今年も頑張っていきますのでよろしくお願いします!
〜祈side〜
「やっと着いたー!」
「うん……そうだね……」
何だろう、本当にやっとって感じがする。聞いてはいたけど銀のトラブル体質は凄い。
迷子になった子供の親を探したり、腰が痛いと言ったお婆さんわ家に送ったりといろいろあってイネスに着いた。
「(須美達が言うには大抵こんな事が起きてるんだよな、何かそう考えると……)」
「ん、どうした祈?」
ずっと見ていたから視線を感じたんだろう、歩きながら後ろを振り返って僕を見る銀に。
「なんていうかさ、不運だよね」
「え?何の話?」
「いや、何でもないよ」
「? 変なやつだな」
ところでさ、と歩きながら銀が話しかけてくる。
「まずはどこに行く?」
そういえば決めてなかった。うーん、行きたい場所って特にないもんなぁ。
「(服……服屋か、服は今のままでいいし、ゲームセンターは……ダメだしね。)……ん?」
僕はふと後ろを振り向く。
「どうした、祈」
「何か視線を感じて、気のせいかな?」
「疲れてるんじゃないか」
「そうかな」
そのまま後ろを向いていると、とあるチラシが目に入った。
「(こ、これは……!?)」
行きたい場所あるじゃんか!最近いろいろあって忘れていた。そうだよ上野が騒いでいたじゃないか。
「ほ、本屋に行ってみてもいいかな?」
「本屋か、確か三階だったな。よし!じゃあ行くか!」
目的地が決まった僕達は足を進めた。
〜園子side〜
「ふ、ふ〜。危なかった〜」
私とわっしーはミノさん達を追ってイネスに来ています。
「だからあまり見ない方がいいって言ったのよ」
そうは言っても〜。
「わっしーこそあの時凄く見てたよ〜」
「あ、あれはそのっちが変なことを言うから……」
わっしーが言う変なこととは、きっとあれだと思う。
「デート?」
私がニヤニヤしながら言うとわっしーは。
「それよ!それ!」
その時にわっしーは「で、デート!?」と言って声を上げたのだ。って、言っても。
「(私も結構……ね。まさかミノさんがこうも恋愛に熱いとは、予想外だったね〜)」
「そのっち、祈くん達がエスカレーターに乗ったわ」
「どこに行くんだろ〜?」
「可能性としては三階かしら」
「成程〜、本屋か〜」
わっしーは小さく頷いて、私達はその後を追った。
〜銀side〜
「銀はここで待ってて、すぐに戻ってくるから」
そう言うと祈は嬉しそうに本屋に入っていった。ちなみに何の本を買うかは教えてもらえなかった。
それにしてもこの後はどうしよう、時間は十二時くらいか……。
「(ご飯かな、フードコートにでも……)」
そこで違和感に気づく。先程祈は視線を感じると言った、それは本当かも知れない。確かに誰かに見られてる。
「(誰だ?……って、あれは)」
なんて言うか面白い光景だ。あれは隠れているのか?そう思ってしまう。
「(あれって須美に園子?)」
ここ三階は普通に全体が見えるようになっている。イネスでこういうのも何だがかくれんぼ系には向いてないだろう。
「銀、僕の方は終わったよ。で、次は何するの?」
いつの間にか祈が戻ってきていた。
「フードコートに行こう、そろそろ昼だしな」
どうせ二人もついてくるだろうな。
「祈って、結構以外だよな」
食べながらいろいろと話をしていた。その中に好きな食べ物の話があったのだが。
「んー、そうかな。チョコは食えるけどね、何かねー」
祈はどうもチョコが苦手らしい、いま食べてるのはアタシがたこ焼き、祈が焼き飯だ。
「それよりもさ、これを食べた後はどうする?」
「することね、僕はもう無いね」
アタシは飲み物を買うために席を立って。
「じゃあ少しアタシに付き合っ――」
て。と言おうとしたら突然ふらっとして。
「うわっ!?」
「銀!?」
祈が慌てて席を立つ。
気がついたら―――。
「い、いてて。銀、大丈夫?」
「う、うん。何とか……っ!?」
う〜〜っ!!これはまずい、非常にまずい。主にどこかで見ているだろう須美と園子が。
〜祈side〜
こ、これは……。
「ううっ……い、祈……」
