リリカルなのはVS夜都賀波岐   作:天狗道の射干

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前半部は夢界の話。中盤以降は外側の話。

後、今回も独自設定ありです。


副題 真・ユーノ無双Ⅱ 販売日未定。
   獣殿の愛は偉大。
   萌えキャラがログインしました。


推奨BGM
1.羽化登山(相州戦神館學園 万仙陣)
2.桃源万仙陣(相州戦神館學園 万仙陣)


闇の残夢編第五話 今は亡き少女の為に

1.

 微睡の中から覚める。

 

 偽りの幸福の中で己に愛を騙る少年の幻影。自分一人が選ばれるのが心苦しいなら、二人纏めて幸せにするよ、と語る女の敵。

 その急所を一夫多妻去勢拳にて撃ち抜いたアリサは、スカッとした気分で幸福な夢から覚めていた。

 

 

「ふーん。夢界で寝れば、振り出しに戻るって訳ね。……幸福な夢とか、めっちゃムカつく内容だったけど、スッキリしたから良しとしましょう」

 

 

 第三層の入口となる高台。そこで再び目を覚ました少女は、体を軽く動かしてみる。

 関節は問題なく動く。見える辺りに傷は全く残っていない。肉体面での異常は一切なく、体調は全快状態となっていた。

 

 

「全回復ってね。ま、夢から覚めてまた眠ればこうなるか。……起きれる保証は必ずある訳じゃないし、下手な死に方すると精神に傷が残りそうだから多用は出来ないけど、いざとなったら眠っちゃうのも一つの手かしら」

 

 

 自身は無事。取り出した胸を焦す炎も残っている点を考えれば、この場所で最初に起きた際よりも一歩前進と言えるであろうか。

 

 力を使い過ぎた狩猟の魔王が完全に眠ってしまった所を見るに、精神面で消耗が大き過ぎれば復帰は難しそうである。

 

 だが、その点にさえ気を付ければ、睡眠も有効な一手となるだろう。

 

 

「んで、学校は何もなし。図書館と公園はあの二人に任せておけば良し。……なら、どこに行こうかしら」

 

 

 二人の仲間の状態は心配だ。確かに苦戦しているだろう。何が起きたか気にはなる。

 けれど、自分が勝てたのだから、あの二人も大丈夫だろうと信頼する。そちらの事は任せて大丈夫な筈だ、と。

 

 ならば次は、全く行っていない場所に行くべきだろう。そう考えて。

 

 

「……あいつ」

 

 

 あの青髪の少女。レヴィ・ザ・スラッシャーがどうなったのか、少しだけ気に掛った。

 致命傷ではなかった。命に関わるような傷ではなかった。だが、無傷と言う訳ではない。

 

 

「学校に寄ってから、オフィス街の方にでも足を延ばしてみようかしらね」

 

 

 このまま放置しておくのも寝覚めが悪かった。

 そう感じたアリサは、高台の危険防止用の柵に足を乗せると空に飛び出す。

 

 足の裏で爆発を発生させる跳躍法で空中を移動しながら、学校のあった場所を目指した。

 

 

 

 そうして、アリサはその場所に辿り着く。

 

 

「あー。アリサだー」

 

「……何で?」

 

 

 崩れ落ちた瓦礫の上、ゆっくりと消え掛けている少女を見つけて、そんな風に声を漏らしていた。

 

 レヴィ・ザ・スラッシャーは消えかけている。

 致死量には届かぬ傷だと言うのに、己の存在を保つ事が出来ずに、まるで糸が解けるかのように崩れ落ち始めている。

 

 何故なのか。どうしてなのか。

 失われる命を前にして茫然自失するアリサに向かって、レヴィは答えを口にする。

 

 

「なんかねー。戦えない廃神は、要らないんだってさ」

 

「っ! 何よ、それ」

 

 

 特に頓着する事もせずに、ぼんやりと口にするレヴィ。

 所詮夢の支配者によって生み出された悪夢に過ぎない彼女は、その支配者が望めば消え去るだけの、儚い存在に過ぎなかった。

 

 そんな状態だと言うのに、まるで第三者の如く実感の籠らぬ口調で口にするレヴィ。

 その姿に、そんな彼女に、怒りを含める幾つもの感情がごちゃ混ぜになる。複雑な思いが湧いて来る。

 その想いに突き動かされるまま、叫ぶように言葉を口にしようとする。

 

 だが、そんなアリサより先に、レヴィが口を開いていた。

 

 

「……一杯、考えたよ」

 

 

 寝転んで、少しずつ崩れ落ちながら、青い髪の少女は口にする。

 

 

「アリサの言葉、一杯一杯考えた」

 

 

 それは戦いの最後。アリサ・バニングスが口にした強い言葉。敗れ去った後も、レヴィの胸に残っていた。強い強い言葉。

 

 

「価値がなかった事にしちゃいけない。自分が消えてしまうとしても、後に何も残らぬとしても、そこにあった価値までなくしちゃいけない」

 

 

 何時か終わってしまうから無価値と語るなら、彼女らに関わらず、全てに等しく価値はない。

 

 ニヒリズム。虚無主義。諦観を伴った無常の思想。

 何時か終わるのは、誰も同じなのだ。マテリアルと他の者らの違いなど、寿命の差異。夢でしかない彼らが遥かに儚いだけ。

 

 人間は何時だって、永遠には成れない刹那だ。

 けれど、それでも、無価値にする事だけはいけないと語った少女の姿は、レヴィの瞳には確かに鮮烈に映っていたから。

 

 

「自信はないよ。今でも価値があるとは思えない。……けどね、良く分かんないけど、確かに残ってるんだ。その言葉が、胸に残って消えないんだ」

 

「アンタ」

 

 

 思想は変わらない。思考は変わらない。そう簡単には揺るがない。

 けれど、もしかしたら、確かに其処には何かがあったのかも知れない。確かな何かが、残るのかも知れないと思えたから。

 

 

「ねぇ、アリサ? ……僕達に価値はあったのかな?」

 

 

 青い少女は問い掛ける。廃神と言う悪夢に、何か意味はあったのだろうか、と。

 

 

「……当然、よ!」

 

 

 金色の少女は言葉を返す。そんなのは、当たり前なのだと少女は返す。

 

 

「……そっか。……そっか」

 

 

 大気に解けていく少女は、夢に帰っていく少女は、何度も何度も頷いて。

 

 

「……僕達は夢だ。僕達は廃神だ。だから、きっとまた現れる。何度だって蘇る。夢見る夢が終わらない限り、何度だって現れて、そうして、夢に溶けていく」

 

 

 だからきっと次がある筈だ。だからきっと次もある筈だ。

 青き髪の少女は、アリサに向かってニッコリと微笑む。其処に何の悪意も映らない、子供の様な笑みで微笑んで。

 

 

「だから、また遊ぼうね」

 

 

 そんな言葉を最後に、何も残さず消えてしまった。

 

 

 

 

 

 風が吹き抜けていく。一陣の風が、冷たく吹き抜けていく。

 

 

「ふん。……夢見る夢はもう終わるわ」

 

 

 そんな風に吹かれながら、アリサは口にする。

 

