東方病愛録   作:kokohm

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マエリベリー・ハーンの愛

 ――あら、いらっしゃい……気にしないでいいわよ、料理を作っていたぐらいだから。さ、上がってちょうだい。

 

 

 ……そう? ああ、でも確かに、本格的に料理を始めたのはここ最近ね……そ、そんな恥ずかしいことを言わないでよ! 貴女の言うとおり、料理を始めたのは彼のためだけど、愛のためだなんて……

 

 え? 駄目よ、あれは彼と一緒に食べる為のものなんだから。駄目。絶対にあげないわ。蓮子ならともかく、貴女には上げないわよ……当然じゃない。私にとって、あの二人は特別なんだから。

 

 

 ……だから、その愛しのってのは止めて欲しいのだけど……うん、まあいいけれど。それで? 彼がどうしたの? ……彼を街で見かけた? へえ、そうだったの。

 

 

 蓮子と一緒? ええ、知っているわよ。朝、蓮子の買い物に付き合うって言って出て行ったもの。蓮子も昨日同じことを言っていたから、それは知っていたわ。私もついていきたかったのだけど、宅配便の都合で家に残らないといけなかったのよね。

 

 もしかして、わざわざそのことを伝えに来てくれたの? だったらごめんなさい。無駄足を踏ませてしまったことになるわね。

 

 

 ……二人が、仲良さそうに腕を組んでいた? ええ、あの二人は時々やっているわよ。正確には蓮子が勝手にくっついているみたいだけど。私も時々、その反対側にくっつく事があるし……ええ、いつものことよ。それがどうしたのかしら?

 

 

 ……は? ごめんなさい。今、何て言ったのかしら? もう一度、教えて頂戴。

 

 ……浮気? 二人が? ……どういう根拠でそんなことを言うのかしら? 是非、教えて欲しいわね。

 

 

 

 …………………………つまり、彼が、蓮子と、抱き合っていた、と? で? それを見て、私に教えに来た、と? ふうん…………。

 

 言っておくけれど、蓮子がそういうことをするのは珍しいことじゃないわ。勿論、冗談の範囲内で、ね。

 

 話はそれだけかしら? だったら、帰って欲しいのだけれど。貴女とは友達のつもりだったけれど、流石に不愉快だわ。

 

 

 ……そうは見えなかった? 絶対に浮気をしている? 騙されている?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――しつこい!! しつこい! しつこい! しつこい!!

 

 何なの、貴女は!? 私の恋人と、私の親友を、なぜそうも貶めようとするの?! ああ、ああ、ああ!! うるさい!! うるさい!! うるさいうるさいうるさい!!! 言ったでしょう!? 私は、二人の仲の良さを知っているって! そんなこと、私達にとっては日常茶飯事なのよ。それを外野が一々うるさい!!

 

 ――黙りなさい!! 妄信?! ええ、しているわよ!! 彼は絶対に私を裏切らないし、蓮子も絶対に私を裏切らない! 私はあの二人のことを良く知っている! 貴女なんかよりも、ずっと、ずっと、ずっと!!

 

 

 彼は私を愛してくれた! 大切にしてくれている! 私を一番に思っていてくれている! 蓮子もそう! 私の親友、私の大事なお友達!! 二人は私を裏切らないし、私も二人を裏切らない! あの二人が仲良くしているのも、私が二人をつないでいるから!! 大事な二人が仲良くしているのが、私は好きなのよ!! 大好き、大好き、大好き大好き大好き!!! そんな二人の言葉を、私が信じなくてどうするの!?

 

 

 何が目的なの!? 私にそんな下らないことを言って、何がしたいの?! ……良かれと思って? はあ? 言い訳ももう少しマシなことを言いなさいよ! 何!? 何がしたくてここに来たの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ああ、そうか。そういうことね。

 

 

 

 

 分かったわ、貴女の目的が。

 

 

 

 

 

 

 ――貴女、私から二人を奪うつもりね? 私を二人から引き離して、私に取って代わろうって、そういうつもりなのね?

