リリカルなのはVS夜都賀波岐   作:天狗道の射干

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戦犯アリサ。爆誕。


第二十五話 失楽園の日 其之漆

1.

 夢を見る。羊水の中で微睡む様に、高町なのはは夢を見た。

 

 

 

 一人の女が居た。高貴なる家柄に生まれた彼女は、まるで騎士を体現した様に誇り高い精神性を持つ女であった。

 幼き頃より剣を片手に鍛錬に励み、高潔な義務を負う事を良しとする。民を守る軍人たれ。騎士の家系に相応しくあれ。そうある様に自助努力する事こそが、女の誇りであったのだ。

 

 戦友が戦場で道を見失わないよう、道を照らす光になりたい。女が抱いた願いはそれだ。

 そんな彼女は、一人の先達に憧れた。女だてらに戦場で、英雄と呼ばれた女に焦がれた。或いはそれが、彼女が道を踏み外してしまった理由であろう。

 

 エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ。師である先達と共に、女は獣に出会ってしまった。

 一目見て理解する。その黄金の獣に、女は唯只管に恐怖した。だが彼女の師である英雄は、その黄金の輝きに魅せられてしまっていたのだ。

 

 師は忠義と、忠誠と語るその想い。それを恋と理解しながら、アレは駄目だと恐怖する。だが口で何と言おうとも、己の言葉で師は揺れてはくれない。

 故に同じ魔道に堕ちた。黄金の下に頭を垂れて、何時か師の目を覚まさせてやるのだと決意した。そんな彼女の選択は、きっと過ちだったのだろう。

 

 軍人でありながら、民間人を手に掛ける。それに疑問すら抱かぬ程に堕ちてしまった師の姿に、女は心の底から絶望した。

 己の意志を封じ込めて父母を手に掛けながらに、命じた黄金の獣を何時か打倒するのだと心に決めた。今は勝てぬと、何時か勝つのだと、女は一人決意を定めた。

 

 どれ程に手を汚しても、どれ程に汚泥に塗れても、その尊い在り様は変わらない。

 心を殺しながらに、それでも決して誇りだけは捨てずに居た。我は騎士の家系であると、そう在らんとしていたのだ。

 

 そんな彼女は、雌伏の時の中で一人の男と出会う。師が招聘し、槍を打たせた刀鍛冶。その末裔たる男に出会った。

 生きたままに腐っていくと、そんな呪いを受けた男。彼が守りたいと願っていた、小さく可愛らしい少女。そんな二人と共に過ごして、何時しか情を結んでいた。

 

 気が付けば愛していた男。愛していると語れなかった、何時か腐って死ぬ男。彼を救おうと、理由が増えた。

 師を救おう。愛する男を救い出そう。その為に主たる黄金を、この騎士の剣にて討ち果たそう。心に誓って動いた女は、しかしその情すらも道具とされた。

 

 裏切りの意志を示した彼女に、差し向けられた追手は愛した男。彼を殺す事が出来ない女騎士は、男の手に掛かってその命を終えた。

 

 

 

 一人の少女が居た。生きたままに腐ると、そんな家に生まれながらに呪いを知らぬ少女が居た。

 彼女が過ごした幼き記憶。それは平凡で、きっと何処にでもある幸福。優しい兄とその恋人に手を引かれて、笑って過ごした優しい日々。

 

 だが、その日々は何時の間にか消え去った。何の前触れもなく、唐突に全てが終わってしまった。

 残されたのは女の躯と、嘗て兄であったモノ。あの優しい日々はもう戻らない。そう理解したその時に、少女は唯々悲嘆にくれた。

 

 唯の少女であったとすれば、話はそれで終わっただろう。戻らぬ過去に涙して、癒えない傷を抱えていく。それで終わっていた筈だ。

 だが、少女は不幸な事に櫻井の家系であった。恵まれた才があったのだ。故に取り戻せるかも知れないと、そんな希望が手の届く場所に存在していた。

 

 黄金の奇跡。それが齎すは死者蘇生。鍍金の神父にそう囁かれ、少女は一つを心に決める。

 失ってしまったあの日々に、何時か帰るのだと夢に見た。その願いを叶える為に、奪われた少女は奪う側へと堕ちたのだ。

 

 間違っていると理解している。もう戻らないなんて分かっていた。それでも、この道しか歩けない。

 迷って、立ち止まって、何度も何度も後悔しながら、少女はそれでも剣を握った。何時しか女と呼ばれる年頃に至って、怒りの日の演者となった。

 

 大切な者は大切だからこそ、決して取り戻してはいけない。墓から返る者は全て、唯の死人でしかないのだと。

 そう語る男と反目しながらに、何時しか彼に惹かれていた。彼の日、騒乱の中心に在った彼と共に、女は黄金へと立ち向かう。

 

 何時だって、己の選択を後悔し続けている。それでも、今を必死に生きるしか出来ないから、そんな不器用なままでも前へと進む。そんな在り方を最期まで、貫き通した女であった。

 

 

 

 道を照らす雷の乙女。何度も消え掛けながら、それでも燃え続けた焔の少女。

 邪悪な神との戦いの中で壊れた魂を、互いに支え合う形で保ち残した。焔の女を核に同化して、生まれ落ちるは天魔・母禮。

 

 それが女達の全て。雷火の騎士が真実の姿であった。

 

 

 

 

 

2.

 時は僅か遡る。聖王の揺り籠が玉座の間にて、向かい合う赤と白。

 先ず真っ先に動いたのは、幼子らを背にする魔鏡。白きドレスの少女は色違いの双眸で、敵を見据えながらに式を紡ぎ上げた。

 

 

「因子変更――モード“エノク”より、シェムハザ実行」

 

 

 背に負う翼が輝きを強くする。純白に輝く光子の翼は、移動手段ではなく武器だ。触れればあらゆるモノを切り裂き、与えられた破壊をそのままに反射する。

 あらゆるモノを映し出しては反射する。それが鏡と言う物ならば、これは魔鏡の真髄だろう。高速で飛び回りながらに近付いてくる魔鏡アストは、並大抵の手段では撃墜は愚か迎撃する事すら難しい。

 

 遠距離攻撃など意に介さない。生半可な力では撃ち返される。シェムハザの護りを抜ける程に、過剰な火力ならば通用するか。

 いいや、それも否だ。アストを守るはシェムハザの反射だけではない。彼女の器は聖王なれば、彼の王が纏っていた聖王の鎧すらも起動している。

 あらゆる攻撃を軽減する最高位の防御魔法に守られているのだ。シェムハザの護りと鎧が両立している以上、例え神格級の攻撃であっても、飛び道具では真面な被害も与えられない。

 

 ならばどうするか。此処で手の打ち様が無くなると言うのが、並の魔導師。だが沼地の魔女は並ではない。

 彼女は八柱の大天魔。手札の量と用意周到な悪辣さでは、同胞達にも並ぶ者はいない程。故にその聡明な頭脳を以って、即座に対処を定めて動く。

 

 シェムハザと聖王の鎧。纏めて抜こうと言うから、多大な労力を必要とするのだ。ならば対処は簡単。光子の翼が反射出来ない接近攻撃。或いは影を利用した、間接的攻撃で対処は可能。聖王の鎧だけならば、貫き通すは然程難しい事ではない。