 

「もう廃神は生まれない。生ませるもんですか」

 

 

 涙は零さない。心は動かさない。それ程に近しい存在ではなかったから、そんな風に自己に言い聞かせる。夢界はここで終わらせるのだ。そう己に言い聞かせて。

 

 

「だから、次は唯の夢として、私の夢に出て来なさい。……その時は、また遊んであげるわ」

 

 

 そんな風に口にして、瞳を閉じる。ほんの僅かな黙祷。消え去った廃神の少女に、また遊んであげると約束を交わす。

 

 

 

 そんな少女は、目を開く直前に、その声を聞いた。

 

 

「え? 本当?」

 

「え?」

 

 

 目を開く。傷一つない健康体の、何か馬鹿っぽいのが居た。

 

 

「あ、言い忘れてた。……僕、ふっかぁぁぁっつ!!」

 

 

 馬鹿っぽいのは、何か無駄に元気だった。其処に先ほどまでの悲壮感など欠片もない。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………なんでいるの?」

 

 

 ニコニコと笑う放蕩の廃神。完全復活を遂げているその姿に、アリサは茫然と呟いて。

 

 

「僕、廃神だよ。言ったじゃん。夢見る夢は終わらない。また蘇るって。戦えないなら再構成すれば良いんだよ! ……全く、アリサは馬鹿だなー」

 

「蘇るにしても、早過ぎるわ!?」

 

 

 こんなにあっさり蘇る阿呆にあんな事を言ったのか。

 羞恥と怒りで顔を真っ赤にしながら、アリサは怒鳴り声を上げる。

 

 

「あ、そだ。……アリサがまた遊んでくれるって約束してくれたから、今の内にっと。――急段、顕象――」

 

 

 口約束を協力強制の条件にされて、勝っても負けても死に至るゲームが幕を開ける。勝利手段のないゲームの中へと再びアリサは引き摺り込まれる。

 

 

「おまっ!? ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 怒りの余り口にした叫びは届かず、アリサは放蕩との終わらぬ遊びを強要された。

 

 

 

 甦ったのは、放蕩の廃神だけではない。

 

 

「あん? どういうこった、てめぇ」

 

 

 愛らしい容姿で眉を顰める白貌の吸血鬼。そんな彼女の目の前で、逆十字が蘇る。

 

 

「はっ。低脳だな、蝙蝠め。……我らは夢ぞ。我らは悪夢ぞ。夢見る夢が終わらぬ限り、消え去る事など、ある筈なかろう!!」

 

 

 赤き月夜の元で、ロード・ディアーチェは立ち上がる。その身は病に侵されている。その病みは再び元の数値にまで戻されている。

 一度消滅した事で、押し付けて来た病みまでも戻って来た事に苛立ちながら、闇統べる王は貴様らの行いなど無駄なのだと告げる。

 

 

「はっ、はははははっ。……舐めたな、クソガキ。てめぇ、これで二度目だ」

 

「ならばどうする? 蝙蝠風情」

 

「……三度だ。劣等が、その身に刻んどけっ! 永遠に吸われ続ける痛みって奴をなぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 何度だろうと蘇る。決して終わることは無い。だからどうした。それがどうした。蘇り続けるなら、その全てが尽きるまで殺し続ければ良い。終わらないと言うならば、永遠に吸い続ければ良い。

 

 白貌の解決策など単純だ。その圧倒的な力の差で押し切ろうと、鈴の音のような声音で咆哮する。

 

 

「ふんっ! 確かに貴様は強い。我よりも遥かにっ! 癪だが認めよう! だがな、我にも王たる矜持がある!」

 

 

 この白貌は、ここで押し止める。己や同胞達が消えぬ為に、この白貌の脅威が他の二人の元へ向かわぬように、この身を犠牲に、確かにこれを抑えて見せよう。

 

 

「無限の残機が我にはある! 一人一人を犠牲に、貴様の一部を奪い取る! この病みの全てで持って、貴様の爪を、薄皮を、確かに剥いでいく!」

 

 

 特定の物に対する簒奪と言う一点においてのみ、逆十字は薔薇の夜の上を行く。

 敵手のあらゆる力を糧として取り込む吸血鬼に対して、彼女の逆十字はあらゆる要素をそのまま奪い取る。

 

 吸血鬼は体力や魔力を回復する事は出来ても、才能や記憶と言った物までも奪えない。一度己が奪ってしまえば、もう取り戻す事は出来ないだろうから。

 

 十のディアーチェを重ねて、その記憶の対価としよう。

 百のディアーチェを重ねて、その才能の対価としよう。

 千のディアーチェを重ねて、その異能の対価としよう。

 

 万を、億を、兆を超えるディアーチェを重ねて、その魂魄の対価として見せる。

 

 

「絶望の廃神を、侮るでないわぁぁぁぁっ!!」

 

「……カッ、カハッ! 良い啖呵だ。だけどなぁ」

 

 

 揺るがない。揺るがせない。一欠けらたりとも奪わせないと宣言しよう。

 

 

「無意味だって、教えてやる。逝けや、ヴァルハラァァァァァッ!!」

 

 

 赤き月が輝く夜の帳の下で、絶望の廃神は白貌の吸血鬼に喰らい付き続ける。

 その全てが無為と言われようとも、これを先へは行かせないと、その身を盾に抗い続ける。

 

 

 

 そして、彼の元に現れる者もまた、確かに存在していた。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

 ボロボロの身体を引き摺って歩く。ボロボロの心を奮い立たせて歩く。

 眠ってしまえば、もう起きられない確信があった。幸福な夢に囚われれば、膝が折れてしまう認識があった。それ程に追い詰められているから、眠って回復などという手段は選べない。

 

 そんな彼の前に現れるのは、少女達よりも遥かに大きい脅威。どうしようもない悪夢。決して揺るがぬ、希望なき絶望。

 

 

「始めまして、ユーノ・スクライア」

 

 

 天より舞い降りる少女。高町なのはと瓜二つのその姿は、先ほど打ち破った廃神に酷似している。

 

 

「……君は、誰だい?」

 

 

 だが違う。その瞳が違っている。無機質で、何も映していない瞳は、あの狂愛とは絶対的に異なっている。

 

 

「シュテル・ザ・デストラクター。……前任者に変わり、貴方の足止めを命じられた捨て駒です」

 

 

 少女は無表情のまま、機械的に一礼する。その行動には、どこまでも熱がない。

 

 狂愛は壊された。己の急段に嵌ると言う形で壊れたそれは、さしもの夜天にも復元は不可能であった。故に彼女が選択するは再生成。もう一度、始めから作り直すと言う手段。

 

 だが、再び狂愛を生み出す心算はない。性能面で見れば、絶対にあり得ない敗北。それを生んだのは、その狂愛が理由だからだ。

 

 狂愛の廃神は欠陥品である。その狂気は自滅を促す。故にこそ、夜天は次の星光の殲滅者からは感情を取り除いた。

 極限まで感情を薄めて、更に感情を爆発させる危険性があるグルジエフの怪物と言う要素を取り除いて、捨て駒として数だけを揃えさせた。

 

 

