東方変幻録   作:大神 龍

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第四十九話

 図書館最奥部。仕掛け扉を開け、その先の階段を下りて行くと、頑丈そうな扉見つけ、その前に立つ。

 

「久しぶりだな…この扉。さて、イーラ様。よろしいですか?」

 

 ノックをし、そう声をかけると、

 

「あぁ、入っていいぞ」

 

「失礼いたします」

 

 幻魔が入ると、イーラは椅子に深く座り、こちらを見ていた。

 

「お久しぶりです。イーラ様」

 

「あぁ、久しぶりだ。だが、別にここでは敬語になる必要はないぞ?」

 

「そうですか?」

 

「あぁ、ここは紅魔館であって紅魔館でないからな。それで、何の用だ?」

 

「特に用は無いですよ。あいさつ程度です。イーラ様はありますか?」

 

「いや、私も無いよ。あるとすれば、そうだな…良く戻って来てくれた。おかえり、幻魔」

 

「ただ今戻りました。イーラ様」

 

 歓迎の言葉に、笑顔で答える幻魔。

 

「さて、もう戻っても良いぞ」

 

「えぇ…部屋、広くなりました?」

 

「ん?あぁ、まぁ、美鈴が広げようと頑張っていたよ。最終的には結界に阻まれたから部屋を片付けて終わっていた。一週間前くらいに掃除したからそのせいじゃないか?」

 

「なるほど…つまり、この前のは汚かっただけですか」

 

「ハッキリ言ってくれるな。自覚はしてるがな」

 

 イーラはため息を吐く。

 

「では、私はこれで失礼しますね。図書館の本が増えているようなのでいくつか読んでみようかと思います」

 

「あぁ、分かった。ちなみに、お前が出て行ってから増えた本はここを出て左にまっすぐ行った突き当りの本棚から右に5つ目までの本棚までの全てだ。1万を超えた辺りから数えるのをやめたが、確か本棚一つに5千冊くらいは入った気がするから、おおよそ2万5千冊くらいか」

 

「想像以上に増えてますね…どこで手に入れているんでしょうか」

 

「知らん。クレアが買い物に行くたびに増えていた。この前は本のためだけに美鈴を借り出すくらい持ってきていたぞ」

 

「何やってるんですかあの人」

 

「さぁな。ただ、その全てを読破している彼女も凄まじいよ」

 

 それ以上に、どこに本が置かれているのかを知っているイーラは、この厳重な封印のされている部屋の一体どこから出入りしているのだろうか。

 

「イーラ様は?」

 

「図書館の本は読破しきって暇だ。最近はリブラの作品を読ませてもらっているよ」

 

「ほぅ?リブラは本を書いているんですか?」

 

「『趣味の範囲だからそんな大層な物じゃないですよ』と言っていたが、案外面白かったので愛読させてもらっているよ」

 

「そうですか…私も読ませてもらいましょうか」

 

「そうだな。一見の価値はあると思うぞ」

 

 イーラに言われ、その話を読みたくなる幻魔。

 

「ちなみに、内容は?」

 

「様々だよ。今は何だったかな…確か恋愛ものだったと思うよ」

 

「なるほど。では、見に行ってみますね」

 

「あぁ、行って来い」

 

「それでは失礼いたします」

 

 言葉を残し、幻魔はその場から消えた。

 

「クククッ。そうか…ついに帰って来たか…さて、何が起こるのか、楽しみだ」

 

 イーラは、暗い部屋の中で、一人怪しく笑うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「っとと。リブラさん?」

 

「わぁ!?げ、幻魔さん!?どこから現れたんです!?」

 

 唐突に現れた幻魔に驚いて二歩ほど下がって転ぶリブラ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「はぅっ、だ、ダイジョブですっ!」

 

 リブラはすぐさま立ち上がり、パタパタとどこかに向かって走って行く。

 

「…はて。何があったんでしょうか」

 