 

 波立てる影の海。荒れ狂う波濤は影の主の示すが儘に、空を舞う幼子へと牙を伸ばす。

 巨大な津波はまるで、無数の手を思わせる。堕ちろ堕ちろ堕ちろと語る。影に飲まれた命の手。群がるそれに進路を防がれ、至る結果は詰将棋。

 

 一手。一手と手筋が塞がれて行く。進む道が消えていき、少しずつ袋小路の内側へと。

 このまま進めば詰まされる。そう理解する事は簡単で、そう理解出来た魔鏡が何もしない筈もない。

 

 

「ATEH MALKUTH VE-GEBURAH VE-GEDULAH LE-OLAM AMEN YOD HE VAU HE ADONAI EHEIEH AGLA」

 

 

 追い掛ける影から逃れながらに、全てを映し出す鏡は次なる式を紡ぐ。

 光子の翼で飛び回る幼子は此処に紡ぐ。彼女が示すは、己が父との同調により放たれる天使の力だ。

 

 

我が前にラファエル(BEFORE ME RAPHAEL)――我が後ろにガブリエル(BEHIND ME GABRIEL)――我が右手にミカエル(AT MY RIGHT HAND MICHAEL)――我が左手にウリエル(AT MY LEFT HAND URIEL)――我が前に五芒星は燃え上がり(BEFORE ME FLAMES THE PENTAGRAM)我が後ろに六芒星が輝きたり(BEHIND ME SHINES THE SIX-RAYED STAR)――」

 

 

 高速で空を旋回しながらに、圧倒的な速度で式を組み上げる。

 選択するのは唯一つ。影には限りがあるのだ。無限ではない。ならばそう。己の身を守る力を呼び込む事ではなく、襲い来る敵の魔の手を滅ぼす事で結果として身を守る透す事。

 

 

されば神意をもって此処に(ATEH MALKUTH VE-GEBURAH)主の聖印を顕現せしめん( VE-GEDULAH LE-OLAM)――アクセス、マスター!」

 

 

 短く細く儚い腕。硬さなど欠片も見えない小さな掌から、柔らかさや温かみと言う物が失われる。

 変じた姿はまるで鉤爪。鋼鉄の如き色彩に変わった両腕。その五指より姿を見せるのは、鋭い刃物を思わせる悪魔の爪だ。

 

 

「封印因子選択――モード“エノク”よりバラキエル実行――」

 

 

 そして、加速する。バラキエルの恐ろしさは、その殲滅能力にこそある。

 それは瞬きの間に、五十の命を葬り去る程。爪の殺傷能力と、それを可能とする速力強化こそがこの力の真髄である。

 

 斬。斬。斬。幼子に迫る影は一秒と満たぬ。漆黒の爪と光子の翼。二種の破壊によって蹴散らされる。

 影は次から次へと補充されるが、それでも一秒、コンマ以下の間は開く。その僅かな数瞬で詰められる程に、魔鏡アストの飛翔速度は異常であった。

 

 

「どこにも行かないで。置いていかないで。私はとても遅いから、駆け抜けるあなたに追いつけない」

 

 

 追い付けない。追い付けない。追い付かせない。そう語るかの如き速度で迫る反天使。

 追い付く事こそ願った魔女は、沼地の底で咒言を紡ぐ。全てを呪うかの様に、それでも願うかの様に、口にするのは切なる祈りだ。

 

 

「ああ、だから待って、一人にしないで。あなたと並べる未来の形を、那由多の果てまで祈っているから」

 

 

 魔女の祈り。それは歪みと言う形に歪んだ力。己の太極たる影の海と同時に、その祈りの一つを紡ぐ。

 逃げ回るならば全てを潰す。あらゆる可能性を此処に際限して、膨大な数にて敵手が全てを蹂躙しよう。

 

 

「それが限りなく無であろうとも、可能性だけは捨てたくないから」

 

 

 可能性の拡大。言葉と共に霧が生じる。魔女の姿が二重三重に重なって、霧の如くに擦れていく。他者がその姿を捉える事など出来はしない。

 そして術者の姿が増えると同時に、影の海も膨れ上がる。呼び込んだ可能性の分だけ、術者の数が増えた分だけ、単純に影の総量が数倍化を遂げていたのだ。

 

 その全てが悪意を以って、引き摺り込まんと襲い来る。

 光り輝きながらに空を飛ぶ反天使を、地の底へと沈めんと荒れ狂うのだ。

 

 

「アクセス、マスター」

 

 

 無限に増え続ける奴奈比売が、無限に増大を続ける影を操る。刻一刻と増え続ける可能性は、際限なく場を満たして押し潰すだろう。

 一瞬、背後を振り向いた後、アストは選択する。敵が可能性を操ると言うならば、己が示すべき答えは一つ。中傷者と言う己の異名の、代名詞ともなる異能であった。

 

 

「モード“ソロモン”より、アスタロス実行!」

 

 

 未来を視て、過去を改竄する。それが中傷者、アスタロスの真なる力。

 これを応用したモノこそ、第四の蛇が切り札の一つとした素粒子間時間跳躍・因果律崩壊。そしてアストが此処に示したのは、それとは違う応用だった。

 

 未来を視て、過去を確定する。過去と現代を固定して、未来と言う時間も固定する。

 全てを一本道へと改竄したのだ。短期的な並行世界全てを潰して、あらゆる可能性を廃絶した。

 

 故に結果は当然、無限の像は消え失せる。呼び込む先が無くなるのだから、引き込める可能性が消え失せるのもまた道理。

 一瞬にして消え去った影の海は、それそのままに隙となる。空白地帯が生まれるのだ。即座に対処に移ろうが、魔鏡アストの接近は止められない。

 

 

Slave Michael quanto splendidior(幸いなれ、正義の天使) quam ignes sempiterni est tua majestas(永遠の火より輝かしきは汝の威厳).」

 

 

 アストの時間干渉は、極めて限定的な力である。もう一度祈りを此処に紡いだならば、可能性を拡大化は可能であろう。

 だから魔鏡は、そんな時間など与えない。天魔が纏う時の鎧諸共に、全てを消し去れる力を選択する。選んだ式は熾天使が一つ。天軍の頂点に立つ指揮官だ。

 

 

「紅き衣を纏う者よ、ADONAI――来たれ天軍の指揮官。アクセス、マスター!」

 

 

 最大加速で近付いて、手が届く程の至近距離。此処に至ったアストが紡ぐ。其は天軍を統べる者。

 伸ばした腕の掌へと力が集って顕現する。溢れ出すのは純粋無垢なる破壊の力。膨大に過ぎるエネルギーの奔流は、あらゆる全てを崩壊へ導く。

 

 

「モード“パラダイスロスト”より、ミカエル実行」

 

 

 其れは例え大天魔でも変わらず。真面に浴びれば消し飛ぶだろう力を前に、ならば真面に受けると言う手筋はない。

 圧倒的な破壊の暴力に対し、沼地の魔女が汲み取る力は唯一つ。力の総量で及ばぬならば、力の扱う技巧でこれを打ち砕くべきである。

 

 