「力は前任者に劣るでしょう。性能は前任者に劣るでしょう。……それでも、貴方を圧殺するには十分な程の数がある」

 

 

 この夢界を進む者らの中で、夜天が最も警戒するのはこの少年だ。

 あり得ぬ勝機を掴み取った彼を恐れるが故に、念入りなまでに夜天は数を揃える。

 

 

「此度は先の万倍。……三千万のシュテルがお相手しましょう」

 

 

 天を埋め尽くす少女達。地を埋め尽くす少女達。その総数は三千万。

 鋼牙機甲獣化帝国はない。その身にあるのは基本的な夢の力のみ。彼女達一人一人は、高町なのはの劣化コピーに過ぎない。

 

 けれど、三千万というその数は、抗うには余りにも多過ぎる。

 

 

「数で潰しましょう。物量で終わらせましょう。……それで抗い続けたとしても、またシュテルが増えるだけ。貴方の戦いなど、無駄でしかない」

 

 

 無感動な人形は、内に何もない傀儡は、少年の心を折る為に言葉を告げる。所詮は無駄なのだ。諦めろと言葉を重ねる。

 

 だが――

 

 

「は、ははは」

 

「……唐突に笑い出す。理解が出来ません。気でも触れましたか」

 

「いや、そうじゃないさ。……唯、お前は怖くないって思ってさ」

 

 

 少年は笑う。笑い飛ばす。その圧倒的な物量を、空の色さえ見せぬ数を前に、しかしニヤリと悪童の如く笑い飛ばす。

 

 

「シュテル・ザ・デストラクターが恐ろしかったのは、あいつに愛があったからだ。あいつの愛が、一番怖かった。……だからさ、役者じゃないんだよ、出来損ない」

 

 

 あの愛は狂気だった。あの想いは恐ろしかった。だが、こいつらはまるで怖くない。

 

 

「三千万だろうが三億だろうが、好きなだけ持って来い! 十羽一絡げなお前達なんて、どれだけ居ても脅威ですらないんだよ!!」

 

 

 死に掛けの身体で、ボロボロの心で、それでも少年は啖呵を切る。

 あの狂気の愛を乗り越えた自分が、こんな出来損ないに負ける訳にはいかない、と。

 

 

「……理解に苦しみます。合理的でない。現状、私一人ですら、性能面では貴方を大きく超えると言うのに」

 

 

 感情のない傀儡は分からない。その思考。その在り様。全てが合理性から外れている。あり得ない、不可能だと一笑される発言でしかない。

 

 それでも、少年は不可能を乗り越えたと言う実績を持っている。

 

 

「やはり、貴方が一番危険です。ここで、確実に排除しましょう」

 

 

 三千万のシュテルがルシフェリオンを構える。その無数の魔法陣が、たった一人の、死に掛けの少年を倒す為だけに向けられる。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

 そんな絶対の死線を前に、希望の欠片すらない絶望を前に、しかし少年は揺るがずに前へ進む。

 

 

 

 尽きぬ傀儡。終わらぬ戦。

 決して先には進めない絶望を前に、少年は一人抗い続ける。

 

 

 

 

 

 かくして、夢界の戦いはここに膠着状態に陥る。

 誰もが必死に進み続けても、夢見る夢は終わらない。

 

 内側は詰んでしまっている。その盤面は先に進めない。

 故に、これを崩し得るのは外側だ。この拮抗を終わらせ得るのは夢の外なのだ。

 

 視点はここで切り替わる。夢界における物語は一時閉幕。次に映される舞台は、醜悪に染まった海鳴の街。

 

 其処で闇の残滓は邂逅する。この場所にて、全ての決着は付くだろう。

 

 

 

 

 

2.

 ブーンとプロペラの回る音がする。

 管理局でも最新型であるヘリJF701式が、醜悪に染まった星の上空を飛んでいた。

 

 

「あー、こりゃ酷いっすね。……何か嫌な感じのする煙がここまで来てますよ」

 

 

 ヘリを操縦する若き少年パイロット。ヴァイス・グランセニックは眼下を見下ろしながら、軽薄な口調で感想を漏らす。

 

 眼下に見えるは、醜悪な肉塊に埋もれた街並み。何処までも、何処までも、気色の悪い異物が大地に蔓延り、人を眠りに落とす匂いが大気の色を変える程に充満している。

 

 肉塊の中央。海鳴市の中心とも言うべき場所で、半裸の女は肉に囲まれ痴れている。

 この肉塊は星を包んでいる。この醜悪な光景は世界の全てを飲み干している。万仙陣と言う名の夢の中で、誰も彼もが痴れている。

 

 地球と言う惑星が陥った大災害。この危機に際し、管理局は介入を決定した。

 だが近寄れない。その香りに嗅げば、高町なのはクラスの実力者であっても囚われる。機械のような物を近寄らせても、生半可な物では狂った夜天に対処出来ない。

 

 故に、管理局が選ぶはこの男を置いて他にない。

 この万仙陣に囚われる事がなく、確実に夜天を討てるであろう兵力は他にない。

 

 だからこそ、盾の守護獣がここにいる。

 

 

「……全く、貴様らは阿呆か」

 

「酷いっすね。ザフィーラの旦那」

 

 

 自身の足として用意されたヘリで揺られながら、青き獣は呆れたように口にする。

 それは一歩間違えば己も醜悪な肉塊の仲間入りを果たすであろうこの地に、自ら望んで足を踏み入れた少年に対する言葉。

 

 

「貴様は武装隊の人間だろうに、態々志願してまでここに来たのだ。……貴様だけではない、多くの者達が志願し、死地へ赴く権利を廻って争った。これを阿呆と言わずに何と言う」

 

 

 ザフィーラの足として、彼を輸送する。それは一歩間違えば万仙陣に囚われる行為。死地へ向かうという事実。

 それを押し付け合うのではなく、自ら望んだ者らが多くいた。能力面、人格面、資格の有無など、多くを考慮して選ばれたのがこの少年だった。

 

 それが、こんな場所に居る筈のない、ヴァイス・グランセニックという少年がここにいる理由。

 

 

「酷い言い様っすね。ま、言われても仕方ないとは思いますけど」

 

 

 そんなザフィーラの言葉に苦笑して、ヴァイスは己の心中を明かす。自身と同じ、多くの志願者達の声を零す。

 

 

「俺らは阿呆っすよ。損得なんか測れない馬鹿です。……そうでなきゃ、あんな大天魔達に挑めない」

 

 

 大天魔との戦いは絶望的だ。彼の英雄ギル・グレアムが折れてしまったように。一度の戦場にて多くの戦友を失うその災禍は、正しく絶望の象徴だ。

 損得を判断する知恵があるならば、そんな戦場に出る事を拒むのは何処までも自然な反応だ。

 

 

「知ってますかい? ミッドが幾ら凄くても、やっぱり輸送問題とかついて回ってるんすよ。天魔襲来の後、配給が滞ったり、壊れた建物の所為で寝る場所にも困る人達が居るんすよ」

 

 

 それでも彼らが諦めないのは、知っているから。

 それでも彼らが諦めないのは、阿呆である己達を誇っているから。

 

 

