東方変幻録   作:大神 龍

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第六十三話

 振るわれ続ける二本の銀のナイフ。しかし、この悪魔はその斬撃を全て躱し、いなし、止める。

 

「受け止めるとは、中々強い悪魔の様ですね」

 

「ふん。その程度の攻撃で私に傷を与えられるとでも?」

 

「まさか」

 

 幻魔は数度ナイフを振るい、悪魔が後ろの下がろうとした瞬間に足を払い、よろけた一瞬を狙ってナイフが投げられる。

 

 しかし、悪魔は翼を広げて大きく羽ばたくことで高く飛び、ナイフを躱す。

 

 だが、すぐにもう二本、銀のナイフを作り出して悪魔に振るう。

 

「ハハハハハハハ!!!弱いな!!」

 

 笑いながら悪魔は一回転して踵落としを放つ。

 

 幻魔はそれを半歩下がって躱し、振り抜かれたところにナイフを投げつける。

 

 悪魔はそのナイフを弾こうとし――――触れると同時にナイフが爆発する。

 

「ぬぅっ!」

 

 呻き声を上げる悪魔は咄嗟に顔を腕でかばっていたため、特に支障は出なかったが、爆発が収まり腕をどけた時、幻魔がいないことに気づく。

 

「どこに…」

 

「後ろですよ」

 

 無意識的に前に出た。

 

 直後、先ほどまで悪魔の首があったところに銀のナイフが通る。

 

「ほぅ…私の後ろに移動したとは…」

 

「気付けないのなら、その程度という事です」

 

「ふんっ。あまり馬鹿にするなよ?」

 

 そう言って悪魔が足を前に出し、

 

「ぐっ!!」

 

 足元から突如飛び出る銀の槍。

 

 悪魔は咄嗟に距離を取るが、後ろに足を持って行くと同時に無数の光が悪魔を貫く。

 

 驚きに声も出ず、咄嗟に辺りを見回すが、不審なモノは――――

 

 

「ッ!!」

 

 

 あった。無数のカードが。

 

 足元に無数に広がるそれは、脅威と言えた。なんせ、触れると同時に不思議なモノに変化するのだ。

 

 ならばと思い、翼を広げて空を飛ぶ。

 

 許されるわけがない。

 

 無数のナイフが地面から襲いかかってきた。

 

「ガァッ!」

 

 反射的に内部の妖力を放出し、ナイフを弾く。

 

 しかし、それすらも奴の想定内とでも言わんがばかりに、ナイフは光の杭に姿を変えて悪魔を貫く。

 

「なぁっ!?ぐっ………ぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 悲鳴を上げて、悪魔は苦しむ。だが、奴はまだ攻撃を終えていない。

 

「『喰らえ氷華』」

 

 まだ残っているカードの半分が無数の氷の棘となり、悪魔を貫きまくり、まるで氷の華の様になる。

 

「『燃やせ蒼炎』」

 

 余ってる全てのカードが青い炎に変わり、悪魔を火だるまに変え、悲鳴を上げさせる。

 

「『吠えよ白狐』。一つ(アイン)二つ(ツヴァイ)三つ(ドライ)

 

 言葉と共に、銀色に輝く針が投げられる。

 

 一本目が心臓に。二本目が喉笛に、三本目が脳天に突き刺さり、発光を始める。

 

「――――――――ッ!!!!!」

 

 悲鳴すら上げることは許されず、白い光に飲み込まれ、悪魔はその姿を失った。

 

「……雑魚が。我が主に相対しようなど、片腹痛い。出直すことすら許さん。消えよ」

 

 彼は冷めた目で、悪魔の消えた場所に言葉を放った。

 

 誰も存在しない場所へ、意味もなく。

 

 いや、あんなモノを中々強いなどと評価した自分への罵倒を含めていたのかもしれない。

 

 しかし、それは本人すらも理解できていないのだった。

 

 

 * * *

 

 

 彼はゆっくりと、屋敷の中を見て回る。

 

 それは、痕跡を消すため。

 

 本来ならば放っておいてもいいのだろうが、ここは町の中でもそれなりにデカい。あまり目立つような痕跡は無い方が良いだろう。幸い、彼の能力は隠ぺいに適していた。

 

 さすがに死体を隠すのはどうかと思ったので、不自然でないように修復、傷を偽装していく。

 

 人としては完全にアウトだろうが、今は化け物の従者。何よりも主の安全を考えなければならない。

 

 隠し部屋なども入って探索などしてみて、有益なモノがあれば拝借していく。まぁ、返すつもりは全くないが。

 

 魔術的な部屋もあり、そこには巨大な魔法陣と、幼子の死体が大量に置いてあった。

 

「…気持ちの悪い部屋だ。許しがたい…幼子を媒体に彼奴は呼ばれたというのか。確かに小さな子供は媒体としては良質な存在ではあるが、実際にするのは問題だろう。いや、私が言えた事じゃないか」

 

 幻魔は子供の死体を一か所に集めた後、カードを一枚、投げる。

 

 それは炎となり、死体を全て焼いていった。

 

「化け物の従者である私だが、それでも子供の死ぬような事は、気分が悪い。だから、せめて、安らかに眠れ。再び生まれる時は、優しき世界に生まれる事を。何者にも阻まれぬ優しき加護があらんことを」

 

 彼はそう言って、館へと帰るのだった。

 

 

 * * *

 

 

 門の前に移動し、美鈴に挨拶をする。

 

「美鈴。調子はどうですか?」

 

 美鈴は幻魔の方を向くと、不思議そうな顔をして、

 

「えっと…幻魔さん。何かありましたか?」

 

「……なぜそう思うのです?」

 

「……いえ、何か、寂しい気配がしたので…何か悩んでいるようなことがあれば相談してくださるとありがたいです」

 

「……そうですか。いえ、特にはありませんよ。私は今の所悩んでいる事はありません。もしかしたらそのうち相談することもあるかと思いますが、その時によろしくお願いしますね」

 

「そう…ですか。分かりました。相談、いつでも待っていますね」

 

「えぇ。ではまた」

 

「はい。お仕事、頑張ってくださいね」

 

 美鈴はそう言って微笑み、幻魔は何とも言えない表情で門の中へと入って行った。




 美鈴がヒロインっぽい…



 現在スランプに陥り、ストーリーを思いつかないんで…少々休暇をくださいませ。できるだけ早く復活しますので、少しの間、お待ちください。

 すいません<(_ _)>

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