東方変幻録   作:大神 龍

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第三十六話

「いつまでそこで見てるんだ」

 

 唐突に言い放った幻魔。その声に呼応するように草むらから一人の少女が出てくる。

 

「あやや…ばれていましたか…」

 

「まぁ、最初っからな。それで、良いモノは見れたか?」

 

「えぇ…久しぶりに天魔様の本気を見れましたからね…それで、貴方は?」

 

「黒焔幻魔。最初からいたお前は聞いていただろうに」

 

「名前ではなく、何者か、という方が知りたいのですが…」

 

「…今は旅人。そう言っただろう?」

 

「本当に?」

 

「あぁ。仕事に戻るまではただの旅人さ」

 

「そうですか…では、貴方が旅人になる前は…なんだったんでしょうか?」

 

「執事。使用人さ。それ以外に質問はあるか?」

 

「…いえ、もう大丈夫です。ただ、天魔様を殺さないでくださいよ?そんなことしたら、本気で潰しますよ?」

 

「……それは怖い。お前はここらへんにいる天狗の中ではかなり強い方だからな…倒すのに時間がかかる…特に二人以上と戦う時はな」

 

「それでも、負けるとは言わないんですね」

 

「負けたら、少し不味いんでな。笑われちまう」

 

「そうですか…とにかく、天魔様。連れて帰っても良いですか?」

 

「あぁ、治療も終わったから好きにしな。私は鬼の村に戻るとしよう」

 

「お疲れ様です。ではまたいつか」

 

 そう言い残し、少女は恂覇を掴んで行ってしまう。

 

「……あの風貌からして、射命丸(しゃめいまる) (あや)だな。さて、今日はどこに泊まろうか」

 

 幻魔は呟きつつ、鬼の村へと歩いて行く。

 

 

 * * *

 

 

「それで、俺の家か」

 

「すまないな」

 

 骸鬼の家に幻魔はいた。

 

「別に構わんさ。以前も人を泊めた事があるしな」

 

「そうか…その泊めた奴って誰なんだ?」

 

「薙浪迅真。後は宵闇――――ルーミアさんだな。あの人に料理を作ってもらったことがあるが…中々美味かったぞ。迅真の方が美味かったんだがな」

 

「やっぱり迅真には(かな)いそうにないわね」

 

 突然響いた声に振り返ると、そこにはルーミアが立っていた。

 

「ルーミアさん…なんでいるんですか」

 

「別にいいでしょ?暇だったのよ。それとも何か私に来られて困る事でも?」

 

「困らないことが無いような気がしますが…まぁ、これと言って思いつかないですね。ゆっくりして行っても構いませんよ。そこに立ってないで座ったらどうです?」

 

「そうさせてもらうわ」

 

 そういってルーミアは壁際に置いてある椅子に座る。

 

「なんでそこに座るんだ?こちらに来ればいいだろう」

 

「ここが一番落ち着くの。迅真が作ってくれた椅子だからね」

 

「そうなのか…ククッ、あいつはどこでも変わらないな」

 

 幻魔のその言葉にピクッと反応するルーミア。

 

「ふぅん?貴方は迅真の何を知っているのかしら?」

 

「この世界に来る前の事。あいつ自身が語った過去と能力。どこに住んでいたか。大抵の事は知っているぞ?」

 

「……なら、このバッグは?」

 

 そう言って、ルーミアは一つのショルダーバッグを取り出す。

 

「…驚いた。あいつ、ずっと持ってたのか。確かに便利アイテムだが、まさかまだ持っているとはな…」

 

 幻魔が言うと、ルーミアの目が細くなり、

 

「何か、知ってるみたいね」

 

「知ってるも何も、それは俺の作ったものだ。むしろ、貴方も良くほとんど傷が無いまま持っていてくれたな」

 

「当たり前よ。彼の形見だもの」

 

「……何で死んだんだ?」

 

 ふと気になり、幻魔が聞くと、ルーミアは目を逸らし、

 

「……今は言えない。未だに私は認められないからね。何時かひょっこりと帰って来るって信じてるわ」

 

「そうか。なら、そのバッグに俺は触れられないな。そんな心の籠ったモノ…他人が触れていいほど軽くは無いからな」

 

「…そう。貴方、確か幻魔って言ったわよね…良いわ。貴方、気に入った。貴方がこの山で暮らす事を許可するわ。骸鬼は…言うまでも無いわね。どうせ元からそのつもりだったでしょ?」

 

「えぇ。そうでしたよ。あの時と同じかそれ以上の状態ですからね」

 

「そう。なら良いわ。後そこにいる紫。もうすでに全員にばれてるから出て来なさい」

 

「うぇぇ!?な、何でばれたんですか!?」

 

 言いながら紫はスキマから身を乗り出す。

 

「普通に妖力ダダ漏れ」

 

「むしろ丸見え」

 

「もう少し自制しろ」

 

「3人からの波状攻撃は大ダメージですよ!?」

 

 もはや涙目になりながら言うが、うっかりスキマから落ちる紫。

 

「はぐぅっ!?」

 

「貴方ね…」

 

「ドジ属性はどうかと思うぞ?」

 

「なんせ被害が他人に及ぶからな」

 

「なんでそんなに息ピッタリに追撃してくるんです!?私何か悪いことしましたっけ!?」

 

「「「いや、何にも」」」

 

「理不尽ですぅッ!!」

 

 叫ぶ紫と、それを見つめる幻魔達。中々シュールな光景だった。

 

「とにかく、紫もここに泊まりなさい。幻魔が出て行くって言うまでは貴方も出て行ったら駄目よ。どうせもう幻想郷を囲む結界はほとんど完成してるんでしょ?」

 

「むぅ…確かに結界はほとんど完成してますが…それでももう少しだけ強化して外の世界との差を作らないとまだ影響があるんですよ」

 

「でも、後でも出来るでしょ?2~3年放って置いてもさ」

 

「それは…そうですけど…分かりましたよ。藍に任せて諦めて休みます。はぁ…ただでさえも苦労かけてるのに…」

 

「そう思うならその子も休ませなさいよ」

 

「そうですけど…あの子には絶対にやって貰わなくちゃならないモノが数個残っているので、それが終わったら休ませますわ」

 

「うん。それで良いわ。じゃ、私は行くわね」

 

 そう言ってルーミアは出て行ってしまう。

 

「……まぁ、なんだ。これからよろしくって事で、とりあえず飯にしようぜ。腹減った」

 

「じゃあ私が作るよ。家主にやらせるのは性に合わないし元執事としてなんとなく気持ち悪いからな」

 

「そうか。じゃあ頼むよ」

 

 そうして、骸鬼の家に幻魔と紫が住むのだった。




 コラボ募集は今日がラストです!しょうがねぇな、参加してやるよ!って方は活動報告まで!!

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