「なんなんだよ。あいつ」
僕は少しイライラしていた、人を呼びだすなり変なこと聞いてきやがって。
『大赦のために戦うか、勇者のために戦うか』
どういう意味だ?勇者は大赦、神樹のために戦うということは知っている、だが考えると僕は何のために戦っている?勇者のために戦っている、いや勇者を守ることが僕の役目だ。でも何か裏がありそうな感じがする。
「寝よう。うん、考えてもわからん」
明日は三人とお出かけだ、こんなことを考えていては明日の楽しみが減る気がする。明日を楽しむためにまた今度考えよう。僕はそうして眠りについた。
~翌日~
なんか下が騒がしい。
「祈~、起きなさい。お友達が来てるわよ~」
母親が下で何か言っている。友達誰だろう?予想は付くけど。
下の階に行き扉に耳をあててなんの話をしているか聞いてみた。
「おい、須美。祈の部屋に入ってみようぜ」
「駄目よ銀。いくらなんでも失礼でしょ」
「そうだよ~ミノさん~」
「じゃあなんだ?興味無いのか?」
「う、興味無いと言ったら嘘になるけど……」
「私はどっちでもいいかな~」
母さんが話に入ってくる。
「あら、貴方達祈の部屋に興味あるの?」
「はい!」
「私は……」
「どっちでも~」
「祈の部屋はね~」
ちょっとめんどくなる前に扉を開け中に入る。
「母さん変なこと言わないでね。あと、みんなおはよう」
「あら、おはよう祈。変なこととは失礼ね」
「お!祈おはよう!」
「おはよう祈くん。お邪魔してるわ」
「祈くん~おはよう~」
やっぱり鷲尾さんたちだった。起きる時間が遅かったから迎えに来たのか?でもまだ七時だぞ、集合時間は九時半の筈なんだけど。
「鷲尾さん、なんでこんなにみんな早いの?てか、なんで僕の家にいるの?」
「う、それは……」
鷲尾さんは目をそらして……
「ぎ、銀!パス!」
「え!私か!?」
鷲尾さんが銀に話を振った。急なことだから銀は困っている。
「祈の家に来た理由だよな?」
「うん」
動揺している銀。そこに乃木さんが……
「わっしーとミノさんはね~、祈くんに早く会いたいからきたんだよ~」
「は?」
鷲尾さんと銀が顔を赤くして慌てて言う。
「そそそ、そのっち!?何言ってるの!」
「そうだぜ!園子!」
冗談だろ?そんなことあるはずが。
「青春ね~祈~」
母さんが朝ごはんを並べながら言う。
「う、うるさ……」
並べられたご飯を口に運ぼうとしたら。
「これから三人とデートでしょ?モテてるわね~」
「「「え!?」」」
「はぁ!?」
母さんがそんなことを言う。いつもマイペースな乃木さんでも慌てている。僕は箸から食べ物が落としてしまう。
「何言ってんの!そんな訳ないだろ!?」
「いや、祈が珍しく女の子を呼んだからそうなのかと」
その後の二時間は大変だった。母さんの質問攻めで全員やられていた、聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい。でもそのおかげで全員を名前で呼ぶようになった。
「さっきのことは忘れて、今日はたのしもうね~」
園子が元気に言う。
「そういえばさどこに行くの?」
そう、僕は行き先を聞いていない。みんなは知っているっぽいけど。
「ここは銀さんに任せなさい!」
銀が手を挙げて言う。行き先はイネスという場所らしい。イネスに着く前に僕は母さんに言われた言葉を思い出した。
「両手に花状態ね。祈、楽しんできなさいよ」
「(両手に花、ね)」
「じゃあみんな今日は楽しもう!」
「「おおーー!!」」
銀が言った後に須美と園子が元気に言う。それに続いて僕も言おうとした。しかし……
――――ピタッ。
「(樹海化か……)」
時間が止まる。全部止まった。お役目の時間だろう。神力を発動して、勇者と連携して行こう、そう思い声をかける。
「須美たち、大橋に……!?」
何故か勇者である三人も止まっていた。異変だ。こんな事が起きるなんて、神樹に話をしようと思って僕は言葉を飛ばした。
「神樹!どういうことだ!?」
だけど神樹から返信はこない。だが……
「(花びら?)」
花びらが周りで散っていてた。それが僕を包んだ、そうして目をあけて見た光景は。
「(なんだ、バーテックスか?でも数が多すぎる)」
知らない場所だ。だけどバーテックスがいる、ということはここは樹海だろう。それに、おくに誰かいる。神力を使い宙に浮く。
「(神力を最大限に使ってみるか。ここなら人目を気にしなくていい、例え誰かにバレても僕のことは知らないだろう)」
剣を取り出す。そして頭の中に思い浮かんだ単語を口にする。
「――神装『天照』」
僕は光に包まれる。そこから現れたのは一言で表すなら『神』。全てを照らす光。天を照らす光。『天照大御神』。剣も強い光を宿している。
僕は白を基調とした神装を身にまとっている。神力が溢れているのが分かる、無限に力が湧いてくる。自分の力を試すために剣を振った。
「(衝撃波を飛ばすイメージで……)せいっ!」
横薙ぎに剣を振る。すると、光の衝撃波が敵を飲み込んでいく。
「おおぉ…………」
自分でもびっくりしている、まさか神力がここまで凄いとは思わなかったから。力を確認しおくに向かおうとした……そのときだった。
「君は誰?どうしてここにいるの?」
この声は……
「園子?どうしてここに、止まっていたはずじゃ……」
そう言い後ろを振り向く、そこにいたのは。
「え?そ、園子だよね?」
金髪、声、瞳、それに紫の槍。乃木園子だろう。
「なんで私の名前を…………!?」
園子は目を見開いて僕を見ている。体が震えてる中、震える口を動かして
「い、祈……くん………」
そう言うと槍の先端部分が僕を狙い飛んでくる。
「!?園子!どうし「い……ん……そ…して……」て?」
「祈くんこそどうして!!!」
「っ!?」
園子の声とともに槍の先端が分裂する。自由に飛び回り僕を狙う。
「あの時に約束したじゃん!『また、みんなで遊ぼう』って!なのに、どうして!?どうして死んだの!?」
死んだ?僕が?だが考えている暇はない。まずは園子を止めないと。
「園子。何か勘違いしているのかは知らないけど、僕は死んでいないし、死なない」
「…………………」
園子は黙り込んでいる。だけど武器を構え
「私は大赦の勇者、乃木園子。私は神樹様に最も近い人間……神として、星崎祈。あなたを排除します。昔を繰り返さないために」
園子から神力が出ている。それに応じ僕も剣を構え、言葉を発する。
「僕は神、星崎祈。邪魔をするものは神の力を振るい殲滅させる。例え、それが友達であっても」
こうして「『半神』乃木園子」と「『神』星崎祈」の戦いが始まった。
テレビアニメのあの最終バトルのところです。祈が飛ばされた世界の祈は死んでいるという設定です。そこのところは活動報告にて書いておきます。
次回予告
「焼きつくせ!神光!」
「東郷さん!?」
「祈くん……」
「神樹。僕は……」
「まさか、未来の勇者と戦うことになるなんてね」
第五話 別未来の戦闘