IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜   作:ドラーグEX

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第十五章 霧の中の淑女と女王
新たな季節、フェスティバルの予感 〜または嵐を呼ぶ教師〜


八月三十一日深夜。あと数時間で新学期を始めるIS学園。

真のIS学園学園長である轡木十蔵に日中からこの時間に来るよう呼び出されていた千冬は、学園長室の扉の前に立っていた。

「……………」

僅かな緊張を胸に、千冬は扉をノックする。どうぞ、という返答の後、千冬は扉を開けた。

「こんな夜にすみませんね」

デスクの椅子に座る十蔵は穏やかな表情を浮かべていた。

「いえ……特に問題はありません」

「一夏くんとマドカさんは元気ですか?」

「ええ。マドカが一夏にいっそう懐いて、他の女子達が悔しがっていますよ」

「そうですか。どうやらお変わりないようですね」

楽しそうに笑う十蔵を見て、千冬はほんの少しだけ緊張をほぐす。

「それで、話というのは?」

「ああそうでしたね。危うく忘れるところでした。先日の弾道ミサイルの一斉誤射事件…世間では『第二次白騎士事件』と呼ばれているようですが……」

そこで千冬は瑛斗の顔を思い浮かべる。

瑛斗は第二次白騎士事件の翌日から、大挙して学園に押しかけてきたマスコミや政府関係者への対応に追われた。

千冬は真耶とともにその付き添いをしていたのだが、問題は特に無かったはずだった。

「桐野が何かまずいことを?」

「いえ、瑛斗くんに何か失言があったとかではなくてですね。マスコミが大騒ぎで彼も大変だったでしょう。しかしそのおかげで彼の顔は世界中に知れ渡った……」

「……何が仰りたいのです?」

十蔵は表情を少し硬くする。

「明日の始業式、新任の教師が赴任します」

「それが……何か?」

「実はその新任教師をここに呼んであるんですよ。あなたも知った顔のはずです」

「知った顔……?」

いまいち要領を得ず眉をひそめると、扉の開く音がした。千冬は振り返る。

「お前は……!」

確かに、見覚えがある顔だった。

 

 

IS学園の学生寮の食堂。

今日から新学期だ。こういうのは初日が大切だ。張り切っていこう!

……と、普段の俺ならそう言ってるところだけど、そうも言ってられなかった。

『ミサイルが来ると知って、急いで学園に戻りました。後はもうがむしゃらにミサイルを落として、一発も行かせるもんかって………』

「………………」

食堂の大画面テレビに映っているのは、俺だった。

学園に戻った次の日から数日は、そりゃもう忙しかった。

初対面の政府の関係者に少し鼻につく態度で事情聴取をされたり、ものすごい数の記者さん達を相手にインタビューに答えることになったりと休む間も無くて……。あ、でも感謝状とやらを受け取る時はそれなりに嬉しかった。

というわけで、今テレビで流れているのは、そのインタビューの時に撮影されたものなんだ。

(しかし……テレビに映っている自分の姿を見るのはどうも慣れないぜ)

このインタビューが行われたその日の夕方から、今日までもう何度も見てるけど、何度見ても変な気分がする。

 

