星崎 祈は勇者になる   作:小鴉丸

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年明け前に投稿――相変わらずの文章力、ですが読んでいただけると嬉しいです!(無理矢理感が目立ちますけど温かい目で見守って頂けると幸いです)


第十四話 不安と覚悟

〜祈side〜

 

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい祈」

 

祭りが終わり家に帰った僕は母さんに泊まりのことを伝えた。

 

「それならいいわよ〜、国のためだものね〜。でも……」

 

思ったとうりに了解が出た。だが他になにかあるようだ。

 

「須美ちゃん達に手を出さないようにね」

 

何かと思ったら……。

 

「出すわけないでしょ。じゃ僕は寝るから」

 

呆れて適当に流した。

 

「はいはい。お休みなさい〜」

 

部屋を出る前に母さんの顔を見るとニコニコしていた。

 

二階の自分の部屋に行く。

 

「(天照は居ないか)」

 

扉を開けて部屋を見渡すと天照の姿はなかった。服を着替えてベットに横になる。

 

「(明日から訓練か、昔のようにやるとしても一人じゃないとしずらいな、何とかして頼んでみるかな)」

 

昔ならあいつとか――

 

「ん?」

 

“あいつ”って誰だ?

僕はいつも若葉と……そう考えてるうちに僕は意識を手放していた。

 

 

 

 

〜須美side〜

 

 

「よろしくお願いします!」

 

私達は声を揃えて言った。合宿場所は前と同じだ。夏休みが終わりに近づいてくる中、私達は夏の最後の仕上げに入った。戦闘においてチームワークは大切だ。それをより深く高めるために夏休みを使い合宿をし、なるべく四人で訓練をして連携をとれるようにする。

 

「とりあえず荷物を部屋に置いてきてください」

 

「はい!」

 

部屋に荷物を置いて、私達の二回目の合宿がはじまった。

 

 

 

 

と、思ったのだが。

 

「えー!祈は一緒にしないのかよー!」

 

「あはは、ごめん……」

 

祈くんが私達と別に訓練したいと言ったのだ、大赦の人はそれを認めているらしい。

 

「(私達とは力が違うからかしらむしろ私達が迷惑に?)」

 

「でもお昼ご飯は一緒に食べるからさ、それまではお互いに頑張ろう」

 

「んー祈がそう言うならしょうがないか。じゃまた後でな!」

 

銀が言った。そのっちは私と同じことを考えているのか少し表情を曇らせていた。

 

「うん三人とも後でね」

 

そして祈くんは私達とは別の場所で訓練をするために移動した。

 

「それじゃあ私達も始めましょう」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

足を引っ張らないように頑張らないと。

私達も勇者だから、祈くんにだけ無理はさせれない。

 

 

 

 

〜祈side〜

 

 

「随分話が上手く進んだな」

 

須美達と別々になって僕一人になった時に天照が現れた。

 

「大赦側に手を貸してくれる人がいるからね」

 

本当に感謝しないとな春信さんには。

今回の合宿をするにあたり僕の都合のいいように話を回してくれたらしい。

 

「そのおかげで俺は実体化出来るしな」

 

浮いていた天照は地面に降りる。そしてぽん、と僕の肩を叩いた。

 

「ま、話すのは後からだな教えることは教えてやるから早速準備しろ」

 

「はいはい」

 

近くの岩にジャージを投げ星樹を取り出す。

 

「で何するの?」

 

地面に剣を突き刺して天照に話す。

 

「最初は軽い運動その後に神降ろしの使い方だ。どうやらこの時代はそれじゃないとあいつらを殺せないからな」

 

それとはバーテックスの事だろう、確かに須美達はバーテックスを退けるのが精一杯だ。

 

「じゃあ頼むよ」

 

「よし、始めるぞ」

 

まずはストレッチや走り込みから始まった。天照も一緒にしたから最初は驚いたけど見てるのが暇だからかな?そして筋トレをして一旦休憩を挟んだ。

その後は星樹を使った特訓、何だけど……

 

