リリカルなのはVS夜都賀波岐   作:天狗道の射干

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プロット(メモ帳)をゴミ箱にシューッ! 超! エキサイティン!!


ちょっとした暇潰しに感想欄を読み返していたら“奴”の登場を望む様に見えた感想が複数あったので、プロットさんに死んで貰って“奴”の出番を新たに作りました。

そんな訳で今回は“奴”が出ます。


StS編
第一話 空を目指す道


1.

――例えば己の一生がすべて定められていたとしたらどうだろう?

 

 

 それはあの日より見るようになった夢。

 嘗て幼い頃には幾度となく見て、されど己と言う個我が形成されてからは見る事はなくなった夢。

 

 夕暮れに沈む浜辺。海の水も浜の砂も、全てが黄昏の夕日に染まる。

 そんな浜辺の只中で、未だ顔も見えない女は忌まわしきリフレインを謳っている。

 

 

――人生におけるあらゆる選択。些細なものから大事なものまで、選んでいるのではなく選ばされているのだとしたらどうだろう?

 

 

 そんな薄ぼやけた彼女に付き従う様に、ナニカが居た。

 跪いた影絵。揺らめく蜃気楼の如くに曖昧で、陽炎の如く不確かな残照。

 

 何時の頃からか黄昏の浜辺に入り込んで来た異物。トーマの内的世界の奥底より染み出して来た影。一枚の名画の内に生じた黒い染みは、存在そのものが不確かだった。

 

 つい先日までは――

 

 

「君は、どう思う?」

 

 

 それは男だった。

 

 まるで影を切り抜いた様な襤褸切れに身を包んだ男。腰まで届く程に長い髪の隙間より覗く瞳は、その髪と同じく深海の如き色。

 

 影絵の如き男だ。少年を彼が見た事で、彼は少年に認識できる存在規模へと変化した。

 そんな影絵は朧げな女の残滓に暫し見惚れた後、トーマに向かって問いを投げ掛ける。

 

 

「アンタ、誰だよ」

 

 

 その影絵の如き男に向かって誰何する。

 自分らしくもない口調。どうしてか、この影を見ていると無性に腹が立った。

 

 

「質問に質問で返すべきではない。育ての親の品位が知れるよ?」

 

「っ」

 

 

 目が、口元が、こちらを馬鹿にしきった様な笑みを浮かべている。

 そんな影の姿に苛立ちを募らせながらも、養父母を槍玉に上げられればトーマとて襟元を正さずには居られない。

 

 一呼吸。深呼吸をしてから、トーマは影の言葉を思考した。

 

 

「……選んでいるんじゃなくて、選ばされているとしたら、か」

 

 

 目の前の得体の知れない影。得体の知れない人物に誰何をするのは当然の反応であり、不審者の疑問等に答える道理などない。

 

 だが、人生経験に欠ける少年はあっさりと詐欺師の挑発に乗ってしまう。

 純粋な少年は得体の知れない苛立ちによって、猜疑心から入ろうとしていた己の無様を恥じ入る。

 

 そうして蛇の望む通りに、少年と影の禅問答の如き遣り取りは始まった。

 

 

「……それは、嫌だな」

 

 

 運命論。或いは決定論。

 既に全ては決まっていて、人間の生には何の自由も存在しないと言う考え方。

 

 もしもそれが事実だとすれば、それは何と悍ましい世界か。

 それを予め定めている存在が居るとすれば、それは何と傲慢で人を舐め切った存在であろうか。

 

 

「人間を馬鹿にしてる。人の在り様を否定してる。……それが善意であれ、悪意であれ、正直言って性質が悪い」

 

 

 全てが運命の名の下に推移するならば、あらゆる行為と結果に意味はない。

 人の生も人の死もその生涯で築いた全ても、結局は神様に恵まれた物となってしまう。

 

 

「先生曰く、人の歩いた道はその人の物。決断の責は己にあり、その是非がどうあれそれは認めないといけない。それが真面目に生きるって言う事だ」

 

 

 それは違うのだと教えてくれた人が居る。

 そんな生き方は人のそれではないのだと、誰よりも強い大人が語ったのだ。

 

 

「なのに、最初から全部筋書通りで、神様に頭下げて気に入られた奴が一等賞に決まる。……そんなの、絶対におかしい」

 

 

 運命を書き記す神様が、己のお気に入りに特別な力を与える。

 そうしてそいつが好き勝手に生きて、真面目に生きる人達を馬鹿にする。そんなのは、絶対に間違っている。

 

 そこに何の意味がある? それに何の価値がある?

 

 与えられた力で生きるのも、それを振るうのも個人の勝手だろう。

 恵んで貰って得た力で掴んだ物など全て無価値などと、そんな極端な考えは抱かない。

 

 だが、神様が最初から最後までそいつが勝利する様に筋書を作るのは、絶対に間違っていると思うのだ。

 

 

「人を変えて良いのは人だけだ。真っ向から、対等の立場で、ぶつかりあって進んでいく。心配性な神様が道案内をしたり、ちょっぴり贔屓して機会を与えたり、そんな位が許容される限度だろうさ。それ以上は、出しゃばり過ぎだよ。運命通りに推移する世界なんて、神様の自己満足で出来た舞台劇と何が違う」

 

「然り。善意であれ悪意であれ、神の動かす世界など歌劇の舞台と変わらない。無価値と断じようと、最愛の宝石と抱き締めようと、其処には確かに見縊る感情が、救わなければいけない存在だと高みより見下ろす意志が存在する。己を上位者と捉える思考。己の至高こそが最も素晴らしいとする思考。それこそが覇道の神と言うモノに共通した思考と言えよう」

 

 

 だが、それを為すのが覇道の神だ。

 己の思考こそ至高と信じ、そうなるのが素晴らしいと独善で動く。

 

 其処に願いの善悪はあれ、其処に神の性質による程度差はあれ、其処に愛の有無はあれ、その本質は変わらない。

 流れ出すとはそう言う事だ。そして、それを咎める事は人には出来ない。

 

 見下す感情。下位の存在だと言う思考。それを傲慢とは言えない。真実存在の位階が異なるならば、それは傲慢ではなく確固たる真理となる。

 

 天は人の上にも下にも人を作らずとも、人を作った天そのものは人より上位に在り続けるモノなのだから。

 

 

「それは我が女神とて変わらない。己が救わねば、救われない者が生まれるのではと言う不安。どうしても抱きしめたい、幸せになって欲しいと言う願い。……それすらも、見方によっては傲慢だと賢しげに語る者とて現れよう」

 

 

 どれ程美しくとも、どれ程素晴らしくとも、その治世を詰る者は現れよう。度し難いものだが、それが人間と言うものだ。

 

 

「……けどさ、今の世界は違うだろ?」

 

「ほう」

 

「上手く言えないけどさ。何となくそんな気がする」

 

 

 少年の何処か曖昧な言葉に、蛇は僅かに目を細める。

 何となく、そんな領分を出なくとも少年はそう感じている。多分違うのだ。そんな程度の曖昧な思考だが彼は理解している。

 

 今の世界を定める神など居ない。

 この世には覇道の神は存在していないのであろう、と。

 

 

