咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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今回はあちこち視点を変更して、時間軸も多少前後してます。
演出上こう言う順に話を進めましたけど、混乱したらごめんなさい。


28志野崎秀介その9 罰ゲームと謎の人物

南三局6本場 親・秀介 ドラ{白}

 

美穂子 3700

 

{⑤⑥⑦⑧24448(横7)9發發發}

 

「・・・・・・」

 

試合途中の笑顔もどこへやら、美穂子は苦しそうな表情で秀介の捨て牌に目を向ける。

 

秀介捨て牌

 

{1南西一三七} {横⑨(リーチ)}

 

秀介が透華から河底ロン上がりをした後も、延々と美穂子は秀介に狙い打たれていた。

 

まだ誰も手がまとまっていないような6巡目でタンヤオ三色ドラ1に振り込み。

狙い打たれていることを警戒して逆に見え見えの間4ケンを切ったら、それすらも読まれていたようで再び満貫手に振り込み。

 

そしてこの局、もはや何が危険か美穂子には全く読めなくなっていた。

筒子の混一? 最初に切られた索子の混一? 逆に一番切られている萬子?

タンピン手? 逆にチャンタ系? はたまた七対子?

どのパターンも昨日の様子見から含めて上がられている。

 

自分の手は發のみだが{⑤-⑧、2-3}待ちどちらでも選べる。

しかしその際切るのは{⑤か⑧か2}。

実は最初に{1を切っておいての2-5待ち、⑨切ってリーチ宣言しておいて⑤-⑧}待ち。

どちらも秀介ならやりかねない。

それは散々振り込んできた美穂子にとって拭いきれない恐怖。

 

どうする? どれを切る? どれを切ればいい?

 

自慢の右目を開いているにもかかわらず、彼の手牌は全く読めない。

降りようにも安牌すら無い。

 

どうする? どうする? どうする? どうする?

 

もはや苦しんでいるというよりも、今にも泣き出しそうな表情。

延々と悩み、手牌のあちらこちらに手を伸ばした挙句、美穂子は{發}に手をかけた。

完全に手を崩しての降り打ち。

おそらく心が完全に折れたのだろう。

 

もう・・・・・・彼に立ち向かうことができない・・・・・・。

 

それは美穂子の降伏宣言だった。

 

 

「ロン」

 

 

「・・・・・・えっ・・・・・・」

 

 

それすら、彼はばっさりと切り捨てた。

秀介の手牌の端から{發}が現れる。

 

「リーチ一発」

 

そして残りの手牌が倒された。

 

 

 

{四五五六六七⑥⑦⑧666發}

 

 

 

「・・・・・・のみ。

 3900(ザンク)の6本付け」

「・・・・・・そんな・・・・・・」

 

秀介の今までの実力を見れば美穂子の手牌に{發}が暗刻である事を察していてもおかしくない。

リーチ宣言牌の{⑨を取っておけばノベタン⑥-⑨}待ち。

その前の{七}を抱え込んでいればタンヤオ一盃口だ。

にもかかわらずそれらを切り捨ててリーチ一発のみ、待ちは美穂子の降り打ちを狙った{發}単騎待ち。

 

がっくりと、美穂子は頭を下げた。

 

「・・・・・・トビ・・・・・・です・・・・・・」

 

 

 

美穂子  -200

津山  40000

秀介 127600

透華  61400

 

 

 

 

 

試合が終わり、各々席を立つ。

 

結局美穂子の点棒の全てが秀介の元へ移った形だ。

キャプテンとして皆に合わせる顔が無い・・・・・・と美穂子は卓でしばし顔を伏せていた。

風越のメンバーも何と声をかけたらいいものかと遠巻きに見守るしかできない。

 

 

「福路さん」

 

そんな美穂子に声をかけたのは。

 

(・・・・・・上埜さん・・・・・・?)

