咲-Saki- とりあえずタバコが吸いたい先輩   作:隠戸海斗

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11夢乃マホその1 模倣と停滞

第三試合 親順

マホ→衣→京太郎→津山

 

 

第四試合 親順

まこ→ゆみ→深堀→未春

 

 

 

「「「「よろしくお願いします」」」」

 

一同が揃って挨拶をして試合は始まる。

 

と、優希がマホに近寄って行った。

 

「ほい、タコスだじぇ」

「ありがとうございます」

 

優希から受けとったタコスを食べながら、マホは起家マークをセットする。

 

 

第三試合

東一局0本場 親・マホ ドラ{3}

 

「マホが起家です!」

 

 

 

「久々にマホのタコスぢからが見られますね」

「そうだじぇ」

 

ムロと呼ばれた少女の言葉に優希も頷く。

 

「・・・・・・タコスぢから?」

 

咲は首を傾げて周囲を見渡すが、優希とムロはもちろん和もクスッと笑っている。

何?何?とおろおろする咲に和は「見ていれば分かります」とだけ説明した。

 

 

(憧れの和先輩・・・・・・一緒の卓で打ってるわけじゃないけど見られてる・・・・・・。

 下手な麻雀は打てないです!)

 

マホは一人気合いを入れ、配牌に目を落とす。

 

 

{三四[五]七九①②②⑦6白中中} {②}

 

 

(それにしてもこのタコスの味・・・・・・懐かしいです)

 

タァン、と{白}を切りだした。

 

そして4巡目。

 

{三四[五]七八九①②②(横中)②⑦中中}

 

「リーチです!」

「早っ!」

 

思わず京太郎が声を上げる。

 

次巡あっという間にジャラッと手牌を倒した。

 

「ツモです!」

 

{三四[五]七八九①②②②中中中} {(ツモ)}

 

「一発ツモ中赤1裏1! 6000オールです!」

 

 

 

「東初に速攻高打点・・・・・・優希ちゃんみたい」

「タコスぢからだじぇ!」

 

咲の呟きに優希が自分の事のように自慢げに笑う。

そこに秀介も卓を覗き込んでくる。

 

「何だい、あの子もタコスちゃんみたいに速攻が得意なのかい?」

 

その言葉に、優希はやはり笑った。

 

「ふっふっふ、先輩、驚くのはこれからだじぇ」

「・・・・・・?」

 

その言葉に秀介は興味ありげに卓に目を向けるのだった。

 

 

 

東一局1本場 親・マホ ドラ{①}

 

{一六八八[⑤]⑧2288東南白} {7}

 

{南}を切り出す。

今度は速攻ではないようで手の進行はゆっくりとしたものだった。

 

そして8巡目。

 

「・・・・・・あれ?」

 

{四六八八八八③[⑤]2(横④)2789}

 

マホはチラッと王牌の方に目を向ける。

 

「・・・・・・これ、宮永先輩ですね」

「・・・・・・え?」

 

不意に名前を呼ばれて首を傾げる咲。

そんな咲の反応を知ってか知らずか。

 

 

「・・・・・・マホ、嶺上でツモれる気がします」

 

 

そう言って{八}を四つパタッと倒した。

 

「カン!」

 

ギュンと手を伸ばし嶺上牌を掴むと、ダァン!と表向きに倒した。

 

 

{四六③④[⑤]22789} {八■■八} {[五](ツモ)}

 

 

「嶺上開花ツモ赤2、4100オールです」

 

 

「り、嶺上開花・・・・・・!?」

 

咲の表情が変わった。

 

この子・・・・・・何!?

 

(・・・・・・宮永さん?)

 

和はその様子を心配そうに見守る。

しかし久は逆に計画通りと言わんばかりに笑っていた。

 

(本物だわ・・・・・・!)