「私は地べたを這いずりまわる。空を見て、空だけを見て、あの高みに届きたいと、恋焦がれて病んでいく」

 

 

 魔女が選ぶは刈り取る剣。あらゆる全てを滅ぼす力に、突き付けるのは全てを切り裂く一振りの刃。

 襲い来る全てを切り裂こうと言う訳ではない。敵が強大な力の塊をそのままに振り下ろすならば、その塊を切り分けて道を拓くのだ。

 

 

「他の物は何もいらない。あれが欲しい。あれが欲しい。ああ、だけど悲しい。届かない」

 

 

 振り抜かれたのは、経津主神が剣。抜けば必ず何かを切り裂く、万象切断の歪みである。

 

 

「だから祈ろう。私という存在の全てを賭けて、あの星に届く手が欲しい」

 

 

 斬と、切り払う音が二度三度。高密度エネルギーと言う形のない物を切り裂いて、己が通れるだけの穴を生み出す。

 剣を振るった直後に向き合う。天軍の指揮者の直ぐ後ろ、接近していた反天使は驚愕し、沼地の大天魔は歪んだ笑みを浮かべていた。

 

 攻め手は譲った。次はこちらの番だ。代わる代わるに撃ち合う様に、向け合う力は共に絶大。

 昂る影を震わせて、溢れ出すは大海嘯。並行世界など呼び込まずとも全力を発揮すれば、この閉鎖空間全てを包むなど容易いのだ。

 

 

「無間ッ! 黒縄ォォォォォォッ!!」

 

 

 床から、壁から、天上から。一体何時から仕込んでいたのか、伸びていた影が全方位より襲い来る。

 逃げ場などはない。躱す事など出来やしない。それはアストだけではなく、遠く置き去りにされている少女らも同じく。

 

 捕らえて奪って貪り尽くす、そう言わんばかりに昂る影の津波。

 それを前にしてヴィヴィオ=アスタロスは、即座に対処手段を選定した。

 

 

「ATEH MALKUTH VE-GEBURAH VE-GEDULAH LE-OLAM AMEN」

 

 

 迫る黒。押し潰す壁。球体の中に閉じ込められて、それでもアストは動じない。

 

 

「汝等見張る者ども、第五天(マティ)に捕らえられし虜囚達よ、ここに魂を解放せん」

 

 

 動じる必要がない。動じている意味がない。術式展開が間に合えば突破できるし、間に合わなければ潰されるだけ。

 敵に対して覚える恐怖と言う感情を、アストは未だ知らぬのだ。故に感情に振り回される事もないかと言えば、決してそう言う訳ではない。

 

 焦りがあった。恐怖を知らない筈のアストの心に、確かな思考の焦りがあった。

 其処に違和を感じながらも、これが最善と己に言い聞かせる。そうして式を展開すると、ヴィヴィオ=アスタロスはその手を影へと向けた。

 

 

「汝は蛇にしてオリオンに吊られた男、ベネ・ハ・エロヒムにして砂漠の王なり。贖罪の日は今この時なればこそ、生贄の山羊を持ちて疾く去ぬるが宿命と知れ」

 

 

 そして術式は完成する。アストは元より、複数の術式の同時・高速展開に特化した人形。

 故に詠唱が間に合わないと言う道理はなく、間に合ったならば襲い来る影の津波などは取るに足りない物である。

 

 

「アクセス、マスター! モード“エノク”より、アザゼル実行――グリゴリの指導者たる汝に命ずる、開門せよ!」

 

 

 球状に閉じていた影の一部が消滅し、其処から大きく開けていく。

 開門の強制によって影の海は切り拓かれて、迫る脅威は此処に一度取り払われた。

 

 安堵する。心の底から安堵する。何に安堵しているかも分からずに、戸惑いながらも安堵する。

 そんなアストは空の上から、赤い魔女を睨み付ける。四つの瞳を持つ沼地の魔女は、見上げながらに小さく笑った。

 

 

「お互い、手札の多さが自慢、と言う訳ですか。……分かってはいましたが、面倒ですね」

 

 

 仕切り直しだ。睨み合って隙を探しながらに、魔鏡アストは口にする。

 零した言葉は彼女の本心。されど彼女らしくはない、挑発を含んだ言葉であった。

 

 

「ですが、数の豊富さと言う点では、私の方が上でしょう。貴女のそれは結局は、同じ物を色を変えて使っているだけ。あらゆる力を写し取る鏡を前に、数で挑めば必ず敗れる」

 

 

 先の交差で理解した。互いの力は大凡互角か、アストが半歩優位である。

 地力の差が僅かとは言え確かにあって、そして互いの能力も似通っているならば、己の勝利は揺るがない。

 

 そんな事実。態々口に出す必要などないと言うのに、こうして抱えた靄を晴らす様に口にしている。

 それこそが人形らしくないのだと気付かぬままに、ヴィヴィオ=アスタロスは胸を張って誇る様に断言した。

 

 

「断言します。そしてこれより、それを証明しましょう。夜都賀波岐。……我らが父の叡智は既に、貴女方を超えたのだと」

 

 

 此処まで迫った。此処まで至った。そして此れより、その先へと進むのだ。

 我ら反天使の勝利を以って、ジェイル・スカリエッティの叡智を証明する。神を超えたのだと、悪徳に穢れた天使を以って示すのだ。

 

 

「そうね。手札の多さって言う点じゃ、私は貴方に劣るでしょう。アンタ達の父親の頭の出来にも正直参るわ。伝え聞いた言葉だけで第三天の真似事が出来るって、一体どんだけイカレてんのよ」

 

 

 そう語るアストを前に、奴奈比売は彼女の主張を全て認めた。否定する要素が無かったのだ。

 手札の数や質で、沼地の魔女は魔鏡に劣る。ジェイル・スカリエッティと言う科学者の頭脳は、夜都賀波岐でも理解が出来ぬと匙を投げる程の物。

 

 素直に認めよう。彼らは別格だ。この今に置いて、神々の予想を超えた存在だった。だが、認めるのはそれだけだ。

 

 

「それは認めてあげる。大した物ね。だけどそれだけ、私は貴女と同じ様に、数を頼りにしている訳ではないわ」

 

 

 奴奈比売の祈りは、所詮受動だ。意図して望んだ物ではなく、偶々垂れ流していたら集まった余技に過ぎない。

 

 

「私にとって、これは余技。便利だから使っているけど、貴女みたいに全く同じ形に映している訳じゃない。地力の分だけ本物より上かもしれないけど、一つ一つの祈り自体は質が相当悪いんだって認めるわよ」

 

 

 意図して写し取っては集める、能動的なコピー能力に対しては質も量も確かに劣るだろう。

 数億年分の蓄積があって漸く、五分になっている時点でそれは明らか。だが其処に、悔しさなどは感じない。

 

 

「けれどそれで良い。それが良い。私は私の願いこそを至高と知るから、其処には明確な質の差を付けて当たり前だし、ついてなくてはいけないのよ」

 

 

 奴奈比売が真に頼りとするのは、この場に満ちた影の海。其処に混ざった無数の絵具など、子供の玩具と変わらない。

 質が低い。そうでなくてはいけない。精度が悪い。そうでなくてはいけないのだ。そういう差異があってこそ、己の至高が光り輝く。

 

