「という事で、情報は掴んだな?」
「はい。全てとは言えませんが、本拠地を特定し、おおよその逃走経路まで確認してきました。違和感の無いように一本以外閉鎖しておきましたので、問題は無いかと」
「ククク…実に良い働きだ。では、早速潰しに行こうか」
夕暮れ時、紅魔館から二人の男が飛んでいく。
* * *
幽霊事件から三日。
主犯格と思われる吸血鬼売買の組織を幻魔は探し、たったの三日で幻魔は居場所から退路までを調べ上げた。しかも、ご丁寧に退路を一本にして。
ちなみに、調べている最中も、他の屋敷の住人にばれない様にいつもの仕事はこなしていた。
その組織は想像以上に大きいらしく、幻魔も調べ上げるのに少々手こずったらしい。
「内部構造は超音波で感じ取っただけなのではっきりとはしません。私の超音波だとご主人達吸血鬼には敵いませんので、よろしければそのお力をお借りしたいと思います」
「あぁ、任せておけ」
プレジールが口角を上げながら言う。
「では、到着いたしました。あの屋敷が件の組織本部でございます」
見下ろす先には、確かに屋敷があった。
「さて…では、派手に暴れるとしようか」
「御意に」
そう言うと、プレジールは飛ぶ事を止め、そのまま急降下する。
下には数人の見張りがいた。
しかし、その見張りは、落ちて来るプレジールに気付いたものの、動くことは出来ずにプレジールの落下の衝撃によって吹き飛んでいく。
「ふん…脆いな。ただの人間か?」
「この屋敷は人間がほとんどです。吸血鬼はさらわれた吸血鬼しかいないようなので、脅威になるような者は無いと思われますよ」
「そうか…しかし、用心するに越したことはないな」
「そうですね…では、私が先行します。よろしいでしょうか」
「あぁ、そうしよう。突発的な対処は幻魔の方が速いからな。悔しいが」
「そこはもっと強気でいる方が良いと思いますよ?『お前は盾だからな』など、まるで道具のような扱いにしてくだされば雰囲気が出るでしょうに」
「それは私の主義に反するからな。出来ない相談だ」
「そうですか…まぁ良いです。雰囲気の問題ですし。では行きますよ」
幻魔はそう言って扉を開く。
* * *
「貴様!何者だ!!」
「何所から入って来た!!」
「正面堂々しっかりと入って来ましたよ」
ナイフを投げ、確実に頭部を突き刺して一発で絶命させていく。
「幻魔。まずは地下室からだ。先に奴隷を解放する。右側の通路だ」
「分かりました」
前後左右。更に銃弾の雨が降り注ぐ。
「『水刃よ。断ち切れ』」
一枚のトランプ。それは水に変わり、刃になると、拡散しながら襲い来る人間と降り注ぐ銃弾を切り捨てて行く。
「それでは行きましょう」
プレジールを先に進ませ、二枚のカードを地面に突き刺してからプレジールを追う。
突き刺されたカードの一枚は雷となり敵を足止めし、もう一枚が土壁として道を塞ぐ。
* * *
プレジールに追いつくと、すでにプレジールを襲おうとしている賊がいた。
しかし、瞬時にその賊にナイフを投げつけ、絶命させると、転移してプレジールの前に降り立つと、残っている賊にナイフを投げつけ、全滅させる。
「さて、どちらですか?」
「そこの扉。そこと壁の間に隠し通路がある。私が開けるまで待っていてくれ」
「分かりました」
でも、この状況…ゲームだと…
と思った時、天井に穴が開き、人間とは思えない何かが落ちて来る。
「……ゾンビ…?」
人型の腐敗したソレと、更に同じく腐敗した犬の様ななにかも居た。
「アンデットか…だが、相手ではないな。理性無き獣の枠からすらはみ出た死体が、我が主に牙をむこうなどという身の程知らぬ者は処分する」
幻魔は瞬時に無数のナイフを投げ、襲い来る死者の群れを蹴散らす。
「ふむ…やはりゲームの様にヘッドショットによる即死は無しか…なら、爆破するのみ」
そう言って、ゾンビたちの頭に刺さっていたナイフは爆発し、消し去って行く。
しかし、そのゾンビの間を縫って襲い来る犬のゾンビ。
幻魔は一瞬驚くが、すぐさま蹴り飛ばし、ナイフを腹部に突き刺すと、一気に爆破する。
単純作業の様に何度か繰り返していた時、妙に大きめの男のゾンビが落ちて来る。
「……大型という事は、最後か?」
幻魔はワイヤーとナイフを結んで、天井と左右の壁に突き刺し、その三本のワイヤーを繋いだナイフを大きな男の腹部に刺す。
「これでチェックメイトだ」
大型のゾンビの横をすり抜け、幻魔達に襲い掛かろうとしたゾンビたちはワイヤーに引っかかり――――
――――一瞬にして大爆発を起こすワイヤー。
その爆発で周囲のゾンビも一掃される。
幻魔は天井に開いている穴をカードを変化させて補強し、
「ご主人。終わりましたよ」
と、周囲をまだ警戒しつつプレジールに声をかける。
「あぁ、こっちも終わった」
振り向くと、すでに階段が出来ていた。
「では、進みましょうか」
素早く地面にカードを突き刺して壁を作ると、階段を降りて行き、プレジールもその後に続き、ある程度進んだところで入口を塞いだのだった。