「けど、そんな時にだって支え合える。自分も辛いだろうに、次の配給が来るまで少ない食料分け合ったり、家失くした人をまだ家がある人達が自主的に招き入れたり、辛い時でも手を取り合える。ミッドチルダの人って、そういう所があるんです」

 

 

 それは彼らが愛を知るから。刹那の愛に抱かれて生まれ、黄金の愛に抱かれ育つ。そんな彼らは、闘争と愛を最も大切にする気質を持って生まれ育っている。

 黄金の法が地を満たして後に生まれたミッドの子らは、絶望の底においてもそれを失わない資質を有している。

 

 

「ラグナの奴。あ、妹ですけど。あいつ、ちっちゃい貯金箱壊して、これを足しにしてくれって。舌っ足らずな口調で言うんです。3つのガキなのに、そんな事言えるんですよ。……そんな人達守ってるんです。そんな人達の為に俺ら動いてるんです。だから、俺ら命知らずな阿呆で居る事を良しとしてるんすよ」

 

 

 絶望の中でも挫けない。慟哭の果てにも諦めない。どれ程に迷い間違っても、もう一度正しい道を見つけ出す。ミッドチルダの若き風達は、そうした色を確かに持っている。

 

 

「俺がここで見たいのは、大天魔と互角に戦ったっていう旦那の活躍です。俺達が見たいのは、こんな阿呆共の希望となる、そんな人の活躍を見たいっていう馬鹿な理由なんですよ」

 

 

 何時か無間地獄を乗り越える事を夢見て。

 何時か無間地獄を乗り越える事を目指して。

 

 ミッドチルダに生きる人々は、手に手を取り合って生きている。

 

 だからこそ、彼らは阿呆の生を誇るのだ。

 

 

「格好良いとこ、見せて下さいよ旦那! こっち来れなかった奴らに、盛大に自慢してやるんすから!!」

 

「ふんっ。阿呆共が」

 

 

 だが、そんな阿呆共は嫌いになれない。そんな風にザフィーラは苦笑する。

 

 

「それだけ言うならしっかりと見ておけ、この俺の活躍をな」

 

 

 バタンとヘリの扉が開かれる。人型へと変じたザフィーラは、吹き付ける風に揺られながら、ヘリのスキッドに足を乗せて眼下を見下ろす。

 

 痴れた夢を見る女と、視線が交差した。

 

 

「嗚呼、嗚呼、来てくれたのだな。盾の守護獣」

 

 

 狂った夜天は微睡の中で、嘗ての夢を見ている。

 同胞と共にあった夢。主と共にあった夢。闇に堕ちる前の、幸福であった頃の記憶。

 

 主の死を受け入れられないその女は、故に主を思い出せない。夢見る女が理解するのは、嘗ての同胞である守護騎士達のみだ。

 

 

「良く来てくれた。良く来てくれた。……さあ、ここに主が居る。主達はここに居る。守ってくれ。私と共に守ってくれ!」

 

 

 狂った女は口にする。愚かで無様で、痴れた言葉。だが、何処までも切実であったその言葉。

 

 己に閉じた女は何かを伝えるのではなく、感じた思いを唯口にしている。

 だからこそ、その声は上空に居るザフィーラには届かない。だからこそ、ザフィーラは女の素性に気付けない。

 

 

「……ふん。誰だか知らんが、好き勝手してくれる」

 

 

 忌々しいと、その醜悪な肉塊を見下す。記憶を失った獣にとって、銀の女は害悪以外の何者でもない。

 

 

「ここは、主の墓所だ。ここは、主の故郷だ。……貴様如き、名も知らん怪物に、汚されて良い物ではないっ!!」

 

 

 停滞の鎧を駆動する。その姿が変わる程ではないが、この香りの影響は受けない。そんな制限した力を発動する。

 その力を身に纏って、グッドラックとその背を押されて、青き守護獣はヘリから飛び降りた。

 

 

「痴れ者がぁぁぁっ! ここで消えろぉぉぉっ!!」

 

 

 怒りを伴い自然落下する青き獣。己を侵す万仙陣を無限に停滞させて、決して膝を折る事はなく、青き獣は夜天目掛けて突貫する。

 

 

「……何故だ」

 

 

 その怒りを見て、その咆哮を聞いて、夜天は疑問を抱く。

 

 

「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!?」

 

 

 分からない。分からない。分からない。

 彼が何故、怒るのかが分からない。彼が何故、己に拳を向けるのかが分からない。

 盾の守護獣の事を正しく認識できるから、他の物事を正しく認識できぬから、どうしてもその等号が結び付かない。

 

 

「……そうか。お前に重大なバグが生じているのだな。致命的な欠陥が生じているのだな」

 

 

 だから、夜天はそう結論付けた。

 

 

「やむをえまい。余り好ましくはないが、……お前を取り戻す為に、初期化を行うとしよう」

 

 

 だから、夜天はそう行動を始める。

 

 閃光の如く落下してくるザフィーラ。重力による自由落下と共に振るわれる拳が直撃すれば、さしもの己も無事では済まないであろう。

 

 故に、そうなる前に、一つ手を打つ必要がある。使うべき力は決まっている。

 魔法ではない。非殺傷であっても、魔法ではザフィーラを傷付けてしまう可能性がある。ならば選択するのは、唯一つ。

 

 

「救ってやろう。我が同胞。嗚呼、私はお前達の幸せをこそ願っている!」

 

 

 夜天は人の意識を束ねた。

 この星に生きる全ての人々、七千万と言う意識を一つに集めた。

 

 それは人の夢の集合体。人の意識の集合体。

 その全ての人の識が集う場所を、仏教においては阿頼耶識と呼ぶ。

 

 

「人皆七竅有りて、以って視聴食息す。此れ独り有ること無し」

 

 

 彼女は知らない。己の作り上げた物が、どれ程に強大化しているか。どれ程に手に負えない物に変じているか。知らないままに、便利だからとそれを扱う。

 

 

「太極より両儀に別れ、四象に広がれ万仙の陣」

 

 

 繋がれた命は、阿頼耶識と化している。人の集合無意識は、己に幸福を齎してくれた夜天を支持している。

 

 遍く全ての命に肯定された者。人間総意の代弁者。其れを何と呼ぶか知っているだろうか?

 無意識と現世を繋ぐ架け橋。所詮は夢でしかない邯鄲の夢を現実に持ち出し、その空想を持って全てを蹂躙出来る超越者。其れを何と呼ぶか知っているだろうか?

 誕生の瞬間に、真っ当な慈愛と極限の憎悪を受けた者。この世の善悪を生まれながらに内包している者だけが辿り着けるその境地を、何と呼ぶか知っているだろうか?

