東方変幻録   作:大神 龍

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なろうでやってた小説が一周年だったのでノリで投稿。後悔する気がしてならない私がいる。だが反省はしない!


第一話

「やることがないな……」

 

 彼はそう呟いた。

 

 彼が今居る所は、彼の所有する城の自室。

 

 何をしようかと考えつつ、彼は自室にあるカーテンがかかっている窓に近づいていくと、カーテンを開ける。そこから見える景色は、庭や囲む塀などだ。時間帯は、月明かりが差し込むことからすでに夜であることが分かる。今宵の月は満月。彼にとっては特別な存在だ。

 

「ぬぅ、ここにある書物もあらかた読んだ。それに、食事までにはまだ時間があるな……さて、この持て余した時間をどうしようか……」

 

 面白いことでもないものかと思い外の景色を眺めていると、ふと何かが空から庭に落ちていった。1秒にも満たないであろう時間に起きた事に彼は驚いて一瞬思考が停止していたが、すぐさま我に返り、

 

「……ふむ。ちょうど暇を持て余していた所に少し興味深いモノが落ちてきたな」

 

 そう呟き、部屋を出て行く。

 

 

 

 

 

 彼は何かが落ちた場所に着くとそこには一人の少年が倒れていた。しかも、見事なまでに気絶している。その少年の着ているのはなぜか燕尾服だった。

 

「人か?空から落ちてくるとは、不思議なこともあったものだ。ふむ。このままここに置いていくのは少しもったいないな。……屋敷に運ぶか。世話は誰に任せようか」

 

 彼はぶつぶつ言いながら空から落ちてきた少年を担ぎ、戻っていく。

 

 

 

 

 

 少年は目を覚ます。まず目の前に広がるのは紅い天井。

 

「……知らない……天井だ」

 

 不思議に思いつつも体を起こし辺りを見渡す。

 

 見渡した事で分かったのは、まず、ここが部屋であること。そして、部屋の壁の色が隅から隅まで真っ赤であるという事と、部屋に置いてあるものが異様に高そうだ。という事だ。

 

「……うん。ネタじゃなくて、マジで知らねぇ場所だ」

 

 引きつった表情で少年はそう呟く。

 

 しかし、なぜ自分はここにいるのだろうか。と少年が考えたところで、ガチャリ。と部屋の扉が開く。現れたのは、銀色の髪を持ち、焔のように紅い瞳の色をした美しい男だった。しかし、その背中には蝙蝠のような黒い羽が生えており、おそらく人ではないであろう事がわかる。

 

「む。もう起きていたか。しかし、あの高さから落ちて無傷とは。貴様、本当に人か?」

 

 男は、少年の姿を見ると同時にそんなことを言う。

 

「あ~……一応人間ですよ?一応ね。というか、あなたの方が人間じゃないような気がしますけど?」

 

 少年は少し辛そうに丁寧な口調で返事をする。男は少年の言葉を聞き、扉を閉め部屋の中に入ってきながら、

 

「確かに私は人間ではないが……ふむ。そうだな。では名乗るとしよう。私の名はプレジール・スカーレットだ。貴様の名は?」

 

 男は名乗る。プレジール・『スカーレット』。少年はその名字をどこかで聞いた覚えがあった。それがどこだかは思い出せないが、どこかのキャラクターだった気がする。もちろん、そのキャラクターとは関係はないだろうが。

 

「俺……いや、私の名前は黒焔(こくえん) 幻魔(げんま)です。後、たぶん助けられたのでしょうからお礼を。ありがとうございます」

 

 少年も、プレジールの後に続くように名乗り、一礼する。

 

「ふむ。私の名前を聞いて怖がらないという事は、町の人間ではないようだな。しかし、本当に不思議な人間だな。人ならざる私に礼をするとはな」

 

「たかが人でない程度で驚きはすれど、怖がる必要などないじゃないですか。それに、私の知り合いには人とは呼べない人間が多くいましたからね。そして、私もその一人です」

 

 プレジールの驚きの声に苦笑いしつつ答える幻魔。

 

「人とは呼べない人間だと?少し興味があるな。聞かせてくれないか?」

 

 プレジールは幻魔の言葉に興味を抱き、追求する。しかし、

 

「えっと、それはまたいつか話すことにします。私の気が乗らないので。すいません」

 

 幻魔は申し訳なさそうに笑いながら謝る。プレジールは少し残念に思ったが、本人が嫌がってることを追及するのは自身の主義に反するので、それ以上深く聞くのをやめる事にした。

 

「そうか。まぁいい。それよりもだ。貴様はこの後のことを考えてるのか?」

 

「この後、ですか?とりあえずここがどこかを知ることから始めようかと思ったんですが……出て行った方がいいですかね?」

 

「いや、別に出て行かないでもいい。ただ気になっただけだ。それで、ここがどこか、だったな。それには答えてやるとしよう」

 

 プレジールの言葉にピクッと反応した幻魔は、黙って耳を澄ます。

 

「ここはルーマニアにある私の所有している城、紅魔城だ。こんなに紅い所だが、ゆっくりと過ごしていくがいい」

 

 ルーマニア……東ヨーロッパにある国だ。しかし、幻魔の記憶ではつい先ほどまで日本にいたはずなのである。幻魔は疑問に思うが、この距離を移動するのは別に難しいことでもないので別にいいか。と考える。

 

「ありがとうございます。でも、助けてもらったのに何もしないのは私の主義に反するので、少しの間お手伝いをさせていただいてもいいでしょうか?」

 

「無理にしなくてもよいが……ふむ。そうだな、ならば……クレア。すまないが来てくれ」

 

 プレジールがそういうと、ガチャリ。と扉が開き、そこから腰までの長さのあるハニーブロンド色をした髪を持った膝丈くらいのスカートのメイド服を着た女性だった。

 

「何かご用でしょうか?」

 

「あぁ。そこの男に仕事を教えてやってほしい。先ほど拾ってきたのだが、お礼がしたいそうなんでな。任せたぞ」

 

「なるほど。分かりました。では、さっそく始めることにいたします。そこのあなた。早くこちらへいらっしゃい」

 

「え、あ、はい。分かりました」

 

「では、失礼いたします」

 

 クレアは一礼すると、幻魔を連れて行ってしまった。残されたプレジールは、

 

「さて、自室に戻って彼の様子を見て楽しもうかな」

 

 そう呟き、部屋を出て行くのだった。




 ちなみに、こちらも毎週土曜21:00投稿です。今回だけ12:00ですが。

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