IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜   作:ドラーグEX

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新学期、初授業 〜または新任教師の愉悦〜

始業式の次の日。

この日は全クラスが一時間目と二時間目を使ってクラスごとの学園祭の出し物を決める。

俺達二年一組も学園祭のクラスの出し物を何にするかを決めようとしていた。いたんだが……

(『織斑一夏と桐野瑛斗のホストクラブ』、『桐野瑛斗か織斑一夏とツイスター』、『織斑一夏と桐野瑛斗のポッキーゲーム』、『桐野━━━━)

「いい加減にしろよお前らぁっ!?」

クラス副代表の俺は椅子を倒しながら立ち上がる。

「去年と展開が全く同じだぞ!?」

クラスのみんなが出した案はどれもかなりいかがわしいものばかり。というか去年と全く同じ案だった。

「一夏っ! お前も言ってやれ!」

腕を組んで目を伏せる一夏に顔を向ける。

「いいかみんな。この提案は………却下だ」

「えええええ〜!?」

一夏の言葉に女子たちがブーイングの嵐を巻き起こす。

「なんでよぉ! 今年こそやろうよぉ!」

「そうだそうだー!」

「織斑一夏と桐野瑛斗は共有財産であることを改めて主張するー!」

「そうだそうだー!」

「そうだそうだじゃなくて! みんなが変な案ばっかり言うからマドカが想像しちゃってるじゃないか!」

一夏が指差す方向には顔が真っ赤になっているマドカがいた。

「え、えっとね! ぽ、ポッキーゲームが見てみたいなー、とかはないからね!? うん! 全然ないよ!?」

目をグルグル回してそんなことを言ってしまう始末だ。

「マドカちゃん、ポッキーゲームの参考資料としてこんなのがあるのよ?」

クラスメイトで漫研の部員の市倉柑菜さんがマドカに数枚の原稿用紙を手渡す。

 

「は、はわわ……!」

それを受け取ったマドカは原稿用紙と、俺と一夏の二人を何度も交互に見る。

「お、お兄ちゃんと瑛斗が、こ、ここ、こんな、濃厚な……!?」

「うふふ、マドカちゃんピュアだから反応が可愛いー!」

「マドカで遊ばないでくれ!」

お兄ちゃんスキルを発揮して荒ぶる一夏。俺もあの原稿用紙を没収してやりたいところだけど、今は出し物を決めなければならない。

「ほら、のほほんさんも何か意見出してくれよ!」

机に突っ伏していたのほほんさんに声をかけると、一度ビクッてなってからモソモソと身体を起こした。

「ふぇ? お、起きてるよ〜? むにゃむにゃ……」

「むにゃむにゃの時点でもう寝てたよな。つか寝てるよな! いや寝るなよな!」

整備科に異動している生徒たちも、通常授業ではそれぞれのクラスに戻る。当然のほほんさんも俺達と一緒にクラスの出し物に参加するわけだ。

「学園祭の出し物のアイデア出してくれよって話なの!」

のほほんさんはダルダルの袖を揺らしながらぼんやりと考え始めた。

「ん〜………えっとね〜、おりむ〜ときりりんが着ぐるみで接客する着ぐるみ喫茶がいいと思いま〜す。もふもふだよ、もふもふ〜」

「そ、それは俺と一夏である必要があるのか?」

いかにものほほんさんらしい案だった。

そしてのほほんさんを皮切りにガンガンと意見が飛び出す。

「織斑くんと桐野くんがISスーツで接客なんていうのはどうかしら!」

「パンチが足りないわ! 織斑くんと桐野くんが上半身裸で接客する喫茶店よ! これは売れるわ!」

「それなら織斑くんと桐野くんが学園指定の水着で接客する水着喫茶なんてどう!?」

おや? どんどん着せる方向から脱がせる方向へと向かって行ってしまっているぞ?

「山田先生も! 少しはみんなを止めてくださいよ!」

「わ、私は……その、ISスーツならギリギリOKかな、なんて……」

「おおぅ……」

 

そうだった。去年も全然止めてくんなかったこの人は。

俺は机に手をついてうなだれる。

ダメだ。このままボケの応酬が続くとこの大喜利大会に収拾がつかない。

「こうなったら学園祭のスペシャリストであるラウラに聞くしかないな……!」

俺はラウラに僅かな望みを託すことにした。

「い、いつの間にそんな称号がつけられたのだ?」

当のラウラは若干困惑している。頼むぞ、お前が頼りなんだ!