 そう思うならばこそ、天魔・奴奈比売は劣る事実を良しとする。そうでなければいけないと、そう断じるのは魔女の執着が故だった。

 

 

「……主観の問題ですね。感情に満ちた言葉だ。愚かしい」

 

 

 そんな奴奈比売の執着を、下らぬ物と見下し蔑む。唾棄すべき感情であると、魔鏡アストは断言した。

 

 

「手札の数を増やしたならば、次はその質を高めるべきだ。一点だけに拘って、万能性の放棄は愚の骨頂。実に愚かしい選択です」

 

 

 常に相手の弱点を突けると言う強みも、格の差で覆されたら意味がない。

 折角手札が揃えられたのだから、その一つ一つの質を高めた方が効率的だろう。

 

 そんな誰でも分かる様な事を、己の拘り故に放棄する。

 そんな愚行が信じられない。理解が出来ないと蔑みながら、ヴィヴィオ=アスタロスは抑揚がない言葉で語った。

 

 

「そうかもね。けどね、全部が等価なんてあり得ない。それが人の情と言う物よ」

 

「だから、それが無駄だと言っている。貴女の思考は、愚か過ぎて理解が出来ない」

 

 

 感情的になるのが愚かしいと、必死に否定する姿は正しく感情的。

 そんな己の姿に気付けぬ人形に、魔女はアンナとしての笑みを浮かべる。

 

 好ましい彼女の愚かさ。それこそが、魔鏡アストの弱点だ。

 

 

「そう。……貴女は理解出来ないと言うけど、私にしてみれば、貴女は実に分かり易いわよ?」

 

 

 笑みの質が変わる。歪んで狂って、明るい少女は暗い魔女へ。にこやかな笑みは蔑む嘲笑へ。赤毛の魔女は、その柔らかな心を突いた。

 

 

「随分と饒舌。……そんなに、あの子達を狙われて頭に来た?」

 

「何を」

 

「違うなんて言わせないわ。あんなに何度も後ろを向いて、分かり易いったらありゃしない。そもそも、手札の多さが自慢なら、広域破壊の一つや二つ出さない事がおかしいのよね」

 

 

 先の対立にて、アストは真っ先に攻勢を仕掛けた。手札の多さ故に敵の弱点を突くのが得意と言うならば、後手に回った方が優位となる事が多いと言うのに、隙を作るよりも前に飛び出したのだ。

 影の海を前にした対処もまた、明確に過ぎる程に示している。例えば太陽の統率者。その威を真っ先に放っていれば、奴奈比売は一手で追い詰められていた筈だ。……たった二人の少女。その命と引き換えに。

 

 

「巻き込むのが怖かったんでしょう? 失うのが恐ろしいんでしょう? 良く分からないけど大切だから、壊れるかも知れないのが怖くて怖くて堪らないのよ」

 

「…………」

 

 

 それが出来なかったのは、感情を知らぬ筈の魔鏡が恐れていたから。怖かったのだ、失う事が。

 理解が出来ない恐怖に答えが出せず、問題を棚に上げていただけ。解決なんてしていないから、そんな弱さを隠し切れない。

 

 

「貴女は見た目通りの小さな子供。触れる物全てが怖くて怖くて、おっかなびっくり歩いている唯の小娘よ」

 

 

 ヴィヴィオ=アスタロスは子供なのだ。何も知らない小さな子供に、知識と力だけを植え付けたのが彼女なのだ。

 仮に、父に殺せと明言されていたなら別だっただろう。命令があったから、自分を守ろうとしていたクロノを切り裂いても何も思わなかった。

 

 だがこの今に、父は命令してくれない。だからどうして良いか分からない。してもしなくても良い。したくない事だけど、した方が効率的ではある。そんな二律背反を前に分からなくなる。

 経験がないのだ。答えを出せない。だからこそ戸惑う。だからこそ分からなくなる。無垢なる鏡は何も知らないから、自分では決断を下す事すら出来ない。そんな彼女はどれ程に強くとも、確かに唯の小娘でしかなかったのだ。

 

 

「……なら、そんな唯の小娘に、こんな事が出来ると言うのかっ! ――アクセス、マスターッ!!」

 

 

 そんな心の弱さを突かれて、反発する様にアストは叫ぶ。

 己は鏡で良いのだと、余計な物は不安になるから要らないのだと、叫びと共に式を紡ぐ。

 

 

Slave Raphael(幸いなれ、癒しの天使), spiritus est aura montibus(その御霊は山より立ち昇る微風にして、) orta vestis aurata sicut solis lumina(黄金色の衣は輝ける太陽の如し)

 

 

 全てを否定する様に、全てを拒絶する様に、そんな姿すら子供の駄々。

 親に甘える幼子が見せる反発心の様な見っとも無さに、天魔・奴奈比売は静かに思考する。

 

 

(このまま続けても千日手。そうなる前に、こっちが詰むわね。だから悪いけど――その弱点を突かせて貰うわ)

 

 

 如何に微笑ましいとは言え、振るわれる力は絶大だ。子供の駄々に、凶悪な力が伴うのだ。真面に受ければ鎧を貫いて、沼地の魔女を滅ぼすだろう。

 真面に戦っては撃破は難しい。勝率は五割を切っていて、仮に勝てたとしてもその頃には他の仲間が落とされている。それだけの勢力に成長しているのだと、確信を持って断言できた。

 

 故にこそ魔女は、その弱さを突く。悪辣外道な策略を以って、無垢なる子供を罠に嵌めるのだ。

 

 

「何処へも行かせない。何処にも逃がさない。何処へ行ったとしても、何処までだって追い求める」

 

「黄衣を纏いし者よ、YOD HE VAU HE――来たれエデンの守護天使!」

 

「あの高みへと至る為なら、時も、距離も、全てを乗り越えてみせる。撃ち放たれた弾丸は、必ず貴方を捕えるのだから――」

 

「モード“パラダイスロスト”より、ラファエル実行!」

 

 

 吹き付ける風の中、放たれたのは二発の魔弾。黒き石の猟犬は決して、熾天使の風を食い破れる様な物ではない。当然の様に嵐を前に反らされて、吹き付ける風は防げない。

 

 

「何処を狙っている! 私は、此処だ!」

 

 

 次元の狭間。時空の果て。此処ではない何処かへと飛ばす力に耐える天魔・奴奈比売。必死に世界に噛り付いて、行動不能となった天魔に迫るは白き反天使。

 アストは何処を狙っていたのかと罵倒しながらに、小さなその手を敵に伸ばして――

 

 

「えぇ、知っているわ。だから、貴女は最初から狙っていないの」

 

「え?」

 

 

 傷付きながらに嗤う魔女の言葉に、伸ばした手を硬直させた。

 

 

「ほら、()()()()()()が死んじゃうわよ」

 

「――っ!?」

 

 

 黒き猟犬の狙いは最初から、アストではなく二人の少女。

 熾天使の風も一撃ならば防ぎ切れると、だから影で身を守って隙を強引に生み出した。 

 

 迫る猟犬は止められない。後数瞬としない一瞬の内に、キャロとルーテシアの命を奪い去るだろう。

 

 