「然り。嘗て在った永劫回帰は既に消え去り、続く第五も失われた神座の外側。この地に在りて筋書を作り上げる神などいない」

 

 

 無限大紅蓮地獄。修羅道至高天。

 人の一生を定める事さえ出来ずに消えかけようとする神。再び生まれようと胎動こそすれど、未だ生まれるに至らぬ神。

 

 この世に残りし彼ら在りし日の残滓達にもまた、それ程の力は今はない。

 

 

「無論。今の私も同じく。所詮は彼の胎動と君の自壊によって再現された嘗ての残照。最早何の力も持たず下らぬ戯言を囁くしか能のない影絵に過ぎぬ」

 

 

 故にその蒼き影は語る。

 

 

「故に、私の役割とは即ち、それなのだろう」

 

 

 それは彼の役割。半身でありサカシマである獣とは異なり、最早再誕すら出来ぬ彼の役割。

 

 

「未だ至れぬ神の卵よ。或いは我が愚息として再び蘇るかも知れぬ雛よ」

 

 

 それは決まっている。どちらに転ぶか分からぬ少年の為に、そして彼女の残した愛し子らの為に、嘗て永劫と呼ばれし蛇が行う事など既に決まっている。

 

 

「私は君に祝福(ノロイ)を与えよう。私は君に忠告をしよう。私は君に助力をしよう。その三つを以って、此処にある私の役割とする」

 

 

 そう。三つ。その三つを、今の蛇は己の役と定めている。

 

 

「では、問おう」

 

 

 そして、その内の一つの役割を今此処で果たさんとする。その為に、水銀の蛇はその言葉を投げ掛けた。

 

 

「トーマ・ナカジマ。君は魔刃を許せるか?」

 

「え?」

 

 

 その言葉は、まるで慮外の物であった。

 

 

「エリオ・モンディアル。君にとっての宿敵である彼を許せるのか、私はそう問うている」

 

 

 それは愚問だ。それは余りにも愚かに過ぎる問い掛けだ。答えなど分かっている。分かり過ぎる程に分かり切っている。

 

 

「許せない、であろう」

 

 

 故に言葉に詰まった少年に対し、蛇は嘲笑を浮かべながらそんな言葉を口にした。

 少年の瞳と記憶を介して得た断片より全てを推測している蛇は、全てを見通すかの如き深い瞳でトーマの歪みを嘲笑う。

 

 

「だが、それは本当に、君が選んで良い答えであろうか?」

 

「なに、を」

 

「君の願い。君が語る偽りの言葉。誰かと一緒に手を繋いで前に進む。そうして皆が手を取り合えば、きっと世界は幸福になる」

 

 

 それは確かに綺麗な光景である。

 想像するだけでも素晴らしいと分かる。誰もが手を取り合える世界。

 

 だがその光景すらも、その一滴の憎悪が汚してしまう。

 

 

「そう語る君に、そう嘯く君に、私はこの欠落を指摘しよう」

 

 

 その憎悪が拭えぬ限り、誰もが幸せになる世界など訪れない。

 

 

「君はエリオを救えるかね?」

 

 

 少なくとも、唯一人は確実に不幸となるだろう。救われぬままで居るだろう。

 

 

「彼が幸福になる事を許容できるか? 彼の手を握り返す事が出来るか?」

 

 

 トーマが語る幸福な世界の光景に、あの弱い悪魔の姿はない。それを許容する事が出来ぬから、その願いは狭い。

 

 

「出来ぬ。と返すならば、君の願いの真は異なる。幸福になって欲しいのは万民ではなく、結局己にとって都合の良い人物だけと言う事になる」

 

 

 自分にとっての大切な人達が、幸福な世界に居てくれれば良い。結局の所、其処に帰結する。

 万民が救われる綺麗な世が、そう語っていながらも、その実彼にとっての世界とは未だに狭いのだ。

 

 

「個人の憎悪を捨てられず、その怒りで救うべき他者を餞別する。そんな存在が語る全ての救いなど、正しく笑止。その様な存在が法を流れ出したとして、そこに現れる世界は君が先に否定した歌劇の作者が好き勝手に描いた台本と一体何が変わるだろう?」

 

 

 排他の性質。憎むべき他者の存在により強まった感情。

 父母に、師にそれではいけないと教えられながらも、克服できてはいなかった。

 

 

「何も変わらない」

 

 

 そう何も変わらない。

 

 

「良しにしろ、悪しにしろ、個を特別視する限り其処には恣意が混じる。許せぬ他者が居る限り、全てが救われる世界などあり得ない。君の描く理想郷は、所詮絵に描いた餅に過ぎぬのだよ」

 

 

 憎むべき他者を許せぬと思う限り、彼の語る崇高な理想は陳腐な妄想に堕ちるのだ。

 

 

「……僕の願いは、間違っていると言うのか。アイツを許せないって、そう抱いてしまうのは間違っているのか!」

 

 

 だが、それは必然の感情。

 

 母の形見を壊されて、怒らぬ理由が存在しない。

 助けようとした人を殺されて、許して良い道理などありはしない。

 あそこまで全てを否定されて、憎まずに居るなど人の精神では出来ぬ事だろう。

 

 

「分かってるさ。それが間違いだって、僕が一番分かっている!」

 

 

 許せない。許してはいけない。認めてはいけない。

 

 そんな宿敵への怒りがあるべきと信じた理想を霞ませてしまっている。

 その信じた美しさが、己の弱さで穢れている。そんな事は言われなくても分かっているのだ。

 

 

「アイツが許せない。そんな感情ばかり強くなって、本当に大切な事を直ぐに忘れてしまいそうになる!」

 

 

 分かっていて、それでもどうしようもない。

 

 余りにも大きな負の感情。許容できない程のそれを一度に押し付けられた少年は、それを覆い隠す形で数年を過ごしていた。

 

 手を引いてくれる相棒が居るから、一緒に前に進む事こそ大切だから、一人で何でもしようとするのは違うから、そんな大切な事を忘れぬ為に強すぎる負の念に蓋をしている。

 

 

「強くなりたい。アイツより強くなりたい。強くなって、アイツをぶちのめしたい! ……そんな願いが、間違いだって事は僕にだって分かっているんだ」

 

 

 そんな蓋を暴かれ剥がされた少年は、血を吐くような想いと共に己の胸中を吐露していた。

 

 

「ふむ。これは筋金入りだ」

 

 

 水銀の蛇は、己の感情を間違いだと捉えている少年を見下ろす。その怒りこそが己の願いの欠落なのだと錯覚している少年を憐れむ。

 

 そうではない。彼の願い。その正否などはどうでも良いのだ。欠落は其処にはない。

 

 

「憧れを模倣し、師の語る言葉の綺麗さに心打たれ、そう在ろうとする少年よ」

 

 

 少年は未だ無垢なる子供だ。

 

 

「幸福。驚愕。恐怖。悲嘆。憤怒。嫌悪。陽気。軽蔑。満足。困惑。自尊。安堵。歓喜。そして憧憬。即ち、感情。彼らと共に生きる幸福の中で、君は確かに心を育て上げて来た」

 

 

 内包した神の魂に押し潰されていただけの模倣しかなかった少年は、幸福な日々の中で確かな心を育てて来た。

 