「確かに去年はラウラの意見が通ったな。聞いてみるのもありか」

一夏が言うと、クラスの視線がラウラに集まった。よし、これで大喜利大会は収まったか。

「む、むぅ……ならば劇などはどうだ?」

「劇?」

「去年は飲食店だったのだから、今年は趣向を変えてみるのも一興ではないか? 経験を積むのはいいと思うぞ」

「おお、なるほど。みんな、学園祭のスペシャリストがこう言ってるぞ」

「そ、その呼び方はよさないか」

「劇かぁ。クラスでそういうのも面白いかもね」

「ストーリーはどうしようか?」

「じゃあ王道な感じでいってみる?」

「というと?」

「王子様が魔女に攫われたお姫様を助けにいく! とか」

「おお! いいね! 王道だね!」

「はいはい! その手のストーリーでいくなら演劇部のもう使わない衣装が残ってるよ!」

「じゃあそれを改修してオリジナリティ出そう!」

よしよし。なんとか軌道修正が出来たぞ。しかもみんなをまとまった方向に導くとは流石は学園祭のスペシャリストだ。

(よくやった!)

ラウラに親指を立てると少し照れたように視線をそらされた。

「一夏、みんなの気が変わらないうちに決めちまおう」

「そうだな。じゃあみんな! 2年1組は学園祭で劇をやるってことでいいか?」

『さんせーい!』

そんなこんなで俺達の学園祭の出し物は決まった。

 

 

「というわけで、出し物は劇に決まりました」

「劇か。またベタなところをついたな」

俺と一夏は去年のように職員室で待っていた織斑先生に会議の結果を報告した。

「それで、一応聞くが立案者は誰だ?」

「ラウラです」

そう言うと、先生はやけに嬉しそうに笑った。

「ふふっ。そうか……ボーデヴィッヒがか。今度は劇を……はははっ」

「?」

「い、いや。何でもない。劇となると、飲食店とは違って大変だぞ」

「わかってます。成功させてみせます。マドカにも楽しんでもらいたいですし」

「ふっ、妹思いも大概にな。行っていいぞ」

「あ、先生、もう一ついいですか?」

「なんだ桐野?」

俺は少し声のトーンを落として織斑先生に問いかけた。

「スコールとオータム……あいつらどこ行ったか知りません?」

今朝から俺はあの二人を見ていなかった。

昨日のうちに釘を刺しとこう思ったんだけど、俺たちのが学園に戻って来た時にはもう二人ともいなくなっていた。

楯無さんにでも聞こうと思ったんだけど、朝のうちに会えずにこうして今に至るわけだ。

「さてな。私も見ていないな。だが授業はあるのだから学園内にはいるだろう」

「あいつら何するかわかったもんじゃないですし、しっかり見張っておかないと━━━━」

「あらあら、随分な言い方ね?」

「ん? わあっ!?」

振り返ると、俺の後ろには赤いスーツをバッチリ着こなすスコールがいた。

「け、気配を消して後ろに立つな!」

「気づいてなかったのあなただけよ。こっちの坊やは気づいてたみたいだし」

「え、マジで?」

一夏の方を見ると苦笑された。

「スコールさ……ミューゼル先生は目立つから」

「ミューゼル先生だなんてそんな

よそよそしい呼び方しないでいいわよ。スコール先生って呼んでちょうだい?」

もちろんあなたもよ? とスコールは俺にウインクしてきた。

「おーた……巻紙先生はどうした? ……んですか?」

「私に敬語を使いたくないのはわかるけど、少し面白い日本語になってるわよ? 彼女も授業があるもの。その準備をしてるわ」

「そうか……ですか」

ああ! いちいちこいつに敬語使うのが面倒くさい!

「ぷっ! そうかですかって……」

「一夏っ!」

「わ、悪い悪い」

「ごほん……そのやり取りはここでやらなければいけないのか? いい加減煩わしいぞ」

「す、すいません」

チッ、スコールのせいでちょっと怒られたじゃねぇか。

「うふふ、じゃあ私はこれで失敬するわね」

スコールはそう言うと俺達の前から去って行った。悔しいけど、なんかいい匂いがしたな。

「そら、お前らもとっとと行け。次の時間からは通常授業だぞ」

織斑先生に追い払われるように俺と一夏も職員室を出た。

「しかし、本当にスコールとオータムが先生なんかやれんのかね」

「俺としてはお前があの二人に使う敬語の方が心配だな」

「余計なお世話だ。……お?」

「どうした?」

「あそこ、スコールだ」

噂をすればなんとやら。俺たちより先に出ていたスコールが階段の踊り場に立っていた。

「何してんだあんなところで?」

「さあ?」

オータムはチラッとこっちを見ると、わざとらしい大き目の声を出した。

「えっと……私の最初の授業は二年一組での操縦術の座学ね」

確かにそう言って、コツコツとヒールの音を鳴らして階段を上っていく。

 

「……………………ん?」

 

俺たちの、クラス……?

 

 

二年一組の教室。

 

ざわざわと色めき立っている女子たち。

 

その少女たちの視線を一身に受けて教壇に立っているのは……

 

「はい、みんな静かにね。これからこのスコール・ミューゼル、記念すべき初授業を始めるわよ?」

 

新任教師のスコールであった。

 

(マジで先生してる……!)

