リリカルなのはVS夜都賀波岐   作:天狗道の射干

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副題 穢れた真実。
   男達の戦い。


推奨BGM
1.祭祀一切夜叉羅刹食血肉者(神咒神威神楽)
2.血の縛鎖(リリカルなのは)
3.此之命刻刹那(神咒神威神楽)


第十一話 旅人の星が流れる先は

1.

 地の底に広がるは極彩色の地獄。幾何学模様を渦巻かせる宙の下に、向き合うは金髪の男達。

 鮮やかな振袖を着崩した男が笑みを浮かべる中、鮮緑色のスーツを着込んだ青年は拳を握ったまま思考を巡らせる。

 

 さあ、どうする。この鬼を前に、己には如何なる手札が切れる。

 

 鬼の剛腕を受けきれる器はない。その人知を超えた速力に追い縋る速さを持たない。悠久の時を重ねた研鑽に対抗する術が何処にある。

 

 

「どうした。今更ながらに考え事か」

 

 

 思考は回る。だがその速度は嘗てよりも遅い。魔力を失った青年の思考速度は常人並みであり、故にこそこの場で打開策を即座に思い付ける等と言うご都合主義は起こり得ない。

 

 

「相変わらず、勝ち目がねぇと動けねぇのかよ」

 

 

 勝ち目がなければ動けない。まずは考えてから行動する。

 そんな青年の変わらぬ性分を、両面の鬼は冷たく見据えて鼻で笑う。

 

 

「……勝機がないのに動くのは、唯の間抜けだろう」

 

「はっ、……考え事ばかりで動かねぇのは、唯の腰抜けだ」

 

 

 そんな遣り取りに笑みの質を僅かに変えて、両面の鬼が大地を蹴った。

 

 

「本当に勝ち目がねぇのか。実際試してみろや、優等生!」

 

「っ!」

 

 

 まず一手。敵が動かぬならば、己から動かす。

 鳴くまで待つ程に悠長な性格はしていないのだから、この一手にて状況を覆す。

 

 

「はっはぁっ!!」

 

 

 最上段から飛び掛かる様な襲撃。流れる水に逆らう様な、デタラメな動き。余りにも大振りに振られるテレフォンパンチ。

 

 そんな()()()()()()()()()()()()に、反射的にユーノは拳を振るっていた。

 

 如何に研鑽された拳であれ、既に魔導師ですらなくなった青年の拳。人間相手にならば通用すれど、偽りの神々を前にすれば余りにも不足が過ぎる。

 技術など関係がなくなってしまう程に、力の桁が隔絶しているのだ。故に必然、振るわれた拳は敵を傷付ける事などなく、寧ろ己を傷付ける結果に終わる。

 

 

「は?」

 

 

 筈だと言うのに――振るった拳は両面の鬼の顔面を撃ち抜き、大天魔を後方へと殴り飛ばしていた。

 

 

「……これは」

 

 

 思わずユーノは己の拳を見下ろす。僅かに痛む右手の甲は、それでも傷一つない状態。

 ジュエルシードと言う遺物の力を借りて対峙した経験のある彼だからこそ、その余りにもあり過ぎた手応えに思わず思考停止してしまい――

 

 

「そら、よそ見してんなよなぁっ!」

 

「くっ!?」

 

 

 その一瞬の隙を突いて、両面の鬼の反撃を受ける。

 神速で間合いに入り込んできた鬼が打ち込んだ蹴撃を左腕で受けて、受け流し損ねた衝撃に声を漏らした。

 

 鬼の挙動は、先とはまるで別人の如く。奇怪で舞う様な動きながらも、流れ落ちる水の如くに一切の無駄はなき柔の極み。

 その極上と言うべき武技は、以前に刻まれた物と同じく――故にこそ、威力の違いが浮き彫りとなっていた。

 

 

「……やっぱり、これ」

 

 

 攻撃を受けた左腕を見る。内出血による青痣の浮かんだ腕は痛むが、痛むだけだ。

 嘗て鬼の拳を刻まれた際には、魔力で強化されていた内臓全てが押し潰された。だと言うのに、今回は痛むだけだったのだ。

 

 

「一発は貰ってやった。そして、一発はくれてやった」

 

 

 戸惑う青年に対し、天魔・宿儺が語る。態々一撃を受けた事、そしてこうして一撃を与えた事。それによって理解は出来たであろうと、両面の鬼は嗤っていた。

 

 

「これでルールは理解出来ただろう?」

 

「……まさか、この太極は」

 

 

 半信半疑ながらも、ユーノはその解答に到達する。

 それが如何に信じられない物であれ、それが如何に道理に反した物であれ、ユーノ自身に一切の異能がない以上、答えは其処にしかありはしない。

 

 即ち、この結果を生み出したのは、天魔・宿儺自身である。

 あの日との違い。幾何学模様の宙を見上げて、ユーノは呟いていた。

 

