージュ・オリジスの攻撃が直撃することを確定させた。

 

「フォルテッ!」

 

「……っ!」

 

衝撃に備えて硬く閉じた目を開けたフォルテは、鼻先で止まるイマージュ・オリジスの状態に戸惑った。

 

「——()()()()()()()()()?」

 

このイマージュ・オリジスよりもさらに上。

気配のした方を見ると、見たことのない赤と青のISを纏った何者かが、こちらを見下ろしている。

 

「なんだあいつは? いつの間に……」

 

フォルテが助けられた一部始終を見届けたダリルは、そのISの放つただならぬ雰囲気に操縦者の強さを感じていた。

 

「な、なんすか、お前……」

 

「………………」

 

女の子を守るように抱き寄せ、警戒するフォルテ。

 

「………………」

 

バイザーの奥の瞳にフォルテを映した操縦者の少女は、どこか安堵したように口元に微笑を湛えた。

 

「……そう。こっちのあなたも、そういう人なのね」

 

「こ、こっち? そういう?」

 

少女が何を言っているのかわからないでいると、その背後に無数のイマージュ・オリジスが殺到するのが見えた。

 

「危ない! 後ろ!」

 

フォルテより先に、フォルテの抱える女の子が叫び、少女が振り返る。

 

「えぇーいっ!」

 

同時に、幼くも勇ましい叫びと共に吹き荒れた爆風が、迫り来るイマージュ・オリジスを崩落するビルの瓦礫ごと薙ぎ倒した。

 

「だっ、だいじょう、ぶ?」

 

現れたのは、少女と同じタイプのバイザーで顔を隠す、ひとまわり小柄な少女。纏う黒いISは、そのアームに機体よりも大きなブレードを握っている。

 

「ええ。助かったわ。ありがとう」

 

「えへへ……!」

 

赤と青のISの少女に頭を撫でられ、嬉しそうに身じろぐ黒いISの少女。

キョトンとするフォルテの横に、ダリルが飛んできた。

 

「救援感謝するぜ! 見たことねえ機体だな。どこの支援だ?」

 

「……それは言えないわ。答えられない」

 

「あ?」

 

「言えないって、どういうことっすか?」

 

赤と青のISの少女の言葉に対するフォルテの問いに、黒いISの少女が答える。

 

「んっとね、えっとね。は、博士が、言っちゃダメだって……あっ!」

 

咄嗟に自分の口を両手で塞ぐが、もう遅い。

 

「博士? まさか、篠ノ之束博士っすか?」

 

「あ、あわわ……!」

 

重ねられたフォルテの問いに、黒いISの少女がしどろもどろになると、赤と青のISの少女が引き継いだ。

 

「そちらの想像に任せるわ。あながち間違ってはいないから」

 

「まあ、あのトンデモ博士なら、隠し球の一つや二つ用意してるか。だが、どうする? あの壁、かなり厚いぞ」

 

「大丈夫。ここは私たちに任せて、あなたたちはその子を。——行きましょう」

 

「は、はいっ!」

 

二人の少女がさらに高度をあげ、イマージュ・オリジスの壁を見据える。

 

「準備はいいわね?」

 

「が、頑張り、ますっ!」

 

大剣を掲げる黒いISの少女に微笑み、赤と青のISの少女は無数のミサイルを展開する。

 

「イマージュ・オリジス……どこに行こうと、私が倒す!」

 

一斉発射された小型ミサイルの豪雨が蟲たちに降り注ぎ、続いて撃ち出された三発の大型ミサイルが壁を一気に瓦解させる。

 

「今よっ!」

 

「……っ! やああああああっ!!」

 

内側から溢れたエネルギーを纏った大剣が振り下ろされ、大樹を根こそぎ消し飛ばした。

 

「な、なな、なんすか!? なんなんすかアレ!? マジヤバいっすよ! マジパネぇっすよ! 先輩!」

 

押し寄せる瓦礫と暴風から女の子を守りながら、語彙力のない驚嘆の声をあげるフォルテ。

 

「わかってるから落ち着け! しかし、本当になんなんだありゃ。どっかの国家代表なのか……?」

 

ダリルは二人の正体を勘ぐったが、明確な答えなど出るはずもなく、今この状況を好機と見ることだけに意識を向けた。

 

「ポッと出の奴らに遅れをとるな! ここで一気に押し切るぞ!」

 

ダリルの号令で士気を持ち直した部隊メンバーたちから、雄叫びが上がる。

防衛戦は、殲滅戦へ移行した。

 

 

「やつらも、別世界への転移の方法を手に入れていたのか……!」

 