 

「だがそれが足を引いている。渇望を生み出さんとした結果、余りにも急いた行為は君の中にある恐怖と絡み合い逆効果となってしまった」

 

 

 その生まれた心が恐怖している。

 

 

「怖いのであろう? トーマ・ナカジマ」

 

 

 幼い無垢なる子供が、持て余してしまった感情に翻弄されている。

 

 

「己の感情が制御出来ない事が、してはならない事をしそうになる事が、そしてその結果として大切な人々に捨てられてしまうかも知れないと言う事が」

 

「そんな、事はない。……父さんや先生は、そんな人じゃない」

 

「で、あろうな。だが、その事実を君は心の底から信じられていない。……故に感情に蓋をしているのであろう? そう。君自身が彼らの信頼に唾を吐いている」

 

「っ!」

 

 

 歯噛みする無垢なる子供は、その弱虫な一面を曝け出す。

 頭では分かっていても、抱いた情を醜いと思ってしまうから、そんな不安を掻き消せない。

 

 

「恐怖。君は確かに恐怖を抱いているのだ」

 

 

 全てを知る蛇は、その感情をあっさりと暴き切る。

 

 

「大切な人達が大切だからこそ、彼らに答えねばならないと思っている。良い子でいなければ、そんな強迫観念に駆られて、己の抱いてしまった怒りを押し殺している」

 

 

 憧れの人のふりをする。言葉遣いを真似して、彼の語る理想を口にして、そうある姿を見せる事で、褒められようとしている。己の醜悪な一面に蓋をしている。

 

 

「君の語る願いは、故にこそ偽りなのだ。生の感情を否定して蓋をする。生まれ得た願いが望まれている物とは違うから、正しくないと思うから封じ込める。その上に塗りたくった受け売りの願いが、何故に渇望に至ろうか?」

 

 

 それこそが欠落。それが間違い。模倣している事ではない。それは悪ではない。幼子は模倣から己を構築する。ならば彼の反応は自然な事である。

 

 だが、その為に己で己の真なる願望を拒絶している現状は間違いだ。それこそがトーマの欠落なのだ。

 

 

「なら、どうすれば良いんだよ!」

 

「それは、簡単な事だ」

 

 

 どうすれば良いのだ。己を暴かれた少年は激情のままに口を開き、対する蛇は己の掌中で転がる少年に笑って答えを返す。

 

 

「怒り給え、憎み給え、恨み給え」

 

 

 それはとても単純な解答。負の情によって願いを汚す、だからどうしたと言う身勝手な言葉。

 

 

「っ! けど、それは!」

 

「間違いだと語るかね? だが、私にとって君の願いの正否など、どうでも良い些事に過ぎない」

 

 

 その願いが綺麗であれ醜悪であれ、蛇にとってはどちらでも構わない。

 重要なのは彼女の末が途絶えぬ事。あの女神が愛した子らが滅びぬ為に、次代の神が生まれる事こそ必要なのだ。

 その存続が確定するならば、願いの内に生じる多少の差などどうでも良い。故に必要となるのは、超深奥に至れる程の想いの量。

 

 

「重要なのは唯一つ。その願いが真であるか否かと言う一点だ」

 

 

 偽りの想いでは至れない。

 己を誤魔化し続けていては意味がない。

 

 

「故に、己の情を解き放ち、真なる願いを自覚せよ。或いは、その偽りの願いを真にしてみせよ」

 

 

 己の感情に開き直って、薄汚れた願いのままに身勝手な神へと至る。

 或いは怒りを超克する事で、今は偽りに過ぎぬ美しさを真なる輝きへと変化させる。

 

 どちらになるとしても、少年は神に至る。

 

 

「そうでなくば、君は終わる。トーマ・ナカジマと言う個我は消え失せる」

 

 

 どちらにもなれなければ、零れ落ちた欠片に染め上げられる。それこそが、少年が進まねばならない道であった。

 

 

「猶予は余りないぞ」

 

 

 それを今になって指摘するのは、時間が残されていないからだった。

 

 そう。彼は気付いている。

 全てを見通すかの様な蒼き瞳で、水銀の蛇はその事実に気付いている。

 

 

「君は近付き過ぎてしまった。あの悪魔の前に立つ為に、あの魂に近付き過ぎてしまったのだ。あの日より緩やかだが確かな自壊は始まっており、故にこそこうして私が表に出て来たのだ」

 

 

 漸く気付き上げてきたトーマと言う個我には亀裂が走っている。一度砕けた殻は容易くは戻らず、少しずつ広がりを見せている。

 それはどれ程に拒絶しようと、もう避けられぬ一つの結末。

 

 

「君は未だ卵の殻だ。罅割れ崩れ落ち、剥けてしまえば中身が零れる。崩れ落ちた中身に染め上げられたくなければ、その渇望を真なる形にせねばならない。そうなる前に殻が砕ければ、もう君は君では居られなくなるであろう」

 

 

 故にその偽りを指摘する。殻が砕ける日は近い。その時にせめて少しでも抗える様に、解決できるであろう問題を指摘せねばならない。

 

 

「弱虫な子供よ。泣き虫な幼子よ。君は真実、勇気を得ねばならない。踏み出す一歩。進むための一歩。それこそが真なる渇望を得る為には必要なのだ」

 

 

 それは呪いだった。トーマの内面全てを曝け出し、その願いへ楔を打ち込んだ言葉は呪いであった。

 それは祝福であった。トーマが進むべき道。歩むべき道行の一端を示した蛇の言葉は、確かに彼の善意であった。

 

 

「…………」

 

 

 そんな蛇の言葉を受けて、トーマは衝撃と共に黙り込む。

 

 だがそんな彼の反応など知らないとばかりに時間は針を進める。

 時の流れは止められないからこそ、この邂逅に終わりは訪れる。

 

 

「……どうやら目覚めの時が来ているようだ」

 

 

 黄昏の浜辺が揺れる。トーマの目覚めが近付いた事で、この内面世界から意識は弾き出されていく。

 

 少年が感じる情は複雑だ。己の願いを否定し、己の欠陥を晒し、されど確かな道を教え諭したその水銀の蛇。

 どれ程に腹立たしくても、どれ程に苛立つ物言いであろうとも、それが己の為になる助言でもあったから、感謝の念を抱かずには居られない。

 

 

「さあ、目覚め給え」

 

「……アンタは?」

 

「何、消える訳ではない。私は君の内なる世界で、君の瞳を通して、彼女の生んだ世界の果てを見届けよう」

 

 

 蛇は消えない。この邂逅は一時の物ではない。眠ればこの浜辺に到達する。内側に問い掛ければ、彼の気分次第ではあるだろうが多少の会話も可能であろう。

 

 それでも、蛇が残滓ではなくなる事は無い。

 

 この幼子は真実トーマと言う個人となるか、それとも天魔に堕ちるのか。

 そのどちらの結末となったとしても、蛇は生まれし神に喰われて消えるであろう。

 

 乗っ取ろう、等と言う思考はない。既に彼女の亡き今、蛇がそれを選択する理由はない。

 

 

「……さて、そうだな。では始まりの邂逅を記念して、君が問うた疑問に答えよう」

 

