視界を奪った獄炎の中を最初に飛び出したのは女性に見える人物。
「あぁ、そう言えば、君たちの名前、聞いてなかったね。教えてくれ」
「アドバイザー。別に覚えなくても良いぞ」
アドバイザーと名乗った彼は、瞬間的に生み出した霊力の剣を振りかざす。
幻魔は瞬時にその剣を蹴り軌道を逸らすと、そのまま反転し、背中で体当たり――――
その一撃でアドバイザーは飛ばされ、次の瞬間、幻魔はその場に伏せる。
直後、何かが通り過ぎ――――
「また躱すか!?これで二人目だぞ!?」
「殺気を隠せ!」
幻魔は瞬時に剣閃の発生源にナイフを投げる。
「おわぁ!!」
炎の中では躱しにくいと感じたのか、目に傷のある男が出てくる。
「君の名は?」
「予頼 優。よろしくな」
「あぁ、こちらこそだ。優」
言いながら、幻魔は無数のナイフを優の周りに突き刺し――――
「『悪魔の呪縛』」
ナイフが深紅の鎖となり優を囲む様に飛び出し――――
無数の斬撃が鎖を断つ。
いつの間にか、優の右手には抜かれた刀があった。
「ハッ、ついでじゃ斬れないか」
「そんなに軟な鍛え方、してないさ」
幻魔は一枚のカードを取り出し、優へと投げる。
反射的に優はそのカードを斬る。
直後凍てつく視界。
「しばらくはその氷牢の中で。また」
幻魔はそう言い、背後から襲い掛かってくる青コートを蹴り飛ばす。
「今……の……気付く………んだ」
「一応は。それで、名前は?」
「壊疽……虚血……壊疽…壊疽って……呼んで………ね」
壊疽はそう言いながら生み出した槍を投げる。
幻魔は瞬時にその槍を掴むと、壊疽に向かって投げ返す。
「ッ!!」
壊疽は即座に右手をかざし――――
「…ガハッ……ゲホッ、ゲホッ…」
腹部に槍の刺さった幻魔は顔をしかめる。
「…投げ返したのがまた返ってきた…?いや、投げたと思ったら刺さっていた…感覚操作…誘導?」
幻魔は考えながら、確認の為に壊疽に向かってナイフを投げつけ――――
直後、傷が回復する。
「対象の変更…!それが能力か!」
「バレ……た?…でも……対処…………出来ない」
壊疽は笑う。しかし、幻魔は臆した様子は無く、まっすぐ突っ込んでくる。
「近接なら何とかなるだろう?」
「無……駄……だよ…?」
振りかぶられたナイフは壊疽へと向かい――――
しっかりと壊疽を斬る。
「え…?」
「対象が存在しなければ効果は発動しない。また、確実に当てたいのなら君と私の存在を入れ替えればいい!」
言いながら、幻魔はもう一方の手に隠していたナイフを壊疽に突き立て――――
「飛べ」
ナイフの柄は一瞬にして暴風を生みだし、それを推進力にして壊疽もろとも獄炎の中へと帰って行く。
「ぅぉら!!」
「甘い!!」
燃え盛る炎の大剣を右足で受け止める幻魔。
「コレを受け止めるか!?普通!!」
「生憎普通という言葉は私には通じないんだ!!」
幻魔は言いながら左へと刃を逸らし、そのまま回し蹴りを放つ。
「ハァッ!!」
背後か急襲した男はその蹴りを剣を持っていない左腕で受け止め、その場に止まる。
「名前は?」
「相原 真人。行くぞ!『
真人の宣言と共に大剣の炎は消え、焼け焦げた打ち刀のようになる。それと同時に吹き荒れる熱風。
「『残火の太刀"東"
その熱風は刃に集まり――――
真人の一振りにより空気が焼ける。
しかし、
「凍てつけ!!」
幻魔はその刃に触れ、熱を一気に奪い去る。それどころか、その刀身は徐々に凍って行く。
「嘘だろ!?」
「熱を変化。正から負へとな。その刃はすでに絶対零度だ。凍え死ね」
「嫌だね。その時は道連れだ」
真人は今なお凍って行く刀を振り、幻魔はそれを迎撃するために蹴りを放つ。
が、その蹴りはまるで真人の身体をすり抜けるように空ぶる。
幻魔は驚きに目を見開き、反射的に右手を伸ばし刃に触れると、刀は元の姿に戻り、炎を纏う。
「燃え尽きろ!」
「それは無理だ」
刃は幻魔に当たり――――
まるで先ほどの真人の様に体をすり抜けて行く。
「なぁ!?」
真人は驚きを隠せず、そのまま刃は地面にぶつかる。
「お前も…万華鏡写輪眼を使えるのか?」
「使えない。だが、同じ事は出来る」
放たれた拳は、今度こそ真人の顔を捕らえる。
「ッ!!」
顔に受けた衝撃に仰け反り、体勢を瞬時に立て直し、
「『残火の太刀"西"
灼熱。否、それ以上の獄炎。太陽の如き炎というのがピッタリな衣を纏う真人。
「そうか…なら、コレはどうだ?」
その体に全く臆す様子も無く、刃に触れ――――
「100億℃。恒星の最後の光は、全てを無へと返す」
直後、真人は想像もできない状況になると察し、
「『神威』!!」
消える。
瞬間、幻魔の周囲の物質は完全消滅する。
「……範囲固定してもこれだけ被害が出るか…やはり使うべきではないな」
「神速居合術 中伝『
飛来する縦一直線の斬撃。それは瞬く間も無く幻魔へと迫り――――
「――――今この空間は燃えている」
斬撃は燃え尽きる。
「は…?」
「未だにさっきの熱が残ってるんだ。超高速で動く原子は斬撃をも打ち砕く」
「なら滅するのみ」
アドバイザーが手を突っ込むと同時、熱は霧散する。
「ほぅ?あの高熱を消すか。なら、こういうのはどうだ?」
幻魔は反転し、右手を伸ばす――――。
その、壊疽ちゃんの能力への対策は強引過ぎだったかもしれないです…これくらいしか思いつかないし…はわわ…す、すいません。