 リブラの向かう先にはイーラの部屋があった。本を持っていたので、もしかしたらイーラに会いに行ったのだろうか。

 

「…まぁ、良いでしょう。それより、捕らえた人たちを帰さないとですね」

 

 ただし、サーヴェはのぞいて。と付け加え、彼は部屋を目指す。

 

「確か、ここだったはず」

 

 幻魔はそう言い扉を開ける。

 

 その部屋は異様に広く、だが、何もない部屋。しかし、今だけは布団が4組敷いてあった。

 

「さっきぶりですね」

 

 幻魔がそう声をかけると、

 

「雷撃の槍を向けてきて、良く言う」

 

「自分の魂を斬るとか、中々経験できないよなぁ」

 

「あの………茨は…………卑怯…」

 

「なんだよあの攻撃。全く意味わかんないんだが」

 

 先ほどの4人がそれぞれ幻魔に不満をぶつける。

 

「それはまぁ、私も倒すことで必死でしたからね…むしろあれで死なない貴方達がおかしいですよ」

 

「まぁ、あれで死ぬほど軟じゃないって事だ」

 

「そうだな」

 

 うんうん。と4人は頷き、幻魔を見る。

 

「はぁ…それで、今回は館を襲ったという事で、少し理由が気になるんですよね…何があったんですか?」

 

「「「「サーヴェとかいう奴に頼まれた」」」」

 

「まぁ、大方そんな事だろうとは思ってましたよ」

 

 息ピッタリの発言に、ため息を吐きながら納得する幻魔。

 

「本来でしたら生かしておかないんですが…サーヴェが居たので不問としましょう。まぁ、次は無いですけどね」

 

「おぉ、怖い怖い。何をされるのやら」

 

「それは来てからのお楽しみって奴ですよ」

 

 幻魔が不敵に笑い、挑戦的な視線を向ける4人。

 

「また次回。あれば今度は戦いではなく平和に行きましょう。それならば喜んで歓迎させていただきますよ。一応、今回の戦いはなかった事にしておきます。反動もなかった事になるので私と戦う前に戻りますよ。それと、コレをどうぞ」

 

 幻魔はそう言い、4人の前にカードを一枚ずつ転移させる。

 

 4人は反射的にそれを掴む。

 

「それは『夢の欠片』。そのカードに力を込めれば望んだものが現れる効果を持っています。まぁ、世界に干渉するような広範囲の効果や他人に対しては効果を発揮しないのが難点ですがね。後、身体能力等の向上は時間制限付きで、大体2時間くらいになっており、永続じゃないから注意してください」

 

「はいよ。ってことは、そんなに使い道は無いかな…」

 

「武器の修復は瞬間ですよ。手入れの短縮にはなるでしょう。壊れても新品レベルに回復させられますよ。もちろん性能はそのままで」

 

「ふぅん?じゃあ、少しは使い道があるかな」

 

「でも……人を…召喚………した…り……出来ない…んだよね」

 

「残念ながら。あくまでもその人物の元へたどり着く術を用意するくらいしか出来ません」

 

 それぞれが微妙な反応をするが、そんなに性能が高くても、困るというものだ。これくらいがちょうどいい。

 

「さて、では、そろそろあなた方の世界に戻しましょうか」

 

「ん、あぁ、まぁ、我は一人で帰れるのだが」

 

「私……も」

 

「それでも強制送還しますよ」

 

 幻魔はそう言うと、無数のカードをばら撒き――――

 

 

 

「またいつか会いましょう」

 

 

「「「「またいつか」」」」

 

 

 

 言葉を残し、カードが地面に落ちた時には、そこにはもう誰も居なかった。




 何話か引っ張った上に全反動リセット+微妙なアイテムですが、許してくださいお願いします<(_ _)>

 今回コラボに参加してくださった、

 咲き人 様

 音無 仁 様

 マロマロン大帝 様

 仮面ライダー大好き 様

 ありがとうございました!またいつかコラボできると嬉しいです!!

 次回もよろしくお願いします!

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