 

 そんな蛇は、トーマが先に投げ掛けた言葉に今更な答えを返す。それは彼が投げ掛けた誰何に対する蛇の解答。

 

 

「私の正体。私が何者か。サンジェルマン、パラケルスス、トリスメギストス、カリオストロ、カール・エルンスト・クラフト。どれも皆、私を指す名であるが此処は敢えてこの名を名乗ろう」

 

 

 カリオストロ。カール・クラフト。

 この二つの名は、彼にとってはある意味特別な名だ。

 その名の意味にではなく、その名を呼ぶ者こそ特別であった。

 

 故に少年に名乗るべきは、それではない名前となる。

 彼に呼ばせる名は、愚息が呼んだ神としての名こそ相応しいと言えるであろう。

 

 

「私の名はメルクリウス。嘗て神座世界を支配した、第四の蛇の残滓である」

 

 

 蛇は少年の内心全てを知りながら、その複雑な感謝の情を嗤う。

 既に掠れて消え掛けの残滓は、胡散臭い笑みを張り付けながら語る。

 

 

「それでは、此度の劇を始めよう。筋書もない即興劇。だが演者が至高なれば、歌劇は正しく至高へと至るであろう」

 

 

 嗤いながら語る第四の蛇の声と共に黄昏の浜辺は消え失せ、トーマ・ナカジマは目を開いた。

 

 

 

 

 

 僅かに開いた瞼より入り込む光。自身が横になっていた柔らかな椅子と、同じく椅子に座ってデバイス片手に訓練校時代の友人と連絡を取り合っている相棒の姿。

 

 魔導師昇格試験場の待機室にある椅子で眠っていたトーマは、忘れられない程に濃厚な夢の体験に何とも言えない溜息を吐いた。

 

 目覚めと共に感じるは複雑な感情。感謝の念は残っている。あの胡散臭い影との問答を経て、感じる想いはそれこそ無数に存在している。

 

 だが、その中で最も強く感じる想いは唯一つ。それ以外に言う事などありはしない。

 そして感情のままに動く事こそ正しいとあの蛇が語ったのだから、その想いを此処に示す。まずはこの感情を、此処に形に変えるのだ。

 

 ゆっくりと息を吸うと、トーマは腹の底から声を張り上げた。

 

 

「メルクリウス超ウゼェェェェェェェッ!!」

 

「うっさいわ、馬鹿トーマ!」

 

 

 全霊を込めた叫び声を上げたトーマは、即座にティアナに頭を叩かれたのだった。

 

 

 

 

 

2.

「全く、二人共。試験前なのに気を抜き過ぎじゃないかな?」

 

 

 モニタに映し出された控え室。試験前だと言うのにだらけ切った態度を見せる二人の新米局員の姿に、紫髪の女性が苦笑を零す。

 

 控え室へと今回の試験官が入室した事で慌てて態度を改めているが、緊張している様子は欠片もなかった。

 そんな二人の姿に、何処か退廃的な雰囲気を纏った女はこんな調子で大丈夫なのかと不安を抱く。

 

 

「ま、別に良いんじゃないの? 実力を伴っていれば、ね」

 

 

 そんな風に心配する女に声を掛けるのは、これまた若い女であった。

 流れる様な金糸の髪。端正な顔立ちに凛々しい表情を浮かべた女は、管理局の制服を着ているのも相まってか、何処か軍人然とした風にも見える。

 

 だが、だからと言って堅物と言う訳でもなく、寧ろ真逆。

 紫の女よりも柔軟な対応が出来る女は、実力さえ伴っているならばその余裕も許されるだろうと語った。

 

 

「トーマの実力はアイツの店で何度か見てるけど、ティアナって子はどうかしらね。今回の試験は二人一組だし、足を引っ張られたらヤバいんじゃない」

 

「うーん。どうかなぁ。……私も陸士研修以来あってないし、あの時点のティアナだと正直、ね」

 

 

 試験官と対話をしている少年少女。茶髪の少年は慌てた仕草で、相棒である少女は礼儀正しく対処しながらも何処か太々しく、そんな其々異なる姿を見せている。

 

 そんな三者の遣り取りをモニタ越しに見詰めながら、本当に彼らで大丈夫なのかと二人の女は思考する。

 

 モニタを前に座る紫髪の女性の襟元にある階級章は准尉のそれ。そして傍らに立つ金髪の女性は執務官資格を保持していた。両名共に、ここに居るには相応しくない人物だ。

 

 これより試験場で行われるのは、陸戦魔道士Bランクへの昇格試験。

 本来であればこの場に来る様な立場でない女達が此処に居るのには、当然の如く理由がある。

 

 

「二人とも伸びしろはあるんだろうけど」

 

「ま、無茶な話よね。……エース陣の全力戦闘に際し足手纏いにならないレベルの低ランク魔導師。それも余所の息が掛かっていない新人を見つけて来いなんてね」

 

 

 そう。それこそが彼女達の理由。

 試験会場を歩き回って、行うのはこれはと言う人物のスカウトだ。

 

 未だ収穫はない状態だが。

 

 

「魔導師の保有ランク制限。それさえなければ、もう少し動きようもあったんだけど」

 

 

 そして今回はどうなるであろうか。彼女の推薦とは言え、本当に彼ら二人は目的とする要素を満たせるのであろうか。

 今回も駄目なら面倒になる。女達は溜息を一つ吐いた。

 

 

「んで、肝心のあの子はどうしたのよ」

 

「やる事があるから少し遅れるって、さっき連絡があったよ。先に始めてって」

 

「全く、この子達を正式に勧誘するかどうか決めるのは、あの子の役割でしょうに」

 

 

 彼ら二人を候補として推薦し、そして最終決定権を持つ女はまだ到着していない。開始時間には間に合わないであろう。そんな風に思考する二人の前で。

 

 

「……始まるね」

 

「ええ、お手並み拝見と行きましょうか」

 

 

 魔導師ランク昇格試験は始まった。

 

 

 

 

 二人一組による魔導師ランク昇格試験。

 

 与えられた課題はポイントターゲットを全て破壊し、妨害を回避しながら目標地点へと到達すると言う単純な物。

 

 控え室より試験場へと一歩を踏み出したトーマは、未だ慣れぬ腕の軽さに僅かな不安を抱く。

 

 母の形見は存在しない。

 そのアームドデバイスは壊されて、無価値に燃えて墜ちてしまった。

 

 首から下げられたカメラ型のインテリジェントデバイスを指先で弄る。

 リボルバーナックル以外の武器は使いたくない。だが魔導師としてデバイスは必要だ。そんな彼に送られた新たなデバイス。

 

 師が友人に頼んで設計して貰ったスティードは信頼できる代物だが、トーマの戦闘スタイルとは今一噛み合っていない。

 そもそもこれは戦闘用のアームドデバイスではない。設計段階で撮影・観測に特化して作られている代物である以上、戦闘に使うこと自体がそも間違いだ。

 

 

〈不安ですか? トーマ〉

 

「スティード。……うん。そうだね。一人なら、僕らだけなら、確かに不安だ」

 

 

 まだスティードとトーマは共にあって日が浅い。戦闘に対する不安は確かにあるのだ。

 