他から見ると銀が僕を押し倒してる形になる。いや、これは押し倒していると言うよりも。
「と、とりあえず立とうか?」
「……うん」
銀が僕の上に倒れ込んでいる。このままだと、ちょっといろいろと……こう、当たって。
「ご、ごめん……祈……」
「(か、可愛い!はっ、ダメだ!意識するな!)い、いやいいよ!」
早く銀を立たせないと!もしも他の人に見られたりしたら……。
「「祈くん!!!」」
何だろうね。ある意味他の人に見つかった方がマシだったのかもしれない、と思えるよ。他の人がいないんだけど……。
「……須美に園子、どうしたの?」
「どうしたの?はこっちのセリフだよ〜!」
あら?珍しく園子が怒ってる。
「二人こそ今どういう状態か分かってるの?」
慌てて銀を起こす。幸い周りには人がいなかったから良かったが。
「こ、これで大丈夫だろ?」
起き上がった銀が言う。それに続けて僕が質問をする。
「二人は何してたの?」
「え……あー」
「うーんと……ね〜」
困った様子をする二人。一体どうしたのかと考えていると、銀が二人を向こうに連れていく。
「何?どうしたの銀?」
「…祈は少し待ってて」
そうして三人はフードコートの外に出た。
〜銀side〜
二人の手を引きアタシはフードコートを離れた。
「ど、どうしたの銀?」
「(ここまでくればいいか……)二人とも今日は何してたんだ?」
祈が言ったことをもう一度言う。
「えっとね〜、わっしーと買い物を〜……」
「嘘だね」
「うっ……」
園子が答えるが私はそれを否定する。
「アタシ達をつけて来たんだろ?」
「いいえ銀、私達は買い物に……」
「その割には何も手に持ってないのはどうしてだ?」
「はぁ……認めるわ、でもいつ気付いたの?」
「祈が本屋に行った時だ。イネスに入った時に祈が視線を感じるって言ってたから少し警戒してたらまぁ、見つけたわけですよ」
二人ともがっかりした様子だ。
「須美、園子この後どうするんだ?」
「私はわっしーについて行くよ〜」
須美は少しだけ考えて。
「もう少し回って帰るわ」
どうも予定は無いらしい、じゃあ今日は私達の観察をしに来ただけだったのか。
「じゃあさ……」
初めの予定もは全然違うけど、やっぱりみんなの方が楽しいからな。
「アタシに着いてきてよ」
〜祈side〜
三人がどこかに行って待っとけと言われたので、待つことにした。だけどただ待っとくのもあれだから何かを食うことにした。
「たこ焼き一個〜」
食べるのはたこ焼き。お腹空いたからじゃなくてただ単に話し相手が欲しかっただけかもしれない、たこ焼き屋の人とはあれ以来仲良くなった気がする。
「あいよ!相変わらずモテるね〜少年」
ちょっと前の出来事を見ていたらしい。
「何ですかね、そう言われるのなれてきましたよ」
軽く笑いながら言うとおじさんが少し驚いた様子を見せた。
「少し変わったな」
たこ焼きをパックに詰めながらそんなことを言われた。
「そうですか?」
「ああ、覚悟を決めたようにな。……っと!お待ち!」
お金を払って自分のもといた席に戻った、さっき言われた言葉を僕は思い出す。
「変わった、か……」
最近変わったことは……過去の記憶が戻ったこと?若葉達一緒にいたときは中学二年だったから、小学六年の勉強は当然簡単に思えるしね。覚悟か、ま決めないといけないし……。
たこ焼きを食べながらいろいろと思う。
「でも……」
僕は少し笑いを浮かべる。
「祈く〜ん!」
声が聞こえる方に顔を向ける。
「やっぱりみんな一緒じゃないとな!」
「ありがとう……銀」
「あはは〜、みんなで楽しもう〜」
昔のように覚悟を決めても。
「祈ごめんな、予定が狂っちゃって」
「いやいいよ、銀も思ってるんでしょ?」
「! さすが祈!話が分かるな!」
僕が思っていること、それは恐らく銀も思ってるだろう。
「やっぱり、みんなでだよね」
「おう!」
みんなでいるこの時間を大切にしたい。どうなるか分からないから……。
次回予告
「お前さ、結構暇なの?」
「あひゃん、冷たい〜!」
「ゆ、浴衣似合ってるよ……」
「そろそろ時間か……」
「どうしたの園子?」
第十三話 お祭りと……