星崎 祈は勇者になる   作:小鴉丸

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第二話 再開

~友奈side~

 

 

「友奈ー!」

 

「友奈先輩ー!」

 

「! 風先輩!樹ちゃん!」

 

その場から離れずにいると先輩と樹ちゃんが来た。

 

「無事だったわね……よかった」

 

「せ、先輩ここは……ここはどこなんです?」

 

「…………」

 

風先輩は黙り込んで、何かを決意した様に口を開く。

 

「二人共、今まで黙っててごめんなさい。ここがどこなのか、それと何で私達だけなのか……教えるわ」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

樹ちゃんは両手を胸の前で握りしめる。

風先輩がいつもと雰囲気が違うから不安なのだろう。

 

「まずここは樹海という場所よ。ちょっと自分の端末を見てみて」

 

そう言われて手に持っている端末を見る。そこにはマップが表示されていて、私達三人の名前が表示されている。

 

「こ、こんな機能あったっけ?」

 

「それは緊急用のアプリよ。個人的に呼んで入れさせたやつね」

 

「あの時の……」

 

勇者部に入部する時に呼ばれてこのアプリをダウンロードしていたのだ。何のアプリかは知らなかったが。

 

「ね、ねぇお姉ちゃん……」

 

「どうしたの樹?」

 

「他にも点があるんだけど……」

 

「点?」

 

樹ちゃんの質問に疑問を持っている先輩。

 

「ノイズ?バーテックスじゃないわね、じゃあこれは……」

 

それを自分の端末を見て考える。

 

「この点、近づいてきてません?」

 

私も見てみると先程無かった点が三つあり、それがこちらに近づいてるのが分かった。

 

「友奈、樹、私の後ろに来なさい」

 

大人しく風先輩の後ろに隠れる、そして先輩は私達を庇うようにして立つ。

その間に段々と点は近づいてきて――

 

空から影が降りてきた。

 

「あれ?先輩?」

 

その影に話しかけられ視線をそちらに向ける。するとそこには。

 

「? 東郷?」

 

そこには制服ではない違う服装に身を包んだ東郷さん、それと――。

 

「風に友奈?それと樹も居るのか」

 

「わぁ~、勇者部勢揃いだ~」

 

銀ちゃんとそのちゃんもいる。

それを確認して風先輩の後ろから前に出る私達。

 

「どうしてあんた達が――」

 

風先輩は目を丸くしている。

 

「まぁ、いろいろとありまして」

 

 

 

 

~須美side~

 

 

「という事は〜……」

 

「どうしたのそのっち?」

 

私の言葉を聞いてそのっちが端末を操作し始める、そして数秒するとその体に変化が起きた。

 

「やっぱりだよ〜!」

 

光に包まれたかと思うと花びらが舞って、姿が制服から変化していた。

その姿は微妙な変化はあるが、過去に四人で戦っていた時に身にまとっていた服――勇者の装束だった。

 

「どうして?勇者システムは確かに回収されたはずじゃ……」

 

「そんな事はどうでもいいだろ!」

 

銀も端末を操作して変身をする。私もそれに続く。

 

「ふぅ……この姿も久々だな」

 

「ええ、そうね」

 

やはり、という感じで前の戦いを思い出してしまう。

 

「あれ~?他に人が居るみたいだよ〜」

 

「!? 祈くんかしら!?」

 

「お!それはあるな!」

 

期待を膨らませる。

祈くんは一人でバーテックスと戦っているらしい、そしてこの状況会える可能性だってある。

だが帰ってきた言葉は違うものだった。

 

「いや~それが三人なんだよ~。それもノイズで文字が化けてて分からない~」

 

一人なら可能性はあったが三人となると確実に違う事が分かる。

 

「三人?アタシ達の他に勇者か?」

 

大赦からの連絡もあれから来ていない。てっきり勇者のお役目は終わったと思っていたのだが、そんな事はなかったという事なのか?

 

「嘘を教えられた?」

 

「いやそんな事は――ありそうだなぁ」

 

「とりあえず行ってみようよ~」

 

「そうね」

 

確認するにはその場に向かった方が早い。

私達はノイズの場所に飛んだのだった。

 

 

 

 

〜友奈side〜

 

 

「――とこんな感じですね」

 

東郷さんがこの経緯を軽く話してくれた。

 

「……聞きたいことはいろいろとあるけど、それも後からね」

 

それを先輩は聞いて、端末を見た後に奥を見た。

 

「な、なにあれ……」

 

異様なシルエットが見える。

動物でも人でもない、例えるなら化け物だ。

 

「来たわね」

 

「お姉ちゃんあれ何……?」

 

樹ちゃんは恐ろしがっている。私も手が震えているのが分かった。

風先輩はそれに冷静に答える。

 

「あれはバーテックス。この世界を滅ぼそうとするものよ」

 

その間にも徐々に近づいてくる。

 

「そしてこの空間に居る私達はこの世界――神樹様を守る勇者。バーテックスを倒すことが出来る唯一の手段」

 

そう言うと端末を操作して体が光に包まれる。

 

「樹と友奈は逃げなさい。後は私が何とかするわ」

 

背を向けて言う。だけどそれに樹ちゃんは――

 

「わ……私も戦う。お姉ちゃんと離れたくないもん!」

 

「樹……」

 

あまり感情を表に出さない樹ちゃんが覚悟を示している。

それなのに私はまだ震える。

 

「友奈ちゃん、怖いのなら逃げてもいいのよ?これは辛い戦い。国を背負う戦いなのだから」

 

優しく私に言いかける東郷さん。その顔は何かを物語るようで――。

 

「わっしー!攻撃、来るよ~!」

 

化け物、バーテックスと呼ばれたものから何かが出てきてこちらへ飛んでくる。

 