 

「自滅する法則、だって言うのか」

 

 

 無間身洋受苦処地獄(マリグナントチューマー・アポトーシス)

 この世界そのものが、天魔・宿儺を弱体化させている、と。

 

 

「そうさ。俺が認めちまった奴を相手取る限り、この太極(ことわり)は俺自身を縛り付ける。この太極の内側に限り、今の俺とお前は対等だ」

 

 

 そんな青年の推測に笑みを零して、両面の鬼は誇らしげに語る。

 人間の限界点にまで弱体化した状態で、天魔・宿儺は己の法則を高らかに語った。

 

 

「俺はよぉ、これでも()()が好きなのよ」

 

 

 それは自壊する法則。最初から破綻した太極。

 成立した時点で崩壊に至る程の矛盾を孕んだ、自滅に至る流出世界。

 

 

「特に真面目に生きている奴。ままならねぇ現実を前に、二本の足で立っている奴ら。コイツらは最高だ」

 

 

 その願いの根幹は、即ち神格の否定。神秘を認めず、それに頼る者らを人と認めず、一切合切屑であると断じる渇望。

 

 

「そういう奴らってのはよぉ。魂の輝きが違う。生きる事への熱意が違う。心に燃やした情熱が、決定的に違ぇんだよ」

 

 

 真面目に生きていない奴は認めない。

 現実に嫌気が差したからって、安易に神の奇跡なんて求めんな。

 神に縋る人間以下も、それに手を貸す腐れ神も、どいつもこいつも要らねぇんだよ。

 

 両面の鬼の願いはそれだけで、彼自身が神格であるが故にこそ其処に陥穽は生じている。

 

 

「そういう奴を見ていると、俺もそういう風になりたくなっちまう。対等の立場で、真っ向から向き合いたくなっちまうのさ」

 

 

 そう要らないのだ。真面目に生きている人間の前に、己と言う腐れ神は。

 

 

「太極ってのは、神の渇望を形にしたもんだ。……だからこそ、俺の太極は俺自身にも嵌るのさ」

 

 

 故にこそ、彼が認めた敵を前にした時、排斥の力は宿儺自身へと集中する。

 彼自身の筋力体力気力魔力走力太極。それら全ての能力を人間レベルに迄引き下げるのだ。

 

 

「こいつが俺の、無間身洋受苦処地獄(マリグナントチューマー・アポトーシス)

 

 

 そんな欠陥だらけの法則を何よりも誇る様に、両面の鬼はにぃと笑う。

 己自身を縛る宙。全能域の力を失くした今の己の姿。其処に言い知れぬ感慨を覚えながら、両面の鬼は断言する。

 

 

「教えてやるよ――俺に勝てるのは、人間だけだ」

 

 

 魔導師では勝てない。リンカーコアを持つ彼らを、両面の鬼が認める事はない。

 歪み者では勝てない。神の奇跡に縋る彼らを、両面の鬼は決して認めない。

 

 例外は唯一人。唯人でありながら、宿儺に敵と認められた唯一人。

 ユーノ・スクライアこそが、この両面の鬼を打ち破れる唯一人の人間なのだ。

 

 

「……これを使わなければ、絶対に勝てるって分かっていて」

 

「当たり前だろうが、俺の法だぜ?」

 

 

 ごくりと唾を飲み干して、青年が呟く。そんな青年の言葉にニヤリと笑って、宿儺は己の行為を愚行と認めた。

 

 愛する女を救う為に神の加護(リンカーコア)を失った青年は、端的に言って酷く弱い。

 鬼が法則を使わずにその拳を振るえば、それだけで容易く勝利出来たであろう。青年が勝利する可能性は、正しく零であったのだ。

 

 だがこの異界においては異なる。神性の一切を否定する地獄の中において、両面の鬼はユーノの手が届く位置に堕ちている。

 

 ならば勝機は確かにある。僅かであろうとも、勝機は確かに生まれ得るのだ。

 

 そうなると分かっていて、天魔・宿儺はそれを選択した。

 にぃと笑う両面の鬼にとっては、敗北の可能性すら孕んだこの状況すら望む所であると言う事であり。

 

 

「お前、イカレてるよ」

 

「はっ、そりゃ褒め言葉だろ」

 

 

 絶対の勝機を自ら捨てる鬼を青年はそう批評して、その罵倒に対して鬼は啖呵を返した。

 

 

「こいつは大一番。俺が認めた俺の敵(おまえ)との決着(おおいちばん)だ。勝率だとか、絶対勝利だとか、んな温いもんは要らねぇんだよっ!」

 

 

 それは彼にとって不本意な役割と、そして彼自身が望む事。その二つの妥協点。

 せめて悔いのない決着を。其処に混ざる後悔など、何一つとして要らぬのだ。

 

 故に勝機を与えた。

 故に敗北の可能性を許容した。

 

 だが、敗北してやる気など欠片もない。

 

 

「さあ、拳を握れよ! お前も立派な男なら、決着は自慢の拳でつけようや!!」

 

 

 対等の立場でも、必ずや勝利して見せよう。

 笑い続ける両面の鬼が跳躍し、合わせる様にスーツ姿の青年も大地を蹴る。

 

 自壊する地獄の底で、男達の拳が交差した。

 

 

 

 

 

2.