《お前の負けだ! 織斑季檍……いや、イマージュ・オリジス!》

 

「おのれ……おのれええええっ!!」

 

束の宣告を受け断末魔とともに消滅する季檍。

 

《えっくん! まだだよ!》

 

「はい!」

 

消えていく季檍へ肉薄した瑛斗は、最後までまだ残っていたバングルを掴み、握り潰す。

G-soulの手から粒子が漏れ、季檍は文字通り宇宙の塵と化した。

 

「これで終わった……んだよな? スコール」

 

それを見届けたオータムが、スコールへ顔を向ける。

 

「ええ。そのはずよ」

 

「いいや、まだだ」

 

瑛斗が首を横に振った。

 

「そうよ! まだ終わってなんてないわ!」

 

鈴も瑛斗に同調して天刀吏舟の内部で叫ぶ。

 

「一夏と箒がまだエクスカリバーの中に!」

 

「まだ織斑季檍と戦っているかもしれない。僕たちも行こう!」

 

シャルロットの声に頷いた一同が動こうとした瞬間、エクスカリバーの上部が内側から爆発した。

 

「なんだっ!?」

 

「エクスカリバーが……」

 

「崩れていく……」

 

スコールの言葉通り、爆発は連鎖し、伝説の聖剣の名を冠する衛星兵器はその形を失っていく。

 

「二人との連絡は!?」

 

鈴が言った時にはすでに試みていた瑛斗は、渋面を作って首を左右に振った。

 

「ダメだ。繋がらない! 妨害されてるか、ISが損傷してるか……!」

 

「そんな……! 箒……一夏ああああっ!!」

 

鈴の悲鳴に近い声が、天刀吏舟のコクピットに木霊した。

 

 

「ぅ……?」

 

ぼやけた視界が次第に明瞭になっていく。

意識を取り戻した箒は、全身にこびりついた鈍痛に顔をしかめながらゆっくりと身を起こした。

 

「あれからどれくらい経った……? 一夏は?」

 

立ち上がった箒は、周囲に広がる戦いの爪痕の只中で血の海に倒れる一夏を見つけた。

 

「一夏っ!」

 

駆け寄り、一夏を抱き起こす。

 

「一夏! 起きろ! 目を開けてくれ! 一夏っ!」

 

呼びかけると、一夏は薄く目を開けた。

 

「ほう、き……」

 

「一夏、しっかりしろ!」

 

「箒……俺、織斑季檍を……倒したよ……」

 

一夏のそばには、零落白夜の一撃によって穿たれた大穴がある。

 

「お前の声が、聞こえたんだ……」

 

「そうか……。よくやったな……!」

 

箒が安堵の表情を浮かべたのもつかの間、エクスカリバー全体が揺れ始めた。

 

「な、なんだ? 爆発っ?」

 

首を巡らせる箒は、足元や壁面に亀裂が走っていくのを見た。

 

「まさか、エクスカリバーが崩壊するのか!?」

 

一夏は、うろたえる箒の肩を力なく押した。

 

「行ってくれ……。俺は、ここまでだ……」

 

「何を言っている! お前を置いて行けるわけがないだろう! 紅椿! 《絢爛舞踏》だ!」

 

箒の呼びかけに答え、フレームを剥き出しにしながらも、どうにか展開される紅椿。しかし、先ほどの戦いで消耗しきっているためか、絢爛舞踏の発動は満足にはいかない。

 

「くそっ! 何か手段は……!」

 

「箒、いいんだ……! まだ、間に合う。紅椿が展開できたんだ。お前だけなら……助かる……っ!」

 

「ダメだ! お前がいなくなったら、私は……私は……!」

 

箒の瞳からこぼれた熱い水が、一夏の頬に落ちていく。

 

「箒……どうして……」

 

「どうして、だと? ——決まっている!」

 

箒は一夏の手を取って力強く握りしめた。

 

「愛しているからだ! 一夏! 私はお前を愛している! お前のいない世界など、考えられないっ!」

 

「………………」

 

僅かに目が揺れる一夏。箒は溢れ出す感情をそのまま言葉に変えていった。

 

「好きだ。好きなんだ、一夏……! 二度と離ればなれになんてなりたくない。ずっとお前のそばにいたい……!」

 

「箒……お……れ、は……」

 

吐息のような小さな声は途中で途切れ、一夏は目を閉ざす。

 

「一夏? 一夏っ! いち……うっ!?」

 

エクスカリバーの爆発は勢いを増していき、振動が強くなる。

二人のいるブロックも完全崩壊は時間の問題だった。

 

「……一夏と一緒なら、何も怖くないんだ……」

 