「え……何で天照も持ってんの?」

 

「持ってちゃ悪いか。俺のでもあるんだぞ」

 

「いやそういう事じゃないけど」

 

天照も星樹を手に持っていた。二本ある事に疑問を持つが天照が自分で頼んで作ってもらったらしい。

 

「取り敢えずかかってこいよ遠慮は無しだ」

 

剣を構える天照。

うわぁ、妙な威圧があるな。そんな事を考えながら僕も構えた。

 

「もとからそのつもりだし!」

 

地を蹴って天照に走る。その場には剣を打ち合う音が響いた。

 

 

 

 

〜園子side〜

 

 

「ふ〜、疲れたよ〜」

 

ゴロンと私は畳の上に寝転んだ、そのままコロコロと転がる。

 

「横になるのはいいけど寝ないでねそのっち」

 

「大丈夫大丈夫〜……ふぁ〜っ」

 

欠伸が出てしまった。

横になったら何だか眠く――

 

「そのっちそのっち、はぁだから言ったのに」

 

わっしーが顔を両手でぺちぺちとしてくる。

 

「わっしーの手〜冷たいなぁ〜。気持ちいいよ〜」

 

「そ、そのっち恥ずかしいわ」

 

私が手を握ると恥ずかしがるわっしー、えへへ〜可愛いよ〜。

 

「おーっす飲み物貰ってきたぞー。って何してんだ二人共?」

 

その光景を飲み物を取りに行ってたミノさんが見て微妙な表情になる。

 

「わっしーとじゃれてるの〜」

 

「もう!そのっち!」

 

「とてもそうには見えないけどな、まぁもうすぐ昼ご飯だから準備しろよー」

 

「ご飯!?」

 

ぴょんと起き上がる。

 

「相変わらず反応が早いわね」

 

「ほらほら二人共行こうよ〜!」

 

「ホントだよ」

 

二人を引っ張る私とそれに少し呆れつつ笑うわっしーとミノさん、ご飯を食べたら昼も訓練の続きがある。それと祈くんは昼には戻るって言ってたから今から会えるだろう。

 

「(ふふっ、早くお話したいな〜)」

 

 

 

 

〜祈side〜

 

 

やっと終わった……!

みんなより一足先に食堂に着いた僕は机に突っ伏していた。

 

「はぁ〜!腹減ったな〜!」

 

「うるさいぞ、少しは静かにしろ」

 

「お前のせいで疲れてんだよ!それにお腹空いた!」

 

「そんなん知らん」

 

天照は呆れた顔をしつつ僕を見ながら言った。

結構全力を出したつもりなのに歯が立たなかった、天照には褒められた(?)けど自分では認めれない動きだったし。

 

「他の勇者が来る前に俺は戻るぞ。それと昼は神降ろしの事についてだ」

 

「分かった。……ってご飯は?」

 

どこかに行こうとする天照に声をかける。お腹は空くだろう?多分……。

 

「適当にそこら辺で食べるぞ?金はあるからな」

 

ポケットから財布を取り出して動かす。

 

「へ、へぇ……」

 

「じゃまた後でな」

 

そう言ってその場から消えた天照。それと入れ違いで須美達がやって来た。

 

「祈くん早いのね」

 

「そんなにお腹空いたのか?」

 

「まぁそんなとこ。それと――」

 

「それと?」

 

言葉を繋げようとした口を閉じて言い直す。

 

「全員揃ったなら準備しよっか」

 

お腹空いてるのは別に否定する理由は無いし。僕は先に食事の準備を始めた。

 

「そうだね〜」

 

それと、わいわいしてる時間が僕は好きかな……。

三人を見ながら心の中で言った言葉は誰にも聞こえない、そうして準備をする手を動かした。

 

 

 

 

〜天照side〜

 

 

祈にはああ言ったが嘘っぱちだ。本当は樹海に用があった。

 

「おい来たぞ」

 