 あの日より精神的に脆くなったトーマに与えられた相談役も兼ねたデバイスは、そんな弱さを指摘する。

 そんな指摘を笑って認めて、けれどそれだけではないのだとトーマは自覚している。

 

 

「何、変な顔してんのよ。馬鹿トーマ」

 

「ティア、ちょっと酷くない?」

 

 

 己は一人ではない。傍らで自信たっぷりに笑う相棒が居る。

 

 

「行くわよ、トーマ」

 

「……ああ、行こう。ティア」

 

 

 その事実が心を強くしてくれる。緊張を掻き消して、絶対に大丈夫だと言う安堵を齎す。

 試験直前に眠りこけるような図太さは、そんな信頼する相棒と共に居るからこそ手にした物。

 

 

「スタートまで後僅かとなりました。……ゴール地点にて、再びお会いしましょう」

 

『はいっ!』

 

 

 薄紫色の髪をした女性試験官が折り目正しく言葉を告げ、二人は元気良く返事をする。

 

 これより始まる。魔導師ランク昇格試験。

 怖気付く必要などない。緊張に震える必要はない。

 

 そう。己達は絶対に突破できる。

 魔導師ランク試験など、所詮は先に進む為の踏み台に過ぎないのだ。

 

 

「レディーッ!」

 

「ゴーッ!!」

 

 

 試験官が退出し試験開始の合図が出されると同時に、少年少女は前へと飛び出した。

 

 

「トーマッ! 前方二時の方向!」

 

「了解! 一気に突っ込むっ!」

 

 

 開始と同時に無数に出現するオートスフィア。その影にターゲットを見つけ出したティアナが指示を出し、それに答えたトーマが疾走する。

 

 青き光が降り注ぐ中、加速魔法を展開して直走るトーマ。

 相棒の示した道を信じて走り抜ける少年は、その射撃魔法では止まらない。

 

 

〈トーマ。ティアナより指定されたルートを描写します〉

 

「分かった!」

 

 

 スティードが送られて来た映像をトーマの視界に映し出す。

 

 

「この道を駆け抜けて! 中から打ち破る!!」

 

 

 映し出されたルートを走り抜けるトーマを、量産品の機械は止められない。

 所詮量販品の低火力。当たれど一撃では防御を抜かれる事は無く、ティアナが指示する道筋は最短にして最良のルート。

 守りを抜かれる程の被害を受ける道理など、一体何処に存在しよう。

 

 

「ナックルダスターッ!」

 

 

 駆け抜けた先でターゲットを殴り砕いたトーマ。

 追い抜かれたスフィアは彼の背に目掛けて射撃の雨を降らせるが、トーマは被弾など恐れない。

 

 

「クロスファイア! シュート!」

 

 

 トーマにはその背を守る相棒が居るのだから。

 

 

「ほら、足を止めない! 次行くわよ!」

 

「ティア、撃ち漏らしはどうする?」

 

「放置よ放置! こっちは目標ターゲットを時間内に撃破しないといけないんだから、一々構ってらんないの!」

 

 

 己の魔力総量の低さを自覚しているティアナは、必要最低限の妨害標的のみを撃破してトーマに合流する。

 

 

〈トーマ。前方に新たな標的出現。妨害用オートスフィア。ダミーターゲット。双方多数出現している模様。注意しなさい〉

 

「大盤振る舞いだね」

 

「はっ、上等よ!」

 

 

 背中を合わせて二人は笑う。

 無数の敵。隠れた標的。刻一刻と過ぎ去る制限時間。

 

 その全てが、障害にすら成り得ない。

 

 

「さっさと撃ち抜いて!」

 

「さっさと合格しようか!」

 

 

 背中合わせのままに回転し、互いに砲撃魔法を放つ。

 

 

『ディバインバスター!!』

 

 

 互いに同じ人より教えられた砲撃魔法。

 青と橙。二色の輝きが回る二人に合わせて周囲を薙ぎ払う。

 

 ダミーターゲットを巻き込むことは無い。

 

 カートリッジ抜きでは砲撃も真面に使えない程に魔力が低くとも、制御が得意なティアナがその偽標的の前に障害物となるスフィアを滑り込ませる。

 

 そんな小細工によって不足した火力は、トーマが馬鹿魔力を振り絞って補って見せる。この二人を前に、この程度など障害にすらなりはしない。

 

 

〈お二人共、お見事です〉

 

『当然!』

 

 

 ダミーターゲットだけを残して、敵を殲滅した二人は笑う。

 そう。この程度は出来て当然。自分達ならば、当たり前なのだと笑って見せる。

 

 

「さって、そろそろ大物が出て来る筈だけど」

 

「大型スフィアか、これを抜けるかどうかが境目なんだっけ?」

 

「ま、先輩方の話だとね。……けど、私達なら」

 

「当然、敵じゃない!」

 

 

 彼らの前に現れる最後の妨害。多くの陸士達の道を阻んで来た大型スフィア。それを前にしても、二人が怖気付く事は無い。

 分かっている。知っている。理解している。こんな物で、自分達は倒せない。

 

 

『ターゲット! 全機撃破!!』

 

 

 当たり前の様に接近して、当たり前の様に撃ち抜いて、当たり前の様に勝利する。

 

 

「後は、ゴールへと!」

 

「この道を突っ切るだけで御終いだ!」

 

 

 崩れ落ちる大型スフィアを背に、二人は前へと走り出す。

 最早彼らを止める事など出来ない。歴代最高評価を叩き出しながら、少年少女はゴールを目指す。その歩みは止められない。

 

 

 

 

 

 そう。それが道理ならば、これは如何なる不条理か。

 

 

〈危険! 前方十一時の方向に、高エネルギー反応を確認。……これは、スフィアではありません〉

 

 

 スティードがその危険を宣言するとほぼ同時に、彼らの前に巨大な人工物が現れる。

 

 

「これっ! ガジェット!? 見た事ないわよ、こんな大物!?」

 

 

 それはガジェット。管理局最高の頭脳が、古代のロストロギアを参考に作り上げたとされる管理局の無人兵器。

 だがそれは正規量産型とされるカプセルタイプではなく、航空型である全翼機タイプでもなく、球体形の重装甲タイプでもない。

 

 敢えて言うならば多脚戦車であるⅣ型が近いか、だがそれとも違う。

 

 三つの多目的盾。余りにも巨大に過ぎる二つの砲門。巨大な鉄槌と巨大な剣。

 数多くの武装で飾り立てられた巨大なガジェットドローンは、一目でその凶悪さを分からせる。

 

 

「……これ、見たことある」

 

〈間違いありません。トーマ。これは、マイスターの作り上げた物です〉

 

 

 それをトーマは知っていた。己に処方されている薬を作り、己のデバイス“スティード”を組み上げた人物。

 師の友人である彼の研究所を訪れた際に、確かにこれを見た事があるのだ。

 

 

「ガジェットⅤ型。対エースストライカー向けに開発された殲滅兵器だ!」

 

 

 その表情は、戦慄に染まっていた。

 

 

 

 

 

「これ、どういう事よ!?」

 