 

 

 

 

 

第四試合

東一局0本場 親・まこ ドラ{⑧}

 

「リーチじゃ」

 

まこ捨て牌

 

{一八西中⑨北①9} {横5(リーチ)}

 

まこが先制リーチを放つ。

 

対してゆみ。

 

{五五八八⑤⑤⑦(ドラ)⑨2(横⑧)8東東}

 

とりあえず{⑨}を切り出すが、まこの捨て牌から視線を外さない。

 

(・・・・・・上家の清澄、確か染め手が多かったな。

 ドラそばの{⑨}も切っているし、どう見ても今回も染め手。

 だが・・・・・・)

 

気になるのは最後の切り出し、{9と5}だ。

 

({9と5}が切られて染め手と言う事は、混一なら最低でも索子が12牌、清一なら15牌、清澄の手牌に来ていたということになる。

 そんな偏りが東一局から・・・・・・いや、無いとは言い切れないが可能性は低いだろう。

 また比較的最初に切られている{西中・・・・・・西はまだしも中}は清澄が切った時点ではまだ初牌、切るのが早すぎる。

 混一を目指すなら当然として、清一を目指すとしてももっと字牌は抱えるのがセオリーだ。

 牌の寄り方と言う物もあるから一概には言えんが、おそらく今清澄の手は・・・・・・染まっていない)

 

仮に染まっていなかった場合、初めに整理されている萬子はそれ以外無いか、もしくはその場で面子が確定していた可能性がある。

逆に不要牌は先に切っておいて{二-五、四-七}で待っているという可能性も。

また筒子は筒子で、{⑨は切られているので⑥-⑨のスジは無いが、⑤-⑧、④-⑦}はあり得る。

 

危険そうな牌を抱えて手を進めて行き。

 

「ツモ」

 

ゆみは手牌を倒した。

 

{五五八八⑤⑤⑦(ドラ)⑧88東東} {(ツモ)}

 

「!」

 

まこはゆみの手牌と捨て牌を交互に見る。

 

まこ手牌

 

{四五六⑤⑥34[5]66發發發}

 

捨て牌は索子の染め手に見せていたのに、{2}を切っておいて{⑦}を止めるとは。

 

「・・・・・・ようかわしたのう」

「やはりここだったか」

 

ニッとまこが笑ってやると、ゆみもフッと笑って返す。

 

「七対子ツモドラドラ、2000・4000」

 

先手を取ったのはゆみ。

 

そのままさらに点数を重ねて行く。

 

 

東二局0本場 親・ゆみ

 

「ツモ、リーチ平和三色・・・・・・裏無し、4000オール」

 

だがもちろんやられてばかりのまこではない。

 

 

東二局1本場 親・ゆみ

 

「ツモ」

 

ジャラララッと手牌を倒すまこ。

 

面前混一(メンホン)一通、3000・6000の一本付け」

 

親っかぶりの逆襲である。

 

「フッ、やってくれる」

「さっきのお返しじゃ」

 

お互いに不敵に笑い合った。

 

 

そしてもちろん、風越の二人もこのまま終わるわけにはいかない。

 

 

東三局0本場 親・深堀 ドラ{二}

 

「リーチです」

 

未春のリーチが入る。

まこもゆみも危険そうな牌を抑えて立ち回るものの、結局ツモられた。

 

{四五六②②1234[5]678} {(ツモ)}

 

安目だったが。

 

「リーヅモ平和赤1・・・・・・裏1、2000・4000です」

「おしかったのぉ」

 

まこの言葉に未春も苦笑いする。

そして点棒を受け取りながら深堀に声をかけた。

 

「ごめんなさい、折角の親番だったのに」

「・・・・・・いや、気にしなくていい」

 

フッと笑って返す深堀。

 

まだまだこれからである。

 

 

 

 

 

第三試合

東一局2本場 親・マホ

 

この局、マホの打牌は突然速くなった。

 

「・・・・・・今度は「まほっち」か」

「「「まほっち?」」」

 

ムロの言葉に和と咲と秀介が首を傾げる。

 

「こいつ、和先輩に影響されてネット麻雀やってて、「スーパーまほっち」とかいう名前の天使でプレイしてるんですよ」

 

へぇ、と咲が声を上げる。

 

「でも激弱でレーティングは1200台なんです」

「1200・・・・・・」

 

やれやれと和が頭を抱えた。

 