(今、助けに――違う。何を考えている!? 放置して良い。先ずはこの手を動かして、天魔の首を刎ねてから。だけど、それじゃ間に合わ――)

 

 

 そう理解して、アストは混乱した。助けるべきか、放置するべきか。

 天魔を落とせる。この女はもう限界で、自分の手はその首へと伸びている。だから簡単に首を刎ねる事は出来るが、それでは少女達の救助が間に合わない。

 

 己の役目を考えるならば、迷う余地すらありはしない。だと言うのに、悩んでしまうのはヴィヴィオ・バニングスが残っているから。

 その混乱故の硬直は一瞬に過ぎずとも、それでも確かに隙となる。僅か数瞬の硬直を見逃す程に、大天魔は甘くはないのだ。故にこそ、アストは絶対の勝機を取り零す。

 

 

「動きが止まっている。隙だらけよ?」

 

「くぅっ!?」

 

 

 影の津波をその身に受けて、聖王の鎧を貫かれる。幼子故の動揺を突かれて、望んだ二つを同時に取り零す。

 このままでは敗北すると、キャロもルーテシアも殺されると、何もかもを失うのだとヴィヴィオは漸くに理解した。

 

 そして、その理解は遅過ぎた。

 

 

「それじゃぁ、終わりね。――頂きまぁす」

 

 

 影が迫る。口を開けて迫るのは、巨大な竜を思わせる影の牙。

 黒き猟犬が迫る。己の危機すら理解出来ていない少女らの下に、漆黒の猟犬が迫っていく。

 

 これで終わりだ。全て終わりだ。何も出来ずに反天使は、此処に沼の底へと堕とされて――

 

 

「アクセェェェスッ! マスタァァァァァァァァッ!!」

 

 

 そんなのは御免だと、そんなのは嫌だと、幼い少女は叫んでいた。

 負けるのは嫌だ。失うのは嫌だ。怖いのは嫌だ。不安なのは嫌だ。迫る嫌な物、それを全て排除したいのだ。

 

 喉が焼けるかと思う程に強く、大きな大きな声を出す。腹の底から紡ぐ声は、何より人間らしい心に満ちた声。

 選ぶ式は唯一つ。対象を識別する広範囲攻撃。式を詠唱している時間などはないから、門を開くと無理矢理にその力を引き摺り出した。

 

 

「モード“パラダイスロスト”より、ネツィヴ・メラー発動っ!!」

 

 

 そして、浄化の光が全てを焼いた。我が敵を祓い清めんと、白き輝きが玉座の間を満たしたのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 穢れある者。罪深き者。大天魔とその力だけを焼く様に、振るった力は確かに効果を発揮した。

 その結果を見下ろすアストはゆっくりと地面に落ちていく。飛翔を止めたのではなく、落ちていた。

 

 其処に彼女の意志は介在していない。介在出来る程の余裕が、既に彼女の器にはなかった。

 全身が痛む。七孔から血が流れ出している。それは己が限界を超えた力を、魔鏡が括りを超えた力を無理に使った代償だった。

 

 式の詠唱とは、遥か高次の存在を己が身に降ろす為の準備である。

 熾天使以上の詠唱は省略できない。それは省略してしまえば、肉体に降ろす準備が足りなくなるからだ。

 

 現れる力は父が降ろした明けの明星。熾天使の力すら省略できる程に肉体を弄ったスカリエッティが、それでも詠唱を破棄出来ぬ力。

 それを無理矢理に引き出した。器側の準備が出来て居ないのに、魔鏡では制御出来ない程の廃神を降ろしたのだ。瀕死となるのは、その代償としては寧ろ軽い程だろう。

 

 

「けど、これで――」

 

 

 力はほぼ底を尽きた。後に使えるのは、最早小さな歪みが一つか二つくらい。

 大地にペタンと座り込んだ金髪の幼子は、血の味がする呼気を整えながら、守った者らを見る。

 

 驚愕を浮かべて、ヴィヴィオを見ている二人の少女。桃色と紫色と、そんな二人を守る様に侍る白と黒。

 清められて尚健在なその姿に、分からぬながらも良かったと小さく胸中で言葉を漏らして――その背後に、流れる血の様な赤を見た。

 

 

「――っ!?」

 

 

 魔女が嗤う。魔女が嗤う。魔女が嗤う。想定通りと嗤っている。

 空間制御。万象を掌握する力で、揺り籠から逃げていた。アストが全力を一点に注いだからこそ、妨害の手は緩んでいたのだ。

 

 だからこそ、もう止められない。嗤う魔女は手を伸ばし、気付けぬ少女らは命を落とす。

 それが絶対に揺るがぬ最期。全力を出し切ったアストではもう止められない結果を前にして、彼女は――

 

 

「ヴィヴィ、オ?」

 

 

 呟いたのは、紫色の髪をした少女だった。

 

 信じられないと、驚愕を浮かべたままに震えるキャロと、呆然と呟いたルーテシア。

 そんな彼女達に背を向ける白き天使の翼は、幼子自身の血に濡れて、鮮やかな赤に染まっていた。

 

 

「……全く、だから、感情なんて、余計なんだ」

 

 

 流れ出る血液に、血の気が減っていくのを理解する。冷静になって振り返り、実に愚かだと自嘲する。

 感情がなければ、己が勝っていた。そう断言出来る場面は何度もあって、勝機を逃し続けたのは認め難い情が故。

 

 そんな感情故に身を挺して、結果何も出来ずに敗れるのだから自嘲する事すら出来ない。

 さっさと切り捨ててしまえば良かったのに、それが出来なかった事。それこそアストの弱点で、そんな弱さがどうしようもなく情けなかった。

 

 

「私も覚えがあるけどさ。頭で冷静になってる心算でも、いざとなると身体が勝手に動いちゃうのよね。……それが多分、愛情とか、そういうの。大切だから、馬鹿になっちゃうのよね」

 

 

 天使を影で貫いた魔女は、実感が籠った声でそんな言葉を紡ぐ。

 友達だから庇ってしまって、それが敗因となった事。これはあの日に魔女が敗れた、そんな光景の焼き直し。

 

 そう思う魔女は懐かしむ様に口にして、翼を失くした反天使は大地に堕ちる。理解の出来ない、涙を流しながら。

 

 

「こんなの、知りたくなんてなかった。こんな物が無ければ、私が敗れる事なんてなかったのに」

 

 

 果たせなかった。こんな物があったから、自分は何も出来ずに終わる。

 大地に崩れたアストは涙に暮れながら、小さく詫びる様な声を漏らす。期待に答えられなかったと、御免なさいと泣いていた。

 

 

「ゴメンなさい。ドクター。…………おかあさん」

 

 

 何故に此処で、母の名を呼んだのか。それすら分からず、ヴィヴィオは此処に意識を閉ざす。

 最後に彼女が見た光景は、自分を助けようと動いた二人の友達と――巨大な顎門で迫る大きな影の姿であった。

 

 

 

 かくして、揺り籠は墜ちた。奈落は崩れ落ち、反天使達は追い詰められる側へと回るのだ。

 

 

 

 

 

3.