「ガジェットⅤ型。……Bランク以下の魔導師にどうこう出来る標的じゃない。いえ、それ以前に歪み者でも真っ向から潰せるゲテモノ兵器! そんな代物が、どうしてこんな所にあるの!?」

 

 

 モニタ越しに映る光景。試験の強制停止ボタンにも反応しない殲滅兵器。

 明らかな異常事態。どう考えても普通じゃない状況に、女達は焦燥を顔に浮かべて思考する。

 

 

「……まさか、誰かの妨害」

 

「だったら!?」

 

 

 だとすれば、直ぐに対処に移らねばならない。

 

 ガジェットドローンⅤ型は歪みを抑える呪印を埋め込んだ特殊装甲によって構築され、高密度な魔力結晶体を動力源にし、AEC武装と言う魔力駆動で動く武装を無数に詰み込んだ怪物兵器。

 高密度AMF領域を発するその兵器は、エースストライカーでさえ考えなしにぶつかれば敗れる代物だ。

 

 

「大丈夫。妨害じゃないから、安心して良いよ」

 

 

 腰を浮かせた二人に声を掛ける人影が姿を現す。

 モニタルームに現れたのは、栗色の髪をした美しい女性。

 

 

「なのは!」

 

「なのはちゃん!」

 

 

 高町なのは一等空尉。管理局が誇る二大英雄の一人が其処に居た。

 

 

「妨害じゃないって、どういう意味!?」

 

「そのままの意味だよ、アリサちゃん。……私がスカリエッティさんに言って用意して貰ったんだ」

 

 

 アリサの詰問に平然と返す。ここにあの怪物兵器があるのは、高町なのはの仕業であった。

 

 

「なのはちゃん。あの子達を潰す気!?」

 

「ううん。違う」

 

「なら、なんで!?」

 

 

 なのはの行為に詰問を向けるすずか。首を振ってそれを否定すると、なのはは己の考えを伝えた。

 

 

「必要だから。この程度の標的に対処出来ないんじゃ、意味がない」

 

 

 そう。必要だった。見極める為に、これから先に付いて来れるかを確認する為に、この程度はして貰わなければ意味がない。

 

 彼女達がこの試験場に居るのは、トーマとティアナが本当に彼女達の求める人材足り得るかを判断する為。

 故にこそ彼らを推薦した高町なのはは、誰もが納得できる形でその価値を示させる為だけにこの怪物兵器を用意した。

 

 

「機動六課は、これから訪れる災厄に備える為の部隊」

 

 

 英雄の下に集った、一騎当千の部隊。一人一人が強大で、いざとなれば彼女らだけで全てを救える。そう思わせるだけの力が必要な部隊。それこそが機動六課。

 

 

「けど、最強の戦力を揃える為に無理をし過ぎた私達は、平時にはその戦力の大半を封じられてしまう」

 

 

 だが、管理局には魔力の保有制限と言う物が存在している。

 戦力の一点集中を抑える為、そんな名目で存在する法規が機動六課の前提となる戦力の集中を否定している。それは政治取引でも緩和するのが限界だった代物だ。

 

 その対処の為の裏技として、彼女達は能力リミッターを付ける事にした。

 平時に能力を制限し、真実有事の際には管理局最高部隊として動ける様に、法の抜け穴をついたのだ。

 

 

「私達が全力で動けるのは、本当に最後の最後、もう後がない状況下での一手になる。それまでは、魔力リミッターを受けずに居られる前線メンバーを主力にしないといけない」

 

 

 それでもそれは裏技だ。そう何度も多用出来る物ではない。

 

 能力制限を解除できるのは後援者二人と、総責任者である一人。三人がそれぞれ一度ずつの権限を持っている。

 現場指揮官にすら自由はなく、故に平時に主力となるのはリミッター制御されていない者らとなる。

 

 

「魔刃を見た。あのエリオ・モンディアルと言う犯罪者。予言が真実なら、それと同等に近い戦力が他にも居る。……なら、中途半端な子は選べないんだ」

 

 

 どんな能力を持とうと、どんな相性を持とうと、地力が足りねばその場で倒れる。

 ならばここで、それを持つと示さねばならない。それに至れないと言うのなら、彼らを六課に招く訳にはいかなくなる。

 

 

「けど、そんなのはこっちの都合じゃないの! あの子達の試験を台無しにして良い理由にはなんないわ!」

 

「台無しにはならないよ」

 

 

 アリサの当然の反発に、なのはが返すは彼女の道理。

 

 彼女は信じている。彼女は知っている。あの二人は高町なのはが推薦した人物だ。ならば彼女はこの二人よりも、あの子供達を知っている。

 

 何よりも、その内の片方は。

 

 

「あの子は、ティアナは私が戦い方を教えたんだよ?」

 

 

 ティアナに戦い方を教えたのは高町なのはだ。

 

 あの日、トーマに向かって手を差し出したティアナ。

 彼女はあれ以来、喫茶桜屋に入り浸るようになり、当然なのはと知り合う機会を得た。

 

 トーマがユーノに師事し能力を高めていく中、ティアナはなのはに師事を受けた。

 コンビネーションを学ぶ傍ら、二人は其々の師の下で地力を高めていたのだ。

 

 

「確かに二人はそれぞれ欠点がある」

 

 

 だから知っている。欠点も今の力量も、その全てを確かになのはは知っている。

 

 

「爆発力はあっても精神的な脆さがあるトーマ。悪く言ってしまえば器用貧乏で地力の不足が目立つティアナ」

 

 

 精神的な脆さと思考の拙さ故に隙が大きいトーマ。

 己の歪みの制御は愚か、未だ任意での発動すら出来ないティアナ。

 

 二人は個々で見れば、正直弱いと断言できる程度だ。

 あのエースストライカー殺しに対抗できる道理はない。

 

 

「あの子達は、一人一人じゃエースには届かない。けどね、二人掛かりなら、どんなエースにだって通用する」

 

 

 だが二人になれば、あの二人は極端に強くなる。

 

 

「あの子達より強いコンビは居る。あの子達より相性の良いコンビは居る。あの子達より連携の巧みなコンビは居る。あの子達より心の通じ合ったコンビは居る。でもね、あの子達より優れたコンビを、私は見た事がない」

 

 

 互いの欠点を補って、互いの長所を伸ばし合って、一人で進むよりも先へ行ける様になる。それこそがトーマとティアナと言う二人の子供だ。

 

 

「だから、必ず乗り越える。そう信じているんだ」

 

 

 故に自信を持って宣言する。必ず対処する。あんな無人兵器になど敗れる道理がないのだと。

 

 

「見てて、アリサちゃん。すずかちゃん。二人の力を」

 

 

 己の教え子達を誇るかの様に、高町なのはは自慢げに口にした。

 

 

 

 

 

「っ!」

 

「ぐあっ!?」

 

〈トーマ!? ティアナ!?〉

 

 

 無数の魔力弾。凶悪なまでのミサイル兵器。高密度なAMF領域下で防御魔法も回避魔法も使用出来ず、周囲を蹂躙する破壊の嵐に二人は飲み込まれる。

 

 

「っっ、何とか」

 

「……平気、よ。直撃は避けたわ」

 

 

 互いに師に仕込まれた体術でギリギリ回避する。直撃でなくとも被害を受けつつ、何とか距離を取ると揃ってその怪物を見上げた。

 

