ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:4E/あかいひと

8 / 67
スランプ脱却のための頭空っぽ番外編です。見るに堪えないので、やりたい放題が苦手な方はブラウザバック推奨です。


番外編-タイムトラベル!? 兵の頭は乱世で舞う!
その1-ゴー・トゥ・ザ・パスト


 

「あらイッセー、丁度いいところに」

 

寮の地下、共同研究施設に入ると、何故かお嬢がいた。なんでだろう…………お嬢、頭は良いし知識もあるけど、脳筋で若干おバカな印象が…………

 

「失礼ね! 脳筋なのは否定しないけれど、その原因は貴方よ!」

「いやぁでもお嬢。俺が訓練付ける前から若干そのケが───」

「さて、丁度いいと言うのは、今まさに私の最高傑作が完成したところなのよ」

 

逃げたなこの女郎…………、いや構わねーけどさ。

 

とりあえず載せられてやろうと思って、お嬢が指で示す方向に目を向ける。

 

そこにあったのは、人力車? それにしては席の後ろに妙な膨らみが。確認してみると、これまた妙な装置がくっついているけど…………。

 

「とある映画に影響を受けて作ったのよ。どう? カッコいいでしょ?」

「とある映画? 人力車がメインの映画ってありましたっけ…………?」

 

中々に渋いものを題材にするなぁ…………気になるから後で探しておこ、

 

「違うわ。ゴー・トゥ・ザ・パストよ」

「この人力車タイムマシンかよ!!?」

 

え、何故人力車でタイムマシンを作ろうと思った!!? もっと他にもあるだろう!!?

 

「だってこの方がエキゾチックじゃない。あと使用目的から考えると、和風の見た目している方が都合がいいし」

「というと?」

「実際に自分で過去の日本に行くのよ!」

 

…………人力車、一応明治時代からの物だった筈なんだけどなぁ。いや、一応車輪も木製だからごまかしは効くけれど。

 

というか、テンプレ外国人みたいに日本かぶれなんだよなぁグレモリー兄妹。というか一族。オタクに技術もたせちゃいかんね。

 

「というか、よくタイムスリップできる装置作れましたね? 俺は過去に行く事は出来ますが一方通行で戻れないんですよねぇ…………」

 

世界は様々な分岐でいっぱいだ。複雑に絡み合って、元の時間軸に戻ることが難し過ぎる。

なお、技術だけなら無理なのであって、ゴリ押しという名の抜剣で時間と空間を一緒くたに斬ればなんとかなってしまうのは黙っておいた方がいいかもしれない。またバグキャラ扱いされるし。

 

「そう、そこが課題だったのよね。過去に渡るだけで未来は変わってしまうわ。そのまま時間を駆け抜けても元の時間軸には戻れない」

「ふむふむ」

「だから思ったの。戻れなくてもいいじゃない」

「良くねぇよ!? 帰ってきたら居場所がありませんとかシャレになんねーから!?」

「最後まで聞きなさい。元の世界には戻れないけど、元の居場所には戻れるわ」

「というと?」

「ざっくりした説明になるけれど、戻りたい時間をA、元居る時間をBとして、そこだけ記録するのよ。ただ、時間Aから時間Bに至るまでの過程で変化があった場合、時間Bでの歴史に変化が生じる。元居る世界には戻れないと言うのは、こういうことよ」

 

ははあ、成る程。でも、そうなると居場所も無くなる可能性は捨てきれないような…………。

 

「これはとある偉大な国民的漫画の例えを引用するのだけど。東京から大阪に行く方法は沢山あるわよね? 方法によっては過程は変わるけれど、結果は同じよ。私がこの試作型タイムマシンでやってるのはそういうこと」

「ふへぇ…………」

 

と、なると…………。

 

「未来は変わるけれど、大筋では変わらない?」

「そうよ。タイムスリップでの改変も面白いけれど、それは色々とアウトな気がするのよ。それを防ごうと思ってこの方法を採ったわけではないけれど、結果的にはベスト、と言ったところかしら?」

 

成る程なぁ。

 

「ちなみに記録方法は?」

「一応タイムマシン本体の方にも記録はさせるけれど、より帰りやすい様に外部装置を使うわ。この装置とタイムマシンを通信させて、帰る場所を特定する」

「他の軸で全く同じ装置を設置している場合は?」

「もし全く同じなら、この時間軸とのズレがほんの少しもない、ほぼ一緒の歴史を刻んだ時間軸でしょうね。問題無いわ。いや、酷似した時間軸に辿り着いてしまうことが無い様に、平行世界で同じタイムマシンを作った私と連絡を取ったわ、大丈夫」

「え、ええ…………?」

「悪魔ですもの、このぐらいできるわよ」

 

そこまでして過去に戻りたいのか。逆にすげぇわ。

 

「で、緊急事態でもこの時間軸のこの時間に戻ってこれる俺を、実験台に?」

「言い方は悪いけれどその通りね。私は製作者としてこっちで装置の操作が必要なのよ、まだマシン単独で動かせないから。無論、タダとは言わないわ。貸し10でどう?」

「いや、1でいいです。見た目はともかく、こんな経験滅多にありませんし」

「ありがと。持つべきものは、良き友ね」

「良き友と書いてビジネスパートナー。あるいは利用価値の高い駒?」

「そんなのお互い様でしょう? 散々利用しているくせに」

「ははっ、違いない」

 