 揺り籠が墜ちる。空にある揺り籠が煙を吹きながら、ゆっくりと大地に墜ちていく。

 その光景を焔の海にて見上げながら、思わずアリサ・バニングスは叫び声を上げていた。

 

 

「――っ。ヴィヴィオ!?」

 

 

 娘の危機を理解して、意識がそちらに向いてしまう。

 その明らかな隙を相対する女は見逃さず、振り返ったアリサの眼前には二つの剣の姿があった。

 

 

「格上相手に余所見とは、随分と余裕だな」

 

 

 燃え盛る紅蓮の剣と、荒れ狂う雷光の剣。金髪の鎧武者は二振りの剣を振り上げて、アリサに向かって振り下ろす。

 至高の武芸と言うには足りぬが、それでも数億年の研鑽。咄嗟の反射で対応できる様な、そんな生温い剣ではない。

 

 

「その余裕――根こそぎ焼き尽してやろう!」

 

「くっ! このぉっ!!」

 

 

 振り撒く余波で全てを炎に包みながら、己に迫るその殺意。

 滅侭滅相。全てを焼き尽すのだと言う意志を前にして、アリサは後退しながら無数の銃器を形成する。

 

 鉄の塊を障害物に、後退しながら思考を切り替える。

 片手に抱えた足手纏い(メガーヌ)と、彼我の相性差を思えばこそ、思考に耽る余裕はない。

 

 娘や部下たちの事は確かに心配だが、そんな思考を抱えていては倒されるのは己となろう。

 

 

「全弾っ! 発射ぁっ!!」

 

 

 故に思考を切り替えると、形成した銃火器を操り砲火を放つ。

 大質量による連続射撃。鶴瓶撃ちにされながらも、天魔・母禮の進撃は揺るがない。

 

 所詮これは小細工だ。小手先の業でしかない余技で、大天魔を止められる筈がないのである。

 

 

「こんな、小手先で――」

 

 

 そんな事、アリサ・バニングスとて分かっている。

 故に砲火は煙を巻き上げる為だけに、噴煙の中に隠れた女はその背に巨大な陣を展開していた。

 

 

「極大火砲っ! ぶち抜けぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 膨れ上がる巨大な火の玉。戦車の主砲が火を噴いて、天魔・母禮を迎撃する。

 

 所詮は余技に過ぎない創造位階。如何に炎すら焼く女の力であっても、格の差は覆せない。

 それが道理で、ならばこれは如何なる理屈か。迎撃された天魔・母禮の炎の身体は、激痛の剣に焼かれていた。

 

 

「っ、炎を焼くか。……流石に出来る。あの人を継いだだけはあるか」

 

 

 軽い火傷程度であっても、それでも確かに焼かれていた。その事実、天魔・母禮はそう結論付ける。

 月村すずかとカズィクル・ベイの関係と同じだ。アリサ・バニングスとザミエル・ツェンタウアもまた、同じ過程を辿っていた。

 

 中に宿った魂が衰えて、その分だけ宿した次代が継いでいた。

 だからこそ、赤騎士の力を引き継いだアリサは、炎の化身である母禮を焼く事が出来たのだ。

 

 

「だが、こんなものか。その程度か。あの炎を受け継いで、その程度しか出来ないか」

 

 

 焼け爛れた手を見下ろして、しかしこんな物かと呟く。

 天魔・母禮は知っている。真に引き継いでいたならば、こんな手傷では済まなかったと。

 

 そうはならなかったのは、劣化しているからだ。

 まだ全てを受け継いではいない。引き継ぐ過程で、幾つか取り零しているのだろう。

 

 だからこそ、アリサ・バニングスは嘗ての赤騎士に届いていない。

 受け継ぎ伝えていかねばならない次代が、劣化させる事しか出来てはいないのだ。

 

 

「ならば、そんな次代に価値などない。劣化させるしか出来ないならば、その炎を抱いて死ぬが良い!」

 

 

 業火の中で、天魔・母禮はそう断ずる。数年と言う年月を費やして、この程度しか継げないならば価値がない。

 託せるものか、任せられるものか。後を託すに不足が過ぎれば、背負った荷を任すにも不安が残る。そして、何よりも――それでは己が納得しない。

 

 愛する者を奪った結果がこの程度。それで納得できる程、天魔・母禮は軽くはないのだ。

 故にこそ、大天魔は此処に断ずる。この程度ならば死ぬが良い。それがこの女の決定だった。

 

 

 

 弾ける薬莢。溢れ出す炎。紅蓮と紅蓮のぶつかり合いを、抱えられたままにメガーヌは見る。

 予想以上だ。素直にそう感じるのはアリサの奮闘。相性の最悪さ故にもっと追い詰められると思っていて、だが想像以上に奮戦している。

 

 自分と言う足手纏いを抱えたままで、これなのだ。ならばそう、勝利の可能性は確かにある。か細いが決して零ではない。

 そう判断したメガーヌは口を開こうとして、黙り込んだ。睨まれたのだ。彼女を抱える女が怒りの表情で、メガーヌ・グランガイツを睨んでいた。

 

 無言のままに示される怒り。余計な事は言うなと言う視線で女を黙らせて、アリサ・バニングスは前を見る。

 迫る炎は荒々しく、全てを焼き尽さんと燃えている。両手に剣を構えた天魔の猛攻を前にして、アリサは防戦一方だ。

 

 時折隙を突いて、攻める火砲は確かに敵に傷を与える。

 ままならない現状に対する怒りはその炎に強く表れて、燃える業火は一分一秒と巨大になっていく。

 

 或いは、このままでも勝てるかもしれない。そんな希望すら抱ける程に、強く、強く。だがそれでもアリサの表情は優れない。

 彼女は怒っている。腹を立てているのだ。それは足手纏いの女にではなく、安否不明の娘たちにではなく、未だ全てを受け継ぐのに時間を掛けている己ですらなく――天魔・母禮に怒っている。

 

 

「くそっ、どっちがっ!」

 

 

 吐き出す様に、罵声が漏れた。言うべきじゃない。そうと理解して、我慢が出来なかった。

 その天魔・母禮の無様を睨んで、アリサ・バニングスは吐き捨てる。馬鹿にするなと、吐き捨てる様に気炎を上げた。

 

 

「どっちがっ、余所見してんのよっ!!」

 

「何?」

 

 

 気炎と共に放たれる極大の炎。紅蓮の炎を僅かな手傷で迎撃して、大天魔はその目を細める。

 一体何を言い出す心算か、疑惑の籠った視線を向けられた女は断ずる。己の力。自身の未熟を認めながらに叫びを上げた。

 

 

「アンタが言う様に、この程度よ。この程度しか、出来てないわよ!」

 

 

 アリサは知っている。内に宿る赤騎士の、記憶を垣間見たから気付いている。

 自分は未だ届いていない。あの領域には至っておらず、劣化と言われて認めるしかない状態なのだと。

 

 だが、だからこそ気に入らない。その無様が、許せないのだ。

 

 

「それでも、そんな中途半端で焼かれるくらいに、アンタ自身が余所見してる。だから、こんなにも戦いになっている」

 

 

 中途半端な紅蓮の炎で、炎の化身たる天魔・母禮が焼かれる理由がそれだ。

 アリサが至っていないのに、それでも届いてしまった理由がそれだ。詰まりはそう、天魔・母禮が弱っているのだ。

 