 

自分の席についていた瑛斗は机の上で固く拳を握り、じっとスコールを見つめている。彼女を警戒している証拠だ。

 

その他の専用機持ちたちも同様に、さりげなく、しかし確かに瑛斗と同じような目をスコールに向ける。

 

しかし、スコールはどこ吹く風と、まったく気にした様子がない。

 

「それじゃあさっそく……ってわけにもいかないわよね。みんなウズウズしてるし。いいわ。距離を縮めるための質問コーナーにしましょうか。聞きたいことがある人は手を挙げてね」

 

その言葉を合図にはいはいはーい! と元気な声とともにいくつもの手が挙がる。

 

「それじゃあ、そこの、前の席のあなた」

 

スコールが指名したのは谷本癒子だった。

 

「スコール先生ってお付き合いしてる人いるんですか!?」

 

「まあ、最初から飛ばしてくるわね」

 

「先生綺麗だから!」

 

「うふふ、ありがとう。そうね、付き合ってる人はいるわ」

 

「こ、恋人ですか? ですよね!?」

 

「ええ。大切な私の恋人よ」

 

『きゃー!』

 

少女たちが色めき立つ。

 

「そ、その人ってどんな人ですか!?」

 

「私のことを第一に考えてくれる人よ。それに精一杯愛してくれる。だから私もあの子を愛するの」

 

平然と惚気るスコールにまたしても黄色い声が上がる。

 

「………ふはっ」

 

瑛斗は思わず笑ってしまった。

 

クラスのみんなはスコールの言っている恋人とは()であると思っていることだろう。

 

しかし真実を知ったらどんな顔をするか━━━━。

 

そう考えるとおかしかった。

 

「あら?」

 

それをスコールは目ざとく見つける。

 

「桐野くんも、何か質問があるのかしら?」

 

「えっ? あ、や………」

 

特にないです。と言おうとした瑛斗だが、瑛斗の中の黒い部分がほんの少し首をもたげた。

 

「……じゃあ、一つ質問いいですか?」

 

「ええ。どうぞ」

 

「スコール先生は操縦技術を教えてくれるみたいですけど、どこかのIS機関に勤めてらっしゃったんですか?」

 

意地の悪い質問である。

 

普段の瑛斗らしい質問であることに変わりはないが、いろいろシークレットに学園にやってきたスコールにはいささか答えるのが難しい質問だ。

 

シャルロットがあわわ……! と不安げな視線を向けてくる。が、瑛斗はスコールから視線を外さなかった。

 

「………まあ確かに、あなたの気になってそうなことよね。いいわ答えてあげる。私はね━━━━実は任務できてるのよ」

 

「っ!?」

 

予想外の返答であった。瑛斗は思わず腰を浮かしてしまう。

 

「この間の事件で学園側も警備を強化するみたいなの。私はその一環で政府から派遣されたエージェントよ」

 

「な━━━━」

 

瑛斗が言葉を詰まらせると、女子たちがそれに被さってきた。

 

「美人エージェント! かっこいい!」

 

「マンガの世界みたい!」

 

「うふふ、でもごめんなさいね。確かに有事の際はそのように働くけど、普段は教職を全うするよう言われているの。だから平和な時はあなたたちにいろいろなことを教えてあげるわ…………」

 

そこでスコールは言葉を区切り、妖艶な笑みを浮かべた。

 

「勉強以外にも愉しいことを、ね?」

 

ゾクッ……!

 

クラスの女子数名は背筋に未知の感覚が走るのを感じた。

 

「ど、どうしよう、私今、キュンッてしちゃった……!」

 

「わ、私も……」

 

「これ、捗っちゃう……!」

 

少女たちが壇上の新任教師を見る目は、既に熱っぽい。

 

「ふふっ♫ いいわぁ。あなたたちとっても素敵。食べちゃいたいくらい」

 

『きゃ〜!』

 

スコールの魅力は同性の少女たちのハートをがっちり掴んでいた。

 

一方で瑛斗はというと━━━━

 

「ぐぬぬ……!」

 

(に、人気取りのダシにされた……!)

 

悔しそうに歯噛みしていた。

 

そんなこんなで、スコールの授業は始まるのだった。

 

 

「ちくしょお〜……スコールめぇ……」

 

昼休み、校舎内の食堂で瑛斗は恨み節。

 

「俺ばっかり指名しやがって〜……!」

 

授業中、スコールは事あるごとに瑛斗を指名し、教科書を読ませたり問題を解かせたりした。

 

名指しされるたびに瑛斗は嫌な顔をするので、スコールが面白がったのも原因である。

 

「瑛斗……大丈夫?」

 

向かいに座る簪が、好物のうどんを食べる箸を止めて心配そうに尋ねる。

 

「かき揚げ、一口食べる……?」

 

「いや、大丈夫。自分のがある」

 

瑛斗の前には食べかけの天ぷらせいろ(うどん)が置かれている。

 

「簪ってよくあったかいうどん食べてるよな」

 

「うん。こっちのほうが、好き。瑛斗は?」

 

「んー、俺は気分で変えるかな。今はクールダウンも兼ねて冷たいうどんを食べてる」

 

「そうなんだ……やっぱり、スコール先生?」

 

