ベイビー・パニック   作:高嶺 蒼

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 さ、なごみんがちびレオを愛でるパートですよ。


ベイビー・パニック 14

 乙女の部屋から1人出てきたレオは、乙女に言われたとおり、とてとてとキッチンへと向かった。家への帰り道、ずっと抱っこしてくれていたお姉ちゃん、なごみの姿を求めて。

 レオの求める人は、キッチンの流し台の前にいた。こちらに背を向けて立っている。

 レオは、ぱぁぁっと顔を輝かせ、彼女の膝裏に突撃をかました。

 

 

 

 

 食材の下拵えを終え、煮込みや焼きといった次の作業に移ったなごみは、火加減を見ながら一息ついていた。

 ここまで出来れば後少し。仕上げはレオや乙女が来てからでいいだろう。

 レオの着替えは終わっただろうか、とそんな事を考えていると、不意に膝裏に衝撃が。

 思わず膝がかくっとなり、誰のいたずらだと殺気すらこもった目で背後を睨む。

 が、そこには誰もいなかった。

 首を傾げ、目線を足下に落とすと、そこには想像を絶するくらい可愛い生き物がいた。

 

 それが何かと問われれば、それは犬だった。

 大きな垂れ耳がついていて尻尾もある。それはなごみの足にしがみついてこちらを見上げていた。

 

 レオがきているのはなごみが選んだアニマルパジャマ。

 絶対に可愛いと思って選んだが、ここまで破壊力があるとは予想外だった。

 

 「なごみ、ちゃん?」

 

 レオが確かめるように名前を呼んでくる。可愛らしく、首を傾げて。

 なごみは犬耳フードに包まれたレオの頭をそっと撫で、

 

 「そうだよ、レオ」

 

 そう答えて微笑んだ。レオもにこっと笑って、そのまま何だかもじもじしている。

 もしかして、抱っこしてほしいのかなと思って、

 

 「抱っこ?」

 

 と聞くと、

 

 「抱っこ、いいの?」

 

 そんな遠慮がちな答えが返ってきたので、

 

 「いいよ」

 

 と答えて小さな子犬をひょいっと抱き上げた。

 嬉しそうに笑うレオが可愛くて、ぎゅっと抱きしめてから一緒にイスに座る。

 向かい合うように膝の上に座らせて、もう一度頭を撫でた。

 

 

 「レオ、服、似合ってるね。可愛い」

 

 「レオ、かわいーの?」

 

 「うん、可愛いよ」

 

 「ありあとー。んっと、なごみちゃんは、きえーなの。レオねー、なごみちゃん、好き」

 

 

 好きと言われて自然と笑みが浮かぶ。

 レオが手を伸ばすので、そっと顔を寄せると、頬にちゅっとキスをされた。

 びっくりしてレオを見る。

 なごみと目を合わせ、えへへ~と笑うレオが何とも可愛かった。

 

 「ほんと、レオは可愛いなぁ。たまらない」

 

 こつんとおでことおでこを合わせ、鼻先が触れそうな距離からレオを見つめる。

 ぷよぷよホッペが柔らかくておいしそうで、目の毒だ。

 

 「あんまり可愛いと食べちゃうぞ?」

 

 気がついたら、うっかりそんな事を口走っていた。

 自分でもびっくりしたが、レオも目をまん丸くしてこっちを見てる。

 やばい、泣かれるかなと思って、じーっと様子を見ていると、予想に反して泣き出す様子はなく、

 

 「レオ、食べゆの?おいしくないよ?」

 

 と、首を傾げながら。

 

 「そう?私にはすごくおいしそうに見えるけど?」

 

 売り言葉に買い言葉ではないが、そんな言葉が口をついて出る。

 レオはうーん、うーんと考えて、それからすごく真剣な表情でなごみを見上げた。

 

 「おいしいの、食べられないとかあいそうだから、ちょっとならいいよ?」

 

 そう言って覚悟を決めたようにぎゅっと目をつむるレオ。

 その真剣な様子が何とも可愛くて、なごみは思わず口元をほころばせた。

 

 

 「ちょっとなら、いいの?」

 

 「ん!・・・・・・やさしくしてね?」

 

 

 そのどこで覚えてきたんだというようなセリフにこみ上げた笑いを小さな咳でごまかして、

 

 「じゃあ、ちょっとだけ、ね」

 

 言いながら、まずはそっと唇を寄せた。

 食べ応えのありそうなレオのホッペを軽く吸い上げ、それから口を開いてパクリ。

 歯をたてると痛いから、歯をたてないように唇でレオの頬の感触を味わう。

 そしてそのまま舌を伸ばして舐めると、くすぐったかったのか、

 

 「やん、くすぐったいよぉ」

 

 とレオが抗議の声を上げたので、名残惜しくはあったが味見は終了。

 頭をそっと撫でてやり、

 

 「ごちそうさま、レオ」

 

 微笑みながらそう言った。

 レオは、なごみの笑顔にぼーっと見とれていたが、不意にそのお腹の辺りから、きゅーっと可愛らしい音が聞こえた。

 とたんにレオの眉尻が下がり、情けない顔になる。

 レオは困ったような顔でなごみの顔を見上げると、

 

 「レオ、お腹空いた・・・・・・」

 

 訴えるようにそう言った。

 そんなレオの様子に笑いを誘われ、クスクス笑いながらレオの頬にキス。

 

 「そうだね。もうすぐ出来るから、あとちょっと我慢してね、レオ」

 

 言いながらレオを床に降ろして立ち上がり、温めなおしと仕上げの為にキッチンの前へ移動するのだった。

 

 

 

 




 次回こそ、3人で仲良く夕御飯です。余程の事が無い限りは(笑)

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