 存在すらも保てぬ程に、天魔・母禮は壊れ掛けている。その理由は単純で、明確に断言出来る事。

 この女はまだ引き摺っているのだ。あの日の景色を悔やんでいて、その光景に余所見している。だからこそ、こんな炎に燃やされている。だからこそ、戦いになってしまっている。

 

 

「ふざけんな! 一体何時まで過去を見ている! 一体何処まで、悲劇のヒロイン気取る心算だ! この馬鹿女っ!!」

 

 

 天魔・母禮は全盛期から大きく劣化に劣化を重ねている。それが、兎に角気に入らない。

 このまま黙っていれば、勝機はあるのだと分かってしまった。それが、只管に気に喰わない。

 

 何よりも明確な証左が一つ。天魔・母禮は、紅蓮の炎しか使っていない。

 雷光の剣は確かに雷を放っているが、その身は雷速にも届いていない。それ程に壊れていたのである。

 

 だから、気に入らないのだと罵倒する。このまま時間が経過すれば勝てると分かって、だからこそアリサは怒っていた。

 

 

「私が、過去を見ているだと……未だ、縛られているだと」

 

 

 その罵倒に、炎が揺れる。母禮の猛攻は揺らいで薄れ、燃え盛る業火の世界が震えていた。

 

 

「違う。アレは必要な事だった。もう割り切れている。後悔はない。悔いはないのだと断言出来る。だから――」

 

「それが、囚われてるって言ってんのよ!!」

 

 

 まるで自分に言い聞かせる様に、敵の眼前で立ち止まって揺らぐ姿。

 其処に更なる怒りを燃やして、アリサは次々に火砲を放つ。撃ち込まれた紅蓮は天魔の身体を焼き焦がして、その光景に女は更なる怒りを燃やしていた。

 

 

「私はアンタを良く知らないわ。詳しくなんて、知りはしない。けど、視たのよ。知っているのよ。覚えているの」

 

 

 アリサ・バニングスは覚えている。あの日の炎を覚えている。

 魅了の毒に満ちた世界で、あらゆる不浄を焼き尽した地獄の業火を覚えていた。

 

 忘れるものか、あの美しさを。見惚れたのだ、あの炎に。だからこそ、そんなアリサだからこそ断言出来る。

 

 

「だから分かる。だから言える。そんな風に割り切るなんて口にする時点で、アンタは割り切ってなんかいないのよっ!」

 

 

 今の母禮の炎は見るに堪えない。あの日の火とは比べ物に成らぬ程、眼を逸らしたくなる程無様である。

 それは時の経過が理由じゃない。あの時点で億年を経過して、それでも美しく輝いていた。そんな炎が見るに耐えなくなった理由は、たった一つしか在りはしない。

 

 

「いい加減にしろ! そんな様だから、今にも消えそうな位に揺らいでいるんだって、理解しなさい馬鹿女っ!!」

 

 

 詰まりはそう、この女は殺した少女を未だ引き摺っている。

 あれから数年と経ったのに、まだ八神はやてを忘れられてはいないのだ。

 

 そんな泣き言を戦場に持ち込む。だからこそ、これ程に無様なのだ。怒髪天を突くと言う勢いで、アリサ・バニングスは猛っていた。

 

 

「……お前に、何が分かる」

 

 

 女の怒りを向けられて、言葉に出たのはそんな弱さだった。

 

 

「他に道はなかった。他に手段はなかった。それでも……あれで最善だったんだと、どうして胸を張れるのか」

 

 

 卑屈になって弱音を吐いて、強くなっても変われていない。

 櫻井螢はそんな女だ。何時だって後悔ばかりしていて、前に進むのを怖がっている。

 

 

「後悔してるさ。未練はある。認めようとも、未だ引き摺っている。一体何時まで、一体何時に振り切れるかなんて、自分でも分かるものか」

 

 

 そんな弱さ。億年経っても変わりはしない。だから向いていないと、多くの者らに笑われるのだ。

 彼女だけだ。神々の中にあって英雄失格と語られたのは、櫻井蛍一人だけ。そんな女は一度迷えば、ドツボに嵌る弱さを持つ。

 

 

「それだけ汚い事をした。それだけ最低の事をした。……それでも、必要だったんだ」

 

 

 優しい少女が居た。愛を向けて来る少女が居た。そんな彼女を騙して殺した。そんな最低な行為を良しとした。

 その事実は己の存在が揺らぐ程に、その根幹が揺るぐ程に、大きな傷として刻まれたのだ。それでも、何度振り返っても必要だったとしか口に出来ない。

 

 仮に過去に戻れたとしても、きっと何度でも同じ事をする。それが正しいと、どうしようもなく分かっているから。

 他に道があったならばと血涙を流す程に思っていて、何度も何度も後悔しながら振り返っていて、だからこそそんな弱さを突いた女に怒りを燃やした。

 

 

「それを、お前の様な部外者がっ! お前みたいな関係ない女がっ! 罵倒する筋が何処にある!!」

 

「此処に、あるわよっ!!」

 

 

 まるで火山が噴火する様な、弱音から来る怒りを以って向けられる地獄の業火。

 そんな弱さに満ちた力に負けるものかと、アリサが放った炎の弾丸は業火をあっさり飲み干し貫いた。

 

 天魔・母禮は驚愕する。真っ向から打ち合って、遂に負けた事実に驚愕した。

 それ程までに、自分は揺らいでいるのかと。それ程までに、女は至っているのかと。

 

 驚愕する母禮を前にして、アリサ・バニングスは睨み付ける。

 弱音も言い訳も知った事かと、全てを切って捨てる女は己の理由を口にした。

 

 

「私は憧れたのよ」

 

 

 それは、アリサの都合だ。それは、彼女だけの身勝手な理由だ。それでも、彼女が胸を張って誇る理由であった。

 

 

「他の誰でもない。アンタの――櫻井螢の炎に憧れたの!」

 

 

 アリサ・バニングスは憧れた。あの日に、あの炎に憧れた。

 内にある赤騎士じゃない。その記憶にある戦乙女でもなければ、黄金の獣でもない。櫻井螢にこそ憧れたのだ。

 

 だからこそ、気に入らない。故にこそ、許せない。どうして私の憧れが、こうも無様を晒すのだ。

 

 

「そんな私の憧れが、何時までもそんな無様を晒してる。そんなの――私が馬鹿みたいで癪じゃないっ!!」

 

 

 見る目がなかったと、そんな風に言われたくはない。見る目があったのだと、誇れる様に在って欲しい。

 誰にだって誇れる人で居て欲しいのだ。私の憧れた人はこんなにも凄いのだと、そんな風に胸を張って居たいのだ。

 

 

「見る目がなかった、なんて言わせない。憧れたのが間違いなんだって、認めない。だって言うのに、アンタが悲劇のヒロインやってりゃ、認めるしかないじゃないのふざけんなっ!!」

 

 

 結局、全て自分の為。その為にも気高く在れよと、アリサ・バニングスは怒っている。

 そんな女の怒りを向けられた天魔・母禮は、何処か気が抜けた様に呆然と言葉を零していた。

 

 

「……結局、自分の為か。身勝手だな」

 