「まあな。あ、そういえば四組はオータ……じゃない、巻紙先生が授業したんじゃなかったか?」

 

「うん……」

 

「どうだった? 変なことやらかしてなかったか?」

 

「ううん。普通に、先生してた。いたって、真面目に」

 

「そ、そうか。まあ、あいつはそういうのはお手の物なのかも━━━━」

 

「えーいーとーくんっ☆」

 

「ん? あ、楯無さん」

 

瑛斗の後ろに現れたのは楯無であった。

 

「隣いいかしら?」

 

「どうぞ」

 

「ん、ありがと」

 

楯無が瑛斗の横に座ると、わずかにジト目の簪が楯無を見つめた。

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 

「簪ちゃんと瑛斗くんが楽しそうにおはなししてたから、おねーさんも混ぜてもらおうかなと思ってね」

 

そう言って笑う楯無が広げた扇子には『談笑』と達筆な文字が書かれていた。

 

「せっかく、二人きり……」

 

「簪?」

 

「なんでも、ない」

 

簪はちゅるちゅるとうどんを啜り始める。

 

「時に瑛斗くん、どうかしら? 新しい先生の授業は」

 

「あー、なかなかヘビーです。あいつ完全に公私を混同してます」

 

「あらあら、それは大変ね」

 

肩をすくめた瑛斗はザルの上のうどんを箸で挟んで麺つゆに半分ほどつける。

 

「まあ、あいつらの授業はきっと今日はもう無いし……」

 

「ところがそうもいかないみたいよ」

 

「へ?」

 

「彼女たち、午後からの二年生の合同演習にも参加するらしいわ」

 

「…………………」

 

瑛斗の箸から落ちたうどんが、麺つゆの中に沈んだ。

 

 

午後になって、二年生全生徒による合同の実習が始まった。

しかし楯無さんが言っていたスコールとオータムの二人はまだ現れていなかった。

「瑛斗……来ないね」

横に立っていた簪が不安げにこっちを見てくる。

「バックれたのかしら。教師なのに」

鈴も腰に手を当てて呆れたようにつぶやく。簪も鈴も、昼休みのうちに俺が教えておいたからスコールたちが来ることを知っている。

「いやいや、いくらなんでもさすがにそれはないだろ」

「しかし、あの二人がいなくとも教官と山田先生もいる。問題無かろう」

「どうしたんだろうね?」

ラウラとシャルも訝しんでいる。

「そちらも気になりますけど、あれはいったい何なのでしょうか?」

セシリアが言う『あれ』とは、織斑先生と山田先生の後ろに置かれている巨大なコンテナだ。

「私達がグラウンドに出て来た時からあるが……中身は何だ?」

箒が首を傾げると、周りの生徒たちが騒ぎ出した。

「瑛斗、来たみたいだぞ」

「そうだな……」

スコールとオータムがやって来た。二人とも動きやすいようにウェアを着込んでいる。

「よし、全員整列しろ!」

織斑先生が集合をかけた。どうやら始まるらしい。

「これより二学年合同の実習を行う。だが、その前にこの二人に軽い自己紹介でもしてもらおうか」

織斑先生が言うと、スコールとオータムは前に出て来た。

「もう授業を受けた子たちもいると思うけど、改めまして、スコール・ミューゼルよ。スコール先生って呼んでね?」

パチパチと拍手が起こる。

「やっぱり美人!」

「きれ〜……!」

一般生徒たちの感嘆の声に少し笑うスコール。また黄色い声が上がった。

「巻紙礼子です。よろしくお願いします」

今度はオータムは礼儀正しく一礼して、また拍手が起こった。こいつの猫の被りっぷりはパねぇな。

「こっちの先生も素敵よね!」

「私ああいう人に憧れちゃうなぁ」

誰が言ったかはわからんけど、こいつに憧れるのはあまりオススメしないな。

「さて、新任の先生達への質問はあとで個人でするように。これからは実習だ。手始めに……専用機持ち全員! 前に出て来い」

織斑先生が早速ここにいる専用機持ち全員を呼び出した。

「お前たちには今回はISを使わずにこいつを使ってもらう」

「こいつ?」

先生が示したのは、背後に置かれている件の巨大コンテナ。

「山田先生、お願いします」

「はい! みなさん注目してくださーい」

みんなも気になっていたようで、コンテナの中身がわかるとなると色めき立った。

「もしかして新しいIS!?」

「えー? それならISハンガーじゃない?」

「どこかの企業の新装備かも!」

「静かにしろ! ったく、少しは黙っていられんのか。山田先生開けてください」

「はい! それでは、オープン・セサミ!」

「……はい?」

今の山田先生の呪文的なの、どう反応したらいいんだ?

シン……と静まり返る空気。

 

「くふっ……!」

その中でオータムが小さく吹き出した声が聞こえた。ツボだったのか?