『済まないな星崎祈』

 

なぜか神樹は俺のことをずっとこう呼んでいる。

 

「……で、何なんだ?わざわざ呼び出して」

 

『…………』

 

「神樹?」

 

急に黙ったから何かと思う。

 

『近いうちに敵が一気に攻めてくる、巫女にも連絡はするが星崎祈に言っておこうと思ってな』

 

「それをなぜ俺に言うんだ。それこそ祈に言うべきだ」

 

そうだ。俺に言う意味が分からない。

 

『もしもの時のためだ』

 

こいつが“もしも”ね……。

俺は手につけてるブレスレットを一度見て。

 

「あぁ、分かったよ。その時は俺も出る、だけど完全に戻ってはないぞ」

 

『今の勇者達のシステムに新しい力を追加したから少しは手助けになると思う』

 

新しい力?

 

「どんな力だよそれ。前みたいな神降ろしか?それとも違うやつか?」

 

『違う。システムの名は満開、一時的に強大な力を得ることが出来る』

 

「それは凄いな……で、代償は」

 

問題はそこだ。どのような力が、じゃないどのような代償が払われるか、だ。

俺の質問に神樹は答える。

 

『力の代償は――――』

 

 

 

 

 

「……相変わらずたちが悪いな」

 

それを聞いて俺はもう十分という感じで去る、それを神樹は何も言わずに俺を返してくれた。

俺は元の世界に帰りふと思ったことがあった。

 

「(その代償は()が黙ってないぜ)」

 

 

 

 

〜祈side〜

 

 

「天照遅いなー何してんだ」

 

ご飯を食べて僕は先に訓練場に戻ったがそこに天照の姿はなかった。

 

「悪い遅くなった」

 

と思ってたら来た。

 

「長かったね、何食べてたの?」

 

「いろいろだよいろいろ」

 

深く聞くのはやめておこう。で確か昼は神降ろしか。

 

「神降ろしって他になにかあったっけ」

 

天照が説明をする。

 

「二種類あるな。一つはお前が前に使った星樹に力を宿すもの、そしてもう一つはその神に関係する武器を具現化するのだ」

 

「武器?」

 

「んー例えば――」

 

片手で頭を掻きながらもう片方の腕を前に出して手を開く。そして言葉を発する。

 

「神具顕現――天之尾羽張」

 

開いている手に剣の形が作られていき手に収まった。よく見るとその剣は少しだけ赤みを帯びている。

 

「と、まぁこんな感じ」

 

「神具顕現……か」

 

「これは勇者に渡すことも出来るぞ。力の共有だな」

 

顕現させた武器を消失させる。

 

「宿す方の神降ろしは複数体降ろしたらその分危険もあるんだ、強大だからな。それと違って顕現はあまり大きな危険は無い」

 

「ふ〜ん。じゃあ考えないといけないのか」

 

「そうだ、自分の体がどうなってもいいならやればいいだけだしな」

 

それって――

 

「自分のことでしょ?」

 

昔を思い出して言う。

 

「当たり。それとお前でもある」

 

説明すんだしやるか、と言って午前の続きが始まる。

 

「(逃げたな)朝みたいになると思うなよ。次は僕が勝つ」

 

「勝負じゃないんだがな」

 

笑を浮かべながら天照と僕は剣を構えた。そして――

 

キィン!

 

剣と剣がぶつかり合う。

気合を込めて振り払い流れをこちらに持ってこようと考える。

 

「(あいつに流れを来させないように……)」

 

バーテックスとの戦いでも攻め続けて敵に攻撃の隙を与えないようにする。

距離を詰めて連撃、だけど天照はそれを避ける。

 

「らあああぁぁああっ!!」

 

声を上げて攻撃の速度を上げる。

 

「…………」

 

避けてる最中に剣を持ってない方の手を少しあげる、それに僕は一瞬だけ目を向けた。

 

「(何だ?)」

 

そして視線を前に戻した。

 