「そうよ。身勝手なのよ。自分勝手で、他人に迷惑ばっかり掛けてる女なの。私はね」

 

 

 余りに自分勝手。身勝手にもある言葉。嗚呼、だがこうも響くのは何故だろうか。

 思えば誰かに憧れたと、言われた事も始めてだった。ましてやそれがあの騎士に似た娘となれば、心に響くのも無理はないと言えるだろう。

 

 

「だから、言わせて貰うわ。私の憧れを、これ以上汚すな」

 

 

 真っ直ぐな瞳で、アリサは身勝手な言葉を紡ぐ。

 その焔の様な輝きを前にして、母禮は嘗てを思い出す。

 

 己がどんな形を目指していて、どんな風に活きようとしていたのかを。

 

 

「末路を汚してなんかいないって言うんなら、駄々捏ねる前にアンタ自身の炎を見せなさいっ!!」

 

 

 天に浮かぶ魔法陣を見上げる。其処から覗く砲門に、集まる力は過去最高。

 間違いなく手傷では済まない。或いは今の不安定な己では、致命に至るやもしれない最高火力。

 

 それを見上げて、天魔・母禮は――

 

 

「くっ、くくくっ、ははははは」

 

 

 心底からおかしいと、吹き出す様に笑っていた。

 

 

「何だ、お前は単純だな。アリサ・バニングス」

 

「そうよ。でもそれで良いじゃない。変に斜に構えても、意味なんてないわ」

 

「……成程、確かにそうだな。私も、もう少し単純で良いのかも知れないな」

 

 

 アリサ・バニングスは単純だ。直情的な激情家で、鬱屈なんて抱えていない。

 そんな単純な在り様。或いは馬鹿と言える姿。その輝きに、僅か見惚れる。

 

 嗚呼、本当に愚かしい。あのまま口にせずに放っていれば、揺らいだ母禮では耐えられなかった。

 それ程の炎を撃ち放った女は、揺らがぬ瞳で信じて見ている。こんな物では終わらんだろうと、心の底から憧れた炎を信じていた。

 

 

「殺してしまった。奪ってしまった。だから何時か、詫びに行こう。心の底から、謝る事にしよう」

 

「……単純になれって言われて、出る答えがそれ?」

 

「単純になったからこそだ。他の何かと結びつけることはなく、唯何時か詫びると心に決めて、それで終わりだ」

 

 

 そんな愚かさに引き摺られて、櫻井螢を思い出す。揺らいでいた己を再定義して、獅子心剣が燃え上がる。

 何時しか、雷雲が戻っていた。激しい雷が降り注ぐ中で、櫻井螢の全身から炎が上る。紅蓮の劫火は、先までとは比にもならない。

 

 

「だから、その何時かの為にも、負ける訳にはいかないな。終わらせる訳にはいかないとも」

 

 

 櫻井螢は弱い女だ。卑屈になって弱音を吐いて、強くなっても変われていない。

 櫻井螢はそんな女だ。何時だって後悔ばかりしていて、前に進むのを怖がっている。

 

 それでも、何時だって後悔しながら、前に進む事だけは止めなかった。

 

 

「何時だってそうだった筈だ。私は迷いを振り切れなくて、後悔を抱えたまま――それでも前に進んでいた」

 

 

 そんな弱さ。億年経っても変わりはしない。だから向いていないと、多くの者らに笑われるのだ。

 彼女だけだ。神々の中にあって英雄失格と語られたのは、櫻井蛍一人だけ。そんな女は一度迷えば、ドツボに嵌る弱さを持つ。

 

 それでも、そんな女であっても――いいや、きっとそんな女だからこそ、一度腹を決めて走り出せば、誰よりも強く輝く事が出来るのだろう。

 

 

「頭なんて良くはない。謀略も策略も戦略だって向いてない。だから、出来る事なんて今も昔も唯一つ」

 

 

 愚かな女だ。弱い女だ。そんな女に、出来る事など唯一つ。

 その一つを忘れていたと、この馬鹿な娘に気付かされたと、思い出した螢は燃え上がる。

 

 

「迷いながらに、その時最善と思った事をする。何度も後悔しながらに、それでも前に進み続ける。そうだ。それが櫻井螢と言う女の、隠す事なき全てだったじゃないか」

 

 

 憧れたと語る女が、燻る火に油を注いだ。故にこそ燃え上がった炎は、過去のそれさえ超えている。 

 間違いなく、この今こそが最盛期。吹き荒れる業火と雷光の嵐はあっさりと、赤き騎士の砲弾を飲み干し膨れ上がった。

 

 

「それしか出来ないから、それだけを貫く。それで良いしそれが良い。足を止めるしかないそれ以外など、考えるのは全てが終わった後で良いっ!!」

 

 

 こんな愚かな女に憧れたと語る、そんな馬鹿げた女に魅せてやろう。

 これこそが己の炎。己の魂。誰に憚る事もない、櫻井螢の全身全霊至大至高の形である。

 

 

「これが、櫻井螢の――かくある己の魂だっ!!」

 

 

 吹き荒れる炎に為す術なく、吹き飛ばされて大地に倒れる。

 業火の中で焼かれながらに、大地に伏したままに見上げるアリサ。

 

 天上に座す天魔・母禮の輝きは、確かにあの日に見た炎だったと小さく笑った。

 

 

「何よ。相変わらず、綺麗じゃないの」

 

「ありがとう。最高の褒め言葉だ」

 

 

 憧れたのは、間違いじゃなかった。心の底から、アリサ・バニングスはそう口にする。

 ありがとうと、その言葉が嬉しいのだと。心の底から、櫻井螢は満面の笑みで口にした。

 

 

「素直に想う。お前と逢えて良かったよ」

 

「……そうね。私も、アンタに逢えて良かったわ。嘘じゃない」

 

 

 迷いはある。後悔もある。けれどこの今は、もう絶対に止まらない。

 始まりの日に抱いた祈りを思い出した紅蓮の天魔は心を定め、誰よりも鮮烈に輝いていた。

 

 

「だから、これは礼だ。決して加減はしない。約束する」

 

「加減なんて冗談じゃない。アンタの本気を乗り越えてこそ、確かな意味があるんだから」

 

 

 雷火を操り、足手纏いの女を遠くに飛ばす。全力を見たいのは螢も同じく、故に最初の優先目標などはもうどうでも良い。

 殺さぬ様に加減しながら、メガーヌを戦場より取り除く。そうして、自由になったアリサが起き上がる姿に小さく笑うと、己の意志を鋭く研ぎ澄ませた。

 

 思い出させてくれた。その事実に万感の感謝を抱いて、故にこそ加減はない。

 こうも強く語ったのだ。決して無様は晒してくれるなよ、と高く燃え上って咆哮する。

 

 

『行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

 

 二人の女は大地を蹴り上げ、そして互いにぶつかり合う。

 烈火を思わせる彼女達の戦いは、これより更に激化していく。

 

 

 

 

 




母禮ちゃん全力モード。爆発力がヤバい女を、態々爆発させたアリサは大戦犯。


因みに作者の中で、登場人物の戦犯順位は宿儺さんとスカさんがワンツーフィニッシュしています。(アリサちゃんは第三位)



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