「うう、世代差って残酷ですね……」

若干涙目の山田先生がリモコンのスイッチを押すと、内部駆動機構搭載のコンテナが開いて、中に入っていた七つのこれまた大きな物体が陽光に照らされた。

「うそ……!」

「えっ、あれってまさか……!?」

周りがザワザワと騒ぎ立った。けど今度はさっきと違う雰囲気のざわつき方だ。

「先生……これ……」

一夏が物体を指差す。

「ああ、お前達にも既に見たことがある者がいるだろう。お前達専用機持ちには今からこの外骨格攻性機動装甲、《EOS》を使って演習を行ってもらう」

「な……!」

俺は喉の奥に息が詰まるのを感じた。

「瑛斗? どうしたの?」

「な……な………な…………!」

「瑛斗?」

「なんだこの産廃はあああああああああああああああああああっ!!」

天に向かってのシャウト。それほどまでに俺はショックを受けていた。

「えっ……えっと……桐野くん?」

山田先生が困惑気味だけどそんなのを気にする気持ちの余裕が無い。

「何ですこれ何なんですこれ!? いったい何なんですかこの金属の塊は!」

俺は目の前に置かれているいかにも重そうな塊を指差した。

「ISに『超』を二十個ほどつけたくらいの劣化マシン! いや最早ISと比べるのもはばかられるほどのダメっぷり! もう一目見ただけでわかるこのボディから溢れ出すダメダメオーラ!!」

「あ、あのぉ……」

「おまけにこのバカみたいにデカいバッテリー! 知ってるぞこれ! 次世代型PPB(ポータブル・プラズマ・バッテリー)! 重量なんと三十キロ! こんなの背負って動くなんて、的にしてくださいって言ってるようなもんだ! しかもこれだけの大きさの機体を動かそうってんならフル稼働で、もって十四、五分が限界か!? ともかくその程度!」

「おい桐野」

俺はEOSの右腕部の装甲に腕を突っ込んだ。そしてグーパーグーパーと手を握ったり開いたり。

「それにこれ! 思った通りだ! この反応の遅さ!! ISみたいにPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)積んでるわけじゃないから全体的に重たい重たい! 補助駆動装置があるみたいだけどこの機体重量に対してこれじゃ効果薄いって! そん━━━━」

「黙れ」

ゴギャッ!!

「あだっ!?」

織斑先生の鉄拳を顔面に食らって吹っ飛んだ俺は地面に仰向けに倒れる。じ、人体からしたらいけない音が聞こえた気がした……。

「まだお前にこの機体の批評を頼んではないぞ」

「ず、ずびばぜん……!」

「瑛斗のあれ、久しぶりに見たね」

「周りは見えてないって感じだったわ」

「ものすごい荒ぶり方でした……

 

激痛の向こうで、そんなひそひそ話も聞こえた。

「んんっ、えー、今からお前たち専用機持ちにこのEOSを使った模擬戦闘を行ってもらう」

「模擬戦!? こんなので!?」

「話を聞け」

ゴンッ!

「ぐはっ!?」

また先生の鉄拳をくらった。

「先生、先ほど言っていましたが、『まだ』とはどういうことですか?」

「ああ、実は学園上層部にこのEOSの実稼働データを提出するよう政府から通達が来てな。お前たちに手伝ってもらうことにした。まあ、今さっきこのIS研究員がボロクソに言ったが、扱いづらいのは覚悟してもらう」

織斑先生が説明を終えると、山田先生が他の一般生徒に指示を出した。

「はーい、みなさんはグループを作って訓練機の模擬戦はじめますよー。格納庫から運んできてくださいね〜」

女子たちはええ〜、と嫌そうだったけど織斑先生が一睨みするとそそくさと作業に入った。

「さて、お前らにも始めてもらうぞ。更識、お前には山田先生と一緒にEOSの実稼働時のスペックを見てもらいたい」

「わ、わかりました」

簪は山田先生に連れられて少し俺達から離れる。

「ミューゼル先生。巻紙先生。一般生徒達の方はお任せします」

「はい。わかりました」

「了解しました」

二人も素直に織斑先生に従って、俺たちから離れていった。

「…………………」

「どうした桐野、EOSに乗るのが不満か?」

「まあ……そうじゃないというと、ウソになりますかね」

学園の地下特別区画に保管されていたコールドスリープマシンを持ち去った連中がEOSを使ったとは聞いてはいたけど、実物を見てみるとどうも気分が上がらない。

「お前の言い分もわかる。ISであればこの程度の機体などまさしく鉄屑同然だ。だが、ISが使えないとしたらどうだ?」

「ISが使えない……」

それは俺も経験がある。確かにあれはピンチと言っていい。

「お前も、夏休みの事件の際に学園内でISが使えなくなっていたことを知らないわけではないだろう? だが、そんな状況下ならばお前の言うこの金属塊も、少しは有用性が出てくるんじゃないか?」

先生の言ってる事は正論だった。

「………わ、わかりましたよ! 乗ればいいんでしょ! 乗れば!」

俺は文句を垂れつつも一夏たちに続いてEOSに乗り込んだ。

……

…………

………………

 

