……ダンジョン、に……出会、い、を……求める、のは……間違ってい、る……の?   作:カミカミュ

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ドレスの種類ってパッと聞かれてもよくわかりません。


8話 ドレスと男神

 

 

 

 

 

あの後、私はそのままベルの向かった場所へと走り出した。

 

『長距離観測機』に映るベルの位置はダンジョン6階層付近。

 

モンスターの反応が出ては消えてる事からずっと戦っているのだろう。

 

ダンジョンに来た自分は、走る速度を緩めず中に入る。

 

夜のダンジョンは人気はほぼなく、障害無しに一気に6階層まで降りた。

 

ようやく視認できる範囲にベルの姿が映り、一先ず様子を見るために足を止める。

 

既にベルの姿は装備を付けずに階層数を増やしたせいか、それとも無茶な戦いを続けてるせいかボロボロになっており、息も上がっている。

 

相手はウォーシャドウ2体。

 

異様に長い腕に三本のナイフの様な鋭利な指を持つモンスター。

 

ウォーシャドウの攻撃に対応できずに傷を増やして行くベルを自分は観察する。

 

そして、ウォーシャドウの攻撃が直撃し、地面を転がるベル。

 

止めを刺そうとするウォーシャドウに自分は攻撃を加えようと、一歩踏み出そうとして止まる。

 

飛び起きたベルが、攻撃を掠りながらも無手による拳のカウンターをウォーシャドウの顔面に叩き込む。

 

拳で頭部から引き抜き、もう一体のウォーシャドウに素早く近づき短刀を胸部を切り裂く。

 

魔石を切られ、悲鳴を上げながら灰になるモンスターを見届け、肩で息をするベルの真後ろ。

 

そこにはもう一体のウォーシャドウがいた。

 

疲れで気づかないベルに攻撃が当たる寸前に唱える。

 

 

「『弱撃』」

 

 

自分の掌から出た青い魔力弾がウォーシャドウの顔面を貫く。

 

大きさは拳程の魔力弾。

 

深層のモンスターですら防げないそれは名前と違い凄まじい貫通力を誇る攻撃。

 

武装攻撃が目立つために、創った簡易攻撃なのだが、それでも威力が高いことにヘスティアがため息をついていたのを思い出す。

 

ちなみに、魔力消費が殆んど無いため、無数に生み出せると知った時のヘスティアの反応は。

 

 

『シュヴィ君、見た目は可愛いのに、どこの最終兵器だい?』

 

 

ヘスティアの言葉にただ首を傾げるシュヴィだったが、実際に、これが一番の『最弱攻撃』なのだ。

 

この魔力弾と、武装を使われた時には相手が可愛そうである。

 

真後ろに迫っていたモンスターが灰になったことで、ようやく自分の存在に気づくベル。

 

 

「シュヴィも来てたんだ。ごめんね急に飛び出したりして……」

 

「……ん、問題な、い……お金払っ、た、躾もし……た」

 

「し、躾?……あ、ごめんね。お金払わせちゃって、またあそこには謝りに行かないと……」

 

「……ん、ベル、は……まだ戦、う?」

 

「うん、僕はもっと強くならないといけないんだ。あの人と肩を並べて戦える――ううん、彼女を守れるくらい強くならないといけないんだ!!だから、ごめん。まだ、ダンジョンに残って戦うよ」

 

「……わかっ、た……今回、は、アイテ、ム類……拾う」

 

「え、悪いよ……。シュヴィは教会に帰っていても……」

 

「……大丈、夫……シュヴィは、1日中……動き続、け、ても問題は、ない……」

 

「えっと、ごめんね?なら、今回だけお願い……」

 

「……ん」

 

 

申し訳なさそうにするベルは、自分が退かないと分かるとすまなさそうに御願いしてきた。

 

頷くと、新たに出現したモンスターへと駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い……どこ行ったんだあの子達は……」

 

 

アイズが影響しているベルのステータスを更新した後に、へそを曲げてバイトの飲み会に行って帰ってくると、教会には誰もおらず、がらんとした静けさだけだった。

 

ベルに食べに行けとはいったが、出迎えがないことに一層不機嫌になる。

 

