東方病愛録   作:kokohm

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 今回神様について色々と語っていますが、私の勝手な設定なのであんまり気にしないでください。



洩矢諏訪子の愛

 ――おや? なーにを見ているんだい、早苗? はは、そんなに大声を出して驚かなくてもいいじゃないか。ごめんごめん、早苗が随分と乙女な表情をしていたからきになってね。で? その写真の男が早苗の想い人? いやあ、しかし早苗が色恋とは、時間が立つのは早いねえ。

 

 ……んー? そんなことを言われてもねえ。私はあくまで神様であって、人間の恋愛とは微妙にずれていると思うんだよね。だからアドバイス的なことを頼まれても、ねえ? ……あー、言われてみればそうだね。早苗も現人神なんだから、私に聞く権利はあるといえばある、か。ふむ、じゃあちょっと諏訪子様がちょっと昔話でもしてあげようかね。

 

 これは私の友人……友神? まあいいや、ともかく私の友達の話だよ。その友達は昔、自分が庇護する土地に居た一人の男に惚れてね。その男の方も、一応は自分が崇拝する神だから恐れ多いみたいなところはあったみたいだけど、結局はその神の想いに応えてね。それでまあ、人と神という関係ではあるけれど、恋仲って奴になったんだ。恋という意味で初めて人を愛した神と、そんな神に想いを向けられた人間。二人はそれは仲良く、互いを愛を交わすようになったんだ。……そこまでは、良かったんだけどねえ…………。

 

 早苗、人と神が恋をする中で何が大変だと思う? ……そうだね、そういうのもなかったわけじゃない。人間は、ばっさり言えばビビリだからね。神と恋人の人間なんてものを知ったら、利用するか恐れるか、あるいは迫害するかと様々だ。その人間を利用して神の威光を借りようとしたり、もしくは神の怒りを恐れてその人間に関わらないようにしたり、逆に神と近しいことを妬んで害したり。……とまあ色々と、人間ってのは色んな反応を示すものだね。ただまあ、ここで私が言う大変はそこじゃあないんだ。――大変なのはね、人間ではなく神のほうなんだよ。……神にとって、人間を愛するってことは存外難しいものなのさ。

 

 あー……、早苗にこういうのもちょっとあれなんだけどさ、神にとって人間なんて十把ひとからげなのさ。人間が蟻の一匹一匹を判別できないように、神にとっても人間なんて全部おんなじように見えるんだよね。……いや、勿論例外もあるよ? 早苗は当然として、霊夢や魔理沙なんかも普通に別の人間として認識はしている。要はある種特別な人間なら識別できるってこと、転じてそういった人間を神は気に入りやすいもんだ。――だから、神は気に入った人間に執着したりするのさ。それこそ、祟り神なんかはそういう面が強い。

 

 ……ん? ああ、そうそう。私の友達も祟り神だったんだよ、私と同じね。まあ類は友を呼ぶじゃないけどさ、神も案外似た神とつるむもんだよ。……じゃないね。いい加減話を友達の話に戻そうか、さっきから微妙に話がずれていたし。

 

 話の流れで分かると思うけど、私の友達はその人間に執着した。それこそその人間を四六時中手元に置き、その人間が何かの用事で自分から離れようとしたら何かしらの祟りを起こすほどにね。人間的には迷惑かもしれないけどさ、神様的にも不安なんだよ。だって、神に人間を見分けることは難しいから、何かの拍子にその人間が他の人間たちの中に混ざってしまったらその中から見分けられないかも、とか思っちゃうもんなのさ。それに神様って実質寿命がないようなもんだから、時間間隔も人間ほど確かじゃなくてねえ。昨日のことだと思っていたら実は百年ぐらい前のことだった、なんて事が笑い話じゃなくて実際にあるし。目を離した隙にその人間が寿命で死んでいました、なんて起こしたくないってこと。しかも祟り神だったしね、執着は強いし他に当たる時もかなり強い。ぶっちゃけ迷惑な話だと私でも思うよ。でも、これが神様ってやつだしねえ……。

 

 

 

 

 

 

 ……ん? その神様と人間の結末? ああ、そういえばまだ言っていなかったね。…………早苗はさ、どうなったと思う? ……まあ、そうだね。何かの手段を取らないと人間なんてあっという間に死んでしまう、だから死別なんておかしくもない。ただ、まあ、その神様はそれが嫌だったんだよね。それに加えて嫉妬深くて、執着心の強すぎた神はその人間を永遠に自分の手元に置きたがった。――だからさ、やったのさ。神隠しって奴を。

 

 早苗は知っているよね、神隠し。あのスキマ妖怪の代名詞でもあるけどさ、神隠しって言うぐらいだからやっぱりそれは神の御業でもあるわけさ。全部が全部神様の仕業ってわけじゃない。偶々神様がやったことに巻き込まれただとか、それこそ神様がうっかり別の人間と間違えてやったとか、まあそういうのもある。ただ、神様が意図的に、自分の意思で気に入った人間を隠すこともある。人間がお気に入りの玩具や人形を部屋の中で愛でるのと同じように、神様も気に入った人間を自分の領域に閉じ込めてしまう。

 

 何処にも行かせず、誰にも合わせず、自分と相手の二人しかいない空間に閉じ込める。神様っていうのは本当に、嫉妬深すぎることがあるもんだ。大雑把なんだろうねえ、極端から極端に走りたがるんだよ。人間のようにじんわり、のんびり愛するんじゃなくて、苛烈で、激しく愛したがる。相手に受け入れてもらうんじゃなくて、自分がただただ愛を注ぐんだよ。

 

 

 

 

 ……結末? ああ、結末ね、結末。神隠しに遭った人間の結末、いや末路か。さて、どうなったんだろうね。私はその神様じゃないから良く分からない、ってことで。案外その人間ともども、何処かで生きて愛し合っているかもしれないね。

 

 だからまあ、神様的な恋愛の結論としては、相手を閉じ込めてその中で愛でなさい、ってことで。……何なら準備しておくよ? 早苗が望むなら、その男と早苗だけの場所を作ってあげてもかまわないからね。……いい? そ、じゃあそれでもいいけどさ。……ふふ、そうかい。まあ、ゆっくり考えるといいさ。でもまあ、相手の男が死ぬまでには結論を出した方がいいけどね。ああ、その前に告白が先だったか。でも告白しないでさらってくるってのも手といえば手。……なんて、ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ん? 何処か行くのかい? ……そう、ゆっくりしておいで。私達もゆっくり待っているからさ。……うん、いってらっしゃい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて、と。こんな話をしていたら何だか会いたくなっちゃったな。今日は会う予定の日じゃないけれど、まあたまには良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そうだろう? 私の愛する、人の子?

 




 はい、諏訪子回です。ぶっちゃけあんまり求められているような内容ではない感じがするのですが、なんか降りてきたので書いてみました。東方の神様っぽくはない気もするんですけどね、まあ何となくです。……割と後書きで書く内容がないですねえ、今回。精々この話を聞いた早苗のその後を想像するぐらい?

 で、次回。何となく気力があるのでまた明日に投稿出来たらなとかは思っていますが、筆が乗らなかったらどうしようもないので、その辺はまあ、あまり期待しないでください。……さて、今からどれぐらい書けるやら。ではまた。

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