 

久だった。

 

「・・・・・・ごめんなさいね、うちのシュウが。

 私達と打ってる時はわりと冗談半分な空気だからなんてこと無いんだけど、さすがに他校のあなたにはきつかったわよね。

 あいつには言っておくわ」

「・・・・・・いえ・・・・・・」

 

落ち込むのは決して悪いことではない。

だが今この状況、他校の久に気を使わせてしまっている。

おそらく同じ風越の後輩たちにも。

 

これではキャプテンとして余計にいけない、そう思い美穂子はこっそり涙を拭うと席から立ち上がる。

 

「・・・・・・ありがとうございます、竹井さん。

 志野崎さんにトバされたことですが、気にしていません。

 こんなこと久々なので少し落ち込んでしまいましたけど・・・・・・。

 私がこの先麻雀を続ける限り、きっとこういう事態もあるはずです。

 その時に同じように落ち込んでいたのでは色々と示しがつきませんものね。

 今日の事は前向きに受け止めたいと思っています」

 

久に正面から向き直り、そう言って頭を下げる美穂子。

これには久も驚きだ。

 

「・・・・・・そんな風に受け取れるのね、あなたは。

 強いのね、さすがキャプテンだわ」

「いえ、あんな打ち方をする人と付き合いの長い竹井さんこそ」

「あら、言うわね」

 

そう言ってお互いに笑い合った。

 

「ね、名前で呼んでもいいかしら?」

「えっ・・・・・・」

 

不意の提案に戸惑う美穂子。

だが嬉しく無いわけがない。

なんとなく気恥ずかしくて頬が赤くなる気もするけれど。

 

「・・・・・・は、はい、是非とも」

「そう、よろしくね、美穂子。

 私も久って呼んで」

「は、はい・・・・・・久・・・・・・さん・・・・・・!」

 

久はクスッと、美穂子は照れ臭そうに再び笑った。

 

「さて、じゃあ私はシュウに文句の一つでも言ってくるわ。

 何か言いたいことがあったら伝えるけど?」

 

そう言われ、「特には・・・」と言いかけて少しだけ考える。

そして。

 

「・・・・・・機会があれば、また打っては頂けませんか?と」

「あらら・・・・・・」

 

久は何やら複雑そうな表情をしながらも「分かったわ」と引き受けた。

 

「それじゃ、また後でね、美穂子」

「は、はい!」

 

名前で呼ばれることに慣れていないのか、ドキッと反応しながらも返事をする美穂子だった。

 

「キャプテン!」

 

不意に後ろから声を掛けられる。

振り向くとそこにいたのは池田を始めとする風越のメンバー。

 

「あ、あの・・・あの・・・・・・」

 

声を掛けたはいいものの、その後の言葉が続かないようだ。

そんなメンバーに美穂子は笑いかける。

 

「・・・・・・心配かけちゃったわね、ごめんなさい、みんな」

「い、いえ!」

 

美穂子の言葉にメンバーは顔を見合わせて、美穂子がもう落ち込んでいないようだと安心した。

 

「キャプテンの仇は私達が絶対討ちますし!」

「絶対決勝に残って見せます!」

 

皆の言葉に美穂子は嬉しそうに笑う。

 

「ありがとう。

 私は失格になっちゃったけど、サポートと応援に回るわ。

 必ず誰かを決勝まで上げてあげるからね」

「はい! ありがとうございます!」

 

 

こうして、どうやら美穂子は一回り成長したようだった。

 

そんな様子を見守っていた久はやれやれと小さくため息をつき、しかし自分の事のように嬉しそうに笑った。

 

 

「・・・・・・それはともかくとして、あいつには一言言っておかないとね」

 

自力で持ち直したからいいものの、あれは対戦相手の心を折る打ち方だ。

あんな打ち方をされたら一生もののトラウマになってもおかしく無い。

なにが「楽しく過ごして交流を深める合宿の最中」だ、シュウめ。

 

久はブツブツと呟きながら秀介の元に向かった。

 

 

 

一方その秀介は。

 

「・・・・・・ん・・・ごくっ・・・・・・ごくっ・・・・・・!」

 

ガブガブとリンゴジュースを飲んでいた。

新しく買ってきたペットボトルの中身が一気に空になる。

それを見越して既にもう一本買ってきている辺り、本気でリンゴジュースで失った麻雀力を補給しているかのようだ。

 

「・・・・・・ふぅ・・・・・・」

 

空になったペットボトルを備え付けの小さなテーブルに置くと、ようやく秀介は一息ついた。

 