 

そうこうするうちに津山からリーチがかかった。

 

「リーチです」

 

途端にマホは降り打ちに変わり、そのまま流局となった。

 

「聴牌」

「「「ノーテン」」」

 

津山が一人聴牌、三人はノーテンで終わる。

 

 

 

「綺麗に降りてたな」

「まるで和みたい?」

 

秀介の言葉に久が笑いながら声をかける。

 

「・・・・・・そうだな。

 最初はタコスちゃんみたいに、次は宮永さんみたいに・・・・・・」

「そ、牌譜でもそうだったわ。

 教わった事を一局しか実践できないのか、それとも・・・・・・」

 

どうなのかしらね、と笑う久。

 

「この合宿の事を教えたら来たいって言ってたし、賑やかな方が楽しいと思って許可したのよ」

「・・・・・・その裏の事情は?」

 

久の考えなど見通していると言わんばかりにそう言う秀介。

久も「あらら」と首をすくめて言葉を続ける。

 

「まこの強化のためよ」

 

まこは過去に見た牌譜を現在の状況に照らし合わせて最適な一打を選ぶ打ち手だ。

全国レベルの牌譜を見せておけば十分戦えると思っていたのだが、大会では鶴賀の妹尾に苦戦した。

特殊な初心者を交えてもっとデータが必要だと判断し、呼んだのだという。

 

「・・・・・・それでさっきから牌譜取ってるのか」

 

秀介の言葉通り、久は手元で先程から捨て牌や流局時の全員の手牌を記入していた。

 

「まーねー、まこは隣で試合入っちゃったし」

 

苦笑いしつつ手の動きは止めない。

 

「・・・・・・で、シュウからみてマホちゃんはどうかしら?」

 

あの能力に興味ある?と久が尋ねると、秀介はふむと考え込む。

 

「・・・・・・エンパスだな」

「エンパス?」

 

首を傾げる久に和が言葉を付け加えた。

 

「共感能力者のことでしたか。

 相手の感覚や感情を読み取る事に優れた才能のことを確かそう呼んだはずです」

「詳しいね、オカルト嫌いとか言ってるくせに」

 

ははっと秀介が笑うと、和がはっとしたように顔を逸らした。

 

「べ、別に知識の一つとして知っていただけです。

 というか、能力とかそんな非科学的な話をしないでください」

「非科学な話は嫌いかい?

 ということは嶺上開花でよく上がる宮永さんの能力も否定するということだな。

 宮永さん、原村さんに嫌われてたんだね、可哀そうに・・・・・・」

「ふえぇ・・・・・・」

 

秀介の言葉に落ち込む咲。

和は慌ててフォローに入る。

 

「そ、そそそそういうことを言っているのではありません!

 み、宮永さん! 志野崎先輩の言うことは真に受けないでください!」

「真に受けないでくださいとか狼少年の気分だ。

 久、慰めてくれ」

「自業自得でしょ」

 

 

そんなやりとりをよそに試合は進んでいく。

 

 

 

東二局流れ3本場 親・衣 ドラ{五}

 

8巡目。

 

マホ 79300

 

{二三四(ドラ)六六六12(横8)367南}

 

一枚切れの{南}を切れば5面張の聴牌。

だが。

 

(・・・・・・不要牌整理の後に引いてきた{南}・・・・・・この牌には何か意味がある気がするです)

 

ここでマホ、{南}を切らずに{二}を切ってリーチをかける。

 

「リーチです」

 

 

(む・・・・・・)

(あら、この打ち方・・・・・・)

 

秀介と久が見守る中、数巡後に京太郎が{南}をツモ切りする。

 

「ロンです。

 リーチドラ1・・・・・・あ、裏が{南}で2つ、満貫の3本場です」

「うわ、マジで・・・・・・?」

 

手に納めておいた{南}が裏ドラに化けた。

 

 

 

「・・・・・・今のは久の打ち方か」

「ええ、そうね」

 

ふむ、と腕を組む秀介。

 