ちなみにマスコミへの発言は全部こう言うようにと学園側から指示されたもので、亡国機業なんかのことは一切触れてない。

「……瑛斗、瑛斗ってば」

「えっ、あっ?」

隣に座るシャルが俺の名前を呼んでいたのに肩を叩かれて気がついた。

「もうっ、瑛斗さっきからテレビに釘付けなんだもん」

「わ、悪い悪い……」

「そんなに気になるのか?」

「いや……気になるっつーか、変な感じでな」

「変な感じって……?」

「自分の事をこう、テレビで客観的に見るのがな。しかもこんな大事の中心で」

ニュースを聞く限り、世の中では俺がやったミサイル迎撃は過去の事件になぞらえて『第二次白騎士事件』なんて呼ばれてるらしい。

「まさか白騎士事件と同じレベルの扱いを受けるとはなぁ……」

「無理もない。発射された弾道ミサイルは確認されているだけでも1729発以上。いくらか小規模だがやったことは白騎士事件と変わりないからな」

「でも俺はみんなの助けがあったからやれたんだ。そう考えるとたった一人でやってのけた千冬さんはすごいよ」

「そうだよ。お姉ちゃんはすごいんだから」

俺の向かいに座っている一夏の隣のマドカが誇らしげに言った。

「ね? お兄ちゃん?」

「ああ、そうだな」

「うんっ!」

マドカが一夏に身体を寄せると箒がいきなり立ち上がった。

「ま、マドカッ! 何をさりげなく一夏と腕を組んでいる!?」

「えへへ♫」

マドカが笑うとガタガタと音を立ててセシリアと鈴も立ち上がる。

「笑い事じゃありませんわっ!」

「一夏っ! アンタも離れるよう言いなさいよ! マドカのこと甘やかし過ぎよ!」

「べ、別にいいんじゃないか? 俺は気にしないし」

「「「こっちが気にする!(しますわ!)」」」

「ええ〜……」

こんなやりとりが出来ているのも、みんながマドカが記憶を取り戻していると知った上でマドカのことを受け入れているからなんだろう。

「けど……」

「どうした瑛斗?」

「スコールとオータムのことがまったく取り沙汰されないんだよな。あいつらも一緒に戦ったのに」

何度も見ているニュースの映像だったが、それらの中にあるミサイルが実際に撃墜されている映像は離れたところから小さな爆発が見える程度のもので、俺やスコール達が映っているものはなかった。

「蘭とマドカのことも何も無いしな」

「何か大きな力が働いた、と考えるのが妥当であろう」

「大きな力……か……」

俺はいつだったか、更識家ってすごいと感じた時のことを思い出した。今回もあぁいうことが起きたってことなんだろうか。

「ところで瑛斗、一夏もだが」

一夏たちの喧騒を聞き流しながらそんな考えを巡らしていたらラウラが声をかけてきた。

「ん?」

「なんだ?」

「お前達、時間は大丈夫なのか?」

「時間……?」

時計を確認する。7時50分を示していた。

「あっ! やっべもうすぐじゃねぇか!?」

俺は箒達のように慌てて椅子から立ち上がった。

今日の始業式は俺達生徒会は一般生徒より早く集合することになっていたんだ。

「そうだったそうだった。マドカ、俺行かないと」

「え……もう行っちゃうの……?」

マドカはシュンとしょげかえる。そんなマドカに一夏は笑って頭を撫でた。

「大丈夫だって。またすぐ後で会えるから。な?」

「……うん、わかった」

マドカは絡ませていた腕を解いた。

「さて瑛斗、行くか?」

「俺はいつでも。じゃあみんな後でな」

「うんっ、いってらっしゃい」

「うむ」

「また……あとで」

トレーをカウンターに戻して、食堂を出る。

「しかし、マドカのやつ一段と懐いたな」

「ああ。瑛斗がラウラに追われてる時の苦労が少しわかったかもしれないよ」

「はっはっは。そのうちお前がシャワー中にマドカが裸でシャワールームに入ってくるかもな?」

「………………」

一夏は気まずそうに目を逸らした。

……って、え? ええ?

「え……お前、え? マジで? マドカが裸でシャワールーム来てんの?」

「い、いや、裸じゃない。スクール水着で来た」

「来たことは否定しないんだな……」

「あっ! でも背中流してもらっただけだし、それも一回だけだったからな!?」

「そ、そうか……ちなみに、他のやつらは知ってるのか? 箒とか」

「そんなの知られたら何されるか……」

ちょっとシミュレーションしてみる。

マドカが一夏とシャワールームに一緒に入ったのがバレると……

「……間違いなくボコボコにされるな。お前が」

予測可能回避不可能だった。

「だろ? だからマドカにも内緒にするように言ったんだ。その時やけに嬉しそうだったのが気になるんだが…」

「やっぱ、一段と懐いたな」

「だよな……ところで」

「ん?」

「エリナさんとは連絡ついたのか?」

「ダメだ。何回電話しても留守番電話なんだよ」

亡国機業の現総帥、エグナルド・ガートがエレクリット・カンパニーの社長であることを知った俺はエレクリットの技術開発局局長のエリナさんにそのことを教えようとしたんだけど、エリナさんは電話どころかISでの通信にも出てくれない。

