……ダンジョン、に……出会、い、を……求める、のは……間違ってい、る……の?   作:カミカミュ

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DEAD RIGING3がストレス発散になります。めっちゃ楽しいです。


6話 貧乏神と女性店員

 

 

 

 

次の日の朝。

 

 

「……いい?……2万ヴァリ、ス、渡すか……ら、無駄使、い……、メッ、ほかに、必要出……来た、ら、言って……」

 

「ハッ!この貧乏神めに。ありがたき幸せ!」

 

「…あはは、ありがとうシュヴィ。大切に使うね」

 

「……ん」

 

 

多額のお金を手に入れたシュヴィは豪遊するわけでもなく、ヘスティアとベルに月に一度2万ヴァリスあげるように話し合いで決定した。

 

もちろんそれ以外のお金は自分で稼ぐこと、ヘスティア自身もバイト自体を楽しんでる様で、辞める気はないらしい。

 

正直シュヴィはお金を手に入れても教会の修繕とファミリアの食費以外に使い道がなかった。

 

普通は、衣食住と必要なものが必ずしも出てくるのだが、服もローブで体を隠すのみで、冒険での鎧自体、51階層まで潜って傷を付ける者がいないので必要ない。

 

食事や睡眠も種族的に必要がなく、魔力があれば稼働できる。

 

そう、気づいたことがあったのだが、最初この世界に来た時に、精霊を取り込み稼働していたと勘違いしていた。

 

実際は、自身の魔力と空気中の魔力を吸い集め稼働していたようだ。

 

そして、最後に住。

 

以前、荒野で過ごしてきた自分としては、廃教会が拠点の時点で十分である。

 

残りのお金は『空間収納(ボックス)』に仕舞いこんだ。

 

 

「……ベル。……たまに、は、一緒に行……く?」

 

「あ、うん。久々にダンジョン一緒に行けるんだね!」

 

「……あんま、り……頼っちゃダ、メ、だよ……?」

 

「あはは、善処します……」

 

「……ん、昨日みた、い、に……危険あ、り近く、い……る」

 

「ありがとうシュヴィ」

 

「……ん」

 

 

ベルに頭を撫でられながら教会を出る。

 

広い通りに出れば、ガヤガヤと既に賑わっており、様々な種族が行き交っている。

 

ぶつからない様に避けながら、しばらくの予定をまとめる。

 

昨日のようにイレギュラーが発生した時にベルの側にいなければ守るのは難しい。

 

お金もあるし、しばらくは深層まで潜る必要はないだろう。

 

ただし、ベルの戦闘自体邪魔はしないこと、ベル自身に見合った敵ならば無駄な手出しは不要だろう。

 

この世界は経験が全てステータスに表れる。

 

せっかくの経験を無駄になどさせない。

 

考えながら進んでいると。

 

 

「あの……」

 

 

後ろから声にベルが慌てて振り返り、構える。

 

周りから見たら異常な警戒の仕方だが、昨日の事がトラウマになっているようだ。

 

声をかけてきたのは、薄鈍色の髪を後ろでまとめ、瞳は髪と同色。

 

服装は白いブラウスに膝下まである若茶色のジャンパースカートに、そのうから長目のサロンエプロンをつけた女性。

 

とりあえず、警戒していたベルの服の裾を引っ張り落ち着かせる。

 

ハッとしたベルは。

 

 

「ご、ごめんなさいっ!ちょっとびっくりしちゃって……!」

 

「い、いえ、こちらこそ驚かせてしまって……」

 

 

見た目からして、ベルと一つ二つ離れてない彼女とベルはペコペコと互いに誤っている。

 

 

「……何、か用……事?」

 

「あ、はい。これ、落としましたよ」

 

「……ベル、巾着ちゃ、ん、と閉め、た……?」

 

 

魔石を渡してくる彼女にベルを見ながら尋ねると。

 

 

「え、『魔石』?あ、あれ?」

 

 

首をひねって、腰の巾着を確認している。

 

私みたいに便利な魔法がない人たちはベルのように巾着などの入れ物に入れたり、サポーターを雇って魔石やドロップアイテムを集める。

 

今回はベルの不注意で落としたようだ。

 

 

「す、すいません。ありがとうございます」

 

「いえ、お気になさらないでください」

 

 

そう言いながら彼女が微笑むと、ベルもつられて笑う。

 

笑顔……自分にもできたらリクに喜んでもらえるかなぁ……。

 

 

「こんな朝早くから、ダンジョンに行かれるんですか?」

 

「はい、ちょっと軽く行ってみようかなぁなんて」

 

 

自分の考えを知らずに二人の話は進む。

 

すると、グゥとベルのお腹から音が聞こえる。

 

そいえば、朝の話し合いでご飯食べてなかったね。

 

きょとんと目を丸くしている彼女。

 

体内温度が上昇して顔が赤くなるベル。

 

 

「うふふっ、お腹、空いてらっしゃるんですか?」

 

「……はい」

 

「もしかして、朝食をとられてないとか?」

 

 

顔を赤くしながら、こくりと頷くベル。

 

彼女は何か考える素振りをすると、急にパタパタと音を立ててその場を離れる。

 

テラスを超え、一旦店内へと消えるとすぐに戻ってきた。

 

その手にはバスケットが持たれ、中にパンとチーズが見える。

 

 

「これをよかったら……。まただお店がやっていなくて、賄いじゃあないんですけど……」

 

「ええっ!?そんな、悪いですよ!それにこれって、あなたの朝ごはんじゃあっ……?」

 

 

彼女は照れるようにはにかみ。

 

 

「このまま見過ごしてしまうと、私の良心が痛んでしまいそうなんです。だから冒険者さん、どうか受け取ってくれませんか?」

 

「ず、ずるいっ……」

 

 

返答に窮しているベルに、彼女は一旦目を瞑る。

 

次に目を開けると、意地悪そうな笑みを浮かべ、ベルに顔を寄せる。

 

 

「冒険者さん、これは利害の一致です。私もちょっと損をしますけど、冒険者さんはここで腹ごしらえができる代わりに……」

 

「か、代わりに……?」

 

「……今日の夜「……逢い引き?」ち、違ますよ!?ゴホンッ。私の働くあの酒場で、晩御飯を召し上がって頂かなければいけません」

 

「……」

 

 

ベルが目を丸くしている。

 

にこっと笑う店員とくしゃっと破顔するベル。

 

 

「もう……本当にずるいなぁ」

 

「うふふ、ささっ、もらってください。私の今日のお給金は、高くなること間違いなしなんですから、遠慮することはありません」

 

「それじゃあ、今日の夜に伺わせてもらいますっ」

 

「はい、お待ちしています」

 

 

最後まで店員は笑っていた。

 

ベルはバスケットを持ち少し歩いてから気づいたように振り返り、不思議そうに見つめる店員に向かって、言う。

 

 

「僕……ベル・クラネルって言います。この子はシュヴィ・ドーラ、同じファミリアの子です。貴方の名前は?」

 

 

紹介されたので、ぺこりと頭を下げる。

 

そんな自分たちに、彼女は瞳を僅かに見開いた後、にぱっと微笑む。

 

 

「シル・フローヴァです。ベルさんシュヴィちゃん」

 

 

笑みと名前を交わしあった。

 

 

「……あの、人と、生殖……行為す、る……?」

 

「ぶふっ!?」

 

 

何故か怒られた……。

 

 

 

 

 





6話目ですけど、原作1巻見るとの56Pしか進んでないんですね。

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