「っ!?」

 

いつの間にか首筋に天照の星樹が当てられていた。

 

「単純だな。そんなんだと死ぬぞ?」

 

剣を下ろして言葉をかけられる。

悔しいが何も言えない、これがバーテックスとだったら確実に死んでいたのだから。

 

「はぁ……」

 

地面に横になる僕とそれを見下ろす天照。まさしく敗者と勝者の絵だ。

 

「だけどまだやるよ、体は動くからね」

 

「そう来ないとな」

 

それから僕らは暗くなるまで剣を打ち合っていた。

 

 

 

 

〜銀side〜

 

 

「ふう〜!癒されるな〜!」

 

「そうね。……先に忠告しとくけど前みたいなことをしたらただじゃ済まないわよ?」

 

おおう、須美さん目が怖いです。

特訓が終わって夜になり寝る前に私達はお風呂に入っている。

 

「そういえば明日はどこに行くんだっけ〜?」

 

「神樹様に会いに行くんだろ?忘れるなよ」

 

「以外だわ、銀が覚えてるなんて……」

 

目を見開いて驚いてる須美。

アタシってそんなにアレか?

 

「そりゃあ覚えるさ。三人で立てることが凄いことだしな」

 

須美や園子の家は格式が高く有事の際に神樹との接触が許されてるらしい、私の家は発言力があるだけでこのような事に立ち会えるのは珍しい。恐らく勇者だからだろうが……。

 

「あ〜思い出したよ〜!でも何で祈くんは来ないんだろうね?」

 

夜ご飯の時にその話は出た。どうやら祈は家の格式関係なく大赦側から特別扱いをされている。

 

「色々とあるんじゃないか?」

 

「本人も聞かないでって言ってたものね」

 

大赦側は私達と違う力って気づいているのだろうか?

 

「昼は自由なんだっけー?」

 

考えていると園子が話しかけてきた。そういえばそうだったな、なんて思う。

 

「それならイネスでも行く?ジェラート食べに」

 

その言葉にすかさず反応するアタシ。

 

「しょうゆ味こそ最高だよな!な!」

 

「はいはい」

 

「わ〜!わっしー冷たい〜」

 

 

 

そんなにやり取りをしていてお風呂から上がったらやっぱりというか園子が話題を持ち出した。

 

「就寝タイムだよわっしー!ミノさん!」

 

「私は眠いわ」

 

「うわ〜ん!まだ何も言ってない〜!」

 

何、とは前と同じことと思う。

 

「結果は変わらんだろ?」

 

「……うん」

 

「ええ」

 

「それなら今日はもう寝ようぜ、明日は早いんだ」

 

「それでいいそのっち?……そのっち?」

 

「Zzz……」

 

寝てる。なんて早さだ。

 

「おい須美、アタシ達も寝よう」

 

「え、ええそうね。おやすみ銀」

 

「おう、おやすみ須美」

 

言葉をかけ合いアタシ達は眠りについたのだった。

 

 

 

 

〜須美side〜

 

 

次の日の朝、神樹様に会いに行くために私達は滝にうたれ身を清めた。その後に神樹様に会う。

 

「こ、これが神樹様」

 

「…………」

 

私は神樹様の前に立って言葉を失っていた。見た目は普通の木だ、樹海化したときのような大きさもないだけど雰囲気が凄かった。

私達は巫女さんの許しを得て神樹様に触れた。

 

「神樹様って少し温かいんだねわっしー、ミノさん」

 

「そうだな。……って須美?大丈夫か?」

 

「…………(な、何これ……頭に)」

 

「どうした須美?体調でも」

 

「い、いや……大丈夫、でも……頭に何かが流れ込んで……」

 

私の言葉を聞いた巫女さんが驚いたように後ろで声を上げた。

 

「流れ込む?まさか……神樹様とお話が!?」

 

その言葉に全員が驚く。

だけど私は痛みに耐えながらその流れ込むものを見ていた。

 

「(……空?それに星?)」

 