「! 友奈ちゃん!私の後ろへ!」

 

珍しく大きな声で言う、その背中はとても大きく見えた。

 

「銀は先輩の援護!そのっちは私を手伝って!」

 

「「了解!」」

 

東郷さんの手の内に二丁の銃が現れる。

そしてそれを慣れた手つきで飛来物を狙い撃つ。そのちゃんも東郷さんが撃ち漏らしたものを槍で払う。

 

「……凄い」

 

自然とそんな言葉が漏れていた。

銀ちゃんも二本の剣を自在に操り切り払っている。

 

そして私の中の震えは皆を見ていたら消えていた。それどころか――。

 

「友奈ちゃん?」

 

私は端末を操作する。

すると先程まで無かった花のマークが表示されていてそれを自然とタッチする。

次の瞬間私の体が光に包まれる。

 

「で、出来た……」

 

私の服がピンク色の別の服に変化していた、それは樹ちゃんもだ。

不思議と体の内側から力が湧く。

 

「これなら――!」

 

「友奈ちゃん!?」

 

突然前に出た私に驚く東郷さん。だけど私はバーテックスに向かって走り続ける。

 

「おおぉぉぉおおおおおッ!!!」

 

そして跳躍。

拳を握りしめて、力を込める。

 

「戦える!!」

 

振りかざした拳は敵を貫いて大きな穴が空いた。

 

「続くわよ!」

 

風先輩の声が上から響く。

東郷さんの狙撃で敵を怯ませ樹ちゃんがワイヤー(?)で敵を縛り動きを抑える。

その隙に風先輩、銀ちゃん、そのちゃんが攻撃を仕掛けた。

 

「友奈凄いじゃない!」

 

「流石ゆーゆだよ〜」

 

攻撃を終えた二人が私に寄って来る。

えへへ、何だか褒められると照れるなぁ。

 

「再生する前に押し切る!」

 

銀ちゃんはまだ攻撃を続けている、東郷さんもその援護だ。

 

「銀、東郷!一旦私の場所に来て!」

 

風先輩が端末で連絡を入れる。

そして二人が飛んでくる。

 

「どうしたんですか先輩。早く押し返さないと――」

 

「何をしようとしていたかは分からないけどあいつを封印するわ。やり方は説明が書いてあるからこれを見て!」

 

風先輩はそう言って敵の奥に走る。

 

「待ってよお姉ちゃん~!」

 

樹ちゃんもそれに続いていく。

東郷さん達は端末を見て納得をしている。

 

「なるほど、追い返すのではなく封印……」

 

「前よりも楽だね〜」

 

「アタシ達も行くぞ!友奈も!」

 

「え?う、うん!」

 

敵を六人で囲むようにして立つ。

 

風先輩がさっき言ってた封印の方法はまず精霊を出す事かららしい。その手順がアプリに書いてある。

 

「(これを読まないといけないの?何だか難しいなぁ~)」

 

思いながら口にする。

二行くらい読むと精霊と呼ばれるものが出現した。

 

「大人しくしろぉぉぉおおッ!!」

 

「「ええっ!?」」

 

大剣を地面に叩きつけて精霊を出現させた風先輩を見て驚く私と樹ちゃん。

 

「要は気合を込めればいいのよ」

 

「だな!」

 

東郷さんとそのちゃんは既に精霊を出していて銀ちゃんは一本剣を地面に突き刺して出現させる。

それと同時に敵を囲う円が浮かび上がった。

そして敵の一部分が剥がれて何かがゆっくりと出てくる。

 

「なんか出たー!」

 

「あれは御霊よ!あれを壊せばバーテックスは消滅するわ!」

 

「なるほど!それじゃあ私が行きます!」

 

跳躍、そして御霊に目掛けて攻撃する。

 

「勇者――パァァアンチ!」

 

ゴッ、と鈍い音が鳴る。そして私の腕が痺れて――。

 

「かっ、硬い……。痛い……」

 

手を抑える。

その手はジンジンとして腫れたような感じしかしない。

風先輩が続いて攻撃するが傷一つ付いていないように見える。

 

「くっ!」

 

そのちゃんが槍で攻撃するも結果は一緒だ。

 

「ほんと硬いね~」

 

「時間はかけてられないわ、私が渾身の気合を込めて――?」

 

風先輩が剣に力を込めて攻撃しようとした瞬間。

私達六人とは別のシルエットが御霊の上に見えた。

 

 

 

 

~須美side~

 

 

「あれは?」

 

先輩が上を見ながら言う。

上には御霊があるだけだと思うが……。

 

「園子!須美!」

 

銀が目を開いて私達に話しかける。

 

「うん〜!多分そうだよ〜!」

 

そのっちは少し嬉しそうだ。その二人の反応を見て私は一つの答えにたどり着く。

 

「あれを知ってるの?」

 

先輩が聞いてくる、それに私は自身を持って答えた。

 

「ええ、知ってます。あれは……私達の神様ですよ」

 

その影は段々と近づいてくる。

その度にはっきりと見える。

 

淡く輝く、白い装束に身を包み、刀を構える。その刀には炎を宿らせ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ……久しぶり、だね」

 

御霊ごとバーテックスを消し去った影――一人の男の子が宙に浮いたまま私達に話しかけた。

 

前とは違いボロボロの服を身にまとっている男の子。それは、私達三人が待ち望んでいた――

 

「「「祈(くん)!」」」

 

その期待(約束)に。

 

「ただいま。須美、園子、銀」

 

答えてくれた。




次回予告

「祈くん~!」

「二人?」

「直接会うのは初めてだな」

「先代の勇者ね……」

「帰ってきたよ」

第三話 守られた約束

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