可愛い後輩たちは先程の秀介の打ち方に少しばかり恐怖を覚えてしまったのか、微妙に遠巻きに見守っている様子。

 

「そんな中でもお前は隣にいてくれるんだな、まこ。

 見ていて楽しんで貰えたかな?」

 

秀介はそう言って、一つ席を開けて右隣に座っているまこに話しかける。

だがそのまこも何やら頭を抱えて蹲っている様子。

 

「・・・・・・どうした、具合悪そうに」

「・・・・・・1年くらい前を思い出しとったんじゃい」

 

そう言って秀介を睨むように視線を向けてくるまこ。

1年くらい前、そしてこのまこの様子。

思い出すのは・・・・・・。

 

「・・・・・・「まこいじめ」か、懐かしいな」

「出来れば思い出したくなかったがの」

 

ぷーっと膨れるまこ。

何か嫌なトラウマでもあるらしい。

もはや今に始まったことではないが。

この子は過去にどれだけこの先輩に苛められてきたというのだろうか。

 

「・・・・・・今回のに比べたらわしが受けた仕打ちはまだましな方じゃけぇ、それでも半分くらいトラウマになっとるんじゃ」

「そうか、誰か知らないが酷い奴がいたもんだな」

「あんたじゃあんた」

 

そんなやり取りに笑いながら秀介は周囲を見渡す。

久を見つけたがどうやら風越のキャプテンと話しているようだ。

 

「・・・・・・なら仕方ないか。

 お前なら久も許してくれる事だろう」

「・・・・・・何がじゃ?」

「んじゃ、罰ゲーム執行」

 

まこが聞き返した時には既に秀介はごろんと横になり、まこの膝に頭を乗せていたところだった。

 

「え、ちょ・・・・・・ええっ!?」

 

俗に言う膝枕。

 

「ちょ! 志野崎先輩! 何しとるんじゃ!」

 

赤くなって声を荒げつつも突き落したりできないでいるまこ。

 

と、不意に秀介の額に浮かぶ汗が目に入った。

試しに額に触れてみる。

 

「・・・・・・特に熱は無いぞ。

 ただ強いて言うならば少し頭が痛い」

「・・・・・・無茶するからじゃ」

 

まこはハンカチを取り出すとその汗を拭ってあげる。

 

「・・・・・・スマンな」

「・・・・・・こう言うのは部長の役割のはずじゃ」

 

そうやって汗をぬぐい終える頃には秀介の表情がいくらか和らぐ。

そして・・・・・・。

 

「・・・・・・寝とる」

 

いつの間にやら眠りについていた模様。

そこでふと我に返った。

 

男を膝枕、汗をぬぐってあげる、眠りにつかせる。

 

完全に彼氏彼女のやり取りではないか。

 

これは困った。

周囲がどんな視線でこちらを見ているかと考えると恥ずかしくて顔があげられない。

しかしこのまま秀介の顔をじーっと見ているというのも恥ずかしい。

仕方なく誰もいない方向にプイッと顔を背ける。

さっきも言ったがこう言うのは久の役割のはずだ。

 

まったく。

 

無茶して本気の麻雀を打って。

 

たかが合宿の練習試合だというのに。

 

何故この先輩はそこまで無茶をするのか。

 

とりあえず寝てしまっている人間にグチグチ言うわけにもいかないので心の中にしまっておく。

 

その分起きたらぶつけてやろう。

 

 

 

「お爺様、あの人・・・・・・」

 

秀介の試合を見学していた数絵が声をかける。

正直あれ程の実力者は見たことが無い。

県大会の決勝戦を見学していた時に見た天江衣とはまた違った恐ろしさだ。

 

とんでもない強さです、と言葉を続けようとしたがそれが止まる。

何故なら話しかけた相手、南浦プロの表情は今まで数絵が見たことが無いものになっていたからだ。

信じられないものを見たかのような表情。

確かに信じられない強さだったが、その表情は何か違う。

麻雀の強さがではなく、別の何かに驚いているかのような。

 

「・・・・・・お爺様?」

「・・・・・・まさか・・・・・・そんなわけが・・・・・・しかし・・・・・・!」

 

激しい動揺が感じられる。

彼の打ち方に何か気になるものでもあったのか。

 