まあ確信できるのは、使えない駒になっても切り捨てることが出来ない程度には友情があるということか。

 

 

◇◇◇

 

 

「まあ、そんな経緯で人力車型タイムマシンでタイムスリップすることになったんだけど。ヴァーリもどう?」

「…………その提案は有り難いが」

 

喜んでのってくると思った…………んだけど、意外に渋い表情だ。

 

「以前にもこういうことがあっただろう? その…………エミリアの試作亜空間航行装置で」

「…………あー」

 

そう言えばそうだったなぁ。俺と、ナギサと、エミリアと。で、向かった異世界で装置が壊れて暫く帰れなくなって…………。

 

「まあ今回は最悪斬れば何とかなるさ。前みたいに異世界に行くわけじゃない」

「それなら安心…………と言うと思ったか? 私達は二天龍だぞ?」

『どういう意味だヴァーリ?』

「そういう意味だよアルビオン」

 

…………まあ、何か起きてくださいと言わんばかりではあるな、確かに。

 

「でも、ヴァーリを置いていくのが嫌だったからなんだけどな…………。これでも何も言わなかったこと反省してんだぜ?」

「…………ちなみに、時間遡行を取り止めにすると言うのは?」

「悪魔と約束した手前、反故にするのはどうなんだろう? いや、お嬢は『仕方ないわね』って言うとは思うけど」

 

そして、彼女は暫く考え込む仕草を見せる。そして、

 

「……そうだな、見方を変えよう。これはチャンスなのかもしれない。婚前旅行と思えば」

「婚前も何も婚約してねぇからな!?」

「ふふっ、そうだな。まあこのぐらいは許してくれ。告白の答えを待つ、と言うのは中々辛い日々なのだから」

「……………………」

 

それはまあ、申し訳ないんだけれど。

 

「さて、行くと決まれば準備が必要だな。少し待っててくれ」

「……いや、1週間後だしそんなに慌てなくてもいいよ」

「そうなのか、安心した。この旅行を完全にモノにするために、黒歌にアドバイスを」

「それは止めて!?」

 

あの駄猫、どんな爆弾を仕込むか分かったもんじゃねぇから!!

……嗚呼もう言うしかないのかな。

 

「………ヘタれたこと言う様で申し訳ないけど。悩んじゃうぐらいには、俺はヴァーリのことが好きで、その……意識してる、から」

 

顔が熱くなるのを自覚しながら言うと、ヴァーリの透き通る様な白い頬が、真っ赤になった。そうやって照れてくれることが、ヴァーリの想いを俺に再確認させて、更にこっちも熱くなる。…………のぼせそう。

 

「そ、そうか……そうなのか…………。ど、どうしよう一誠。嬉しくてどうしたらいいか分かんないぞ」

「お、俺に聞く!? 俺だってどうしたらいいかわかんねぇよ!」

「だが、一誠の言葉でこうなったんだぞ。どうしてくれる」

「元はそっちがスタートだろうが!」

 

恋愛初心者の俺達は、みっともなくわーわーと喚く。みっともないけれど、青春してる…………ってことなのかなぁ? と、俺は半ば思考放棄してそんなことを思った。

 

『……甘いな』

『……ああ、口から砂糖を吐きそうだ』

『だが、幸せな光景でもある』

『願わくば、相棒達にはもっと幸せになってもらいたいところだが』

『…………難しい。が、出来なくはない』

『だな。我らは二天龍。友に降りかかる苛酷な運命など……』

 

 

『燃やし尽くしてやる』

『消しとばしてやる』

 

 

◇◇◇

 

 

そして当日。人力車の席にヴァーリが座り、その両隣には俺達の荷物が。なお、俺は車夫である。ヴァーリに任せることはできなくはないが、一応説明を受けているのは俺だからな。

 

『二人共聴こえる?』

 

そして、俺の手元にはスマホサイズの端末が。これは外部装置とタイムマシンの装置とリンクしている装置であり、お嬢の声の発信源。ついでにタイムスリップ先の時間を設定するものでもある。

今回の遡行先は1868年1月25日。明治1年…………というか、明治時代の始まった日である。今回は遠くもなく、近くもない時代での実験ということの様で。

 

『何かあったら連絡すること。こっちでも何かあれば連絡をする。あと、くれぐれも暴れないように。いいわね?』

「「了解」」

 

さて、この人力車。タイムスリップ自体は魔力でどうにかなる。赤龍帝である俺の実質無限魔力を使えばエネルギー切れはありえない。

問題は、あの車型タイムマシンよろしく、走らなければならないことだ。製作者の趣味で66.6㎞/hで。縁起が悪すぎる。

 

「んじゃ、夢よりも夢っぽい旅行に行ってきまーす。お土産は何がいいっすか?」

『そうね、偉人のサインでもあれば完璧ね。まあ冗談はともかく、データよデータ! 頼んだわよ!』

「アイアイマム!」

 

腰を深く下ろし、地面を蹴る準備を。

 

「んじゃ、行くよヴァーリ!」

「任せた一誠」

 

 

 

 

 

 

そして、ヴァーリの当初の懸念は、しっかりと当たることになる。

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。