東方変幻録   作:大神 龍

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第四十四話

 視界を奪った獄炎の中を最初に飛び出したのは女性に見える人物。

 

「あぁ、そう言えば、君たちの名前、聞いてなかったね。教えてくれ」

 

「アドバイザー。別に覚えなくても良いぞ」

 

 アドバイザーと名乗った彼は、瞬間的に生み出した霊力の剣を振りかざす。

 

 幻魔は瞬時にその剣を蹴り軌道を逸らすと、そのまま反転し、背中で体当たり――――鉄山靠(てつざんこう)を放つ。

 

 その一撃でアドバイザーは飛ばされ、次の瞬間、幻魔はその場に伏せる。

 

 直後、何かが通り過ぎ――――

 

「また躱すか!?これで二人目だぞ!?」

 

「殺気を隠せ!」

 

 幻魔は瞬時に剣閃の発生源にナイフを投げる。

 

「おわぁ!!」

 

 炎の中では躱しにくいと感じたのか、目に傷のある男が出てくる。

 

「君の名は?」

 

「予頼 優。よろしくな」

 

「あぁ、こちらこそだ。優」

 

 言いながら、幻魔は無数のナイフを優の周りに突き刺し――――

 

「『悪魔の呪縛』」

 

 ナイフが深紅の鎖となり優を囲む様に飛び出し――――

 

 

 無数の斬撃が鎖を断つ。

 

 

 いつの間にか、優の右手には抜かれた刀があった。

 

「ハッ、ついでじゃ斬れないか」

 

「そんなに軟な鍛え方、してないさ」

 

 幻魔は一枚のカードを取り出し、優へと投げる。

 

 反射的に優はそのカードを斬る。

 

 

 直後凍てつく視界。

 

 

「しばらくはその氷牢の中で。また」

 

 幻魔はそう言い、背後から襲い掛かってくる青コートを蹴り飛ばす。

 

「今……の……気付く………んだ」

 

「一応は。それで、名前は?」

 

「壊疽……虚血……壊疽…壊疽って……呼んで………ね」

 

 壊疽はそう言いながら生み出した槍を投げる。

 

 幻魔は瞬時にその槍を掴むと、壊疽に向かって投げ返す。

 

「ッ!!」

 

 壊疽は即座に右手をかざし――――

 

 

 

 

「…ガハッ……ゲホッ、ゲホッ…」

 

 

 

 

 腹部に槍の刺さった幻魔は顔をしかめる。

 

「…投げ返したのがまた返ってきた…?いや、投げたと思ったら刺さっていた…感覚操作…誘導?」

 

 幻魔は考えながら、確認の為に壊疽に向かってナイフを投げつけ――――

 

 

 直後、傷が回復する。

 

 

「対象の変更…!それが能力か!」

 

「バレ……た?…でも……対処…………出来ない」

 

 壊疽は笑う。しかし、幻魔は臆した様子は無く、まっすぐ突っ込んでくる。

 

「近接なら何とかなるだろう?」

 

「無……駄……だよ…?」

 

 振りかぶられたナイフは壊疽へと向かい――――

 

 

 

 

 

 しっかりと壊疽を斬る。

 

 

 

 

 

「え…?」

 

「対象が存在しなければ効果は発動しない。また、確実に当てたいのなら君と私の存在を入れ替えればいい!」

 

 言いながら、幻魔はもう一方の手に隠していたナイフを壊疽に突き立て――――

 

「飛べ」

 

 ナイフの柄は一瞬にして暴風を生みだし、それを推進力にして壊疽もろとも獄炎の中へと帰って行く。

 

「ぅぉら!!」

 

「甘い!!」

 

 燃え盛る炎の大剣を右足で受け止める幻魔。

 

「コレを受け止めるか!?普通!!」

 

「生憎普通という言葉は私には通じないんだ!!」

 

 幻魔は言いながら左へと刃を逸らし、そのまま回し蹴りを放つ。

 

「ハァッ!!」

 

 背後か急襲した男はその蹴りを剣を持っていない左腕で受け止め、その場に止まる。

 

「名前は?」

 

「相原 真人。行くぞ!『残火の太刀(ざんかのたち)』!」

 

 真人の宣言と共に大剣の炎は消え、焼け焦げた打ち刀のようになる。それと同時に吹き荒れる熱風。

 

「『残火の太刀"東"旭日刃(きょくじつじん)』!」

 

 その熱風は刃に集まり――――

 

 

 

 

 

 真人の一振りにより空気が焼ける。

 

 

 

 

 

 

 しかし、

 

「凍てつけ!!」

 

 幻魔はその刃に触れ、熱を一気に奪い去る。それどころか、その刀身は徐々に凍って行く。

 

「嘘だろ!?」

 

「熱を変化。正から負へとな。その刃はすでに絶対零度だ。凍え死ね」

 

「嫌だね。その時は道連れだ」

 

 真人は今なお凍って行く刀を振り、幻魔はそれを迎撃するために蹴りを放つ。

 

 が、その蹴りはまるで真人の身体をすり抜けるように空ぶる。

 

 幻魔は驚きに目を見開き、反射的に右手を伸ばし刃に触れると、刀は元の姿に戻り、炎を纏う。

 

「燃え尽きろ!」

 

「それは無理だ」

 

 刃は幻魔に当たり――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで先ほどの真人の様に体をすり抜けて行く。

 

 

 

 

 

 

「なぁ!?」

 

 真人は驚きを隠せず、そのまま刃は地面にぶつかる。

 

「お前も…万華鏡写輪眼を使えるのか?」

 

「使えない。だが、同じ事は出来る」

 

 放たれた拳は、今度こそ真人の顔を捕らえる。

 

「ッ!!」

 

 顔に受けた衝撃に仰け反り、体勢を瞬時に立て直し、

 

「『残火の太刀"西"残日獄衣(ざんじつごくい)』!!」

 

 灼熱。否、それ以上の獄炎。太陽の如き炎というのがピッタリな衣を纏う真人。

 

「そうか…なら、コレはどうだ?」

 

 その体に全く臆す様子も無く、刃に触れ――――

 

 

 

 

 

 

「100億℃。恒星の最後の光は、全てを無へと返す」

 

 

 

 

 

 

 直後、真人は想像もできない状況になると察し、

 

「『神威』!!」

 

 消える。

 

 瞬間、幻魔の周囲の物質は完全消滅する。

 

「……範囲固定してもこれだけ被害が出るか…やはり使うべきではないな」

 

「神速居合術 中伝『伊那走り(いなばしり)』!」

 

 飛来する縦一直線の斬撃。それは瞬く間も無く幻魔へと迫り――――

 

 

「――――今この空間は燃えている」

 

 

 斬撃は燃え尽きる。

 

「は…?」

 

「未だにさっきの熱が残ってるんだ。超高速で動く原子は斬撃をも打ち砕く」

 

「なら滅するのみ」

 

 アドバイザーが手を突っ込むと同時、熱は霧散する。

 

「ほぅ?あの高熱を消すか。なら、こういうのはどうだ?」

 

 幻魔は反転し、右手を伸ばす――――。




 その、壊疽ちゃんの能力への対策は強引過ぎだったかもしれないです…これくらいしか思いつかないし…はわわ…す、すいません。

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