「・・・・・・数絵、ちょっとすまん」

 

南浦プロはそれだけ告げて彼に向って歩き出す。

 

「・・・・・・お爺様・・・・・・」

 

数絵は訳が分からずにそのまま見送るしかできなかった。

 

 

 

試合を終え、席から離れた人物の一人、龍門渕透華。

去っていった秀介の背中をじーっと見ていた。

決して彼の独壇場で試合が終わったことを怒っているわけではない。

 

「透華」

 

一が声をかけてくる。

 

「透華、大丈夫?」

 

一も最初は、今の試合展開に透華が怒っているのかと思っていたが、近づくにつれてそうではなさそうだと察する。

では透華は今何を考えているのか。

 

「・・・・・・ちょっとごめんなさい、はじめ」

 

透華はそう言って卓から離れると、ある人物の元に歩み寄る。

彼女も透華の接近に気付いて手元のノートパソコンの操作を止め、顔を上げた。

 

「ともき」

「・・・・・・はい」

 

声をかけた相手は同校の智紀。

どんな用事かと思いきや。

 

 

「あなたのパソコンの中にある、私が今まで見て来たネットの上位ランカー、Sリーグのトッププロ達の牌譜を見せてくださいまし」

 

 

そんな要求をした。

 

 

「・・・・・・今探しているところです」

 

智紀はすぐにパソコン画面を透華に向ける。

どうやら彼女もそれを見ていたようだ。

 

「・・・・・・やはり透華さんも同じ考えを?」

「・・・・・・そのようですわね」

 

透華は智紀の隣に座り、共に画面に目を向ける。

 

「・・・・・・えっと、どういうこと?」

「何だ何だ? 二人揃って何してんだ?」

 

一と純が話について行けずにいると、いつに無く真剣な表情の透華に代わり智紀が答える。

 

「・・・・・・先程の志野崎秀介という方の打ち方・・・・・・見覚えがあったのです。

 それが誰だったかを調べています」

「調べるって・・・・・・それプロやランカーの牌譜じゃねぇか。

 調べるなら中学とか高校の全国大会じゃねぇのか?

 っていうか、調べるも何も名前まで分かってるんだろう?」

 

純がそう言うと一も頷く。

が、透華は首を横に振る。

 

「私が大会前に調べたのはそのトッププロや上位ランカーの牌譜ですわ。

 中学高校の大会は調べていません。

 でも・・・・・・その時に見たはずなのです、この打ち方を」

「・・・・・・私もそう記憶しています。

 ただその人物の名前や保存ファイル名までは・・・・・・」

 

智紀も同意見のようだ。

そうなると間違いは無いだろう。

 

「でもそうなると・・・・・・じゃあ、誰なんだよ、その打ち方した奴って。

 あいつネットとかやってて同じような打ち方してるのか?」

「・・・・・・それが分からないから探しているんですのよ」

 

透華は歯がゆそうに画面に目を走らせている。

その様子に一も純も小さくため息をついた。

 

「・・・・・・牌譜、印刷できないの?

 ボクも探すよ」

「そこまで言われたら俺も気になる、一緒に探させてくれ」

 

二人はそう言った。

だが。

 

「・・・・・・印刷している方が時間がかかります」

「・・・・・・こうなれば仕方ありませんわね」

 

ふむ、と画面から顔を上げると、透華はパキッと指を鳴らした。

 

「ハギヨシ」

「はい、透華お嬢様」

「おわっ!?」

 

突然の執事の参上にびくっと飛び跳ねる純。

そんな純をよそに透華は現れたハギヨシに命じる。

 

「あの男の打ち方は見ていましたわよね?