 壊れた戦闘機人の残骸が転がる施設の一区画。

 無数にある記録装置を操作していたヴェロッサは、見つけ出した情報に表情を凍らせていた。

 

 

「おいおい。コイツは」

 

 

 それはある一つのリスト。

 そしてそれに伴う一つの計画文書。

 

 

「これは、ない。これは、これだけはやってはいけない事だろうっ!」

 

 

 データ自体が消される前に到達出来たが故に知る事が出来た真実は、余りにも悍ましい現実であった。

 

 

「貴様。何を見つけた」

 

「自分で見ろ。……口にしたくもないね」

 

 

 問い掛けるザフィーラにそう告げて、ヴェロッサは口を閉ざす。

 そんな彼から端末を受け取ったシャッハとザフィーラは、其処に記された記録に表情を歪ませた。

 

 

「ロッサ。これは」

 

 

 シャッハの声が震えている。余りにも信じたくない程に、嘘偽りだと思いたい程に、それが悍ましい記録だったから。

 

 

「これは、真実なのですか」

 

 

 だが、特別捜査官である彼があれ程に激昂したのだ。

 ならば、真実と断言出来る理由が彼にはあるのだろう。

 

 聞きたくはないが、聞かねばならない。

 そんなシャッハの問い掛けに、ヴェロッサは嫌悪を隠そうともせずに口にした。

 

 

「以前から話はあったのさ。噂話レベルだけどね」

 

 

 それは一つの噂話。愚にもつかない唯の噂。

 

 

「管理局の裏には処刑部隊が居る。最高評議会に逆らえば、魔刃に焼かれて全てが燃える」

 

 

 だが、そう断じるには余りにも被害は大き過ぎた。

 管理世界で暗躍するあの犯罪者は、余りにも手広く動き過ぎていたのだ。

 

 

「僕ら捜査官も無能じゃない。それに対しての裏取りくらいはしていたのさ」

 

 

 故にヴェロッサを始めとする捜査官たちは、魔刃の背後関係を洗った。

 その途中で幾人が消え、幾人が犠牲になったかは分からない。どれだけの被害を出したのか、計算する事すらしたくはない。

 

 

「事実だったよ。魔刃に焼かれた研究施設は、一つ二つじゃ足りやしない」

 

 

 だが確かに、反天使と最高評議会の繋がりは見つけ出した。

 明確な証拠こそ掴めなかったが、彼らこそが管理局の暗部であるとは分かっていたのだ。

 

 

「だけどさ。そんな事実が分かったら、今度はもう一つの疑問が生まれた」

 

 

 それは単純な疑問。

 

 

「それだけ焼かれて、それでも減らない人間は、一体どこからやって来た?」

 

 

 管理局が主導して処刑をしているならば、どうしてこんなにも処刑対象は減らないのだ。

 

 

「何処からって、管理世界からではないのですか?」

 

「ああ、そう考えるのが普通さ。人的資源だけは山ほどある訳だから、そう簡単に尽きはしないと単純に考えていた」

 

 

 そんな当たり前の回答に、ヴェロッサは伝える。

 人的資源は溢れる程にあるのだから、と其処で止めていた思考を更に推し進める。

 

 

「けどさ、深く考えてみなよ。シャッハ。……単純作業の人手なら兎も角、実践レベルで働ける研究者がそんなに居る物かい?」

 

「あっ」

 

 

 言われて、シャッハも気付いた。

 

 

「その答えが分からなかった。けどね、その答えは此処にあったんだ」

 

 

 この手に握った端末が読み込んだ情報。其処に記された情報が真実ならば、そんな疑問は全て解決してしまうのだ、と。

 

 

「プロジェクトF。記憶や経験さえ模倣出来るクローン技術」

 

 

 其処に記されたリストは、管理世界に生きる全ての住人の個人情報全てと遺伝子情報。

 そして既にプロジェクトFを利用したクローンを作り上げているか否か、と言う情報。

 

 

「それですり替えていたのさ。本人と、クローンを、誰にも気づかれない様に勝手にすり替えていたんだ!」

 

「な、何故ですか!?」

 

 

 そしてもう一つ。

 

 クラナガンを始めとする世界で生きる住民たちを、どれ程に入れ替えたのかと言う記録情報が其処にはあった。

 

 

「記憶も経験も模倣出来るなら、そのクローンを量産するだけで済む筈ではっ!」

 