そこがどこなのかは分からない。何が映ってるのかも分からない。けどそこには星ともう一つ……はっきりと見えるものが――

 

 

 

 

「お?目を覚ましたぞ!」

 

「ここは?」

 

「わっしーの家だよ〜!もう心配したんだから〜!」

 

そのっちが抱きついてくる。

そうか私はあの後に気を……。

 

「神樹様に触れた時に流れ込んできたの。星が流星のようにふってくる……」

 

「星って夜に見えるやつか?」

 

頷く。

 

「神託、そう私達は呼んでるわ」

 

すると先程連れていってくれた担任の先生が襖を開いてやって来た。

 

「先生……」

 

話を聞く限り私は勇者でありながら神樹様の声を聞ける巫女としての素質があるらしい。

私が、巫女……。言われても実感なんてわかなかった。

そこからは先生の顔が今までに見たことのない険しさになっていた。

 

「それでどんな光景を見たの?その光景から敵の襲撃を予測出来たりするの」

 

「え、えっと――」

 

私は見た光景を先生に話した。

 

「お告げがあった期間だったけど……そういう事ね。それはね、近日中に敵が襲来することを伝える緊急メッセージよ」

 

私の証言をもとに先生は予想を立てていく。結果は複数のバーテックスが近日中に襲来する、というものだった。

 

「つまり決戦、ってことか」

 

拳を握りしめる銀。

 

「でも私達は負けないわ。それほどの力はあるもの」

 

「勇者システムもアップデートしたもんね〜」

 

負ける気はしない。その時三人の気持ちは一つになっていた。

 

 

 

 

〜祈side〜

 

 

「決戦ね」

 

学校での昼休みに須美達にそんなことを聞かされた。

 

「それまでは大赦側が自由に過ごしていいだって〜」

 

「いつ来ても私達は準備バッチリだからな!」

 

「でも油断はだめよ。油断大敵」

 

須美言うことは正しい、けど気を張りすぎてもキツイだけだ。

 

「(自由か……それなら話にでも行くか)そういえば今日家の用事があるんだよね」

 

「あらそうなの?」

 

「うん。だからもうすぐ帰るから、そこんとこよろしく」

 

「分かったわ」

 

座ってた椅子から降りてみんなに挨拶をして職員室に僕は向かった。

 

『神樹のとこか?』

 

「ああ。詳しく聞くだけだ」

 

走りながら天照に答える。あまり長く喋ると独り言が激しいように思われるからな。

 

『心の中で俺に話しかければいいじゃないか』

 

「そんな事が出来るのか?」

 

『やってみろよ』

 

不安半分でやってみる。

 

「(……どう?聞こえる?)」

 

『おう』

 

ほんとに聞こえるんだ。

そう思っていたら職員室に着いた、そして僕は先生を呼ぶ。

 

「六年一組星崎祈、先生に用があって来ました」

 

どうぞ、と担任の先生が言ってくれたので失礼しますと一言言って中に入った。

 

「どうしたの祈くん?私に用事って」

 

体をこちらに向けて先生が言う。先生は僕が何を言うのか想像もつかないだろう。

僕は周りに聞かれると厄介だから小声で言った。

 

「神樹の場所に連れていってくれませんか」

 

「……ここでは話しずらいわね、外に行きましょう」

 

外に出て人気のない場所に行く。すると先生は僕の声から感じ取ったのか表情が変わっていた。

 

「神樹様に用事があるの?」

 

「はい。少し聞きたいことがあったので」

 

「祈くんも声が聞こえるの?」

 

先生が怪しむように言う、巫女でもないのに聞こえるのは変だからだろう。

 

「(どうする天照?なんて言えばいいかな?)」

 

『俺が話す。準備が出来たら言え』

 

どうやら天照が話すらしい。それはそれでややこしくなる気が……まいっか。

 

「あ〜、えっと〜ここから先は僕じゃなくてこいつに答えてもらいますね」

 

