東方変幻録   作:大神 龍

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第十三話

 今日もいつもの様に授業を受け、訓練を受けます。ただ、最近は『能力の修行』というモノも始めました。

 

 よく分からないのですが、幻魔さんのナイフを止めたり動かしたり、水をグルグルと回したりするのです。水を回す修行の時はたまに洗濯物を入れてやる時もあります。時間短縮になるからだそうです。

 

 今は戦闘訓練をしています。私は幻魔さんの使っているモノよりも長い木の剣を使って幻魔さんを一回叩けばいいと言われたのですが、どれだけ頑張っても届きません。最初は何とか当てようと必死で剣を振ってたんですが、最近は押すだけじゃなくて引いたりもして当てようとするんですが、簡単に防がれちゃいます。

 

 そして、昨日『能力を使ってみよう』と幻魔さんに言われました。

 

 私が出来る事は幻魔さん曰く、モノの動きと速度を操る事だそうです。

 

 なので、言われた通り幻魔さんの動きとかを止めて戦ってみたいと思います!

 

 

 * * *

 

 

 紅魔城の庭で、少し距離を離して向かい合っている二人。片方はショートソードの形をした木刀を持った少女。片方は木製のナイフを右手に持ち軽く投げたりしている幻魔。

 

「さぁ、何時でもかかって来て良いよ」

 

「っでは!」

 

 そう言って少女は向かって来る。大きく振りかぶり彼女は幻魔に斬りかかる。

 

 が、幻魔はさも当然の様にそれを受け止める。もちろん彼女もそれは想定内。

 

 彼女はゆっくりと体重をかけながら力を加え、それに対抗するように幻魔も力を入れる。

 

 直後、少女はその場にしゃがみ幻魔の力を流す。

 

 それによって幻魔が前のめりに倒れ込んだところを下から斬り上げる。

 

 だが、幻魔は前に倒れる勢いを利用し、前宙をしてその場を切り抜け、着地と同時に振り返りナイフを突きつけようとし―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――動きが完全に停止する。その数瞬の間に少女は反転し幻魔に向かって剣を突出し、あと少しで当たる、という所で幻魔の硬直が解け木製のナイフに上に弾かれる。

 

 だがその弾かれた勢いを更に利用して一回転させ下から斬り上げる。幻魔はその数瞬の間も動きを止められ、少女の真下に剣が来たところで硬直が解けて半歩下がり回避すると、剣が幻魔の眼前を通った瞬間に少女は前方に飛び出て剣を右手だけで持つと幻魔の胸に向かって左手で掌底を放つ。

 

 が、彼女の渾身の一撃は空を裂く。

 

 すでにそこには幻魔の姿は無く、突然背後に現れた幻魔の気配に、しかしにやりと笑いながら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ガッ!と音がして剣の動きが止まり、その瞬間に体を反転させながら蹴りを放つ。

 

 だがそれは幻魔に当たる直前で止められた。

 

 止めていたのは、少女の剣を止めているナイフを持っているのとは反対の、何も持っていない、否、持ってないはずの手。

 

 だが、その手には一本の木製のナイフが握られていた。

 

「ぇ…!?」

 

 驚く少女。直後、恐ろしい力に押されて転んだ瞬間に喉元にナイフを突きつけられる。

 

「……今日はこのくらいにしておきましょうか」

 

 そう言って幻魔は体を引き少女を助け起こす。

 

「お疲れ様です。今日はあと少し、という所でしょうか。それにしても一か月経たずに私が二本目のナイフと能力を使う事になるとは……少し想定外ですね」

 

「そ、そうですか?えへへ…褒められるとちょっと照れちゃいます」

 

 少し顔を赤くして頬に手を当てる少女。その姿を見つつ幻魔は、

 

「では中に入りましょうか。そろそろ昼食の時間ですしね。今日は私が作りましょう」

 

 と言って城の中に入って行き、その後ろを少女はついて行く。

 

 中に入ると、クレアが立っていた。そして、クレアはこちらを見ると、

 

「幻魔。訓練終わったの?」

 

「えぇ、終わりました。どうかしたんですか?」

 

「いや、さっきプレジール様に呼ばれて言ったら貴方達が昼食を食べたら図書室の整理をさせろって言われてね。それを伝えに行こうとしてたところ。じゃ、伝えたからね~」

 

「わかりました。あ、ご主人とクレアさんはもう昼食を食べたのですか?」

 

「まぁね。声をかけるつもりだったんだけどプレジール様が意味深な顔をして声をかけなくていいって言うからその通りにしたの。ってことで私はこれから休憩よ」

 

 キリッとした表情で去って行くクレア。その姿を見送った後幻魔は振り返り、

 

「とりあえず、食事にしましょうか」

 

「そ、そうですね」

 

 苦笑いをしながら二人は食堂へと足を運ぶ。

 

 

 * * *

 

 

 食事を終えた後、二人は先ほどクレアに言われた通り図書室の整理をしていた。

 

「……魔導書が意外とあるなぁ…普通の本もあるんだけども」

 

 改めて見てみると、ただの人間が見たら発狂死しかねない危険な本ばかりだった。一体どこでこんなものを…と思うが、それを知っているのはプレジールとクレアだけだ。まぁ、別にそこまで興味も無いから良いのだが。

 

 と、幻魔が整理していると、

 

「幻魔さ~ん!ちょっと来てください!」

 

 大きな声が聞こえて来る。

 

「どうかしたんですか?」

 

 疑問に思いながら幻魔が少女の元に行くと、彼女はある場所を指差して、

 

「ここ、何の扉でしょうか?」

 

 と言う。幻魔の記憶ではこんな所に扉などは無く、ただの壁があるだけ。のはずだった。

 

 確かにそこには扉があった。しかも、夥しいほどの文字が彫り込まれており、結界となっている。

 

「(結界…何か封印しているのか?)」

 

 そう思った幻魔は、プレジールに聞きに行こうとし、ふとクレアの言っていた言葉を思い出す。

 

『図書室の整理をさせろ』『意味深な顔をして』

 

 この二つの事がつながっているとしたら、おそらくプレジールはここでこの瞬間彼女がこの扉を見つける事を予期していたのではないか?

 

 幻魔はそう考え、その全てを切り捨てて本音である好奇心に任せて結界を能力を使って容赦なく破壊するのだった。




 おい待て最後執事としてどうなんだよ。

 次回もよろしくお願いします。

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