「済まなかったのさ。クローンと本人はやはり違いが出る。如何に記憶や経験を刷り込んでも、身体に染み付いた技術だけは模倣出来なかった」

 

 

 ミッドチルダを始めとする管理世界に生きる人々は、気付かぬ内にすり替えられていた。

 

 

「それを解決する為に、ハイローミックスの思考を取り入れたんだろうさ」

 

 

 クローンの中に数名、クローンでない人間を紛れ込ませて研究させる。

 そうする事で技術レベルを可能な限り落とさずに、クローンを一線級の実力者に育てようと言う思考

 

 それが故に、多くの人々が犠牲となっていた。

 

 

「そして同時に、研究室に監禁した本人のクローンを一般社会に溶け込ませる事で、そいつが勝手に経験を積んでいく事も期待したって寸法だ!」

 

 

 本人は気付かない。教えられる事がない。

 本人の意志だと誤解したまま、世界を守ると言う情熱を以って単身赴任の仕事に励む。

 

 家族も気付かない。情報を操作されて気付けない。

 其処に身内が居るのだから、本物が居なくなったと言われて信じられる筈もない。

 

 

「その挙句、都合が悪くなったら本人ごと研究施設を焼き払った。そんな事を繰り返していたら、純正な人間なんて残らないだろうにっ!」

 

 

 偽物と本物を入れ替えて、何時の間にか本物は殺されていく。

 後には唯、複製された人間達の存在に気付けぬ人々が、当たり前の様な幸福を享受する歪つな世界が残されるのだ。

 

 

「これはリストさ。既に本人は殺されて、偽物とすり替えられていた人のリスト」

 

 

 それが必要だから、そんな意志の下に人権の全てを凌辱される。

 

 

「命を弄んだ。時空管理局最大の罪。いいや、管理局だけじゃこんな真似は出来ない。間違いなく教会や一門も関わっている。ミッドチルダの悪そのものだよ」

 

 

 如何なる理由が在ったとしても、許してはならない悪は其処にあった。

 

 

 

 ザフィーラとヴェロッサが黙り込んだ中、シャッハ・ヌエラが口を開く。

 

 

「これが真実だと言うなら」

 

 

 それは守る為に、そう誓いを立てた彼女だからこその言葉。

 

 

「ミッドチルダは、一体何の為に戦っているのですか」

 

 

 守るべき人を傷付けて、それで彼らは何処へ行こうと言うのか。

 守るべき人が踏み躙られていた現実を知って、それで我らは何を為せると言うのか。

 

 

「私達は守る為にこそ、この剣を手にした筈なのに」

 

 

 戦う理由さえ見失ってしまいそうになる。

 此処に居て良いのか、そんな疑問さえ浮かんでくる。

 

 それはきっと、この場の誰もが変わらずに抱く感情だ。

 

 歪み者や希少技術は複製出来ない。故に家族は偽物ではないと分かって安堵してしまったヴェロッサも、敵討ちの為に身を寄せているザフィーラも少なくはない迷いを抱いていた。

 

 

「……そう迷う必要はない。これは我らの罪であり、其方らの罪ではないのだから」

 

 

 そんな風に迷う者らに、擦れた声が掛けられる。

 それは悍ましい声音。受け入れ難き蠅声の雑音。瘴気の如き気配と汚物の様な悪臭を漂わせる、被衣姿の女が其処に居た。

 

 

「貴様も関わっていたのか、御門顕明」

 

「……直接手を下した訳ではない。だが、知らなかった訳でもない。故に罪深きは我らであろうさ。其方らではない」

 

 

 敵意を前面に押し出したまま、ザフィーラが口にする。

 その言葉に弾かれる様に、シャッハとヴェロッサは構えを取った。

 

 そんな三人の姿に反応を見せる事もなく、御門顕明は身を翻す。

 その歩が進む先には一つの扉。地下へと続く階段こそ、彼女がこの場へとやってきた侵入経路。

 

 

「……付いて来るが良い」

 

 

 その先には、真実がある。この世界の真実。神座の真実が刻まれた、最高評議会にとっての心臓部。

 

 

「もう希望は失われつつある。だからこそ――」

 

 

 両面の鬼が動いた事は知った。

 奴は人に期待し過ぎている。理想ばかり見て、現実から目を逸らしている。

 

 今のトーマ・ナカジマが師を失えば、希望は完全に潰えるだろう。

 だが、今の己に天魔・宿儺を止める術はない。故に新たな神と言う希望は、完全に失われてしまうだろう。

 

 修羅道が甦っても、その次が生まれぬのでは意味がないのだ。

 

 

「――お前たちに、全てを見せよう」

 

 

 だからこそ、この先にある全てを教える時が来たのだろう。

 最早自分には打つ手など何一つとしてないからこそ、可能性に満ちた次代へと全てを伝えるのだ。

 

 この一手が、どんな結末を至らせるのかは分からない。

 だが次代の彼らが己達の様な間違いを犯さぬ様に、これぞ己の役割と信じる顕明は彼らを地の底へと誘った。

 

 

 

 

 

3.