「?何を言って――」

 

「(頼む)」

 

心の中で天照を呼ぶ。

突然僕の横が光ってそこに神樹館とは違う制服を来た人物が立っている。

 

「!?い、祈くんが二人!?」

 

「えらく雑に振ったな。別に俺はどうでもいいが」

 

「手短に頼む」

 

僕から視線を先生に移す。

 

「え、えっと――」

 

「俺は天照。お前らが言う精霊に近い存在だ」

 

「じゃあ天照、さん?」

 

戸惑う先生、無理もない。姿は似ていてもここまで違うんだ。

 

「呼び方はなんでもいい。それより本題だ。祈が大赦で妙なふうに言われてる事は知ってるか?」

 

「ええ、私達の間でも混乱が起きてるわ。重要機密の様な扱いだからね」

 

そんなふうになってるのか。

 

「先にこいつは勇者なんかじゃない。それと俺も精霊に近いとか言ったけど全然違う」

 

「……どういう事なの」

 

天照は僕を一度見る、それに頷く僕。話の核を言うつもりだろう。

 

「これは大赦側から言われるまで黙っててくれ。まぁこいつが死んでも言わないと思うがな」

 

「そんな物騒なこと言うな。さっさと言えよ」

 

はいはい、と手を振って先生に伝えた。

 

「祈は神に近い存在だ、で俺は一応神。だから神樹とも会話が出来る」

 

「え、ええ?」

 

「信用するしないはお前の自由だ。――俺はもういいか?」

 

「うん、ありがと天照」

 

その場から消える天照。先生はまだ何が何だかという感じだ、だけど。

 

「分からない事だらけだけど取り敢えずは神樹様の場所に連れていけばいいのね?」

 

「お願いします」

 

それから先生は学校側に話を付けて僕を神樹の場所に連れていってくれた。

 

「ありがとうございました先生」

 

頭を下げてお礼を言う。

先生はどういう意味を込めたのか頑張ってねと言って帰った。

 

『俺はここで待っとく。お前だけで話してこい』

 

「うん」

 

僕の場合は顔パスで通れる、須美達のように格式の問題じゃなくやはり特別な扱いを受けているかららしい。

何もなく神樹の前に着いた。そして話しかける。

 

「神樹」

 

『星崎祈か、どうしたんだ?』

 

「次で終わるのか?」

 

『……お前も分かってるだろう終わりなんてない』

 

知ってるよ、当然。

 

「須美達は――どのタイミングで終わらせるんだよ」

 

『動かなくなるまでだ。強大な力も与えたんだ、時間は稼げる』

 

「そう……か……」

 

『お前が勇者に全てを伝えたのは知っている。それの上で勇者は戦っている、これはありがたいことだ』

 

そうだ、僕がみんなに真実を教えたのに役目を果たそうとしている。

その先に絶望があるとしても――

 

「っ!」

 

その時体が違和感に襲われた。樹海化が起きているのだ。

 

『頼んだぞ』

 

何も答えずに僕は大橋に向かった。

 

 

 

 

「みんな!」

 

丁度学校が終わったタイミングだろう。みんな先に大橋に着いていた。

 

「大丈夫……大丈夫だから……」

 

園子は両手を前で握る。

 

「決戦……へへっ!イイじゃん」

 

準備体操をしている銀。

 

「祈くん、合図を」

 

短く頷く、そして言葉を発する。

 

「今までとは比べ物にならない戦いになると思う、文字通りの決戦だ。だけど僕らならいける……だから――」

 

同時に携帯を取り出して変身の準備をする。

 

「行こう!みんな!」

 

この戦いを終わらせるために。




次回予告

「満開!」

「え?か、体が――」

「神装」

「祈くん!」

「お前も馬鹿だよな」

「アタシも……勇者だからな」

「次の勇者への架け橋に、か」

「そういう終わり方もいいかなって」

「何で!?どうしてなの!?」

「じゃあね、みんな」

最終話 またいつか

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