 

 

「――終段、顕象――」

 

 

 其れを人は、盧生と呼ぶのだ。

 

 夜天は闇に堕ちる瞬間、ユーリ・エーベルヴァインから献身と慈愛を、内に宿した万物の父たる彼の残滓からは極限の憎悪を受けていた。

 再誕と言う形ではあるが、確かに生まれながらにして、夜天は人の善悪の双方を内包していた。

 

 人々に夢を見せると言う形で、夜天は皆の指示を得た。傷付き、疲れ果てた人々にとって、その甘い夢は幸福過ぎた。

 七千万と言う残る人々。その殆どからの指示を受け、彼女は人類の代弁者となっている。

 

 そう。彼女こそは盧生である。

 

 

四凶渾沌(しきょうこんとん)――(こう)(きん)(どう)(じん)ィィィン」

 

 

 其は人の見る痴れた夢。阿頼耶識に眠る負の側面。呼び出されしは、揺蕩い続ける盲目の幻想。

 言葉と共に現実に現れる。其は形容する事すら出来ぬ程に悍ましき物。目も口も鼻も耳も何一つとして存在せず、無数の触手で塗り固められた化外。

 

 嘗ては最上位の神仙すら意のままに操る丹の持ち主であり、霊宝天尊、元始天尊、道徳天尊の師であると語られし鴻釣道人。

 だが、それは最早その姿をしてはいない。創作より生まれた鴻釣道人は、ラブクラフトが夢見た外なる神と結び付き、白痴の神(アザトース)と成り果てている。

 

 終段顕象。人類の代弁者である盧生にのみ可能な邯鄲の極みたるその秘術。それが齎すは、人々が想像する神々を、現実の怪物として召喚する力。

 

 その神格は偽りである。その神は所詮空想だ。現実に怪物を呼びだす盧生は確かに途方もない存在ではあるが、零れ落ちた夢でしかないそれらは、単独では求道神や覇道神の足元にも及ばない。

 

 彼らは所詮、夢見る者らによって支えられる夢でしかない。その格は、夢見る者らの格に左右される。夢界にある者の合算値を上回ることは無い。

 十億の合計値であっても、最上位の覇道神には遠く及ばない。その力を受けた偽神にさえも、格の差故に敗れ去るであろう。

 

 七千万の人類の合算値では、どれ程高位の神を呼んだとしても今のザフィーラを傷付ける事は出来なかった筈だった。……本来ならば。

 

 だが、今の夢界には高町なのはが居る。ユーノ・スクライアが居る。アリサ・バニングスが居る。月村すずかが居る。そんな唯人よりも輝く魂を持つ者達が居る。

 そして、二人の少女の中には、串刺し公と狩猟の魔王と言う、神格に準ずる存在も居るのだ。

 

 そんな彼らが夢を強くする。夢より生まれた怪物を強くしてしまう。そんな彼らの神格係数。その合算値たる力をこの怪異は持ってしまっている。

 最早、盾の守護獣の守りでは防ぎ切れない程に、その暴威は悍ましい。

 

 

「何だ、こいつはぁっ!?」

 

 

 爆発的に増え続ける怪物。その異形は瞬く間に街を覆い尽くし、国を覆い尽くし、大陸を飲み干して行く。

 触手が蠢く。その虚ろな手が伸ばされる。暴も武も夜天は望まない。揺蕩う怪物に求めるのは、同胞の救済のみ。

 

 だが、それだけでは救えない。未だ停滞の鎧に守られる彼を救う為には、その鎧を先に壊さねばならぬから、仕方なしに暴威を振るわせる。

 

 崩れ去る。崩れ落ちる。触手が全てを打ち砕く。蠢く触手は唯救いたいだけ、だと言うのに世界を地獄絵図に変えていく。建造物が崩れ落ち、大地が砕け、空が不快な景色に染まる。

 

 

「案ずるな。痛みなどない。砕くのはその鎧だけだ」

 

 

 見ていない。見えていない。夜天には何も見えていない。

 

 

「直ぐに救おう。直ぐに救える。渾沌が触れれば七穴が封ずる。己に閉ざされ、お前は痴れて逝くのだ」

 

 

 崩れ落ちる建造物に飲まれて肉塊が潰れる。砕ける大地に飲まれて肉塊が潰れる。渾沌の伸ばした体躯に押し潰されて肉塊が潰れる。救うべき者らを蹂躙している事に、夜天自身が気付けない。

 

 

「ぐぅぅぅぅっ!?」

 

 

 己に触れた触手が鎧を破ってくる。その光景に冷汗を流しながら、盾の守護獣は逃げ惑う。

 

 近付けない。近寄れない。真実、神域に至ったその暴威を前に、全力を出せないザフィーラでは対処が出来ない。

 

 

(どうする。ここで全力を使うか!?)

 

 

 己が神より得た力。涅槃寂静・終曲。大天魔すら追い詰めた最大駆動を持ってすれば、このような空想の怪物など容易くはないが討てるであろう。

 

 

(だが、それは)

 

 

 己の命を捨てる選択。己の憎悪を捨てる選択。残り少ない時間を削る選択肢。

 仇敵を討つ為に後どれ程戦わねばならぬのか分からぬのに、ここで見知らぬ怪物を倒す為だけに使用するのを良しと出来るのか。ザフィーラにも簡単には答えを出せない。

 

 故に彼は逃げ惑う。逃げ回るしか出来はしない。

 

 結論を出せずに逃げ惑い。力を無駄に消費しながら思考するザフィーラの元に、声が届く。

 

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 それは絹を裂くような悲鳴。この肉塊に覆われた海鳴の街で、ある筈のない人の声。

 咄嗟にその方向へと走り出したザフィーラは、そこに抗う女の姿を見た。

 

 

「っ! ファリン! 叫んでないでさっさと戦いなさい!!」

 

「お、おねーさま! だって、おねーさまの手が!?」

 

「良いから戦うのです! 今、私達が退いたら、忍お嬢様と恭也様がどうなるか、貴方にも分かっているでしょう!!」

 

 

 それは人を模した人形。夜の一族が作り上げたエーアリヒカイト姉妹。

 人でない彼女らは、人とは同じ構造をしていないが故に万仙陣に嵌らなかった。その香りを嗅ぐ嗅覚を持たぬが故に、この場所でも抵抗する事が出来た。

 

 だが、それだけだ。彼女らはこの地において無力だ。神話の神が現出するような地点において、抗う術など何一つとして持っていない。

 

 暴威を振るう渾沌は彼女らに気付かない。その触手が襲い来るのを防がんと巨大な機関銃を振り回しているが、それとて擦り傷一つ付ける事が出来ていない。

 

 それを示すかのように、ノエルの体は崩壊しかけている。片手が砕かれ、全身からは煙を吹いている。後方に居る者を、そして妹を守る為に壁になり、その身を砕かれている。

 

 人でない彼女は七穴を封じられる事はない。偽りの生命故に、渾沌に飲まれる事は無い。だが、だからこそ、その苦しみは壊れるまで続いてしまうのだ。

 

 

(あの娘達。作り物か)

 

 

 その姿を捉えたザフィーラは、管理局に多く見られる戦闘機人と同じかと認識した。戦闘機人とは違い、完全な機械で出来ているが故に、この状況でも動けるのかと判断する。

 

 

(……無理だな)

 

 

 あの女性達を救おうか考えて、不可能だと判断した。こんな状況で足手纏いを抱える余裕はない。自身の命すら際どい現状、彼女達には悪いとは思えど、見捨てる事を選択する。

 これから救おうとすれば、無駄に時を浪費してしまうから。残された時が無くなれば、もう復讐に走る事も出来なくなる。

 

