お久しぶりの方はお久しぶりです、夢路です。
駄文ですが、少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
白、白、白、白、白。
上を向いても白、下を向いても白、上に後ろに左右合わせて全部が全部白。
長いこと居れば普通の人だったら気がおかしくなるんじゃないかと思うぐらいに何もなく、そして真っ白な場所。そこに私は、体内時計の精度を信じるなら、1時間はいた。
「何なんだよ、ここは……」
しかしそんなところに長時間居たのに、私はむしろ落ち着いていた。むしろ冷静になっていく。冷静になりすぎて、腹の奥が警告を始める。この感覚を、私は何度も経験している。
そう、この感覚は、
胃の警告……!面倒事の予感……!!
ストレスマッハの時間が、来た。
「しかしここは何なんだ……」
私の名前は青崎青樹。ごくごく普通の男子高校生だ。一応通っている高校で生徒会長を務めている。
ここで話は変わるが、この生徒会長という役職、私が望んでなったわけじゃあない。
いつの間にか生徒会長候補に推薦され、なぜかぶっちぎりで票を集めて並いる候補をなぎ倒し、いつの間にか生徒会長になっていたのだ。
自分で言うと少し悲しくなってくるが、私はこれといって目立つ容姿とか能力とかカリスマとかは持っていない、本当に普通の男だと思っている。せいぜい少し珍しそうな苗字と家が結構歴史のある旧家だというぐらいだ。
なのに当選した時に全校生徒に万歳三唱をされ、前生徒会長に「お前なら安心して後を任せられるよ」と言われ、他の候補者に「さすがだな」とかライバル宣言をされ、教師からも信頼され、一人しかいない親友には「当然だな」なんて言われる、最高のスーパー生徒会長、なんてことになってしまったのだ。
一体どうしてこんなことになってしまったのかと、当選した時は頭を抱えたものだ。
そんなこんなで生徒会の仕事を始めたが、これが大変だった。次々に起こる事件に事故、果ては学園バトル的な事件まで起こる始末だった。そんなことを経験し続けてきたせいか、顔は常に不機嫌そうに歪み、口調も固くなり、今のように緊急事態のときは思考が冷静になるようになってしまった。
もともとは結構活発な性格だったんだけどなー、なんて考えながら不思議な場所で立ちながら腕組みしていると、
「――――やはり素晴らしいな、お前は」
目の前の空間がいびつに歪む。そこから声がする。人が、女の姿をした人様な何かが出てくる。だがソレの持つ雰囲気が、人であるという選択肢を消し去っている。
その非常識な光景を前に、しかし私はそのまま直立不動を続ける。
御大層な理由があるわけではない。単純に怖かっただけである。情けないが、今までの経験で実感したことだが、私は臆病でチキンハートのようなのだ。不良生徒に睨まれたりすると、もう駄目だ。口調がさらにおかしなことになり、頭がぐちゃぐちゃになって何をやっているのか分からなくなってしまうのだ。冷静な思考はどこに行った、といつも思うが、なぜか思考が落ち着いてくると万事うまくいっていたりするので、今まで特に直そうとしたりはしていない。
あ、やべ、意識がクラクラしてきた。
「驚かないのだな。ここに来たものはワタシが来ると混乱しているか錯乱しているか、ワタシに怒鳴りかかるか掴みかかるかすると思ったのだが」
「別に、もう慣れたからな」
口が勝手に動く。この状態になると、自分の体が勝手に動き、オートパイロットのような状態になるのだ。相手の言うことに口が考えるより先に動くのだ。
「ここはどこでアンタは誰?待たせたんだから、さっさと吐いてくれるか」
どうもこの状態だと口が悪くなるのも特徴的なのだ。気を悪くするようなことになりませんように、なんて思うが、私は一切自分で体を動かせない。
「さすがだな、長らく神であったが、お前ほどの存在はいなかったぞ」
「……神?」
なんか、すごいことが聞こえたが、私は内心ぽけぽけしてる。うぱー。
「ついでに言うとここは転生の間。魂が次なる生を歩むために一時留まり、生前の記憶を消去し、成仏するための部屋さ」
……へ?それって、ようするに……
「お前は、死んだんだ」
前が、真っ暗になりました。
目の前の特異な魂を前に、名もなき神は内心驚愕していた。
この転生の間は、生前の記憶、素性を消去し、次の人生へ向かうためのスタートライン。
まれに一部の記憶が消去しきれずに転生してしまうことがあるが、それだけだ。せいぜいが残滓程度。その後の人生にはなんの問題もない。
だが、目の前の魂は違う。残滓どころか、少しも消去されずにそのままの形を持っている。このような事態は今まで一度も経験していない。
そしてその態度だ。恐怖も動揺も困惑も激情も持っていない。ただ疑問を解決させるために自分に問いかけてきた。
問いかけたいのはこちらのほうだと言いたいところだが、答えは出ないだろう。目の前にいるのは、ただの人の魂なのだから。そのはずなのだから。そうでなければおかしいのだから。
イレギュラーな事態は他人が経験する分には面白いが、自分が経験するのはまっぴら御免、そういう性格な自分は、目の前の異常な魂をさっさとどこかの世界に転生させることにした。
こんな存在でも受け入れられそうな世界は知っている。そこならこの魂も大丈夫だろう。
――――危険ではあるが。
「悪いがお前に説明してやりたくても、こっちも事態が飲み込めていないんだ。そんなわけでお前には手っ取り早く転生してもらう」
「おいちょっと待て」
「しかしお前のいく世界は危険だからな。すぐに死なれても困るし、生き残れるよう強力な力を待たせてやろう」
「危険てオイィィ?」
「お前のは、確か青崎といったな。ならあの力にしてやろう。面倒な目にあうだろうが、まあ頑張れ」
「だから待てえ!?」
聞く耳もたんとばかりに魂をあの世界に送る。その世界の連中に怪しまれないように生まれも操作して
、これで完璧。問題はない。
神はやれやれ、と再び歪んだ空間の中に戻って行った。
――――それが後に世界を揺るがす大事件へと発展していくことになるなど、知る由もせず。
さあご覧あれ、これより始まるは幻想の物語。
あれなるは星の光を手繰る者。
のちにありとあらゆる嘆きを、悲しみを打ち破る、恐れ知らずな普通の魔法使い。
破壊と恋色の魔法使い。
魔法使いの魔理沙、始まります。
「おお、ついに生まれたか!」
「はい、げんきな女の子ですよ!」
(え、なになに!?赤ん坊になってる!?てゆうか、女の子って、どうゆうことだあああぁぁぁ!?)」