 二つの影が交差する。

 汗水血反吐を垂らしながら、原始の戦士が如くに殴り合う。

 

 鮮緑色の上着は引き裂かれ、女物の着物には乾いた血がこびり付く。

 金髪の男達は、互いに刻まれる痛みに耐えながら拳を振るっていた。

 

 

「そらっ、どうした優等生っ!」

 

 

 蝶の如く舞い。蜂の如く刺す。その動きに一貫性はなく、されど全てが極めて合理的。

 本能と言う才覚の上に、無謬の研鑽を積み重ねた両面の技は正に極上。例え人間の域に堕ちているとしても、その動きには玉の瑕さえ存在しない。

 

 嵐の如き猛攻は、断じて剛の拳ではない。

 至高の剛拳を操る終焉の怪物の対である両面が振るうのは、変幻自在な柔の極みだ。

 

 

「こんなもんかぁ、お前の限界はよぉっ!」

 

「疾っ!」

 

 

 鬼の挑発を冷静に受け流しながら、青年は流れる動作で対応する。

 天然の才覚に依る動きに対するのは、何処までも理詰めに重ねた修練の拳。

 

 流れは流水の如くに絶え間なく、その拳は宛ら烈火の如く。

 雷光さえも思わせる速度は正しく極上。人間の視認速度を超えるのではなく、その意識を外す技は連綿と受け継がれし技巧の総決算。

 

 戦国の世より続き、数百年と言う歴史を持つ古流武術。永全不動八門一派・御神真刀流。

 その流派において、既に青年は歴代の使い手にも並ぶ者は居ないとまで称されるに至っている。

 

 その技巧は第二の母とでも言うべき師から継いだストライクアーツと混ざり合って、正しく至高の極致へと手を掛けていた。

 

 

「はぁっ!」

 

「温ぃ! そんなもんじゃねぇだろうが、お前はよぉっ!」

 

 

 僅か十九と言う年齢。未だ二十にも届かぬ若造が、その域に到達する。

 

 それを人は才覚の一点で片付けるであろう。無論努力も人並み以上に重ねている。だが才能がなければ、ここまで至る事は出来ない筈だ、と。

 

 彼に関わった人間は皆、そう考えている。

 高町士郎もクイント・ナカジマも、高町恭也や月村忍。ティーダ・ランスターやトーマ・ナカジマ。高町なのはですらそう感じている。

 

 だが違う。それは違うのだ。

 

 

(考えろ。考え続けろ。()()()()()()()()()()。そんな僕に出来るのは、冷静に理詰めに、考え続ける事だけだろう)

 

 

 拳を交わす両面の鬼は、正しく才能の塊である。

 生来の直感と、本能が支える獣の動き。それを柔の極みへと至らせたのは年月だが、それ以外には何も特別な事はしていない。

 

 努力など必要ない。鍛錬など弱者が積むべき物なのだ。

 そんな思考を貫き通した鬼は、故に一切の努力をする事なく武の極点に至っている。

 

 如何に気の遠くなる程の月日があったとしても、熱し続けられていない湯は水に戻る。そうならぬのは、この男が真正の天才だからなのだ。

 

 なるべくしてなった。ただ思うがままにあるだけで、努力など鼻で笑えてしまえる。

 そんな才能の怪物だからこそ、殴り合う敵の拳に光る物など感じない事に気付いていた。

 

 ユーノ・スクライアは武の天才などでは断じてない。

 

 

(受け入れろ。諦めろ。最善を目指せないと言うならば、次善を必ず達成するんだ)

 

 

 ならば何故、誰もが彼を天才だと誤解するのか。その解答は単純だ。

 圧倒的な鍛錬量が、天分の才が如き成長性を実現していたからに他ならない。

 

 質が違う。数が違う。重ねた鍛錬の総量が、単純に人とは違うのだ。

 

 マルチタスク。それが手品の種である。

 未だ魔導師であった頃、ユーノの思考可能数は十二もあった。

 その全てを費やせば、単純計算にして常人の十二倍の鍛錬を積む事が出来る。

 

 要はそれだけの話なのだ。

 

 

「はっ! 良い子ちゃんがっ、言い返す事すらしねぇのかよっ!」

 

 

 拳を合わせる。蹴りをぶつけ合う。

 受け流し、身を守り、それでも傷は増えていく。

 

 嘲弄を張り付けた鬼に対し、武技にて劣る事を理解しているユーノは何処までも冷静な思考で勝機を探る。

 

 

(まだ、奴の方が一歩は先だ。けど、届く位置には近付いている)

 

 