「エリスさんは?」

一夏の問いに俺は首を横に振るしかない。

「そうか……」

「何か厄介なことに巻き込まれてなきゃいいんだけど……」

それから俺達は前を歩くのほほんさんを発見して一緒に始業式の会場へ向かった。

 

 

そして時間は少し経過して、始業式が始まった。

表向きの学園長をやっている轡木さんの奥さんが俺のことを話題に絡めて生徒たちに一層努力するよう言ったあと、生徒会を代表して生徒会長の楯無さんが壇上に上がった。

「みんなおはよう。学園長先生の話にもあったけれど、大変だったわね。怖い思いをした人もいるだろうから、私はその話題には触れないわ。ここでみんなに残念なお知らせが一つあるの。毎年市のISアリーナで行われていたキャノンボール・ファストが、今年は中止となることが決まったわ」

楯無さんの言葉の後に、ええ〜? という生徒達の声が続く。

「静かに。これは去年の乱入事件があったからではないわ。今年の春から市のアリーナの大々的な改修工事が行われているのは知ってる人もいるんじゃないかしら? それによって今年は中止。来年からはまた開催出来るようになるわ。それに今回は代わりに別の企画を生徒会側で進行中なの。だからキャノンボール・ファストへの思いはそこにぶつけてちょうだい」

別の企画。

 

俺達生徒会はそのことは知っていた。話し合いの結果、キャノンボール・ファストの代わりに行われることになったのは━━━━

━━━━IS学園大運動会。

ただの運動会じゃない。そう。『大』運動会だ。ベタベタなバラエティ番組のタイトルみたいな企画名だけど、俺達生徒会はその企画を密かに進めている。

企画は大まかなことはもう決まっていて、後は細かいルールや規定を決めるだけだ。

「さて! それじゃあ悪い話題はこれくらいにして、楽しい話題よ!」

楯無さんが声のトーンを上げた。ついに来るのか……!

「今年の学園祭について!!」

『わあああああ〜〜〜〜〜っ!!!!!』

空気が揺れた。

「いいわねいいわね! みんなすごくいい反応よ!」

楯無さんも楽しそうに笑顔を見せる。だけど俺と一夏は険しい表情だ。

「去年の学園祭同様、今年も特別ルールが導入されるわ! その内容は!」

楯無さんの背後の大型ディスプレイに俺と一夏の姿が大写しにされる。

ああ、去年も似たような場面に遭遇したなぁ……。

「名付けて! 第二次部活対抗織斑一夏、桐野瑛斗争奪戦っっ!!」

ドドンッ!!

『おおおおお〜〜〜〜〜っ!!!!!』

勇ましい太鼓の音がタイミングよく響いた。放送部全面協力だ。

「毎年、部活動ごとに催し物で一番面白いと思ったところに投票をして、得票数一位になることはとても名誉なことよ。でもそれじゃあやっぱり!?」

『つまらないっ!!!!!』

なんだ今の連携は。打ち合わせでもしてたのか?

「そうよ! つまらないわ! だから一位に輝いた部活動には、織斑一夏、または桐野瑛斗を次の学園祭まで生徒会と掛け持ちで強制入部! 一位になれなかった部活動にも当然チャンスは残るわよ? 去年も好評の企画だったセカンドチャンス! 学園祭の当日、二人に何かを持たせるわ。それを見事奪い取った部活動に、次の学園祭まで、選ばれなかったほうを入部させます! そしてここから大事なことを言うわ!」

楯無さんは深く息を吸って、一瞬空気をクールダウンさせた。

「……ここに、生徒会は今年の学園祭へ参加しないことを宣言します!」

この言葉の意味は、すなわち……

「すなわち! 二人が、いずれかの部活動に入部することが確定しているのよ!!」

『わああああああああああっ!!!!!』

会場の熱気にあてられて自身もヒートアップしたのか、楯無さんの声のボルテージも少し上がった。

「あなた達の共通にして最大の敵はもういないわ! 後は、あなた達の力で男の子達を勝ち取るのよ!!」

『おおおおおおおおおおおっ!!!!!』

『い、以上! 生徒会長からでした!』

山田先生のアナウンスが埋もれるほどの喝采を浴びながら、楯無さんが壇上から降りる。

これで始業式のプログラムは全部行われた。つまり、始業式は終わりというわけだ。

(今日は授業も無いみたいだし、シャル達連れてどっか行こうかな……)