「ホントに変幻自在だな。

 いや、打ち方に合わせてツモも変わってるのか、それとも先を見通して展開に合わせた打ち方を選んでるのか・・・・・・無意識か」

「あんまりそんな事言ってると、また和に言われるわよ?」

 

久はそう言って笑いながら和の方を見る。

が、和は和で隣の咲に気を取られている様子。

先程のマホの嶺上開花の時から気にかけているのだ。

秀介も咲の様子がおかしい事に気付いたようだ。

 

「宮永さんの様子がおかしいな」

「心配?」

 

秀介の呟きに久が声をかける。

そりゃそうだ、と答えかけて秀介は久の笑顔に気付いた。

 

「・・・・・・お前の計画通りか」

「あら、分かっちゃった?」

 

ふふっと笑う久。

 

「後輩苛めとは陰湿な。

 いつからそんな子になってしまったんだ」

「あんたには言われたくないんだけど」

「そうですよ! 後輩をいじめるなんてよくないですよ!

 うちのキャプテンみたいに優しくなるべきです!」

「うむ、そうだぞ久」

「だからあんたが言うなって」

 

と、そこまで話してピタッと両者の会話が止まった。

そしてくるりとそちらを向く。

なんか一人増えた?

 

「お邪魔してます、先輩」

 

そこには隣の卓を見ていたはずの池田がいた。

 

「・・・・・・昨日の・・・・・・池田って言ったっけ?」

「はい! 私も見学させてください!」

「別にいいけど」

 

秀介の言葉に池田は卓に視線を向ける。

というか、衣に向けている。

 

「・・・・・・何でこっちに来たんだ?」

「なんか天江衣がやられてる風だったからだし!」

 

うにゃぁと笑いながら池田は返事をした。

かつてかなり一方的にやられた敵がやられているというのは嬉しいものだろうか。

と、久が秀介の肘をつんつんとつつく。

 

「・・・・・・仲良くなってない?」

「昨日食事してたの見なかったのか?」

「見たけど・・・・・・それだけ?」

「その後打ったけど」

 

秀介がそう返すと久は何やら不機嫌そうに腕を組んだ。

そんな仕草を見て秀介は久の頭にポンと手を乗せる。

 

「妬いてるのか? お前可愛いな」

「ちょっ!? なっ! そ、そんなんじゃないわよ!」

 

「そこ、静かにしてろ」

 

不意に靖子に注意され、久は渋々黙った。

秀介はそんな久の様子を見ながら笑っているのだった。

 

 

そして周囲にはそんな二人に「いちゃいちゃしやがって」と視線を向ける人たちがいたりいなかったり。

 

 

 

東三局0本場 親・京太郎 ドラ{二}

 

この局全員の手の進みが悪かった。

一向聴までは進むのだがそこから有効牌が入って来ない。

その上鳴くことすらできない。

 

(・・・・・・何だコレ・・・・・・)

(っ・・・・・・手が進まない・・・・・・)

 

京太郎も津山も心の中で愚痴る。

 

 

まだ昼間だというのに。

 

((((始まったか・・・・・・!))))

 

衣を知る人間は揃って彼女に目を向ける。

 

 

麻雀牌は34種×4牌ずつで136牌。

その内配牌で13牌×4人=52牌が消費される。

王牌は必ず14牌残すので残りは70牌。

これを4人で順番にツモっていくとそれぞれ17牌ずつのツモ・・・・・・と、余り2牌。

親と南家がツモって終わる形になる。

 

 

つまり。

 

「ポン」

 

今北家の衣が対面の津山から{南}をポンをしたことによりツモ順がずれたことで。

 

 

 

最後の一牌、衣がそれに手を伸ばす。

 

その支配力を知るものは再び訪れたその光景に思わず目を瞑る。

 

 

海の底より月を(すく)い取るが如き光景。

 

 

{(ドラ)二二七七34789} {南横南南} {(ツモ)}

 

 

「ドラ3・・・・・・海底撈月(ハイテイラオユエ)

 

 

満貫、2000・4000。

 

 

東三局、早くも衣の支配が始まる。

 

 

 

マホ  87200

衣   46900

京太郎 26000

津山  39900

 

 


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