 それと同じような打ち方をしている牌譜がこの中にあるはずですわ。

 それを探してくださいまし」

「かしこまりました」

 

スッと頭を下げるとハギヨシは智紀からノートパソコンを受け取る。

直後、目にも止まらぬ速さで両手が動き出し、画面のスクロールが滝のように速くなった。

 

「・・・・・・これ、ちゃんと見切ってんの?」

「ハギヨシですから」

 

純の言葉に、何を当たり前の事を?と言う表情で透華が返す。

純は納得いかなそうな表情でハギヨシの操作を見ているのだった。

 

 

 

「・・・・・・何してんのあいつ」

 

秀介の元に戻ってきた久。

そこでまこに膝枕をされている目的の人物を目撃したところだ。

清澄部員に限らずそんな久の様子を目にした者達は、うわっと声を上げるのだった。

 

そんな周囲の反応をよそに、久はつかつかとまこに歩み寄る。

 

「あ、部長・・・・・・」

 

少しばかり怯えた表情でまこが迎えた。

本当なら逃げたかったのだが、秀介が膝に乗っている状況ではそう言うわけにはいかない。

 

「・・・・・・まこどいて、そいつ殺せない」

「殺すのんか!?」

 

まこの驚きをよそに久の右足がスッと上がる。

あ、これはカカト落としだ、と察したまこはとっさにそれを止めさせる。

 

「あ、あのな、部長。

 志野崎先輩はちょっと疲れとるようじゃけぇ、少し寝かせておくっちゅうわけには・・・・・・」

 

だが久は変わらず無表情で右足を上げたまま。

説得は失敗か、と思いつつ、まぁ志野崎先輩相手に本気でやるわけもなかろうと思い、スッと手をどける。

 

途端、久の右足が振りあげられた後、秀介の胴体をめがけて落下した。

 

と思ったが、見事右腕で受け止められている。

 

「・・・・・・酷いな、寝ている人間にカカト落としとは」

「寝ている人間が受け止められるわけ無いでしょう」

 

チッと小さく舌打ちする久。

そんな久をフッと笑いながら秀介は視線を移す。

 

そこは久の振りあげられた脚の根元辺り。

具体的には開けた浴衣の裾の中身。

 

「・・・・・・ふむ、似合ってるじゃないか、その・・・」

 

その言葉が続けられる前に久の左拳が顔面に振り下ろされ、しかし左手に止められたのだった。

本来なら中々にバイオレンスな光景になりそうだったが、どうやら秀介の手にかかればコメディー止まりらしい。

 

「ふんっ!」

 

パッと手も足もどける久。

秀介はフッと笑いながら起き上がる。

 

「・・・・・・まだ痛いな、頭」

「・・・・・・無茶するからよ、こんな合宿で・・・・・・」

 

顔を背けつつも心配していたのかそんな事を言う久。

その態度に笑いながら、秀介は再びリンゴジュースを口にする。

 

と、そんなやり取りをしていた秀介達の元に、一人の人物が訪れる。

 

「・・・・・・む?」

 

秀介が声を上げたことでまこも久もその人物に気付いたようだ。

 

「えっと、南浦プロ・・・・・・何か?」

 

久がそう言って迎える。

が、南浦プロの視線の先はどうやら秀介。

 

「・・・・・・何か御用で?」

 

秀介は再びリンゴジュースを一口飲み、それを脇に置いて南浦プロを迎える。

 

南浦プロの様子はどう見てもおかしい。

信じられないものを見たかのような表情だ。

 

「・・・・・・単刀直入に尋ねる」

 

そして南浦プロはそんな表情のまま、秀介に声をかけた。

 

 

 

新木(あらき)(かつら)という人物を知っているかね?」

 

 

 

 

 

カタカタカタとパソコンを操作していたハギヨシの手が止まった。

 

「・・・・・・透華お嬢様、この牌譜かと思われます。

 ご確認を」

「ありがとうございますわ、ハギヨシ」

 

やはり自分達が作業するよりも早く終わったか、さすが万能執事である。

そんな事を考えながら透華はハギヨシからノートパソコンを受け取り、表示されている牌譜に目を通す。

 

「・・・・・・間違いありませんわ。

 御苦労様、ハギヨシ」

「いえ、お役に立てて光栄です」

 

そう言って頭を下げると再びハギヨシはどこかへと消えた。

 

「・・・・・・」

 

瞬間移動さながらの光景を純が不思議そうに見ていたが、すぐに透華が見ている画面に目を向ける。

 

「んで、その牌譜は誰のなんだよ」

 

その言葉に、透華は表示されている名前を読み上げる。

 

 

 

「・・・・・・新木桂・・・・・・」

 

 




まこが可愛く見えたら作者の勝ちということで。

追記:点数ミスがありました、ご指摘感謝です。

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