……………………

「くっ、このっ……!」

「こ、これは……」

「お、重い……ですわ……」

「うへえ、うそでしょ……」

「う、動かしづらい……」

一夏、箒、セシリア、鈴、シャルがEOSの重さに顔をしかめる。まあ当然だ。さっきも言ったがバカみたいに重いんだこれは。

「こんっ、ちくっ、しょうっ……!」

俺も一夏たちのようにこの重さにかなり参っていた。

「………………」

「………………」

だけど例外が二名ほど。ラウラとマドカだ。二人とも黙々とEOSの感触を試している。

「………よし」

「………こんな感じか」

そして頷いた。

「それではEOSによる模擬戦を開始する。なお、防御能力は装甲のみのため、基本的に生身は攻撃するな。射撃武器はペイント弾だが、当たるとそれなりに痛いぞ」

織斑先生がぱんぱんと手を叩いて仕切る。それからすぐに『はじめ!』と声が響いてラウラがランドローラーで俺に間合いを詰めてきた。

「っていきなり俺かよ!?」

「遅い!」

「こんのっ!」

迎撃しようとサブマシンガンを前に出そうとしたけど、すぐに上がってこなかった。遅っ! てか重っ!

「はっ!」

すかさず懐に入り込んだラウラに腰を落として足払いを食らった。

「おわっ!?」

盛大に背中から転ぶとラウラはサブマシンガンからペイント弾を三発撃ち込んで俺は見事に三発食らった。俺はここで脱落だ。

(あー……これはキッツイわー……)

とりあえずを起き上がらずに足を地面につけてランドローラーで戦場から離れる。それから背部起立アームで起き上がって、後はみんなを観察させてもらうことにした。

ラウラは次の目標をセシリアに向けた。

「わたくしはそう簡単にやられませんわよ!」

サブマシンガンを連射するセシリア。でもその照準はどっぱずれでラウラに掠りもしない。

「ああもう! 火薬銃というだけでも扱いにくいのに!」

しかしそこは射撃が得意なセシリア。すぐに慣れが出てきて照準も安定していく。

だけどラウラの方が上手だった。セシリアが銃を使いこなす前に、ジグザグ走行でセシリアに接近していく。

「速いですわね! けれど、この距離なら逆に外しませんわ!」

「━━━━甘いな」

ラウラは今度は一直線の特攻を仕掛けた。弾丸は左腕の物理シールドで受けて、そのままセシリアへ近づく。

「!?」

「ふっ……」

身構えたセシリアの肩部アーマーを慣性のまま突っ込んだラウラが掌打する。

「きゃあっ!?」

バランスを崩して俺みたいに背中から倒れたセシリア。

起きあがる前にラウラはセシリアにペイント弾を食らわせた。

「ま、マドカ! 最初に俺を狙うのか!?」

「ごめんねお兄ちゃん。ラウラも瑛斗のこと狙ってたし」

「理由になるのかあああ!?」

ふと見ると、一夏がマドカに瞬殺されていた。軽く押してバランスを崩したところに一発だけ当てたところはマドカのせめてもの良心なんだろう。

「ふふん、隙だらけよ!」

マドカに背後から鈴がランドローラーをフルスロットルで突っ込んできた。

「うりゃあ!」

思い切り突き出したパンチは横に移動したマドカにあっさり躱された。

「あれ?」

そのまま減速出来ずに鈴は前のめりにすっ転んだ。

どがしゃんごがん!

うーわ、すげぇ音して転んだな……。

「これで残ったのは……」

マドカとラウラが見つめた先には、一歩引いていた箒とシャルが並んで立っていた。

「どちらからだ?」

「わ、私は後でいい!」

「ぼ、僕も……」

「シャルロット、お、お前が行ったらどうだ? ラウラとマドカが待っているぞ?」

「ほ、箒こそ。二人を待たせちゃいけないよ」

「そう言うな」

「遠慮せずに」

「……………」

「……………」

「じゃあ私から行くぞ!」

「ううん、僕が行くよ!」

「いや、私が行こう」

「私も行くよ」

「「えっ?」」

気づいた時にはもう遅い。箒とシャルはラウラとマドカの強力タッグの餌食になった。ご愁傷さまだな。

「うわあっ!? く、食らえマドカ!」

「ごめんね、ラウラ!」

二人とも鈴がすっ転んだのを見てたせいで射撃で応戦する。でも反動で二人とも尻餅をついてしまった。

マドカは箒が立て直すのを許さず、両腕と両脚に一発ずつペイント弾を叩き込む。

「痛っ! いたっ! いたたっ! いたたたっ! まっ、マドカ!!」

ラウラはシャルが構えかけていたサブマシンガンを手で払い落として、両腕でシャルを押した。

「わ、わわっ……!」

「む、耐えたか」

「え、えへへ……」

「ではもう一度だ」

どんっ!