 だから見捨てる事を選択して、せめて女の顔を見て置こうとしたザフィーラは、その事実に気付いた。

 

 女は必死に抗っている。その手にした巨大な機関砲を使って、渾沌の暴威に抗っている。

 渾沌に意志がない事が幸いしてか、一発の弾丸で方向を逸らせばそのまま触手の暴威を逸らすことが出来る。己を盾にすれば、一手を防ぐ事が出来ている。

 

 そんな僅かな抵抗が、彼女らが背に守る肉塊を守る結果に繋がっていた。高町恭也と月村忍が囚われた、その肉塊を守る結果へと。

 女は守っているのだ。己がどれ程傷付こうとも、己がどれ程壊れようと、確かに主を救わんと抗っていた。

 

 

――なあ、ザッフィーって守護の獣やったっけ? なんや、格好ええなぁ

 

 

 そんな姿が、嘗ての己と重なる。そんな姿に、嘗ての日常の中にあった、何の変哲もない言葉を思い出していた。

 

 

「っ!? ファリン! お嬢様方を!!」

 

「おねーさまぁぁぁぁっ!!」

 

 

 ザフィーラを探して暴れ回る怪物の余波は、それだけで女達を終わらせる。唯身動ぎしているだけなのに、それだけで彼女らの抵抗を踏み潰すのだ。

 

 その触手がノエルに向かって、振り下ろされる。弾幕は無駄だ。逃走は選べない。どれ程抗おうとも、どれ程に耐えようとも、その暴威は最早防げない。

 

 だから、その最期に、己を盾としようとしている。

 

 そんな何処か懐かしい姿を見たから。

 そんな姿すら復讐の為に見捨ててしまえば、主が涙を流すように思えたから。

 

 咄嗟に体が動いてしまったのだろう。

 

 

「ぐ、おおおおおおおおっ!!」

 

 

 ノエルを踏み潰さんとした触手を、身代わりになってその身で受ける。気が付けば、己の身体を盾にしていた。

 

 

「貴方は!?」

 

「え、えええっ!? 犬耳の男の人」

 

 

 驚愕の声を上げるエーアリヒカイト姉妹。そんな彼女らの声も届かない。

 ザフィーラの時の鎧は破られる。無限停滞を砕かれて、その身を渾沌に貫かれた。

 

 

「が、がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 顔にある七つの穴。それを無理矢理に閉ざされて、ザフィーラは夢と言う毒を内に流し込まれていく。己が壊される。己が否定される。己の全てが初期化されていく。

 

 渾沌が齎す幸福の極致。余りにも濃度が濃すぎる満たされた夢。

 夜天が注ぎ込む守護騎士システムの情報。狂った夜天は何処が壊れているのかすら想定せずに、プログラムにプログラムを無理矢理に上書きしていく。

 

 満たされ過ぎた事により自己を失う。無理矢理に正されようとして、己自身を引き裂かれて壊されていく。

 

 叫ぶ事は出来ない。叫ぶ事も出来ないのだ。顔にある七穴。目も耳も鼻も口も、その全てを封じられて、内側からザフィーラは壊されていく。

 

 

 

 

 

 そんな中で、彼は夢を見た。

 それはまるで、白昼夢のような光景だった。

 

 

「おい、ザフィーラ! 何してんだよ!!」

 

 

 赤毛の活発な少女が声を掛けて来る。手にした巨大な鉄槌が不釣り合いなのに様になる。何だかそんな不思議な感想を受けてしまう見ず知らずの少女が怒っていた。

 

 

「うむ。早くしろ。ザフィーラ。……我らの中で残された貴様がその様で、一体どうすると言うのだ」

 

 

 少女よりも薄い、桃色に近い赤毛の女が声を掛けて来る。

 巨大な剣を背負った、その誰だか分からない女は、ふがいないぞと口にしていた。

 

 

「ザフィーラ。今の貴方は、らしくないわ。……貴方らしさを忘れないで、きっとそれが、一番正しい事なのだから」

 

 

 緑の僧衣を来た金髪の女性。まるで知らないそんな女が、穏やかな笑みと共に口にしていた。

 

 それは夢だ。所詮は夢でしかない。

 夜天が行う初期化。渾沌が見せる夢。それらが混ざり合った幸福。

 

 微量ですら精神を崩壊させる甘い毒を、ザフィーラの抗いが停滞させているが故に生まれた妄想に過ぎない。

 

 

「なぁ、ザッフィー」

 

 

 ああ、そうだと分かっていても、その声は振り払えない。

 

 振り返る。その声に振り返る。

 

 

「ザッフィーはな。守護獣なんやで。皆を守る、私の自慢の騎士様なんや」

 

 

 そこに、失ってしまった。忘れていない少女の姿があった。

 

 

「だからな。憎いって気持ちで戦わんで欲しい。……誰かを守る為に、お願いやで」

 

 

 儚く消えていく幻想。一瞬の夢幻。

 当の昔に失われてしまった美しい輝き。

 

 

「お願いや、ザッフィー。……あの子も、私達の家族も、助けてあげてな」

 

 

 所詮は夢だ。一時の微睡が過ぎ去ると共に、美しい景色もまた過ぎ去っていく。

 美しい輝きは、嘗ての同胞達は、親愛なる主は、ゆっくりと霧の向こうへと消えていってしまう。

 

 それが夢だとしても、唯の妄想だと分かっていても、その言葉は確かに何かを遺していた。

 

 

(……主)

 

 

 優しく微笑んだ主が残した物がある。そんな敬愛すべき主が誇った者がある。

 

 

(ヴィータ。シグナム。シャマル。ああ、ああ、思い出した。思い出したとも)

 

 

 これは唯の夢なのだ。これは都合の良い妄想なのだ。それでも、確かに声を聞いた気がしたのだ。

 憎悪は晴れない。復讐を望む心は消えない。守るべき者なんて残っていない。ああ、けれど――

 

 

(そうですね。主。……あの馬鹿者を止めましょう。その為に今一度、私は復讐鬼ではなく、守護の獣となりましょう)

 

 

 その同胞の誇りを守護する為に、その狂った同胞を止める為に、もう一度だけ守ろうと思えたのだ。

 

 

――日は古より変わらず星と競い 定められた道を雷鳴のごとく疾走する

 

 

 言葉は自然と零れ落ちた。七穴を封じられた今、声には出せない。

 けれどそれでも、声ではなく意志で、その想いを形にする。

 

 

――そして速く 何よりも速く 永劫の円環を駆け抜けよう

 

 

 己の身は省みない。受ける傷や時間の限界などは最早考慮しない。

 元より、盾の守護獣としての己は、この身を以って皆を守る事こそが役割だったのだ。

 

 

――光となって破壊しろ その一撃で燃やし尽くせ

 

 

 己を眠らせんとする渾沌の力を打ち砕く。

 この身を閉ざさんとする万仙の陣を振り払う。

 

 

――そは誰も知らず 届かぬ 至高の創造

 

 

 痴れている暇などない。狂っている必要などない。

 我が望むは憎悪ではなく、唯、主の誇りを守る為に。

 