 彼の天与の質は、その頭脳にだけ結実している。

 無数のマルチタスク。類稀な発想力。ユーノの特別性などそれだけであり、それらを応用する事で凡庸な資質を補っていた。

 

 

(現状のままなら勝機は薄いか。けど、死を前提とすれば、恐らく四割。……なら冷静に、命の切り時を見極めるんだ)

 

 

 マルチタスクを使った鍛錬は一般的であり、効率的な訓練として魔導師の誰もが行っている事だ。

 故に誰もが気付く可能性があり、同時にその欠点も知るが故に誰もがそれを無意識の内にあり得ないと決め付けていた。

 

 マルチタスクを使うと言う事は、使った分だけ己に掛かる負荷が増すと言う事だ。

 自分が増える訳でもなく、故に十二倍に増えた鍛錬の負荷は己自身に積み重なっていく。

 

 それだけして、得られるのは仮想体験。現実の肉体に返る物はない。

 己の肉体に変える物ではなく、脳内モデル形成の役にしか立たないのだから、当然肉体面での鍛錬も必要となってくる。

 

 彼が武を学び、魔力を失うまでの四年間。十二倍すれば四十八年だ。

 思考を高速化する魔法と合わせれば、その数字は二倍三倍と膨れ上がる。合わせて行われた修練の密度は、果たしてどれ程の物となるのか。

 

 少なくとも、人の一生分など遥か昔に終わっている。

 

 

「はっ、さっきは俺の事をイカレてるとか言いやがったがよ」

 

 

 そんな苦痛を、魔力を失うその日まで続けていた。

 それを貫き通すだけの精神力こそが、或いは彼にとっての最大の武器。

 

 

「てめぇも十分、イカレてんだろうがっ!」

 

 

 一生を武芸に費やせば、誰であろうとそれなりには至れるであろう。

 彼は御神の流派始まって以来の才児ではなく、今を生きる剣士の誰よりも長い時間を鍛錬していただけなのだ。

 

 故にそれは、誰であろうと至れる領域。それは真っ当な積み重ねの到達点だ。

 人は全てを費やせば其処までは至れるのだと、傷だらけの拳が伝えて来る。

 

 至高の才と狂気の努力。

 共に黄金の髪を持つ男達は、その実真逆の道を行く。

 

 天魔・宿儺は笑う。故にこそ、コイツは己の敵に相応しい。

 天魔・宿儺は苛立つ。故にこそ、その僅かな無様が気に入らない。

 

 それに我慢できない鬼だからこそ、拳の応酬の中に罵倒は混ざっていく。

 

 

「冷静さは常に失わず、透徹した意志の下に全てを断ずる。ままならぬ世を知った上で、されどより善きを目指す人物」

 

 

 今のユーノ・スクライアの対外評価。

 拳を振るいながら、それを並び立てていく。

 

 

「まるで真理を悟った、仙人の如き人間。その透徹した瞳は、悟りの境地に至っている」

 

 

 自然と共に生き、己を鍛え続けた青年。

 世の理不尽を知り、それでも進み続ける賢者。

 

 

「はっ! そいつは悟りじゃなくて、諦めの間違いだろうがよ!!」

 

 

 そんな周囲の抱いた評価を、間違いであると断言した。

 

 

「言い当ててやろうか? お前は俺に届かねぇ。それを認めて、その上で命を捨てて、俺を倒そうとしてやがる」

 

「…………」

 

 

 命を賭けるのではなく、命を捨てる。

 才能も経験も負けている以上、敗れ去るのは道理と悟ってしまったからこそ、その差を埋める為にそう思考していた。

 

 

「生きて帰る気が端からねぇ。断崖を飛翔する心算なんて元からねぇ。俺に出会った時点で、俺を倒して皆でハッピーエンドっていう最善をあっさり諦めやがった」

 

 

 ユーノの思考は、己の判断が下す結果がどうなるのかを推測する迄に至っている。

 

 自分がこの鬼と共に死んだ場合と、この鬼だけを残した場合。

 己が逃げ出した場合と、この場で最期まで戦い続けた場合。

 

 その情勢をその優れた頭脳で、完全に予測しているのだ。

 その上で極小以下の勝機を狙うのではなく、より可能性の高い相打ち狙いにシフトした。

 

 

「舐めてんのかよ、テメェ!」

 

 

 それが、そんな思考が気に入らない。

 命を掛ける選択は良くても、命を捨てる選択を受け入れられはしないのだ。

 

 

「仮にそれが、あるがままをあるがままに受け入れる、悟りって境地であっても、今のテメェに俺は倒せねぇっ!」

 

 

 出来る限りの最善。ままならぬ現実を前に、それでも前を目指し続ける。

 それは真面目に生きると言う点では間違っていないかも知れないが、それでも突き詰め過ぎれば人の生き方ではなくなってしまう。

 

 