「わあっ!?」

ラウラは無慈悲な二撃目をシャルにお見舞いして、シャルは地面に倒れた。セシリアとは違ってしっかり受け身を取ったのはさすがだぜ。

「…………さて」

「それじゃあ……」

そしてラウラとマドカは同時に最後の目標へと注意を向けた。

「お互いに、同じことを考えていたようだな」

「そうみたいだね」

「楽しませてくれよ?」

「努力はするよ」

ランドローラーでゆっくりと後ろに後退して、一定のところまで来ると二人とも停止した。

 

数秒の睨み合い。

二人が━━━━━━━━動いた。

「いくよラウラっ!」

「いいだろう。来いっ!」

まずマドカがサブマシンガンをラウラに連射。ラウラはシールドで防御しながらペイント弾を撃ち返す。

二人はそのまま減速せずに交差した。

「ならばっ!」

「それなら!」

ラウラとマドカはお互いに一歩も譲らない。今度は格闘戦に持ち込まれた。

ガン! ギン! と硬い金属がぶつかり合う音が空気を震わせる。

「はあっ!!」

「ふっ!!」

ラウラのパンチを受け止めて、ギリギリとお互いの力を拮抗させた。

「なかなかやるな」

「そっちこそ」

そして二人は同時に距離を取る。

(は、ハイレベル過ぎる……!)

俺はラウラとマドカの勝負に見入っていた。

片やドイツの特殊部隊隊長。片や亡国機業の元メンバー。そりゃいくら俺達が相手でも敵わないな。

「見て見て! どっちが勝つかな!」

「ラウラが優勢じゃない?」

「いやいやマドカちゃんも負けてないよ」

「私マドカちゃん応援したい!」

「私はボーデヴィッヒさん応援するわ!」

いつの間にか訓練そっちのけで他の女子たちも二人の戦いを観戦していた。

スコールに真面目にやらせろよ、と抗議の目を向けたら肩を竦められたけど、それだけだった。

「マドカちゃん頑張れー!」

「ボーデヴィッヒさんファイト!」

わあわあと歓声が上がり、ヒートアップしていくグラウンド。

その熱気の中心で戦いを繰り広げるラウラとマドカ。

マドカの放つペイント弾をラウラは冷静に回避していく。

するとマドカのサブマシンガンからペイント弾が出なくなった。

「……っ!?」

「弾切れか。ならば終わらせるとしよう」

ラウラがトドメを刺そうとマドカに銃口を向ける。

「……まだだよっ!」

マドカは弾切れになったサブマシンガンを投げてラウラの注意を一瞬逸らした。

そして方向転換してランドローラーを最大出力で回転させ、()()()に突進した。

「なにっ!?」

「えっ、ぼ、僕!? うわわっ!?」

マドカはシャルに向かって走る。

「シャルロット! それ借りるよ!」

いや、違う。狙いはシャルがラウラに落とされたサブマシンガンか!

「くっ……! させるかっ!」

ラウラも気づいたようで、マドカに接近していく。しかしマドカはサブマシンガンを拾い上げた。

「おおおっ!!」

「これでっ!!」

パンッ!!

すれ違いざま、乾いた銃声が響いて、ラウラとマドカはゆっくりと動きを止めた。

マドカのEOSの左肩に、ペイント弾のインクが花のように広がっていた。

「私の勝ちだな」

「それはどうかな?」

マドカはラウラの右脚部の装甲を指差した。

「む? ………ほう」

そこには確かにペイント弾が直撃して付着していた。

「どうやら、引き分けみたいだね」

「そのようだ」

そして二人はサブマシンガンを下ろした。

パチパチ……

どこからともなく拍手が聞こえた。

それはどんどん大きくなって、喝采の拍手がグラウンドを包み込んでいく。

最終的に俺達専用機持ちや山田先生までもが二人に拍手を送っていた。

それから装備解除して、また織斑先生の前に集合する。

「さすがだな。ボーデヴィッヒ」

「いえ、これはドイツ軍で教官にご指導いただいた賜物で━━━━」

ばしん!

ラウラの頭に出席簿ではなくスペック表が振り下ろされた。

「織斑先生だ」

「は、はい……」

「私も頑張ったのになぁ……」

マドカが拗ねたように口を尖らせる。

「わかっている。お前も最後の判断はよかったぞ。だが言ったろう。特別扱いするつもりはない」

「はーい。えへへ……」

「にしても、ラウラはやけに慣れてたな。ドイツにもあったのか? このEOS」

「似たようなものがな。主にISの実験装備の運用試験に使っていた」

「なるほどねぇ。道理で上手いわけよ」

「上手いというほどでもないだろう」

「あれで上手くなかったらなんなのよ……」

思い切りすっ転んだ鈴は苦笑せざるを得ないようだ。

「それにしてもお前達……ぷっ、ふ、くくっ」

「ん?」

「ま、マドカ……見てみろこいつらを……ふふっ」

「……? ぷっ! あははっ!」

なぜかラウラとマドカは笑いを堪えるように身体を震わせる。なんだ?