箒は展開していたはずの紅椿を消し、一夏に寄り添う。

瞼を閉じ、全身の力を抜いた。

だが、箒が感じたのは、温かな輝きだった。

 

「……?」

 

再び目を開けた箒が見たのは、並び立つ二機のIS——のようなもの。

白と(あか)

二つの輝きを背に、その影だけが見えている。

 

「誰……?」

 

「よく……頑張ったな」

 

白い輝きの中から、()()()がした。

その声は、どこか聴き慣れたもの。

 

「ここからは私たちに任せてくれ」

 

(あか)い輝きの中から、()()()がした。

その声は、なぜかよく知っているもの。

 

「お前たちは……いったい……」

 

戸惑う箒に、紅い輝きが手を伸ばす。

すると紅い輝きは金色へと変わり、一夏と箒の周囲を同じ輝きで包み込んだ。

 

「何が起きている……?」

 

輝きは強さを増し、箒の視界を覆っていく。

 

「戦ってくれて、ありがとう」

 

「こちらの世界は、任せたぞ」

 

輝きの声は、少しずつ遠のいていく。

 

「ま、待ってくれ!」

 

箒は輝きを引き止めんと叫んだ。

 

「お前たちは、まさか——!」

 

叫んだ声が届いたか知る由もなく、箒は一夏と共に、エクスカリバーから消え去った。

 

 

「これで、トドメっ!」

 

楯無の放つ槍撃が、最後の一体となったイマージュ・オリジスを貫く。

 

「や、やった……! 梢ちゃん! 私たち!」

 

「……うん。私たちの、勝ち」

 

「周囲に敵影無し。任務完了だ」

 

ラウラの声に手を取り合って喜ぶ蘭と梢。

 

「すごい数だったね……!」

 

「ミサイルも、レールガンも、弾切れ……」

 

マドカと簪は疲労の色を隠せない。

息を吐いた楯無も槍を下ろしかけたが、《ミステリアス・レイディ》が反応をキャッチした。

 

「上から!? みんな、まだ何か来るわよ!」

 

楯無の号令で構え直す蘭たち。

雲を切り裂いて出現したのは、金色の輝き。

そしてその輝きから、天刀吏舟が降ってきた。

 

「……ええええっ!?」

 

真下にいた楯無は大慌てで退避し、天刀吏舟は大きな水柱を立てて海に落ちた。

 

「ど、どういうことなの?」

 

目を白黒させる楯無の上から、無数の声が聞こえてきた。

 

「な、なんだったんだよ今の! ガキ! お前か!?」

 

「俺は何もしてない! いきなり光に飲まれて、気づいたら飛ばされてた!」

 

「学園が見える! 僕たち、地上に帰ってきちゃった!?」

 

「落ち着きなさい! ……幸い、合流はできたみたいだから。ねえ、元生徒会長さん?」

 

天刀吏舟から顔をのぞかせたスコールに続いて、瑛斗たちも顔を出す。

 

「え、ええ! みんな無事なのね!?」

 

「楯無さん! どうなってるんですか!?」

 

降りてきた瑛斗の姿にまたしても度肝を抜かれる楯無。

 

「瑛斗くん、G-soulを取り戻せたのね!」

 

「は、はい。宇宙にいた織斑季檍も倒せました。でも……」

 

「一夏と箒が!」

 

天刀吏舟のコクピットが開き、甲龍を展開する鈴が叫んだ。

 

「一夏と箒がまだエクスカリバーの中に……!」

 

「なんですって!?」

 

「エクスカリバーも崩壊を始めて、助けようとしたらここにいて……チャンネルも繋がらなくて……あ、ああ、どうしたら、どうしたら……!」

 

「鈴、落ち着け! まだ一夏たちが死んだとは限らない。それに白式と紅椿には瞬間移動が可能なはずだ。だから——」

 

「瑛斗、あなたこそ冷静になりなさい。奇跡をあてにするものじゃないわ」

 

「スコール! けどよ……!」

 

《安心して。どうやら心配はないみたいだよ》

 

「博士?」

 

「……あ。み、みんなっ! 上!」

 

気づいた簪が指差した方を見上げる。

中から瑛斗たちが現れた金色の光が、もう一度降ってきた。

しかし、大きさは最初に見たものよりもずっと小さい。

その光の中に、人の形があった。

 

「一夏! 箒っ!」

 

真っ先に気づいた鈴が、光に向かって飛ぶ。続けてマドカ、蘭が飛ぶ。

 

「お兄ちゃん、しっかりして!」

 

「一夏さん! 箒さん!」

 

「一夏っ!」

 

鈴が触れた瞬間に光は消え、鈴が一夏を、マドカが箒を抱える。

 