 

「なんで、アレがあるんだよ」

 

「……ふん。理由は知らないけど、試験官が対処に動かない所を見ると、これも試験の内って事でしょ」

 

「Bランクに求める内容じゃないよ! これ」

 

「言っても仕方ないでしょ! 幸い撃破しないといけないターゲットじゃないんだし、時間もないから、ガン無視――」

 

 

 瞬間、襲い掛かる重力場。反重力装置を反転駆動させたその力は、周囲を抑え付けて押し潰す。

 ゴールは敵の背後にある。無策に通り抜けようとすれば、あっさりと潰されるだろう事は明らかであった。

 

 

「……逃がしてくれそうにないね」

 

「ったく、どんだけ多芸よ」

 

 

 重力場を展開したまま、巨大兵器はその砲門を向ける。

 プラズマ砲。レールカノン。複合エネルギー弾。高密度魔力砲撃。雨霰の如くに降り注ぐそれは、生身で防ぐ事も躱す事も敵わない。

 

 非殺傷設定が適応されているとは言え、あれを受ければその瞬間に沈む。

 或いはトーマだけなら多少は持つかも知れないが、ティアナは此処で倒れるだろう。

 

 

「っ! ティア、僕の後ろに!」

 

 

 打つ手などない。このまま倒されるしかない。

 そんな風に歯を食い縛ったまま、盾になろうとするトーマ。

 

 自分が盾となり、耐え切れば二人ともに戦える。

 そんな極小の可能性に賭けようとするトーマに対し。

 

 

「っ! そう。成程ね」

 

「ティア?」

 

「盾になる暇があったら、シールド展開!」

 

「え?」

 

「さっさとする!」

 

「わ、分かった!」

 

 

 ティアナの言葉に駄目元で魔法を展開しようとする。高密度AMF下では不可能だろう。そんなトーマの思考に反して、彼の魔法は効果を発揮した。

 無数の雨霰を膨大な魔力が防ぎ切る。振動する障壁の内側で、トーマは疑問符を浮かべて呟いた。

 

 

「……あれ? 魔法が使える」

 

〈恐らくは無数の魔道兵器が理由かと、魔力炉に悪影響を与える可能性を考慮してAMFを限定使用しているのでしょう〉

 

「そう言う訳よ! 分かったら、さっさと逆撃するわよ。馬鹿共!!」

 

 

 あの兵器の欠点は分かった。所詮は先行量産型の試作品。ならば欠陥は確かに存在している。

 

 

「全力攻撃の瞬間、アレはAMFを喪失する」

 

「なら、その瞬間なら、こっちも魔法が使える!」

 

〈ですが、残り三分四十秒。時間がありませんよ、二人共〉

 

「そんだけあれば十分よ!」

 

 

 道は見えた。あれを乗り越え、己達が勝利する道筋は既に見えている。

 

 

「手段は一つ。全力全開。一気呵成に一点突破。それ以外に、道なんてない!」

 

 

 そう手段は一つだ。敵がこちらに対応する前に、その攻撃の瞬間の隙を突いて逆撃を叩き込む。

 

 

「行けるわね! トーマ! 一回こっきり。道は必ず開くわ! だから、アンタが!」

 

「分かった。任せたよ、だから任せて!」

 

 

 道を開けるのは一度だけ、二度目を行う力はティアナにはない。

 だが相棒は信じた。相棒は信じてと語った。ならば二度目など考えない。

 

 

「残りカートリッジ全部! 序でに残った魔力の全部! 余さず全部持っていけ!」

 

 

 先人の知恵を借りて強化されたアンカーガン。

 最大九つのカートリッジを同時使用できるようになったそれで、己の実力不足を補って見せる。

 

 放つは一つ。師に教えられた切り札。再び降り注いできた鉄火の雨を薙ぎ払う。技巧の極みたる星の一撃。

 

 

「全力全開!」

 

 

 橙色と青色。ティアナとトーマの魔力が其処に集う。綿密な計算によって魔力を収束し、小さな銃口より放たれるのは師匠の切り札。

 

 

「スターライトォォォッ! ブレイカァァァァッ!!」

 

 

 その一撃は破壊の雨を消し飛ばす。腕の痺れ、魔力の全消費。それだけを対価に捧げて、されど怪物兵器は揺るがない。

 

 Sランクオーバーの砲撃ですら、真面な傷が付かない。

 魔法攻撃に対しては極端に強いその装甲は、攻撃特化の歪みでも受けない限りは崩れない。

 

 ティアナの全力では届かない。だが、そんな事は端から分かっている。彼女の役目は、彼が到達する為の道を作る事なのだから。

 

 

〈ウイングロード展開! 行けますよ、トーマ〉

 

 

 道は開いた。空へと届く青い道は、トーマが進む勝利の道筋。

 

 

「僕はまだ迷ってる。弱い自分。悪意に負けそうになる程に、弱虫な自分を嫌ってる」

 

 

 ガジェットⅤ型。その巨大な姿に、余りにも強い姿に、憎むべき宿敵の影を重ねる。

 無人兵器と無価値な悪魔は全く似ていないけど、己より強いと言う在り様だけは似ている。

 

 

「開き直る事が良いなんて思えない。だからって、許せない奴は許せない。割り切る強さも、受け入れる強さも、そのどちらも持てそうにない」

 

 

 青き道を駆けながらトーマは口にする。宿敵の影を見ながら、己の迷いを払う様に内心を言葉に変えていく。

 

 

「けど、この目に焼き付いた光景だけは、その理想の美しさだけは真実だから」

 

 

 接近するトーマに、怪物兵器は重力波を出す事で対処する。だがそれも想定内。その力場に囚われるよりも早く、トーマはガジェットⅤ型よりも高い空を走る。

 

 

「あの人の様に、その想いを信じて、唯一つを貫くんだ!」

 

 

 唯一つの想いを抱えている強い男を知っている。そんな風に成る為に、そんな強さを得る為に、弱虫なままでも拳を握る

 

 

〈敵対象の解析完了! 頭部中枢、其処だけを狙って下さい、トーマ!〉

 

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 

 ガジェットⅤ型の真上にて翼の道を解除する。重力の渦に自ら囚われ、その勢いに身を任せたまま落下する。

 全身から力を抜いて、脱力状態から放たれるのは憧れた人の至高の拳。

 

 

「先生直伝!」

 

 

 ガジェットⅤ型。その装甲故に歪みは通じず、内包する魔力と高密度AMF故に魔法は殆ど通らない。

 

 だが唯一通じる物が一つある。それは純粋な物理攻撃。

 

 鉄を砕く程の拳はいらない。師と違いトーマには其処までできない。

 必要なのは精密機械を狂わせる程度の打撃。此処を打てば壊れると言う機械の弱所を狙い打ち、確かに震わせれば己の勝ちだ。

 

 

「鉄をも砕く! 徹の一撃っ!!」

 

 

 打ち込まれた打撃が機械を揺らす。透の技法を乗せた拳が、確かに内部を破壊する。重力による加速の恩恵を受けた拳撃は、唯振るうより遥かに重い。

 

 

「~っ! 硬っったぁぁぁっ! けど――」

 

