東方変幻録   作:大神 龍

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第十五話

 イーラは瞬時に幻魔と距離を詰める。その時に切られた無数の糸によって夥しいほどのカードが生まれ、イーラに襲い掛かる。

 

 だがイーラはそのカードを気にすることなく幻魔に凶爪を振り下ろす。

 

 幻魔は咄嗟に上体を反らし回避するとナイフを投擲してバク転をして距離を取る。

 

 イーラに向かっていくナイフは、目にも留まらぬ速度で動いたイーラに回り込まれて躱されてしまう。

 

「(高速移動…?光の杭を砕いたのも考えると少し違うか…まだ情報が足りないな)」

 

 と幻魔が考えているうちに背後からカードの群れがイーラにぶつかる。

 

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 無数のカードは、不自然な動きをしたイーラに全て躱される。が、直後巻き起こる爆炎の竜巻。

 

 ゴウゥォォォォ!と音を立てながら渦を巻き、数秒で霧散する。

 

 だが、そこにいたのは無傷のイーラ。服にも焦げ跡一つ見当たらない。

 

「(回避…いや、動いていないからアレは確実に当たっていたはず。なら防御?どうやって?霊力…いや、妖力か?だがあの熱量を防ぎきるほどの妖力はさすがに気付く。だがその気配は全くなかった事を考えるとやっぱり能力か。ならあの状況を全て切り抜けられるような能力という事……少し工夫してみるか)」

 

 幻魔は即座にナイフを二本投げつける。

 

 それに対しイーラは前方に突撃してくる。

 

 イーラの近くにナイフが行くと同時にナイフは黒煙をまき散らして消える。

 

 そうやって視界を奪うと同時に幻魔は自分の目を生命探知できるように変化させてイーラを見つけるとそこに向かってナイフを投擲する。

 

 イーラは突然現れた煙が器官に入り咳き込んでいると、ヒュッ!という風切り音が聞こえ、咄嗟にその場に伏せて避ける。

 

 が、それに気付いた幻魔は即座にナイフを光の杭に変化させ方向を転換させてイーラを串刺しにする。

 

 それによりイーラは動けなくなり、幻魔はそこに畳み掛けるように大量のカードを投げつける。

 

 カードの群れがイーラの真上に来ると同時に光の杭が砕け散りその場から逃げ出そうとするが、銀の槍に姿を変えたカードに襲われる。

 

 が、寸前でイーラの速度が異常なまでに上がり銀の槍を躱す。

 

 しかし、それを予期していたのか。幻魔が投げていたナイフが脳天に刺さる。

 

 直後そのナイフは茨に変わりイーラを拘束していく。

 

「(視認出来ていた銀の槍は躱した。代わりに視認出来てなかった光の杭とナイフは回避出来なかった。背後から来たカードの群れは?最初から来ると分かっていたか、一瞬見たか。おそらく後者か。爆炎の時は?予想していた―――いや、地面に当たって火を上げた瞬間に能力を発動させたか。光の杭を砕いたのは?それが一番分からない。感じる事ができるようになったから破壊できた?なら彼の能力は感知出来たモノを回避出来るうえに防御も出来る事になる。考えろ、この二つを満たせるような効果を。この不可能な状況を突破する方法を!――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――状況を突破(・・・・・)?)」

 

 あぁ、そういう事か。

 

 幻魔は気付く。

 

 回避、防御。感知することが必須で、どういう状況かという事が分からなくてはいけない。つまり、現状を理解している必要がある。そして、それを完全な形で突破。いや、打破する。

 

 つまり、彼の能力は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「(――――『現状を打破する能力』!!)」

 

 

 たどり着くと同時に攻略法を作り出す。

 

 と、その時、ピシッ!!という乾いた音が響く。

 

 その音に反応し幻魔は意識を現実に引き戻す。

 

 パキパキパキッ!と音を立てつつ亀裂が入る茨。先ほどまで動かなかったイーラが動き出す。

 

 まず彼は額に刺さっているナイフだった茨の根元を引き抜く。

 

 直後灰になってサラサラと音を立てて流れて行く茨。

 

 イーラは立ち上がる。ゆっくりと。息の詰まるような威圧感を放ちながら。

 

 イーラの顔が動きこちらを見た。そう思った時にはすでに目の前にイーラは移動しており、焦った幻魔はカードをばらまくと防御壁に変化させる。

 

 が、次の瞬間には失策だと気付き距離を取ろうとカードを一枚取り出す。

 

 その間にもイーラの凶爪は迫りくる。

 

 狂爪が幻魔の顔を切り裂く寸前、幻魔の姿は掻き消えイーラの攻撃は空を裂く。

 

 イーラは幻魔が消えた事に気付くと背後に現れた殺気に反応し振り向きながら気を使い朱い槍を作ると全力で投擲する。

 

 それを予測していたのか、幻魔は背後に転移すると同時に無数のカードをばら撒き、両手に逆手でサバイバルナイフを持つ。

 

 迫る槍は宙を舞うカードにぶつかり鏡に映った光の様に屈折し続けると、一蹴してイーラに返って行く。

 

 イーラは自身に返ってきた槍を掴むと、今度は接近戦を仕掛けるために飛び出す。

 

 直後幻魔は地面に降り立ち、構えて攻撃を待つ。

 

 イーラがカードの結界の中に入ると同時、イーラの周囲にあったカードの半分は黒煙に変わり、残りの半分は高音を出して耳をつぶす。

 

 つぶれると同時にイーラは能力を使い黒煙で見えない現状と耳が聞こえない現状を打破し回復。が、見えるようになると、いつの間にか眼前に迫っていた幻魔。咄嗟に能力を使おうとするが、脳が指令を送るよりも早く速く二本のナイフで切り刻む。

 

 舞う血液。

 

 それが幻魔に付着すると同時にその血は姿を変え銀の針となってイーラに再度戻り行く。

 

 激痛によって命令伝達が遅れている所に追撃をかける銀の針を避けれるわけも無く、容赦なく突き刺さる。

 

 止まる事無く追撃。舞い落ちるカードは黒煙に化け、時々光の杭となってイーラを打ち付ける。

 

 さすがに限界を感じたイーラは瞬時に体を蝙蝠に変え――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間を狙っていた幻魔に全て叩き落されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「Game over」

 

 一匹を残して動かなくなった蝙蝠達に幻魔はそう告げるのだった。


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