なんて考える。がしかし……。

『それでは、最後に新任の先生の挨拶です』

予定に無いプログラムがあった。

「新しい先生?」

「どんな人かなぁ?」

ざわざわと生徒達が色めき立つ。だけど俺達はそうはいかなかった。

「新任の先生? そんな話打ち合わせの時にあったか?」

「お、俺は聞いてないぞ?」

「私も〜」

「となると……」

三人で同時に生徒会長の楯無さんを見る。

「………………」

楯無さんはさっきと打って変わって少し複雑そうな面持ちだ。何か知ってるのか?

「あ、きっとあの人だよ〜」

のほほんさんがダルダルの袖で示した方を見る。

「なっ……!?」

言葉を失った。

「えっ!?」

一夏も俺と同じような反応だ。どうやら俺の見間違えじゃないらしい。

これを越えられるのはそういないんじゃないかと思えるほど真っ赤なスーツを着こなして、金色の長い髪をなびかせながら堂々とした足取りで壇上に出たのは……!

 

 

 

 

 

「今日からこのIS学園でIS操縦に関して指導をすることになったスコール・ミューゼルです。IS学園生徒のみんな、よろしくね?」

 

 

 

 

 

 

「わ〜! 見てみて二人とも〜綺麗な人だよ〜」

のほほんさんが純粋な感想を口にする。他の生徒達も一部を除いて似たようなことを言ってるのが聞こえた。

「マジかよ……!」

「おりむ〜?」

「え………え……………」

「きりりん?」

「えええええええええええええええええええええええええええっ!?」

あまりの急展開に、俺は叫ばずにはいられなかった。

 

 

「なんでいんのっ!?」

学園のカフェの、外に設けられたテーブルで、目の前で全く動じずストレートティーを飲むスコールに吠える。

「落ち着きなさい。可愛い顔が台無しよ?」

「はぐらかすな!」

俺は始業式が終わり、HRも終わった直後に教室から飛び出し、新任教師を捕まえた。

なぜカフェにいるかというと廊下ではあまりに目立つから、という一言に尽きる。

「そうだぞガキ。男がいちいち喚くんじゃねぇよ。うっとおしいったらねぇ」

「お前もだオータム!!」

信じられないことに、スコールだけじゃなくオータムまでもがここIS学園に教師としてやって来やがった。しかも以前変装する時に使っていた偽名である巻紙礼子の名前でだ。

「大体お前に先生やれんのか!?」

そう言うと、黒のスーツを着込んだオータムはティーカップを持った手を止めて俺を睨んだ。

「あぁ? お前バカにすんなよ? 教師の振りなんざ、朝飯前だっつの」

「って、そうじゃない! なんでお前らが先生としてここに来てんだよ!? その説明をしろよ!」

「はあ……」

スコールはティーカップをテーブルに置くと、鋭い光を宿した目で俺を見た。

「あなた、自分が今どんな状況かわかってる?」

「じ……状況?」

「あなたはあの事件以来、世間から注目が集まってるのよ。それはこちら側だけじゃなくて、あちら側…裏社会もそう。どういうことかわかる?」

「どういう……ことだよ?」

スコールに代わってオータムに答えられた。

「お前のことを狙ってくる連中がいるってこった」

「俺を狙う? なんで━━━━」

「理由なんて、いくらでもあるわ。それくらいわかるでしょう?」

「………………」

「あなたはもう、『いつ命のやり取りをする状況に置かれてもおかしくない』という状況の中にいるの。だから私とオータムはあなたの身辺警護も兼ねてこうして教師としてやって来たというわけよ」

