みんないっしょに。   作:matsuri

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第3章突入です!とはいえ話はそうつながっていないし、相も変わらず日常なのですが。とりあえず全キャラ出すまでは書きます。そのためにまだ来ていないキャラを集めねばなりませんが…ああ。あ、そういえばですが物吉君きました。おわった方、お疲れ様でした!まだの方は頑張ってください!


第3章
今剣さまと青江さまと願い事の話


みんなからぎゅうぎゅうに押しつぶされそうになりながらの帰還報告。真っ先に待っていたわたしの仕事は、手入れの間に合わなかった方の対応だった。

 

 

「もういっそ手伝い札全部使ってもいいので、とりあえずみんな休んでください!」

 

 

泣いてたり離れなかったりとするみんな一人一人に声をかけていく。わたしがいない間ほとんど眠っていない方、そんな彼らの面倒を見ようとしてくれた方、政府に連れて行けと紫黒に食いかかった方までいたらしい。紫黒は大丈夫としか言わないけれど、目の下の隈はくっきりとついていて、この一週間のみんなをなんとか抑えてくれていたのだろうと想像する。

 

 

「清光さま、大丈夫です。もういなくなったりしませんから、眠ってください」

 

「うん…」

 

 

一人一つお願いを聞く、という条件のもと、睡眠不足や興奮状態のひどい状態の方を、少しずるい気もするけど霊力を安定させて寝かしつける。大広間に布団を何枚も敷いたのは、わたしが同じ部屋にいないと寝ないと言った方々の妥協案だった。

 

 

「…眠ったかい?」

 

「青江さまですか。どうぞ、入って平気ですよ〜」

 

 

障子の向こうの人影は、ゆっくりと姿を表す。わたしの背中側に、静かに腰を下ろした。

 

 

「ごめんなさい、後回しにしてしまって」

 

「いや、僕たちは比較的睡眠をとっていたからね、大丈夫だよ。それより全員のお願いだなんて、そんな条件飲んで良かったのかい?」

 

「ええ。まあわたしの給料で収まる範疇だといいのですが…」

 

 

ふふふ、と小さく笑いをこぼす。なるべく小声だ。全員が眠っているのは確認済みだけど、起こしてしまうのは忍びない。

 

 

「じゃあ、ちょっとずるいけど遠慮なく」

 

「お願いですか?」

 

 

うん、と笑う。よもやこの方が最初に来るとは。

 

 

「お願いというか、夜のお誘いをね」

 

 

にっかり、なんてのよりもずっと不気味。なんていったらいけないか。けれど一瞬身を引いてしまった。眠っている清光さまにちょっとぶつかる。

 

 

「もちろん、怪談だよ?」

 

「言い方を…まあいいです。今夜ですか?二人だけで?」

 

「うん、今夜。今剣もいるんだ」

 

 

珍しい組み合わせ…でもないのか?そういえばツーショットをたまに見かける気もするし。

 

 

「夏にホラーの特番がやっていてね、怖い話が集まったら怪談をしようと言っていたんだ。まあ、もう夏も終わってしまったけどね」

 

「まあ、庭も山も色づく季節ですからね〜」

 

 

まあいいか、と笑う。こんな可愛らしいお願いならば問題ない。怖いものも、まあ、うん。

 

了承を示そうとすると、清光さまの向こうに寝ていた五虎退さまが起き上がって、布団をかぶったまま蒼白な顔でキョロキョロと辺りを見回した。怖い夢でも見たのだろうか。清光さまの頭上を通ってそばに座り込む。

 

 

「五虎退さま、わたしがわかりますか〜?」

 

「ある、あるじさま、ふぇっ」

 

 

大きな光の粒を目に溜めて、瞬きのたびにそれをこぼす。

 

おいでおいでと手招きすると、倒れこむように抱きついてきた。

 

 

「大丈夫、眠ってる間もちゃんとおそばにいますからね〜」

 

 

よしよしとあやしながら落ち着かせると、小さく笑ったあとに寝息を立て始めた。

 

 

「青江さま、夜、お部屋に伺いますね。それとも今剣さまのお部屋に?」

 

「そうだね、そっちで。じゃあ、僕は邪魔しないように退散するよ」

 

 

ひらひらと振られる手に、五虎退さまの布団を正しながら頷きで応じる。これからこんなお願いが増えるのかしら。

 

布団をぽんぽんと叩くと、五虎退さまは幸せそうに笑った。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

色々していれば夜が来るのはあっという間だった。溜めていた書類の整理、報告書、それからみんなの体調管理。昼寝という形で休息を取らせたみんなは、やっと落ち着いたように普段の生活を取り戻しつつあった。

 

 

