東方変幻録   作:大神 龍

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第五十八話

「……さすがに、多すぎやしないか?」

 

 妖力を込めた蹴りを放ち、幽霊を吹き飛ばす。

 

「一体だけじゃなかったんですね…なんでこうなるまで放置したんです?」

 

 どこに隠れていたのか、現れる幽霊たち。それを見て、雪花は呟く。

 

「幽霊が出るなど、考えてなかったんだ。仕方ないだろう」

 

「幻魔さんが密かに処理してたりしたんでしょうか」

 

「その可能性が大いにあり得るな。問題は、こうなってしまった現状にあるがな。一応、後で幻魔に聞いておくか」

 

 そう言って妖力弾で幽霊を吹き飛ばした後、

 

「すいません。お先に撤退させていただきます」

 

「は…?」

 

 直後、景色が図書館となる。

 

「な、なんだ?何が起こった?」

 

「あ~…幻魔さん。何かあったんですか?」

 

 雪花が言い、それで気付く。

 

 背後には、フランを抱えた幻魔がおり、雪花とレミリアも一緒にいた。

 

「いえ…レミリア様とフラン様の部屋に夥しいほどの幽霊がいましたので、一時的退避をさせていただきました。ここにも幽霊はいたようですが、イーラ様とクレア、美鈴、リブラの四名が奮闘し、殲滅されたようなので、ここへ退避という事にしました」

 

「ふむ…それは分かった。では、レミリアとフランの部屋はどうする?」

 

「一度私の能力で聖域にし、幽霊を除去したのち、元に戻そうと考えております」

 

「その一時的聖域化によって、レミリアとフランに被害が出る可能性は?」

 

「無いと言ってよいでしょう。よろしいでしょうか」

 

「そうだな…それ以外の方法はあるのか?」

 

「私自身が全て殴り潰すくらいでしょうか?」

 

「その場合は、何が起こる?」

 

「私が疲れて倒れるくらいですかね?」

 

「そうか…その役割は、誰を連れて行けば減らせる?」

 

「本音を言えば雪花ですが、リブラでも十分です。クレアは少し特殊なので別として、美鈴は単体として使えるので、私とは別の部屋に行ってもらえば、かなり軽減できるでしょう」

 

「ふむ。なら、そうしよう。リブラ。お前は幻魔と共にフランの部屋だ。美鈴と雪花は二人でレミリアの部屋を片付けろ。出来るか?」

 

「「「お任せを」」」

 

「えぇ…あ~…分かりました」

 

 三人ははっきりと。リブラは目を逸らしながら心底嫌そうに返事をし、転移した。

 

「……プレジール?最初の聖域化が一番楽じゃないのか?」

 

「聖域化は、確実性が薄いからな。自分の部屋ならまだしも、娘の部屋だ。確実性を求めるなら、幻魔達に直接潰させるのが一番だ。私が行くのがいいのかもしれないが、幻魔が許さないだろうがな」

 

「そうか。それなら私が行ってもよかったか?」

 

「むしろ、なんで私が残されたのかが気になるんですが、どう思います?」

 

 クレアの呟き。

 

 イーラとプレジールはクレアを見て、

 

「クレアは仕方ないな」

 

「お前は別格だ。変な事されない様に置いておくのが一番だからな」

 

「ひどくないですか!?私の扱い!!」

 

「「正当な判断だ」」

 

「主とその兄にいじめられる私可哀想!!」

 

「自分で言うのはどうかと思うぞ」

 

「全くだ。ほら、最後の一仕事だぞ。掃討戦だ。行くぞ」

 

 イーラの言葉に呼応するかのように現れる幽霊。

 

「黒幕がイーラ様の可能性は?」

 

「半々だな。一応兄も倒すか」

 

「おぉ?理不尽だな。私が何をしたというのか」

 

「何もしてないからじゃないか?」

 

「プレジール様の言う通り!」

 

「そうか…なら、逃げさせてもらう!」

 

「「ぶっ潰す!!」」

 

 幽霊をオマケで蹴散らしながら、二人はイーラを追うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「じゃあ、美鈴さん。敵の動きは制御しますので、一撃で吹き飛ばしてください」

 

「久しぶりの奴ですね。分かりました。では、行きましょうか」

 

 美鈴は構え、幽霊を吹き飛ばすための気弾を練るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「幻魔さん…なんで私をつれて来たんですかぁ…?」

 

「貴方の能力は言いようによっては万能でしょう?なので、それを使わせていただこうかと」

 

「器用貧乏で悪いですね!!」

 

「そこまでは言ってないでしょう…というか、普通に器用じゃないですか」

 

「可も無く不可も無いっていうのは器用貧乏ですよ!!」

 

 彼女の能力。それは、『可も無く不可も無い能力』。全ての事を、可も無く不可も無い、まさに普通程度に出来る能力だ。ただ、全ての事というのは本当に文字通りで、出来ない事は何一つない。代わりにそれ相応の弱点があるのが欠点という程度だろう。

 

「分析魔法は使えますね?弱点が分かれば、その属性の魔法で潰してください。まぁ、大体聖属性でしょうけど。むしろそれだけで事足りると思いますが、範囲魔法はダメですよ?アレは跡が残りますから。お嬢様の部屋でそんな事をしたらどうなるか…」

 

「で、デスヨネ~…まぁ、単体魔法で確実に潰しますよぅ。幻魔さんは?」

 

「普通に殴って行きますよ。貴方も頑張ってくださいね。厳しい感じ出来たら援護に回りますので遠慮しないでください」

 

「分かりました。じゃあ、始めましょうよ」

 

 幻魔は背後に現れた幽霊を裏拳で殴り飛ばし、

 

「そうですね。早めに終わらせましょうか」

 

 トランプを用意し、幻魔は幽霊に向かって投げつけた。


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