ベットに飛び込みふて寝を決め込むことにしたが、時間が過ぎていき、深夜も回って帰ってこない子供たちに危機感を覚えた。

 

だが、すぐ霧散する。

 

ベルの隣には最終兵器がいるのだ、国レベルの事件がない限りあの子達が危険な目に遭うとは思えない。

 

 

「ならば、どこに行ったんだ君たちは……」

 

 

よそのファミリアに強襲?まさか、ラキアに爆撃?いやいやいや、なぜこんな物騒なことしか出てこない。

 

実際に強襲ではないが、ロキ・ファミリアの一人が致命傷を与えられていたが、ヘスティアが知る由もない。

 

取り敢えず、一睡もせずに二人を探すことにした。

 

自分の知らない所で戦争が――否、事件が起こってる可能性もある。

 

夜の街を探し回ったが、収穫はなし。

 

溜息を吐きながら教会へと戻ると、ベルを担いだシュヴィが教会前にいた。

 

 

「なっ!どこに行ってたんだ君たちは!?」

 

「……ダンジョ、ン」

 

「は、はぁ!?ベル君装備付けてもいないのに一晩中ダンジョンに!?」

 

「……ん、大丈、夫……見張って、たから……致命傷な、し」

 

「まぁ、君がいる時点でベル君が死ぬことはないと思うが。なぜそんな無茶をしたんだい?」

 

「……ベルは、強くな、り、たい、って……あとは、ベルに聞、く……」

 

「わかった、ベル君もその状態のままはキツいだろうし、ベットに運ぼう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルが帰ってきて一夜明け、ヘスティアがベルのステータスを更新する。

 

ダンジョンの件について尋ねるがベルは「強くなりたいです」としか答えず、ヘスティアは「頑固だなー」と答えていたが、更新をしていたその手がピタリと止まる。

 

 

 

ベル・クラネル

Lv.1

力: H 120→ G 221

耐久: I 42→ H 101

器用: H 139→ G 232

敏捷: G 225→ F 313

魔力:→I 0

《魔法》

【】

《スキル》

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

懸想(おもい)が続く限り効果持続。

懸想(おもい)の丈により効果向上。

 

 

 

ヘスティアには内緒にしているが【神聖文字(ヒエログリフ)】の解読は終わっている。

 

だから、ベルの背中を見れば全てが読み取れた。

 

やはりスキル効果による上昇だったようだ。

 

だが、ヘスティアがスキルのことを教えるつもりはないらしい。

 

 

「ベル君、今日は口頭でステイタスの内容を伝えていいかい?」

 

「あ、はい。僕は構いませんけど……」

 

 

おそらくベルのあのスキルは『レアスキル』。

 

もしかすると、あれが世間にバレると騒ぎになるのかもしれない。

 

自分のステータスも規格外で隠してるのと同じようにあのスキルも隠さないといけないのだろう。

 

まさか、暇を持て余した神々が騒ぎを起こすという理由で隠してるなどは知らないシュヴィである。

 

そう考えていると、更新も終わっており、立ち上がったヘスティアが食器棚の引き出しを漁っている。

 

何やら手紙の様な物を見つけ出し、考え込んでいる。

 

そして、何かに気づいたように慌て始めた。

 

 

「二人共っ、ボクは今日の夜……いや何日か部屋を留守にするよっ。構わないかなっ?」

 

「えっ?あ、わかりました。バイトですか?」

 

「……ん、大丈、夫」

 

「いや、行く気はなかったんだけど、友人の開くパーティーに顔を出そうかと思ってね。久しぶりにみんなの顔を見たくなったんだ」

 

「だったら遠慮なく行ってきてください」

 

「……パーティー」

 

「おや、どうしたんだい?シュヴィ君」

 

「……ヘスティア、ドレス持って、る……?」

 

 

ガ、ガーン!!とヘスティアの背後で雷が鳴った気がする。

 

 

「そ、そうだった。貧乏だったせいで、まともな服が……」

 

「……なら、買いに行、く……間に合わ、せ、でも……いいの、はあると……思、う」

 

「し、しかしだな。高いだろ!?そんなお金を……」

 

「……シュヴィ、が……出すか、ら行、く……よ」

 