 

――我が渇望こそが原初の荘厳

 

 

 何処かで、優しくて哀しい神様が、それで良いのだと微笑んだ気がした。

 

 

――Briah

 

涅槃寂静(アインファウスト)終曲(フィナーレ)!!」

 

 

 拘束を解き放つ。眠りを振り払う。最大駆動で発動された力は、願いさえも同調した結果、今だけは真なる力を発揮している。

 

 ノエルが驚く。ファリンが唖然とする。夜天が驚愕する。そんな女達の目の前で、渾沌の怪物が弾け飛んだ。

 

 斬。断ち切られる速さに遅れて、音が届く。白痴の神が増えるよりも、ザフィーラが全てを切り裂く方が速かった。それは唯、それだけの話だ。

 

 

「行くぞ。夜天」

 

 

 赤き姿へと変じたザフィーラは、狂った同胞を確かに見る。

 

 

「お前の悪夢は、ここで終わりだ」

 

 

 向けるべきは剣ではない。向けるべきは拳ではない。それは真実と言う、言葉の剣。

 

 

「我らの主は、もういないのだから!」

 

 

 だからこそ、その願いを此処に果たすのだ。お前を止めてくれと言う、その願いを果たすのだ。

 

 

「我らの役も、ここで終わろう!!」

 

 

 それこそが、ザフィーラの騎士としての最後の使命である。

 

 

 

 

 

「嘘だ」

 

 

 だが、言葉だけでは届かない。

 

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 その剣だけでは正気に戻れない。狂った夜天は止まらない。

 

 

「嘘を吐くな。嘘を吐くな。嘘を吐くな。主は居るのだ。生きているのだ。幸福になっているのだ。そうでなくては、余りにも救われないではないかっ!!」

 

 

 それでは足りない。それでは届かない。ザフィーラの言葉すら受け入れられぬ夜天は、その言葉を否定する為だけに己の狂気で己だけの現実に浸る。己の都合の良いように、その認識を歪めてしまう。

 

 

「そうか。お前は盾の守護獣ではないな!」

 

 

 その思考を切り替える。その認識を歪めて変える。

 

 

「その偽りの姿で主を奪わんとする敵だな!!」

 

 

 これは外敵だと。主がいないなどと抜かすこれは、主を奪おうとしているのだと。

 

 

「許さない許さない許さない許さない許さない!!」

 

 

 仲間だと思ったから。同胞だと思ったから。そうでないと思い込んだ相手に、よくも騙したなと夜天は怒り狂う。

 

 

「……願わくば、言葉だけで気付いて欲しかった」

 

 

 それで終わってくれれば、どれ程に良かった事か。

 だが、夜天の狂気は甘くない。それだけで止まれる程に、夜天は原型を留めていない。

 

 

「だが、それで止まれんと言うなら已むを得まい。その戯けた頭を全力で殴り飛ばそう。……痛いでは、済まんぞ!」

 

 

 今は亡き少女の為に、復讐鬼は今一度騎士となる。

 道を違えた同胞を止める為に。狂ってしまった家族を救う為に。

 

 だが、その尊い言葉すら、狂った女には届かない。

 

 

「主は奪わせぬ。我が同胞を騙る奸物め! 我が主の眠りを脅かす兇徒め! 最早、許さぬ! その血肉、一片足りとも残さないっ!!」

 

 

 ここに来て初めて、夜天は殺意を持って行動する。

 ここに来て初めて、夜天は憎悪と共に咆哮する。

 

 最早、これは救わない。絶対に何があっても許さない。故に、滅びろ。一片の肉すら残さずに。

 

 

「来たれ」

 

 

 その破壊の意志が呼び出すは、絶望の化身。

 あくまでも救済を望み続けていた夜天が、遂に呼び出した破壊の権化。

 

 

「来たれ」

 

 

 界が揺れる。世界が悲鳴を上げている。

 生み出されようとしている怪物の規格外さに、その出鱈目に、どうしようもなく悲鳴を上げている。

 

 

「っ!!」

 

 

 空に穴が開く。月夜の晩に亀裂が走る。

 その向こう側に生まれた怪物に、這い出して来ようとするそれに、悲鳴を上げたくなる程の脅威をザフィーラは感じ取る。

 

 あれはいけない。あれはいけない。あれはいけない。

 あれが来れば終わってしまう。今の己であっても、あれには抗えないと理解したから。

 

 

「させんっ!」

 

 

 その終段が形を成す前に、それを打ち砕かんと動く。

 己の神速を以って、召喚を続ける夜天を打ち破ろうと動き――

 

 

「っ!? 貴様、まだ生きるか!?」

 

 

 爆発的に膨れ上がった渾沌がそれを阻んだ。

 

 

 

 渾沌は何よりも生存能力に特化した神。増殖能力と言う一点においては、他の追随を許さぬ神。

 例え今の渾沌が、内に何も籠らぬ風船の如き存在であっても、その死に難さは変わらない。

 その渾沌の増殖が、ザフィーラの手筋を一手だけ阻んだ。その一手が盤面を決定付けてしまった。

 

 

「来たれ来たれ来たれ来たれ!!」

 

 

 盧生には適正と言う物がある。神との適正。召喚しやすさと言う物がある。

 第一が審判を、第二が英雄を、第三が死神を、第四が仙王を、それぞれ真に迫る形で呼び出す事を得意とするのに対し、夜天の適正は些か特殊である。

 

 夜天の適正は伝承。語り継ぐと言う性質故に、彼女は語り継がれる神々全てと相性が良い。

 だが反面、語れない物。形容出来ない物。歴史に名の残らぬ神々とは極めて相性が悪い。

 

 今の夜天は狂って堕ちているが故に、堕ちた存在であった渾沌を呼び出す事が出来た。だが呼び出された渾沌は、その本来の力の半分も振るえぬ程に劣化していた。

 

 そんな彼女と、最も相性が良い神とは何であるか?

 伝承と言う本来の資質が、闇に堕ちた事で歪められてしまった彼女と相性の良い神とは何者か?

 

 それは嘗ては正しきモノであり、伝承において語り継がれていた存在。彼女と同じく、守護と言う役割を背負っていた存在。何等かの理由によって貶められ、彼女と同様に堕落した存在だ。

 

 

「終段。顕象――百鬼空亡(なきりくうぼう)!!」

 

 

 即ち、腐って狂える黄龍をおいて他にいない。

 

 

 

 

 

 その名を告げる声と共に、それは空から堕ちて来た。

 

 

――かーごめかーごめ

 

 

 童女の声がする。鈴を鳴らすような、可愛らしい声が響く。

 

 

――かーごのなーかのとーりーは

 

 

 男の声がする。まるで地獄の底から響くような、恨みの籠った声が響く。

 

 

――いーついーつでーあーう

 

 

 男女の声が共に謡う。其は悍ましき遊び唄。

 

 

――よーあーけーのーばーんーに

 

 

 その龍は腐っている。その龍は狂っている。輪唱するように言の葉を紡ぎながら溢れ出るその怪物は、既に真を超えている。その猛威は正しく空を亡ぼす。

 

 