「ぶはっ!? い、一夏お前……! 箒たちも……!」

俺はようやく理解した。ラウラとマドカが笑っていたのは、一夏達の顔や運動服がペイント弾のインクだらけになってたからだ。

「瑛斗、お前も大概だぞ?」

「うそっ!? ら、ラウラお前!」

「ね、狙われるの方が悪いのだ……はははっ!」

「あはは! ぱ、パンダみたいになっちゃってる……!」

でもラウラとマドカの二人の楽しそうな笑顔を見ると怒る気持ちも失せてしまう。

「……では、レポートは各個別に提出してもらうとして、桐野、どうだった? お前の意見を聞こう」

「……そうですね。まあ改善点は山ほどありますけど、一概に悪いもんとも言えなさそうです」

EOSは乗る人が乗ればかなりの性能を発揮するようだ。訓練は必要そうだけど。

「そうか。ならば、このEOSについたペイント弾はお前に洗ってもらおうか」

「えっ!?」

「いの一番に脱落したろうが。ペナルティだ」

「そ、そんなご無体な!」

「返事は?」

「は……はい…………」

がっくりと肩を落とす。今度これ動かす機会あったら。もっと真面目にやろ。

そんなこんなで今日も実習の時間は過ぎて、IS学園に授業終了のチャイムは鳴り響くのだった。

 

「これで……終わりっと」

授業が終わってから一時間ちょっと。俺はようやく最後のEOSの洗浄を終わらせた。

「よしっ、ようやく終わったぜ」

額の汗を拭って一息つく。

「しかしまぁ……改めてよく見るとひっどいよなー……」

西日を浴びて茜色に光る並べられたEOS。

「こんなのじゃISに勝てっこないぜ……」

俺の《G-soul》が相手をするなら、ビームソード一本で終わらせられるだろう。

「……でも、ISが使えなくて生身で相手をするのは、ちょっと骨か」

あの時みたいにISが使えない状況にこれがあれば、確かにやれることは増える。でも………

「そんなことが、もう起きなきゃいいんだけどな……」

「終わったみたいね」

後ろから声をかけられた。

「お前ら……」

スコールとオータム。二人揃って何の用だ?

「なんですか? 今度は二人でからかいに来ましたか?」

言葉遣いに気をつけながら問う。

「そうしてやりてえが、お前に教えておくことが出来たんでな」

オータムが素に戻っていた。そういう系の話なのか?

「教えること?」

「これよ」

スコールが小型投影ディスプレイで俺に見せたのは随時ニュースが更新されて最新の情報を手に入れることが出来るニュースサイトだった。

「この一番上の、まさに最新の情報なのだけど」

「これか?」

ディスプレイに触れて記事を開く。

〈世界最大手企業エレクリット・カンパニーに激震。社長であるエグナルド・ガート氏が急死。危険運転による事故死か〉

見出しにはそう書かれていた。

「……!? な、何だこれ!?」

顔を上げるとスコールの表情は鋭かった。

「それだけじゃないわよ。ここを読んで」

スコールが画面をスクロールして、俺は文章に目を通す。

「社長であるエグナルド氏に代わり、臨時の最高責任者にクラウン・リーパー氏が就任……」

写真に写っていたのは、まだ若い男の人だった。

「クラウン・リーパー? 誰だ?」

「それが私達にもわからないの。チヨリ様が調査してるらしいけど、まだしばらくかかるらしいわ」

俺の両親を殺したという男が死んだ? でも、こんな突然……?

「そうだ! エリナさん! エリナさんはこのこと知ってるのか!?」

「エリナ? 誰だそりゃ?」

「エレクリットの技術開発局の局長で、俺が世話になってる人なんだ」

「そいつがどうかしたのか?」

「この前からずっと電話してんだけど、一回も出てくれないんだ。ISの通信もダメでマジで音信不通に…………もしかして、このクラウンとかいうやつのことと関係してる!?」

「その可能性も無くはないんでしょうけど……」

「話ができないんじゃ確かめることもできねえな」

「ああクソッ! どうにかできないのか……!」

「やけに心配するのね?」

「当たり前だ! 俺の大事な人なんだぞ!」

「……そう。あなた以外にそのエリナって人と連絡取れそうな人物はいないの?」

「エリスさん……ダメだ。あっちも出てくれない……!」

俺やエリスさん以外でそんな人どこに━━━━━━

「あっ!」

「どうしたの? 心当たりがあるの?」

「あることにはある。……いやでも上手くいくか?」

「んだよ。ハッキリしねぇな」

「その心当たり、教えてくれないかしら?」

「可能性は低いけど、一つだけ」

「だからそりゃどこだ?」

「………………アメリカ軍」

俺の返答に、スコールとオータムがキョトンと目を丸くした。




はい、というわけで更新です。
スコール先生の初授業でしたが、最初に餌食になるのは誰になるんでしょう。
そしてEOSを叩く瑛斗くん。決してIS絶対主義ではないと思うのですが、荒ぶってましたね。
さて、次回は両親の仇の死を知った瑛斗がスコールやオータムとともに行方の知れないエリナを捜索します。

あの国家代表がやって来る、かも。

次回もお楽しみっ!

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