〜祈side〜
「話って……」
「うん。でもその前に」
僕は地面に降りて神装を解除する。
「二人とも銀を下ろして」
「いいけど、何するの〜」
「これから話すことに関係あるんだ、まぁ見てて」
銀が座る。左足は撃ち抜かれていて血が止まっていない。
「はぁ……はぁ……。祈……何をするの……」
痛みを我慢しているんだろうが我慢出来る痛みではないはずだ。
「これ、病院で治るの?」
須美が不安そうに言う。
「嫌だよ、ミノさん……私」
園子に至っては涙を流している。
「二人とも安心して。この程度ならまだ僕でも治せるから」
「!本当なの!?」
「嘘じゃないんだよね〜!」
当たり前だ、こんなとこで嘘をつくようなことはしない。
「じゃあ治すから」
「…………(こくっ」
星樹を鞘から抜き、それを――
「っ……」
左手に突き刺した。
「祈くん!?」
「〜〜〜〜!!!」
星樹を抜く、左手は血が下に流れ落ちてる。感覚がない左手を握りしめ手に血をためる。その手を開き銀の左足の穴が隠れるように重ねる。
「よし。準備完了……」
横に落ちてる星樹を地面に突き立て神降ろしを開始する。
「―――『
僕の血が銀の足の傷に垂れる。三十秒くらいたって手をどかす。
「まだ軽く痛みはあると思うけど激しい動きをしなければ大丈夫だよ」
手をどかしてそこにあったのは傷一つない銀の足だった。
「……どうして?それに痛みも……」
「勇者でも回復しないのに……」
現実でありえない場面を目にして唖然とする。
「樹海化も解けそうだし、話は明日するよ」
僕はみんなに背を向ける。
「待て祈!お前手は……」
僕の左手はまだ血が流れている。
「大丈夫だよ」
神降ろし『
傷口に青い炎が発生し傷が塞がる。
「ほらね」
そう言って手をみんなに見せる。
「傷が治ってる?」
「じゃあまた明日」
ちょうど樹海化が解除される。
明日は僕の事、それと外の真実を話そう。
繰り返さないために――。
〜須美side〜
鍛錬が終わった後に私達は昨日の出来事について話していた。
「それにしても……」
そう言って銀が自分の体を見る。
「あの力は何なんだろうな」
普通なら死んでもおかしくはない傷を祈くんは治した。勇者の力ではない、その根拠はある。
「私の推測だけど、あれは神樹様……神様の力だと思うわ」
「どうしてそう思うの〜、わっしー」
あの時の祈くんの言葉を思い出す。
「祈くんは『蛤貝比売』と言った。これは神様の名前なの」
私はここで話を区切る。
「余り私が言って間違ってたらあれだから、後は祈くん本人から聞きましょう」
「そうだな、一時間後には本人から聞けるしな」
一時間後の集合場所はそのっちの家。そこで全てが分かる。
〜祈side〜
「星崎祈です。失礼します」
今は園子の家に来ている。結局朝はのんびりと過ごしていた。一度家には来ているから園子の部屋は既に分かる。
「あ〜祈くんだ〜」
部屋の扉を開けようとしたらふと後ろから声をかけられる。そこにいたのは園子だった。
「他の二人は?」
「もう少しで来ると思うよ〜、立ち話もなんだし中に入って〜」
「わわ、押さないでよ」
部屋に入って園子が扉を閉める。
「早速だけど祈くん、質問……と言うか確かめたいことがあるんだけどいいかな?」
「いいよ」
ある程度は予想している。
「祈くんは――
『人間』だよね?」
―――ドクン。
一瞬、質問の意味が分からなかった。
「……どういう意味?」
「ごめんなさい、今のは忘れて……」
何だ……。園子に質問された時に自分じゃない『何か』が……。
その時扉が開いた。
「はぁー、やっと着いたぞ」
そこには満足そうな銀と
「ちょっと銀、私のことも考えてよね」
迷惑そうにしている須美だった。
園子が僕に近づいてきて耳元で
「(わっしー達が来たからこの話は無しってことで)」
「(う、うん)」
「?二人ともどうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そうか?まぁいいか。じゃあ祈よろしく」