――つーるとかーめがすーべった

 

 

 甘き香りに包まれた天蓋が縦に割れていく。その竜神が姿を現す。最早止められない。もう誰にも止められない。

 

 

――うしろのしょうめんだーあれ

 

 

 空に巨大極まりない怪物の瞳が現れる。

 その威容が放つ波動は腐っている。病み爛れて膿んでいる。

 呪いと祟りを撒き散らす竜神は、惑星全土を見下ろしていた。

 

 

「っ!?」

 

 

 ザフィーラは理解する。なまじ神格域に近付いたからこそ理解する。

 

 あれは本当に、どうしようもないのだと。

 

 

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!」

 

「きゃァァきゃっきゃっきゃァァァ!」

 

 

 空からまるで隕石の如く、腐敗した腕が堕ちて来る。

 青白き無数の腕は、唯一つですら防ぎ切る事など出来はしない。

 

 

「ぐぅォォォォォォォォッ!!」

 

 

 その暴威を極限まで停滞させて、それでも防ぎ切れずに押し潰される。

 

 

「旨そげな夢をくれろ」

 

「その目をわいにくりゃさんせ」

 

 

 其の暴威は正しく神。嘗てない程に、比較にすらならぬ程に、百鬼空亡は凶悪だ。その猛威はどうしようもない。

 

 そして、その場にある絶望はそれだけではない。

 

 語る事もなく。何かを発する事もなく。肉塊は増殖を続けている。地に満ち、溢れるその渾沌は、最早滅し切るなど不可能だ。

 

 

「……ぐぅっ!」

 

「貴方!」

 

「ど、どうして!?」

 

 

 盾の守護獣は苦悶の声を漏らす。背に機械の乙女達を守り、唯の一手で瀕死に近い重症を負いながら、それでも揺るがずその場に立つ。

 

 

「退けぬ」

 

 

 これは主への弔いだ。今は亡き少女の為の戦いだ。理屈ではなく、合理ではなく、意地である。

 あの少女が信じた盾の強さを示すのだ。その戦場においては、例え勝利の為であったとしても、彼に他者を見捨てるという選択肢は存在しない。そんな無様な姿など見せられはしない。

 

 

「退けぬのだ!」

 

 

 その暴威を前にしても、盾の守護獣は退き下がれない。絶望を前にしても背を向けたりはしない。

 空亡の振り下ろした魔の手から、機械の乙女達を守り抜き、傷だらけになりながらも咆哮する。膝を屈する事はなく、確かにその絶望に立ち向かう。

 

 

 

 天に座すは堕ちた黄龍・百鬼空亡。地に満ちるは四凶渾沌・鴻鈞道人。

 

 その暴威に何が為せると言う訳でもない。何かが起きると期待している訳でもない。それでも、退けぬ理由がある。

 

 

「貴様を止める事。それが我が主の遺命である! 我が主が我に託した、その想いだけは揺るがせぬ!!」

 

 

 今は亡き少女の為に、盾の守護獣は絶望に臨む。

 

 

 

 

 

3.

 揺蕩うような眠りの中で、少女はそれを見ていた。

 

 

(……アリサちゃん。すずかちゃん。ユーノくん)

 

 

 夢界と同化した少女は、揺り籠の中で皆の奮闘を見詰めている。

 

 内にあって、先に進めぬ者達。足を止めざるを得ない者達。

 彼らの奮闘は無駄ではない。彼らの抵抗は無意味ではない。彼らの行いは無価値ではない。

 

 勝敗が死に繋がるゲームを強要されながら、紅蓮の少女は足掻いている。

 勝利も敗北もしてはならない故に、移動しながら出来るゲームを選択し、ゲームの中で夢界の基点を探し続けている。

 

 何処までも食い下がり続ける逆十字と、白貌に染まった少女の戦いを見詰める。

 彼らの戦いこそが、何よりも夢に亀裂を加えている。この夢の中で少女が思考出来るのは、彼女達のお蔭である。

 

 千万や億はおろか、兆を超える少女の群れに挑み続ける少年の背中を見詰める。

 その行いは無謀である。一手のミスが死に繋がる綱渡りを続ける少年には余裕など欠片もない。

 それでも、少年の奮闘が、夜天の持つ複数思考の大半を惹き付け、故に少女に対する監視を緩める結果となっている。

 

 

(ノエルさん。ファリンさん。ザフィーラさん)

 

 

 外にあって、抗う者達。顕象された神と言う暴威を前に、無力な女達を庇いながらも抗い続ける男の姿。

 その抵抗は無駄ではない。無駄何かではない。絶対に、無駄な筈がない。

 

 

(後、少し)

 

 

 夢に亀裂が走っている。

 夢は今にも壊れようとしている。

 

 

(後、少しで)

 

 

 まだ足りない。まだ一手足りない。だが、あと一手でこの夢は崩れ落ちるから。

 

 

 

 高町なのはは、目覚めの時を待っている。

 

 

 

 

 

 




○ユーノ君の現状
ユーノ「千万だろうが! 億だろうが! 好きなだけ来い!!」
夜天さん「なら取り敢えず一兆な。後、追加で用意出来たら放り込むから」
ユーノ「( ゚ ρ ゚ )」


ミッドチルダ人が絶望の中でも足掻けるのは獣殿のお蔭。現場の人達が基本皆綺麗なのも獣殿のお蔭。

三脳はミッド生まれじゃないし、本局のエリート達は、実は天魔襲来が相次ぐミッドチルダに住んでない。(名目上ミッドが一番安全とか言ってるけど、実際数年に一回天魔来る時点でアカンよね、という話)

天魔が滅多に来ない管理外世界とかに別荘持っていて、一年の半分近くは妻子共にそっちに行っているので、獣殿の漂白効果が薄かったりします。

とは言っても獣殿の影響は強制ではなく(強制出来る程の力がない)、その方向性を得易いと言う程度に収まっています。

例えるなら、覇道神の強制が特急電車に人を押し込んで目的地まで運ぶ物なら、今の獣殿の強制力は目的地への道順が書かれた地図を直接手渡している様なレベルです。(だから全員が綺麗になる訳じゃない)



終段で召喚される神様辺りは独自設定。基本スペックは主神級が獣殿クラスらしいけど、神格係数がどうなってるのか分からなかったので捏造。

やっぱどんだけ強くなっても、阿頼耶識自体は超えないよね。なら最大級に相性の良い最高神級の怪物が人間全ての合算値になるようにしようと思った。(小並感)

それに座って、あらゆる魂内包しているらしいし、ある意味、阿頼耶識と=じゃね。覇道神>座が神座ルールだし、やっぱり終段神様じゃ覇道神には勝てないよね、と感じたので神座ルール重視の当作内ではこんな設定です。


けど今の空亡たん。最良の相性+赤騎士+白貌の所為で、現状の弱体化した中堅天魔より強いという罠。

腐ってる所為で思考狂っていて真面に戦えないので、やり様次第では屑兄さん辺りでも倒せるけど、暴れ狂うされるとヤバい。

確実に勝てるのは両翼のみだったりします。


そんな空亡たんは星の化身らしいです。……これがちたまの怒りか。





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