 

 

 そうよね、貴女、彼の事が好きだったものね……そんな分かりやすい否定はいいわ。知っているよ? 貴女が彼に付きまとっていたことぐらい。だって、彼からも相談されていたぐらいだもの。

 

 

 知っているわよ? 貴女が蓮子に憧れていたことくらい。活発で行動的な彼女と、どうしても仲良くなりたいと思っていたのよね? 

 

 でも、現実にはなれなかった。貴女なんて、蓮子の注意を引くには不足だったのよ。

 

 

 ……ああ、まったく。これまで友人だったから付き合いを続けてきたけれど、もうその必要もないわね。だって、貴女が自分から私と敵対しに来たんだもの。

 

 

 ……もう、今更否定したって遅いわ。貴女は私を排除したかったんでしょうけど、残念ね。だって、私に気付かれてしまったんだもの。

 

 ――だから、先に排除してしまわないと、ね。

 

 あら、何処にいくのかしら? 逃げるつもり?

 

 

  ――逃がさないわ。大人しく、しなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――お帰りなさい! 蓮子とのお買い物は楽しかった? ……ええ、私もついていきたかったわ! ……え? テンションが高い? そうかしら? うーん……ああ、料理が上手くいったから、それでかもしれないわね。

 

 ええ、勿論よ。貴方にはたっぷり食べてもらわないと。

 

 ふふっ、ありがとう。食べる前からそんなことを言ってくれるなんて、本当に嬉しいわ。

 

 

 

 ……あら、蓮子も後で来るの? ええ、分かったわ。彼女の分も準備をしておくわね。ふふっ、三人で一緒に食事も久しぶりね。本当に楽しみだわ。

 

 

 ……ああ、そうそう、言っておく事があったわ。明日、私はちょっと出かけるつもりだから……ちょっと、大きなごみを捨ててこようと思って。大丈夫、私一人で出来るわ。心配しないで、私の個人的な用事だもの。貴方の手を煩わせるわけにはいかないわ。

 

 それに、どうせ蓮子から明日も付き合って欲しいって言われているんでしょう? ……そりゃあもう、私は蓮子のことなら何でも知っているもの。勿論、貴方の事も、ね。

 

 ……え? ふふっ、何よ、いきなり。

 

 ――私も、愛しているわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……誰にも、邪魔は、させないわ。彼と、蓮子は、私の、もの……! 邪魔する、相手は、許さない……!!

 

 

 ……ふう。やっと掘れたわね。やっぱり穴掘りって大変。貴女もそう思うでしょ? ……って、聞いて答えが返ってくるわけがないか。まあ、返ってきた方が困るけれど。

 

 

 ……じゃ、さようなら。私の二人を、盗ろうとした報いよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――私達は、永遠に一緒なのよ。

 

 




 はい、メリー回です。何となく思いついたので書いてみましたが……。

 ……えーっと、ぶっちゃけ、予定していたものをだいぶ違います。もう少し大人しい感じになるはずだったのですが、どうしてこうなったのか。前の少女たちの、を見る限り私はメリーのことを普段は冷静だけど実際は激情家と思っているのでしょうか。あ、ちなみに今回メリーと話していたのは単なる大学の友人です。言うまでもないですが女性ですね。……何気に一番長く場面に登場した名無しかもしれない。

 まあそれはそれとして、今回のメリーは溺愛なのか、妄信なのか、独占なのか、良く分からない感じです。本来の予定では彼の浮気疑惑を上げてきた相手を、彼を盗るつもりなのねと殺す、とてもシンプルなものにするつもりだったのですが、少し曲がりましたね。まさか蓮子も彼を同じ立場になるとは。あ、言っておきますが別に彼と蓮子は浮気をしているわけじゃないです。メリーも言っていましたが、蓮子の行動はあくまでスキンシップの一環です。そういう感情自体は持っていないわけでもないのですが、双方メリーを愛しているので、その気はありません。むしろメリーが将来的に、三人で一緒にいる口実としてそういう方向に持っていくかもしれないといった感じ。

 次回はうーん、現状マミゾウでちょっと考えています。先に言っておくと独占系ですね。まあ、そのとおりになるとは限りませんし、今回みたいに変に曲がるかもしれませんけどね。ではまた。

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