 

 鋼鉄を素手で殴った痛みに耐える。エクリプスによって砕けた拳を再生させるトーマの眼前で、巨大兵器は僅かに動きを止めた。

 

 壊れない。エースストライカー殺しの兵器はその程度では壊せない。

 だが、それで十分。元より己達の勝利はコイツの撃破ではなく、ここを抜けて目的地へと到達する事。

 

 

「殴り抜いて! その勢いのまま! ティア!!」

 

「任せる! トーマ!!」

 

 

 殴り抜いた反動で飛び退いたトーマは、近付いて来ていたティアナと合流する。

 彼女より早く動けるトーマが無事な手でティアナを抱き抱える。片手で支え切れず、故にティアナはトーマの首に両手を回して己で己を支え上げる。

 

 そうして再展開した翼の道で空を飛ぶ。

 絶望の如き兵器の真横を擦り抜けて、トーマ達は先へ行く。

 

 

「魔力、ぜんかいいいいいいっ!」

 

 

 加速魔法を全力で行使する。残り時間は一分十七秒。追い付かれる前に、ゴールに辿り着いて見せるのだ。

 

 再起動した兵器が振り返った時には、もうトーマ達はゴールの手前。全てのターゲットを打ち破った以上、最早彼らの勝利は確定だ。

 

 

 

 

 

 無事に着地出来るなら、の話だが。

 

 

「ちょっ!? 速度出過ぎよ!? どうやって止まる気!?」

 

「……あっ!」

 

「っっっ! こんのぉ、馬鹿トォォォマァァァッ!!」

 

「ごめん! ティア!!」

 

 

 逃げる事で頭が一杯になっていたトーマ。

 才能不足と魔力不足により、彼の全速を止める手段がないティアナ。

 

 二人はそのまま地面へと突っ込んでいく。

 

 

『うああああああああっ!?』

 

〈アクティブガード。ホールディングネット〉

 

 

 地面にぶつかる直前に、彼らを受け止める障壁が出現する。

 危うく大怪我を負う所だったトーマ達は、その障壁に受け止められて無事に着地した。

 

 

「っと、あれ?」

 

「スティード?」

 

〈全く、お二人共。それでは画竜点睛を欠くと言う物ですよ〉

 

 

 二人揃ってデバイスを見やる。トーマの魔力を勝手に拝借して防御魔法を生成したスティードは、二人の短慮に溜息を吐くかの様に口にした。

 

 

〈ですが、この試験はお二人だけでなく、私達全員で挑んだ試験。ならば〉

 

「うん。文句なしの合格点だね」

 

『なのはさん!?』

 

 

 試験官を伴って、一人の女が訓練場へと足を踏み入れる。落下しそうになった二人を助ける心算で訓練場へと出て来た女は、不要になった魔力構成を散らしながら思考した。

 

 些か無様が目立った最後だったが、魔導師とデバイスは一心同体。ならば彼のデバイスが語る様に、これは彼らチームの功績とも言えるのだ。

 

 己が助けなくてはいけないなら、及第点と言うレベルに終わっただろう。

 だが、己の助力なく二人と一つのデバイスで成し遂げたのだから、この試験の結果は分かり易い程に明らかだ。

 

 だから高町なのはは、立ち上がって障壁の上から降りて来た少年少女に告げるのだ。

 

 

「おめでとう。二人とも。魔導師ランク昇格試験。無事合格だよ」

 

 

 尊敬する人。厳しい師匠。そんな女性からの褒め言葉に、トーマとティアナは互いに見合って笑みを浮かべる。

 

 

「やったね、ティア!」

 

「当然でしょ、馬鹿トーマ!」

 

『完全勝利!!』

 

 

 パンと互いの手を叩き合って、二人はそんな風に宣言した。

 

 

 

 

 

 高町なのはは、その二人の姿を見て想う。

 

 己の信頼に応えてくれた自身の教え子と、彼の教え子。

 この二人なら機動六課に相応しい。この地の命運を賭ける戦場においても、確かな輝きを魅せてくれる筈だと。

 

 だから――

 

 

「君達に話しがあるんだ」

 

 

 己の都合で試験を歪めた事。一方的な信頼で負担を増やした事。詫びなくてはいけない事は沢山ある。

 

 トーマの向こう見ずな行動。バックスで指示を出さねばならないティアナが、それを抑えられなかった事。教官として教え子に叱責しなければいけない事も沢山ある。

 

 けれど、今は何よりも重要な事があるから。

 

 

「遺失物管理部機動六課。これから新設される新たな部隊」

 

 

 手を差し伸べる。己に憧憬の瞳を向ける子供達へと、御日様の如き笑みを浮かべて手を差し向ける。

 

 

「私は其処のフォアード部隊に、二人を招きたいって考えてる。ううん。違うね。私達には君達二人が必要なんだ」

 

 

 自身が部隊員候補として推薦した二人。保有制限の関係により熟練の局員はもう引き込めず、その部隊の性質上信頼の置けない他者も選べない。

 

 故にこの二人程に、相応しい人材は他にないであろう。

 

 

「決めるのは貴方達。そのまま今の部隊に居ても構わない」

 

 

 後援者の力を借りれば、配属先を変える事など余裕であろう。

 師として命令すれば、二人の子供達を無理矢理に引き込むなど簡単だ。

 

 それでも、その自由意志だけは奪いたくはなかった。この二人を逃せば、相応しい人材に巡り合えなくなるとしても、その選択だけは選べない。

 

 

「けど、その手を伸ばしてくれるなら、絶対に後悔させないって約束する。確かな価値があるんだって、それを示して見せる」

 

 

 だから、真摯に告げるしかない。素直に語るしかない。私には君達が必要だと。

 

 

「だから、一緒に来てくれるかな?」

 

 

 太陽の様な笑顔を浮かべた女が差し出した手の平。

 それを前に、子供達は声を揃えて答えを返す。迷いはなかった。戸惑いはなかった。返事は既に決まっていた。

 

 その道を進む。それ以外の選択肢など要らぬのだ。

 

 

 

 

 

 新暦75年4月。ミッドチルダにて、一つの物語が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




推奨BGM
1.Unus Mundus(Dies irae)
2.SECRET AMBITION(魔法少女リリカルなのはStS)


そんな訳でニートがinしました。

今回のニートは黒幕ではありません。完璧にニートです。07年版以上にニートです。
うざいだけで大した事はしてくれません。味方でも敵でもなく、只々うざいだけのニートです。



○おまけ トーマの内面世界の変化。

・魔刃遭遇から一日後:黄昏の浜辺が復活し、女神の残滓が謳い始める。
・魔刃遭遇から一週間:何か浜辺に黒い汚れの様な物が見え始める。気のせいかと判断。
・魔刃遭遇から一月後:黒い点が人型になってる。ニートらしきもの復活。
・魔刃遭遇から二月後:ニート。女神の残滓ウォッチングを始める。
・魔刃遭遇から三月後:ニート。喜びの余りニートダンスを踊り始める。
・魔刃遭遇から三年後:ニート。漸く女神の残滓ウォッチングを終える。三年と言う月日も、彼にとっては“暫し”の時間でしかなかった模様。





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