「言っただろうがっ、俺に勝てるのは人間だけだっ!」

 

 

 己に勝てるのは人間だけ。仙人などはこの場に不要。

 

 

「霞食ってる仙道でもねぇ! 真理に至った聖人でもねぇ! 俺に勝って良いのは、唯の人間だけだ!!」

 

 

 そう断じる両面の鬼にとって、その無様は許せない。

 

 

「昔のお前の方が、遥かに良かった! 今のお前は、正直詰まんねぇんだよ!!」

 

 

 故に負けぬのだ。例え対等の場を用意したとしても、今のコイツには負けぬのである。

 

 

「……好き勝手、言ってくれるじゃないか」

 

 

 そんな鬼の言葉を受けて、青年は己の胸中を振り返る。

 確かに言い当てられた思考を認めて、それでも内に熱が宿っていく。

 

 

「確かに、これは諦めなのかも知れない」

 

 

 挫折ばかりの人生だった。失敗だらけの人生だった。

 宿敵に勝つ戦士の道を諦めて、情報を握って管理局を改革する道を諦めて、手には小さな物だけが残った人生。

 

 その生き様に諦め癖が付いていたのは、或いは自然な事なのかも知れない。

 

 

「だけどさ、僕のこれが諦めなら――」

 

 

 それでも、誰が好き好んで死を選ぶ物か。

 他に術はないと冷静な思考が判断してしまうから、その道を選んだだけでしかない。

 

 トーマにはリリィが居る。きっとあの子を支えてくれる。

 なのはは自分の死を悼むだろうが、それでも立ち上がれる強さを持っている。

 

 遺してしまう彼女達は、それでも何とかなるのだろう。

 だが、この鬼は違う。コイツに勝てる可能性があるのは、自分だけしかいないのだ。

 

 自滅する世界。その法則を覆せる者は、魔導師の中にはいない。

 対等の立場に立って、己の武威のみでコイツに迫れる拳士は自分以外には存在していない。

 

 誰も勝てない。武芸で己が追い抜いてしまった先達も、異能に頼ってしまう仲間達も、誰もこの鬼に勝てはしない。

 

 だから後を思うならば、コイツだけは己が倒さねばならないのだ。

 

 

「――お前のそれは餓鬼の我儘だろうがっ!」

 

 

 だと言うのに、眼前の敵は駄々ばかり口にする。

 そんな餓鬼の我儘に悲壮な覚悟を否定され、怒りを覚えぬ程に冷徹では在れない。

 

 

「人間の定義を勝手に決めて、それに反したら下らないと否定する」

 

 

 両面の鬼の言葉は、子供の我儘の如く自分勝手な意見だ。

 そうでなければいけないと、他人に自分の理想を押し付ける。

 

 それは紛れもなく覇道の資質。

 今ある現実を否定して、自分の理想を実現しようとする渇望。

 

 

「其処にある人を認めずに、都合の良い理想(にんげん)を夢見ている」

 

 

 宿儺の人間の定義は狭い。

 それは彼が人間に対して、過剰な期待を向けるが故に。

 

 彼が言う真面目に生きると言う言葉。

 それを現実に果たせている人間が、果たしてどれ程に居るであろうか。

 

 ままならぬ現実に立ち向かい、前を目指せる者がどれ程居る。

 失敗から立ち上がれずに潰れてしまう人間が、一体どれ程に居ると思っているのか。

 

 立ち上がれなければ人ではない。何かに頼るようでは人ではない。

 そんなの自分の理想で現実を定義しようとする思考。それは現実逃避と何が違う。

 

 

「それの何処に、真面目に生きる姿があるっ!」

 

 

 生きる中で、人は必ず挫折する。全ての願いが叶う事など、全てが自分の思い通りに動くなど、絶対にありはしないのだ。

 だから生きるとは挫折する事。失敗を重ねていく中で、人は夢と折り合いを付けて成長していく。

 

 

「お前たちはどいつもこいつも糞餓鬼だよっ! 自分の願望に浸って、そうでない世界は気に入らないとふざけやがって!」

 

 

 故にこそ挫折と向き合うのではなく、都合の良い異能に頼る彼らは餓鬼なのだ。

 そんな子供の理屈を振り翳す彼らにこそ、真面目に生きると言う言葉は相応しくない。

 

 

「そんなお前の下らない太極(こだわり)は、行燈にでも説いていろっ!!」

 

 

 燃え上がる思考で断言する。彼らの法則全てを下らない拘りと断言して、胸に宿った熱に振り回される。

 

 冷静に、透徹した思考で、そうでなければ見極めなど出来る筈もない。そんな思考をしていたのに――嗚呼、こんなにも熱くなってしまった。

 全てはコイツがこんな駄々ばかり口にするから、大人に徹しきれなくなってしまったのだ。

 

 

「はっはぁっ! 漸く、少しは良い面する様になったじゃねぇかよっ!」

 