「身辺警護って……チヨリちゃんの指示なのか?」

「確かにそれもあるけど、私は言われなくてもやるつもりだったわ」

これで満足かしら? と、スコールは金色の髪をなびかせる。

「そこのあなた達も、納得してくれた?」

「え?」

振り返ると、俺の後ろに腕を組んだラウラがいた。ラウラだけじゃない。シャルに簪、一夏とマドカと箒とセシリアと鈴もいる。

「お前ら……」

「……なるほど、お前達がこの学園にやって来た理由はわかった」

ラウラが口を開くと、スコールは微笑んだ。

「理解が早くて助か━━━━」

「だがお前達の警護など必要ない。瑛斗のことは私達が守る」

「……言うじゃない。ドイツの黒い子ウサギさん」

黒ウサギ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)の名を愚弄するなっ!」

ラウラは腕を組んだままスコールと睨み合いを繰り広げる。

「ら、ラウラ。こんなところで危ないのはダメだからね?」

シャルがラウラに近寄ってなだめるように言った。

「あなたの方が話がわかるようね。えっと………?」

「シャルロット・デュノアです。それと、僕もあなたたちの味方をしてるわけじゃありませんよ」

「シャルロット……ここにいる私たちは、誰もこの人たちの味方じゃないよ」

簪も突き放すような口調で言い放つ。

「まあ、あなた達からいきなり信用されようなんて思うほど、私も浅薄ではないわ」

スコールは組んでいた足を組換えた。

「気に食わないならかかってきなさい。いつでも受けて立つわ」

「へへっ、いいねぇ。私もスコールに賛成だ。手っ取り早くねじ伏せて、わからせるのも悪くない」

オータムも愉しそうにくつくつと笑う。

二人の余裕綽々な態度に、ラウラ達はムッと表情を硬くする。

ピリ……と緊張が漂い始めた。

「お、おいおい、お前ら……」

俺はどうしたらいいかわからずオロオロしてしまう。一番危ないのはラウラだ。シャルに釘を刺されているとは言っても、いつ動くかわかったもんじゃない。

と、そこに靴音が近づいてきた。

「ミューゼル先生、巻紙先生。生徒との積極的なコミュニケーションはいいですが、目に見えて行き過ぎたものはこちらとしても無視出来ない」

「千冬姉……」

「お姉ちゃん……」

織斑先生だった。どうやら見かねて来てくれたようだ。

「あら、それは失礼しましたわ」

「すいませんね」

織斑先生の言葉などどこ吹く風と言わんばかりにスコールとオータムは動じない。

「それに……他の教師たちに挨拶がまだでしょう」

織斑先生がおもむろにスコールとオータムの腕を掴んで立ち上がらせた。

「え?」

「あ?」

「ここの教師をやるからには、いろいろ知っておく必要がありますよ」

そのまま腕を引っ張って二人を連れて行く。

「あらあら、随分と強引ですのね?」

「黙ってついて来てください」

しかし先生も負けじとスコールの挑発的な発言を聞き流す。

「おーおー、怖い怖い。じゃあなガキども」

「明日からは授業だから、よろしくね?」

去り際の言葉を言いながら、スコールとオータムは織斑先生に引っ張られて俺達の視界から消えた。

「スコールとオータムが、ここで先生をやるんだ……」

マドカがポツリとつぶやく。思うところがあるんだろう。

「マドカ、平気か?」

心配した一夏がマドカの肩に手を乗せる。

「うん。大丈夫」

「それにしたって、何考えてんのかしらね」

「言ってみれば、敵陣の中に入ってきているというのに、あの堂々とした振る舞い………単に肝が座っているというだけではあるまい」

「何か企んでいるのでしょうか?」

みんなスコールとオータムのことを警戒している。無理もない。少し前まで敵だったんだ。

「瑛斗は……どう思う?」

「………………」

簪が俺にそんな問いを投げかけてきた。

「まだ、何とも言えないかな……」

事実、俺も曖昧な返事しかできないでいる。

「そう……そうだよね……」

しかしこのままでもいけない気がする。

(多分、まだあそこにいるはずなんだよな……)

「……仕方ない。行ってみるか」

俺は椅子から立ち上がった。今日授業が無いのが幸いだぜ。まったく。

「瑛斗? 行くって?」

「チヨリちゃんのところへだよ」




この一言に尽きますね。
オータムに教師ができるのか!?
次回はチヨリに瑛斗が文句を言いに会いに行きます。他にも街で遊んだりする風景も書いたり書かなかったり。
そして次の次の話あたりで、二人の授業風景を書いてみようと思っています。
次回もお楽しみに!

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