「ひどい怪我……!」

 

「でも息はあるよ! 学園に戻ろう!」

 

二人を抱えて海面に降りた鈴と箒の言葉に頷きかけたが、瑛斗はあることに気づいた。

 

「こっちは大丈夫なんですか? 織斑季檍は、地上にもイマージュ・オリジスがいるって」

 

「瑛斗くんたちが降ってくる直前に片付いたわ。少なくともこの辺りは」

 

《学園も終わったよ。イマージュ・オリジスは全滅。世界各地に発生したイマージュ・オリジスもすぐに殲滅される。私たちの……この世界の勝ちだ》

 

一同から小さく歓声があがる。

 

「厳しい戦いだったのは確かよ。でも増援が来てくれたの」

 

「増援?」

 

楯無は説明をしようと振り返った。

 

「ほら、あそこにいる……」

 

だが、楯無から続く言葉が発せられることはなかった。

 

「あの子は……?」

 

共闘していたはずの少女の姿が、忽然と消えていた。

 

 

IS学園、中央タワー頂上。

戦いが終わり、学園中に響く止まない歓声を聞きながら、翡翠のISを駆っていたサイドテールの少女は海の方へと視線を投げていた。

その傍らには各地でイマージュ・オリジスと戦ったISと操る少女たちがいる。

 

「あ、来た来た!」

 

前方の空間が歪み、開いた穴から二機のISが現れる。

 

「おーい! こっちこっち!」

 

少女に誘導されて、赤と青のISと黒いISを操縦していた赤い髪の少女と、小柄な少女が降り立った。

赤と青のISの少女は、集まっている面子を見て自分たちが最後だと悟った。

 

「ごめんなさい。待たせてしまったようね」

 

「気にしないで。二人は比較的、数の多いエリアの担当だったもん」

 

濃い青色の髪をリボンで束ねた褐色肌の少女が赤い髪の少女の方を叩く。

 

「いっぱい、いた。でもね、全部やっつけたよ!」

 

「そうね。えらいわ。よく頑張ったわね」

 

赤い髪の少女に頭を撫でられ、小柄な少女はにへっと笑った。

 

「この世界の花たちをもう少し愛でたいところだが、そこは我慢だ。その分は帰ってから楽しむとしよう!」

 

地上の様子を見てはソワソワしていた外に跳ねる白い癖毛の少女は拳をぐっと固めて耐えている。

 

「それではみなさん、準備はよろしいですね?」

 

楯無たちの共闘していた少女がISを展開し、弓形の装備を構える。

 

「これより——(ゲート)を開きます」

 

弓の先にエネルギーが収束し、撃ち出される。

虚空に放たれたエネルギーは空間に沈み込むと、捩じ切るようにして空間に穴を開けた。

門の向こうには、この世界とは違う、別の物語が広がっている。

少女たちはISを再展開し、ふわりと宙に浮いた。

 

「………………」

 

そんな中で、戦場に歌声を轟かせた双子姉妹の妹——水色の髪の少女だけが動かなかった。

 

「どうしたの?」

 

姉——オレンジの髪の少女が問いかける。

 

「ねえ。この世界の私たちも、アイドルをしてるのかな?」

 

そう尋ねられ、目を丸くしたオレンジの髪の少女は、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

 

「……ええ。きっとステージで輝いてるわ! 私たちみたいに、姉妹二人で!」

 

笑い合う双子を見て、青髪の少女は自身も眩しい笑顔を咲かせた。

 

「それじゃあ、帰ろっか! 私たちの世界に! ()()()()が待ってるよ!」

 

八人の少女は時空に開いた門をくぐり、この世界から消えていく。

二つの世界の交錯。

奇跡と呼ぶべき現象は、僅かな人々を除き、知られざるままに幕を閉じた。




一話二万字って、我ながらどんだけ風呂敷をたたみに行ってるんだろう……。
タイトルから察してもらえたと思いますが、ついにあのキャラたちが登場です!ほとんどゲストの顔出し程度ですが!
このシーンを書きたいがために書いたと言っても過言では……いえ、過言ですね。割と他にも書きたいシーンはたくさんありました。
織斑季檍の強さなどですが、季檍個人の強さはクラウンよりもやや弱め。しかしイマージュ・オリジスからの援助もあって同等かそれ以上のスペックを持っている、という設定でやっていたので、G-soulを取り戻した瑛斗には割とあっさりやられました。
一夏は頑張りました。割とマジで。
さて、次回は正真正銘、最終回!
あしかけ四年に渡る作品がついに完結します。
どうか、どうか最後まで楽しんでいってください!

次回もお楽しみに!

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