「もうっ、お昼寝したからって夜更かししたらダメですからね!」

 

 

はいはいと応じるのは宗三さまだ。今は蜂須賀さまとお話ししているけれど、わたしがいない間はずっと眠らず待っている小夜さまを心配して付き添っていたらしい。付け加えるように「まああなたの心配はしていませんでしたが」と言われた時には、赤い顔して何言ってんだと属性を考察し始めもしたがここでは割愛する。

 

 

「今日の仕事は終わりですか」

 

「はい。太郎さまもありがとうございました〜。突然近侍を任せてしまいまして」

 

「いえ。貴方に役割を他の方と分けていただいたおかげで、私はそれほど…」

 

 

これ以上何か言うと話が終わらないので切り上げる。広間で騒いでいるみんなにも「おやすみなさい」と声をかけ、今剣さまの部屋へ急いだ。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

くふふっ、と蝋燭の明かりに映し出される影が笑った。うーん、ホラー。存在自体がそれと似たような彼らが、おばけや幽霊を怖がるのかしら。いや、それらと神様は似て非なるものだけど。人間的には実体がないもの、としてはひとくくりにできるような、できないような。

 

 

「それで…おや、そこにいるのは」

 

「あるじささまですか!」

 

 

ふわりと浮き上がった影、多分今剣さまが足音一つで障子に迫り、勢いよくそれを開けた。

 

 

「お待たせしました〜」

 

「まってましたよ!あれ、あるじさま、まくらはもってこなかったんですか?」

 

 

こてんと首をかしげる今剣さまの向こうには、すでに布団が敷かれていた。二つ。

 

 

「あのね、きょうは青江とぼくとさんにんでねるんですよ!だから岩融のまくらをかりてしまいましょう」

 

「…青江さまぁ?」

 

「なんだい?」

 

 

知らぬ存ぜぬで通すつもりですか。まったく、もう。まあ今剣さまに免じて今日は何も言いますまい。

 

そんな感じで苦笑すると、それがわかったのか名前通りの表情で笑った。

 

 

「あるじさまはこっち、ぼくがまんなかで、青江がそっちです」

 

「はぁい。それで…いまはどんなお話を?」

 

 

もぞもぞと布団の上に座り込む。すでにほんのり温かかったのはこの上に座っていたせいだろう。三人とも寝ると、二人小さいのがいるとはいえだいぶ狭く、距離が近かった。

 

 

「青江がむかしきったゆうれいのはなしです。そうだ、ぼくもひとつきかせてあげますね!」

 

 

えへへ、と如何にも期待してくださいと言わんばかりに笑う。うふふ、嫌だー。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

怪談が続くこと二時間半。ここに来たのは八時過ぎだったはずなのに、もうすっかりいろんな意味で冷え切ってしまった。

 

 

「でもね…あの、そのおんなのひとは…」

 

「…眠いですか?」

 

「んん…でもまだ…」

 

「またいつでもお話ししましょう?体調崩したらつまらないですよ〜」

 

 

ごしごしと目をこすっている手を抑える。そんなにしたら、目が潰れてしまいかねない。

 

残念そうに横になるので、上から布団をかけてぽんぽんとリズムをとるように叩いた。

 

 

「じゃああるじさま、ぼくもおねがいがあります…あのね」

 

「はい」

 

「あなたがしぬまで…ぼくをすてないでくださいね…」

 

 

最後は寝息に混じってかき消えてしまったけど、ちゃんと聞こえた。

 

 

「ふふ…わたしが捨てられないよう努力するんですよ。捨てるなんて、ありえませんから。ゆっくりお休みなさい…」

 

 

さらりと前髪を払う。わたしとは比べ物にならないくらいこの世界を生きている方の寝顔は、美しく、幼く、あどけないものだった。

 

 

「さあ寝ましょ〜、青江さま。あなたも疲れているでしょう?それとも、寝かしつけてあげましょうか?」

 

「いや、遠慮しておくよ」

 

 

それからね、と彼も布団に潜りながら笑う。

 

 

「君はお金を気にしていたけど、きっとみんなのお願いにお金はかからないよ。その分、重荷かもしれないけどね。じゃあ、おやすみ」

 

「はい、お休みなさい」

 

 

大好きなみんなのお願いが、わたしの重荷になんてなるはずがないでしょう?

 

もう一度お休みなさいとつぶやいて、わたしも布団に潜り込んだ。




ここまで閲覧ありがとうございました。紫黒はどうしたって言わないでくださいね、入れる隙がなかったんです。それよりいち兄はよ。もう物吉君にレア太刀祈願しようと思います。まず初めに神棚にでも…って神様自身を乗っけたらダメですかね?
次回の更新は11/23を予定しております。

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