 

 そんな罵倒を受けて、宿儺は楽しそうに笑みを変える。

 透徹した思考で勝機を探っていた青年が昔の様な熱を見せた事で、彼の子供心は逸り猛るのだ。

 

 

「おぉぉぉぉぉっ!」

 

「そぉぉぉらよっ!」

 

 

 拳を合わせる。蹴りをぶつけ合う。

 受け流し、身を守り、それでも傷は増えていく。

 

 

「そうさ。俺達は大人になれねぇクソ餓鬼さ。何時まで経っても過去が大事と縋り付いて、もう帰って来ねぇもんに期待して、そんな過去の残骸だっ!」

 

 

 無数の骨が折れた。身体は全身青痣交じり。

 歯は飛び、内臓は潰れ、それでもどちらも退こうなどとは考えない。

 

 

「お前の命は、そんな残骸と等価なのか? なら要らねぇよ、そんなもん!!」

 

 

 事此処に居たり、勝算も後の世界も全て一切眼中にない。

 結果を考える冷静さは既に消え去り、今を戦い抜くだけの熱に突き動かされる。

 

 

「こんな残骸は踏み台にして、鼻歌交じりに乗り越えていけっ! それさえ出来ねぇなら、無様に此処で死んじまえっ!!」

 

 

 脳内物質は過剰分泌。痛みも思考も全て忘れて、されど振るう拳は未だ極上。

 

 

「それが、テメェ達が示さねぇといけない仁義ってもんだろうがっ!」

 

「だからっ、そんなお前の拘りなんて、知った事じゃないって言ってるだろうがっ!」

 

 

 拳を合わせる。蹴りをぶつけ合う。

 受け流し、身を守り、それでも傷は増えていく。

 

 

「おぉぉぉぉぉっ!」

 

「らぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 クロスカウンター。相打つ拳が刻まれて、両者の視界が点滅する。

 捩じり込まれた拳が意識を奪い、朦朧とする思考を保とうと必死に歯を食い縛る。

 

 微かに飛び掛けた意識を取り戻したのは、僅かに彼の方が早かった。

 

 

「認めるぜ、ユーノ・スクライア」

 

 

 それは或いは、必然の結末。

 冷徹な思考が断じた様に、未だ宿儺はユーノの一歩先を行く。

 

 

「テメェは確かに強かった」

 

 

 此処は夢界ではない。故にどれ程の精神力があろうとも、身体自体が付いてこない。

 青年には歪みはない。故にどれ程の精神力があろうとも、それが物理的な現象を引き起す事などあり得ない。

 

 ならば思考を捨てて殴り合った時点で、こうなる事は決まっていたのだ。

 

 

「けどなぁ、俺の方が上だった。結局はそれが全てだ!」

 

「っ!?」

 

 

 意識を取り戻した青年が身を庇おうと手を動かして、それが交差する前にその顔に天魔の拳が振るわれる。

 

 

「刻めよ、宿敵(ユーノ)っ!」

 

 

 それは紛れもなく至高の一撃。

 億年を超える生涯でも並ぶ事はない。唯一無二の全身全霊。

 

 

この拳(こいつ)が俺の全身全霊! 至大至高の一撃だぁっ!!」

 

 

 振るわれた拳が撃ち抜かれ、鮮血が宙に舞う。

 硬い鋼鉄の大地に小さな金属音が鳴り響いて、星を模った銀細工が地面に落ちた。

 

 

 

 此処に戦いは決着した。

 

 

 

「じゃあな。最初で最後の俺の敵」

 

 

 さらば、この世界において初めて出会った己の敵。

 さらば、この世界において最期の敵と認めた好敵手。

 

 その決着を付けた鬼は、傷を塞ぐ事もなく身を翻す。

 自身を極限までに追い詰めた敵を忘れぬ様に魂に刻んだ後、両面の鬼は振り返る事もなく消えていった。

 

 

 

 

 

4.

 ミッドチルダの星空の下、機動六課向けに建てられた寮の一室。

 

 

「ユーノ、君?」

 

 

 深夜遅く、眠りより冷めた女は、その胸に形容できない喪失感を抱いて呆然と呟く。

 

 

「あ、あぁ」

 

 

 破かれた写真を入れた写真立てに亀裂が入る。

 寝台の枕元に置かれた銀細工の首飾りが、パキリと音を立てて砕け散った。

 

 

「あぁぁぁぁ」

 

 

 理解した。

 理解した。理解した。理解してしまった。

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 旅人の星は地に落ちて、もう二度と帰らない。

 魂の繋がり故にそれを理解した女の瞳から、流れ落ちる涙が止まる事はなかった。

 

 

 

 

 

 




宿儺対ユーノ、これにて決着。
ユーノ自身が思っていたよりも重要度が高い彼が抜けた事で、鬱展開は加速します。





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