昨日言っていた話のことだろう。
「分かった。じゃあまずは壁について話すよ」
僕らの時代と重ね合わせて話すことにした。
「壁?」
壁については授業で習っている。だけどそれは一部分、全てではない。
「銀?あなたでもこれは分かるでしょ?」
「はいはい鷲尾先生」
銀はめんどくさそうに答える。
「壁の存在理由は四国にいる人間を外の世界で蔓延している死のウイルスから神樹様が結界で護って下さってるんだ」
銀は当たり前のように答える。
その答えはこの時代なら百点だ。だが――
「外の世界――とか言われてるけど世界なんて言えるものは外には無いよ」
「どうゆうこと〜?」
「言葉通りだよ外には世界なんてなく、あるのは火の海から無限に生まれるバーテックスだよ」
「え……」
ありえない。と言わんばかりに目を開く。
「それ……本当なの?」
「おいおい待てよ、じゃあ今私達がやってることは無駄じゃないか!」
銀が声を上げる。そのとおりだ、だけど……
「はっきり言えば無駄だ。だけど無駄じゃない」
何回倒しても無限に生まれる敵を倒す。
「なんでだ?」
銀の疑問に須美が答える。
「世界を守るため、でしょ」
僕は頷く。
「それもあるけどもう一つあるよ」
これは神樹と僕しか知らない。
「神樹の守護者の完全回復」
守護者を誰かは知らないが神樹が前にそう言っていた。
「神樹様の守護者?」
「誰かは分からないが僕は神樹に近い力を持っている者だと考えてる」
神に近い力を持つ者、神降ろしが使える僕かと思ったが。「お前ではない」と言われた。
「外の世界については何となくだけど分かったわ、次は私達が一番気になることを答えてもらおうかしら」
「そうだな、特にアタシの傷を治したカラクリを教えて欲しいな」
説明か、どう説明しよう。
「まずはこれを見て」
とりあえず、僕は刀を星樹を取り出す。取り出すと言ってもバックからじゃなく適当な空間からだけど……。
「お〜、すご〜い!」
「おお!」
「不思議ね……」
それぞれの反応は置いといて。
「この刀は、神刀『星樹』」
「神樹が僕にくれた力。大切な――いや、守るための力」
「神樹様がくれた?」
「みんなで言う『勇者システム』みたいのだよ」
「でもその星樹と何の関係が?」
「この刀は神樹が僕に合わせて作ってくれたんだ」
つまり、神樹の力が宿った刀。
「神樹は地上の神が集合して誕生した、その神樹が作った刀。星樹は神樹に極めて近い特性を持っている。だから僕の力は神樹の力つまり神の力。まぁ、正確には神を力を借りる『神降ろし』。僕の力は神の力と捉えて」
「神様の力……」
「だから銀の傷も神の力で治療したんだよ。本来の方法じゃなくて僕は血で代わりをしたけどね」
「神様の力……なるほどね」
須美が納得したように頷く。
「何が〜?」
「バーテックスを倒せた理由よ。あれは神降ろしの力だったのね」
須美は理解が早くて助かる。でも、昔は普通に倒してたけどね。
「だから僕は――」
そこまで言いかけて違和感が襲う。
「――!」
時間が止まっている。
樹海化前の現象。
「バーテックスか……」
「ミノさん無理はしないでね〜」
「ははは、大丈夫だ園子」
やっぱり心配だったみたいだ、だから繰り返さないために。
僕はみんなに言う。
「僕がみんなを守るから――。神としてね」
自分の役目。勇者を守ること。
「ふふっ……」
突然須美が笑い始めた。
「祈くん、私達が何のために戦ってるか知ってる?」
いきなり何だろう?
「神樹と世界のため?」
「そうだよ〜。つまり〜……」
「神樹様はこの国の神様。ようは私達は神様を守っている」
三人は息を合わせて言う。
「「「それなら私達は!―――」」」
それは昔では考えれない
「「「祈くんを――」」」
僕には新鮮な
「「「勇者として守る!!!!」」」
だけど、不思議な思いだった。
段々とオリジナルに入っていく予定です。
次回予告
「行こう!みんな!」
「おーい、祈ー!」
「お前は俺だ」
「い、祈くん?」
「守り守られる関係か……」
第十一話 守り守られる関係