「えっ!?あ、ちょっと待ってシュヴィ君!?引きずって、あぁぁぁぁぁ……」

 

 

優先目標ヘスティアのドレス購入を開始します。

 

 

都市の最北端にある北のメインストリート。

 

ギルドの関係者が住まう高級住宅街に位置するこの大通りは、商店街として活気づいている。

 

通りの真ん中を何台もの馬車が行き交う中、多くの亜人が路上を闊歩していた。

 

シュヴィはヘスティアの手を引っ張りながら目的の店がないかを探していく。

 

 

「シュ、シュヴィ君!適当な、そう適当な安い服でいいからさ!ドレスなんて恐れ多くて着れないよ!?」

 

「……神様、がそれ言っ、て、大丈、夫……?」

 

 

喚くヘスティアを半ば強引に引っ張りながら歩いていくと、見知った顔に出くわした。

 

そう、自分が51階層まで潜った時にいた。

 

 

「……アイズ?」

 

「久しぶり?」

 

「あーあの時の可愛い子だ~隣にいるのは女神さま?」

 

 

ティオナが尋ねてきたので、それに頷き、こちらも尋ねる。

 

 

「……ドレス、売っ、てるお店知ら、な……い?」

 

「あ、それなら、知ってますよ!エルフがよく来るお店なんですけど、品揃えは良かったはずです!」

 

アイズの後ろに居たレフィーヤが答え。

 

「どうせなら一緒に買い物行こうよ!私たちを服買いに来たんだ~」

 

「……ん、なら行、く」

 

「え、うわ!勝手に話が進んで……!?そ、そうだ!君たちシュヴィ君にも服を選んでくれないか!」

 

「あら?この子シュヴィって名前なのね。教えてくれなかったから初めて知ったわ。でも、この子――シュヴィちゃんは服あまり持ってないの?」

 

「あまりというか、全然でね!今もローブと靴しか履いてないんだよこの子!」

 

「うぇえ!?だ、ダメだよシュヴィちゃん!服ちゃんと着ないと変な男神に狙われるよ!?」

 

「……?……シュヴィは頑、丈……身を守、る、ものは必要な、い……」

 

「それもだけど、身を隠しておかないと舐める様な視線で男神は見てくるんだから!シュヴィちゃんみたいに可愛い子はおしゃれも必要だよ!」

 

 

『おいコラ待てぇぇぇ!!誰が舐め回すような視線で見るだ!僕は違うぞ!』

 

『嘘つけ。お前がシュヴィたんを見る顔ニヤけてたぞ。それよりシュヴィたん私が楽しい所に連れて行ってあげようか?』

 

『待たんか貴様!!紳士の掟である【YESロリータNOタッチ】を忘れたのかぁぁぁ!!』

 

『時代は常に進むんだよ。今やらずにいつやるの?今でしょ!!』

 

『このロリコンどもめ。なぜ目の前にいるアマゾネスの肢体に目が行かない!無乳は置いといてもこの巨乳、引き締まったお腹、ムッチリとした太腿。そして褐色!最高ではないか!!』

 

 

「おい、誰か止めろ。このバカ達(男神)

 

 

巫山戯た事を言っていた男神達はそれぞれのファミリアの眷属たちが顔を真っ赤にして連れて行った。

 

その場に残った女性たちは非常に微妙な顔をしていた。

 

ちなみに、金的を繰り出そうとしてヘスティアに止められるシュヴィがいたとか。

 

その後は、アマゾネスの服が売られている店舗に連れて行かれたりしたが結局最後に来たヒューマンの店舗でそれぞれの服を、ヘスティアは水色のミニスカートタイプに、ネックラインはビスチェになっており胸が強調される様なのを選んでおいた。

 

アイズ達とは、お昼を一緒に食べそのまま別れた。

 

ヘスティアすぐにホームへと帰り、ドレス姿をベルに見せて喜び、意気揚々とパーティへと向かう。

 

 

 

 

 





『最弱攻撃』と打ったはずがいざ変換すると『災厄攻撃』に変換されて、初めて打ち間違いに気づくけど、ぶっちゃけ使い方によってはそうなるよなぁ…と一人で納得してたりする。

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